新入社員研修でよくある課題と解決策|見直すポイントと改善手順を解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

新入社員研修の課題を改善するには、「発言が少ないからグループワークを増やす」「理解度が低いから研修時間を増やす」と、目に見える現象だけで対策を決めないことが大切です。同じ課題でも、研修の設計や進め方、配属後の環境など、原因によって必要な対応は異なります。

本記事では、新入社員研修でよくある5つの課題を取り上げ、原因を見直す4つの視点、改善の優先順位の付け方、課題別の対応方法を解説します。さらに、研修中・研修直後・配属後の効果測定まで紹介します。

 

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新入社員研修でよくある5つの課題

研修を改善するには、最初に自社で起きている問題を具体的に捉える必要があります。ここでは、新入社員研修でよくある5つの課題を紹介します。

1.受講者が受け身で発言・質問が少ない

講師が問いかけても反応が薄い、質問がほとんど出ない、グループワークでも一部の人しか話さないといった状態です。

ただし、こうした様子だけから「主体性がない」と判断するのは避けましょう。研修の目的が自分の仕事と結び付いていない、内容を十分に理解できていない、発言する機会が少ないなど、複数の原因が考えられるためです。

2.知識・スキル・理解度に差がある

同じ説明をしても、すぐに演習へ進める人と何から始めればよいか分からない人に分かれることがあります。質問が一部の受講者に集中する場合も、前提知識や理解度に差がある可能性があります。

この場合、「理解が遅い人がいる」と捉えるだけでは改善につながりません。どの内容で差が生じているか、研修を受けるために必要な前提知識を全員が持っているかを確認する必要があります。

3.学んだ内容が実務で活かされていない

研修中のテストや演習では問題がなかったにもかかわらず、配属先から「研修を受けたはずなのにできていない」と言われるケースです。この場合は、「研修で身につかなかった」のか、「研修ではできたが仕事で使えていない」のかを分けて考える必要があります。

前者であれば研修内容や練習方法、後者であれば配属後の実践機会や支援体制など、改善する場所が異なります。

4.目的・到達目標が曖昧になっている

前年のカリキュラムをそのまま踏襲するうちに、「この研修を通して何ができるようになればよいのか」が曖昧になることがあります。

例えば、「ビジネスマナーを学ぶ」「コミュニケーション力を身につける」といったテーマだけでは、何をもって習得したと判断するか決めにくくなるでしょう。

到達目標が曖昧なままだと、研修内容を増やすべきか減らすべきか、どの方法で評価すればよいかも判断しにくくなります。

5.担当者の負担が大きく現場との連携が不足している

人事・研修担当者が企画、教材作成、登壇、運営、フォローまで抱え込んでいるケースです。

研修終了後に配属先へ十分な情報が渡っていなければ、OJT担当者も「何を教わってきたのか」「何を実践させればよいのか」を把握できません。研修そのものだけでなく、研修前後の役割分担や情報共有も確認する必要があります。

 

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新入社員研修の課題を見直す4つの視点

同じ課題でも、原因によって必要な対応は変わります。米国CDCの研修ニーズ分析では、現在の状態と目標との差を把握し、その原因を調べたうえで、研修で対応するべきか、研修以外の対応も必要かを判断する流れが示されています。米国CDCは感染症対策だけでなく、公衆衛生分野の人材育成にも取り組んでおり、研修の設計・評価に関するガイドも公開しています。

この考え方を参考に、ここでは「研修前の設計」「研修中の進め方」「研修後の実践環境」「育成体制・情報共有」の4つの視点から見直す方法を解説します。

参考:Assess Training Needs: Conducting Needs Analysis|CDC

1.研修前の設計

最初に、研修の目的と内容が合っているかを見ます。

確認したいのは、次の3点です。

  • 研修後に何ができる状態を目指すのか
  • その目標に必要な内容を扱っているか
  • 受講者に必要な前提知識・スキルを把握しているか

米国CDCの研修開発に関する資料では、学習目標を学習者が達成する具体的・測定可能な行動として設定し、研修内容や活動、評価方法と対応させる考え方が示されています。

例えば、「ビジネスマナーを理解する」だけではなく、「場面に応じた挨拶や報告を実践できる」のように、研修後の行動まで具体化しましょう。そのうえで、目標の達成に不要な内容が多くないか、反対に必要な前提知識が抜けていないかを見直します。

参考:Design Training: Learning Objectives|CDC

2.研修中の進め方

次に、受講者が実際に学んでいる場面を見ます。講師からの説明だけに偏っていないか、質問や演習の機会があるか、一部の人だけが発言していないかなどを確認しましょう。

例えば発言が少ない場合、最初に知識確認や演習の様子を見ます。そこでつまずいているなら、内容の難易度や説明方法が原因かもしれません。

一方、内容は理解できているのに発言が出ない場合は、問いかけ方や活動の進め方、質問する手段などを見直します。「発言しない=本人の意欲不足」と決めず、どの場面で行動が止まっているかを確認することがポイントです。

3.研修後の実践環境

研修直後には理解・実演できていたのに、配属後に実践できていない場合は、研修そのものをやり直す前に職場での状況を見ます。

具体的には、次のような点を確認します。

  • 学んだ内容を使う機会があったか
  • 実際の仕事内容と研修内容がつながっているか
  • 必要な時間や資源があるか
  • 上司やOJT担当者から支援を受けられるか

厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」では、学んだ能力・技能を業務で実践する場を設け、実践結果を評価し、その後の学びにつなげる考え方が示されています。研修ではできていたのであれば、再度同じ内容を教える前に、配属後に使える環境があるかを確認しましょう。

参考:職場における学び・学び直し促進ガイドライン|厚生労働省

4.育成体制・情報共有

人事・研修担当者、講師、配属先、OJT担当者の間で必要な情報が共有されているかを見ましょう。研修の到達目標や扱った内容、配属後に実践してほしい行動が現場へ伝わっていなければ、OJT担当者も何をフォローすればよいか判断しにくくなります。

現場から「研修で何を学んできたのか分からない」といった声がある場合は、研修内容よりも情報共有の仕組みを改善する必要があります。

4つの視点で整理したら、「研修そのものを変える問題」なのか、「配属後の環境や育成体制も変える問題」なのかを分けて考えることが大切です。

新入社員研修の課題の優先順位

4つの視点から原因を整理すると、複数の改善点が見つかることがあります。すべてを一度に見直すのではなく、育成目標や業務への影響を踏まえて、優先して取り組む課題を絞りましょう。

優先順位を決める際は、次の順番で判断すると整理しやすくなります。

  1. 課題ごとに研修後に求める行動と現在の状態の差を整理する
  2. 育成目標の達成や配属後の業務への影響を比較する
  3. 影響を受ける人数や発生頻度から、課題の広がりを確認する
  4. 原因と対応に必要な人員・時間・予算を踏まえ、着手する課題を決める

例えば、多くの受講者が研修の目的を理解できていない場合は、個別対応よりも研修設計の見直しが優先候補になります。一方、理解不足が一部の受講者に限られていても、配属後の業務に大きな支障が生じる場合は、早急な対応が必要です。単純に人数の多さだけで優先順位を決めないようにします。

また、研修では実践できていた内容が配属後に定着していない場合は、研修内容の変更ではなく、職場での実践機会やOJTによる支援を優先することも考えられます。

米国CDCの研修ニーズ分析でも、組織の目標や利用できる人員・時間・予算などを踏まえて、対応すべき課題を検討する考え方が示されています。優先する課題を絞ったら、特定した原因に合わせて改善方法を選びましょう。

新入社員研修の課題別の改善方法

優先して取り組む課題が決まったら、原因に合った改善方法を選びましょう。ここでは、前述した5つの課題ごとに改善方法を解説します。

受け身・発言不足への対応

受講者が内容を理解しているものの、発言や参加の機会が少ない場合は、Q&Aやケース検討、グループワーク、ロールプレイなど考えたり言葉にしたりする活動を取り入れます。

ただし、参加型の活動を増やすこと自体を目的にするのではなく、研修後に求める行動から内容を決めます。例えば、「相手に分かりやすく伝える」「複数の意見から合意点を探す」といった行動を身につけてほしい場合は、それらを実際に試せる活動を選びましょう。活動後には、「何ができたか」「何に迷ったか」「仕事ではどのような場面で活用できるか」を振り返ります。

一方、内容を理解できていないことが発言不足の原因であれば、参加型の活動を増やす前に、説明方法や難易度を見直しましょう。

参加型・体験型の研修を自社で設計・運営することが難しい場合は、外部研修の活用も選択肢になります。

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知識・スキル・理解度の差への対応

受講者によって理解度に差がある場合は、研修前に必要な前提知識やスキルを把握します。

簡単なテストや事前課題を用いて、「多くの受講者に共通して説明する必要がある内容」と「すでに理解している人が多い内容」を整理しましょう。

研修中も小テストや演習からつまずきを確認します。複数の受講者が同じ箇所で止まっている場合は全体への説明を追加し、一部だけであれば個別に補足する方法もおすすめです。

判断するときは、得点の高低を見るのではなく、研修の到達目標に必要な知識・技能が不足しているかを基準にします。

実務未定着への対応

研修で学んだ内容が配属後の仕事で活かされていない場合は、研修中の学びを実務で使うための機会を設けます。

まず、実際の仕事に近いケースやロールプレイなどを取り入れ、知識を覚えるだけでなく、行動する練習を行いましょう。例えば、報告・連絡・相談を扱う研修であれば、業務上の状況を設定し、必要な情報を整理して上司へ伝える演習が考えられます。

研修終了時には、「配属後にどのような場面で、何を実践するか」を具体化し、OJT担当者にも共有します。配属先では、その行動を試せる業務や機会を用意し、必要に応じて助言やフィードバックを行います。

研修での練習と配属後の実践を一連の流れとして設計することがポイントです。

目的・到達目標の曖昧さへの対応

研修の目的や到達目標が曖昧な場合は、「何を教えるか」より先に、「研修後に何ができる状態を目指すか」を具体化しましょう。

まず、配属先の上司やOJT担当者に、新入社員へ求める行動を確認します。例えば、「コミュニケーション力を身につける」という抽象的な目標ではなく、「必要な情報を整理して上司へ報告できる」のように、実際の行動で表します。

次に、その行動を習得するために必要な知識・スキルを整理し、研修内容や演習を見直しましょう。最後に、設定した行動を実演できるかなど、到達度を確認する方法を決めます。到達目標・研修内容・評価方法を対応させることで、何を追加・削除すべきか判断しやすくなります。

関連記事:新入社員フォローアップ研修とは?目的・実施時期・カリキュラム設計・効果測定を解説

担当者の負担・現場連携への対応

人事・研修担当者に業務が集中している場合は、まず研修前・研修中・研修後の業務を整理し、誰が担当する必要があるかを見直します。

研修後の育成については、人事だけで抱え込まず、配属先やOJT担当者と役割を分けましょう。研修終了時には、例えば次の情報を共有します。

  • 研修で扱った内容と到達目標
  • 研修終了時点で確認できたこと
  • 配属後に実践してほしい行動
  • 現場で確認・支援してほしいこと

厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」では、現場リーダーによる学習目標のすり合わせや実践支援とともに、企業側が現場リーダーの過度な負担を確認・軽減することも示されています。

参考:職場における学び・学び直し促進ガイドライン|厚生労働省

新入社員研修の効果測定方法

改善策を実施したら、当初の課題がどの程度改善されたかを確かめましょう。評価項目は研修終了後ではなく、到達目標や改善策を決める段階で設定しておくと、結果を比較しやすくなります。ここでは、研修中・研修直後・配属後の3段階に分けて効果測定の方法を解説します。

研修中の理解度

研修中は、小テストや質問への回答、演習の成果物などから、受講者が内容を理解できているかを確認します。例えば、報告・連絡・相談の研修であれば、具体的な業務場面を提示し、報告すべき内容を整理できるかを確認する方法が考えられます。

複数の受講者が同じ項目でつまずいている場合は、説明内容や難易度を見直しましょう。一部の受講者だけであれば、個別に補足するなど、結果に応じて対応を変えます。

つまずきが見られた項目や人数、実施した補足内容を記録しておくと、次回の研修で改善すべき箇所を判断する材料になります。

研修直後の到達度

研修終了時には、事前に設定した到達目標を達成できたかを測定します。

知識の習得が目標であればテスト、行動やスキルの習得が目標であれば実演やロールプレイなど、目標に合った評価方法を選びます。例えば、「必要な情報を整理して上司へ報告できる」という目標なら、実際に報告する演習を行い、伝えるべき情報が含まれているか、順序立てて説明できているかなどを確認しましょう。

研修前にも同様の課題を実施している場合は、同じ基準で結果を比較すると、どの項目に変化があったかを把握できます。
満足度や「仕事で使えそうか」といったアンケートも参考になりますが、到達度はテストや実演などの結果と分けて評価します。

配属後の実践状況

配属後は、研修で習得した内容を実際の業務で活用できているかを確認します。本人へのヒアリングだけでなく、上司やOJT担当者からも情報を集めると実践状況を把握しやすくなります。

確認する項目は、次のとおりです。

  • 研修で学んだ行動を実際に試したか
  • どのような場面で活用したか
  • 実践できたか
  • できなかった場合、何が妨げになったか

実践できていない場合は、習得した知識・スキルの不足なのか、実践機会や周囲の支援が不足しているのかを区別します。

効果測定の時期は、対象となる行動を業務で実践する機会に合わせて設定しましょう。得られた結果は、次回の研修内容だけでなく、配属後のフォロー方法を見直す際にも活用します。

まとめ

新入社員研修の課題を改善するには、受け身や理解度の差といった表面的な現象だけで対策を決めず、原因を整理することが大切です。研修前の設計、研修中の進め方、研修後の実践環境、育成体制・情報共有の4つの視点から自社の課題を見直します。

まずは、アンケートや演習結果、配属先の声などを集め、現状を把握してください。そのうえで、育成目標や業務への影響を踏まえて優先順位を決め、原因に合った改善策を実施します。研修中・研修直後・配属後の状態を確認し、得られた結果を次回の研修設計や育成体制の改善につなげましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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