ロジカルシンキングとは?思考法やツールをわかりやすく解説
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現代のビジネスパーソンに求められるスキルの1つに、ロジカルシンキングがあります。日本語では「論理的思考法」と呼ばれていますが、一体どのような考え方なのでしょうか。
本記事では、ロジカルシンキングとは何か、身につけるメリット、ロジカルシンキングの具体的な思考法と考え方のサポートになるツール、鍛え方について、わかりやすく解説します。
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ロジカルシンキングとは
英単語のロジカル(logical)には「論理的な」「倫理学の」「必然の」などの意味が、シンキング(thinking)には「考えること」「思考」「意見」などの意味があります。ロジカルシンキングとは、わかりやすく表すと「各種の要因・要素をモレ・重複なく整理して全体を把握し、的確な結論を導き出す」ことです。
日本でロジカルシンキングという言葉が広く普及したのは、2001年に『ロジカル・シンキング』(著者:照屋華子、岡田恵子 / 出版社:東洋経済新報社)という本が出版されてからです。タイトルは「ロジカル・シンキング」ですが、じつはこの本のなかには、「ロジカル・シンキング」という言葉は出てきません。この本で照屋華子氏、岡田恵子氏が紹介しているのは「ロジカル・コミュニケーション」。日本語で表すなら、「筋道を立てて説明する(プレゼンテーションする)」ことです。
自分のなかで結論を導き出すだけでなく、最終的には「相手にわかりやすく伝えること」が大切なのです。
参考:〈論文〉ロジカル・シンキングとしての3分割法 – 近畿大学学術情報リポジトリ
ロジカルシンキングの基本は「MECE」
MECE(読み方:ミーシーまたはミッシー)とは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字をとったものです。それぞれの英単語の意味は、以下のとおりです。
- Mutually=相互に
- Exclusive=重複せず
- Collectively=集合的な
- Exhaustive=徹底的な
少々難しく感じますが、わかりやすく表すと「モレなく、かつ重複なくものごとを整理し、全体として最適な状態を目指して考えること」です。
モレや重複があると、正確な分析ができず、間違った結論を導き出すことになるかもしれません。重複に気づかなければ、非効率な状態を生み出してしまうおそれもあります。ロジカルシンキングでは、モレなく、重複なく全体を整理することがとても重要なのです。ロジカルシンキングを学ぶ際は、この「MECE」を忘れないようにしましょう。
MECEについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
MECEとは?アプローチ方法・フレームワークについて解説
ロジカルシンキングを身につけるメリット
ロジカルシンキングが求められているのは、近年グローバル化をはじめ社会が複雑化しており、スピーディーで適切な判断が必要とされるからです。ロジカルシンキングを身につけることで、複雑な問題でも最短ルートで最適な結論にたどり着けるようになります。
具体的にどういったメリットが得られるのか、詳しく見てみましょう。
分析力・問題解決力が向上する
ロジカルシンキングが身についていないと、各種の要因・要素をうまく整理できないため、問題の本質を見極めることができません。目の前の出来事に左右されやすく、表面上の問題だけを重視して解決策を考えるので、モレや重複が発生しやすくなります。結果、的外れな結論を導き出してしまうのです。
対してロジカルシンキングは、MECEを重視し、フレームワークなどのツールを用いて各種の要因・要素を体系的に整理して現状を把握します。そこから問題の原因を的確に分析することで、スピーディーに最適な結論を導き出せるようになるのです。
このように、ロジカルシンキングを身につけることで、分析力や問題解決力が向上します。
プレゼンテーション能力が向上する
どんな仕事でも、一人で完結できるものはほとんどありません。導き出した解決策を実行するためには、ほかのメンバーにそれを伝え、納得を得る必要があります。
ロジカルシンキングが身についていないと、データを重要視せず感覚で判断を下すことになります。基準や根拠が不明確なため、相手の理解を得にくい場合がほとんどでしょう。
対してロジカルシンキングは、データをもとに論理的に判断を下します。フレームワークなどのツールで思考過程も可視化できるため、相手の納得を得やすくなるでしょう。そのため、解決策の立案から実際に行動に移すまでのスピードが速くなります。
このように、ロジカルシンキングを身につけることで、プレゼンテーション能力も向上します。
ロジカルシンキングの思考法
2012年に出版された『図解入門ビジネスロジカル・シンキングがよ〜くわかる本(第2版)』(著者:今井信行 / 出版社:秀和システム)では、ロジカルシンキングの代表的な思考法として以下の4つが紹介されています。
- ゼロベース思考
- フレームワーク思考
- オプション思考
- プロセス思考
このうちゼロベース思考とフレームワーク思考は、まずマスターしたいロジカルシンキングの基本的な思考法です。それぞれどのような考え方なのか、詳しく見てみましょう。
ゼロベース思考
ゼロベース思考とは、頭のなかをリセットして、ゼロ(白紙)の状態でものごとを考えることです。リセット思考ともいわれます。
誰のなかにも、これまでの経験により形成された判断基準(価値観)があります。何かを考えるとき、または行動を起こすときに、この基準をもとにすると、思考や行動は限定されたものになってしまいます。特に新しいこと挑戦するときなどは、この基準を超えた思考や行動が必要になります。自身の基準を超えることで、プラス思考になり、前向きな結論を目指せるようになるのです。
たとえば、「新しいプロジェクトのリーダーになってほしい」といわれたとします。このときに自身の基準をリセットできなければ、「やったことがないから自分にはできない」と可能性を否定し、せっかくのチャンスを逃すことになるかもしれません。ゼロベース思考で自身の基準をリセットし、「やったことはないけれど、どうすればできるだろう」と考え、新しい経験をどんどん積み重ねていくことで、思考や行動の枠も広げていけるのです。
フレームワーク思考
フレームワーク思考とは、ものごとを枠(フレーム)に当てはめて全体を整理し、問題の原因を分析したり、解決策を導き出したりすることです。
これまでに、ものごとを整理・分析するためのさまざまな枠組み(フレームワーク)が、先人たちによりつくられてきました。フレームワークを利用することで、各種の要因・要素をモレ・重複なく整理し、全体を把握することができるようになります。
フレームワーク思考で的確な結論を導き出すためには、場面に応じて最適なフレームワークを選択することが重要です。フレームワークの具体例は後ほど紹介していますが、それぞれに特徴がありますので、その特徴をしっかりと理解してから利用するようにしましょう。場面に合ったフレームワークを利用することで、スピーディーに最適な結論を導き出せるようになります。
フレームワーク思考でものごとを考えるときに注意しなければならないのは、ゼロベース思考から逸脱しないようにすること。また、既存のフレームワークのなかにはMECEでないものもありますので、常にMECEを重視することも忘れないようにしましょう。
オプション思考
オプション思考とは、1つのテーマについて複数の選択肢(オプション)を用意して、それぞれの案を評価し、最終的に1つの案を選択するという考え方です。
それぞれの選択肢は妥協案ではなく、すべてが最適と思えるほどの良い案でなくてはなりません。最終的な結論を出す際は、十分議論を重ねてそれぞれの選択肢を客観的に厳しく評価し、その上で判断を下すことが大切です。
プロセス思考
プロセス思考とは、時間の概念を取り入れて事象を一連の流れ(過程)で把握し、整理する考え方です。代表的なものに、マーケティングでよく用いられている「AIDMAの法則」があります。AIDMAの法則とは、以下の5つの英単語の頭文字をとったもので、消費者が商品・サービスを知り、実際に購入するまでの流れを5段階で表しています。
- Attention (注意):商品・サービスを知る
- Interest(関心):商品・サービスに興味を持つ
- Desire(欲求):商品・サービスを欲しいと感じる
- Memory(記憶):商品・サービスを記憶し、購入を考え始める
- Action(行動):商品・サービスを購入する
この5段階に分けて消費者の心理を分析し、販促戦略を考えるというものです。
ロジカルシンキングのツール
先人たちにより、ロジカルシンキングを助けてくれるさまざまなツール(道具)が生み出されています。ツールは、大きく分けて以下の3種類です。
- ロジック・ツリー
- フレームワーク
- フロー
それぞれがどんなものなのか、詳しく見てみましょう。
ロジック・ツリー
ロジック・ツリーは、ものごとを体系化して整理するためのツールです。1つのテーマを複数のサブテーマに分解し、そのサブテーマをさらに分解していきます。すると、徐々にテーマは増えていき、木(ツリー)に似た形になることから、ロジック・ツリーと呼ばれています。「階層型」「ヒエラルキー」「ピラミッド原則」などともいわれることもあります。
ロジック・ツリーは、1つのものごとを細かく分析して原因を突き止めたいときや、結論を導き出したいときだけでなく、プレゼンテーションの際も役立ちます。ただ、MECEを厳守しながら分析するのには時間がかかるという欠点もあります。
フレームワーク
フレームワークとは、意思決定や問題解決、分析などを行うための枠組みのことです。フレームワークは、テーマやすべきことが明確なときに便利なツールです。しかし、必ずしもテーマに合うものがあるとは限りません。その場合は、フレームをつくるところから始めなければならないので、手間と時間がかかるという欠点があります。
縦軸と横軸を置き、ものごとを4つに分けて整理する「マトリックス」もフレームワークの1つです。マトリックスの代表的な例として、PPM分析とSWOT分析を紹介します。
PPM分析
PPMは、Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の略称です。1970年代に、ボストン・コンサルティング・グループが提唱したツールで、「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」の2軸を置き、自社事業を以下の4つに分けて、企業の将来性や競合との格差を分析します。
高↑ 市場成長率 ↓低 | 花形(Star) 市場成長率・市場占有率ともに高い | 問題児(Problem Child) 市場成長率は高いが、市場占有率は低い |
金のなる木(Cash Cow) 市場成長率は低いが、市場占有率は高い | 負け犬(Dog) 市場成長率・市場占有率ともに低い | |
高 ← 市場占有率(マーケットシェア) → 低 |
- 花形(Star)……競争が激しいが、利益を出しやすい
- 金のなる木(Cash Cow)……市場の拡大は期待できないが、安定した利益を出しやすい。
- 問題児(Problem Child)……競争が激しく、シェアも低いので利益を出しにくいが、今後成長する可能性がある分野ともいえる。
- 負け犬(Dog)……利益が出にくく、市場の拡大も期待できない
PPM分析は、経営資源の投資配分を判断するときなどに用いられることが多いフレームワークです。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析は、自社事業の状況などを、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つに分けて分析するツールです。
自社の資産やブランド力、品質などの「内部環境」と、市場や競合、法律・ルールといった「外部環境」と、プラス要因とマイナス要因に分けて整理します。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | 強み(Strength) 自社の得意とすることや長所 | 弱み(Weakness) 自社の苦手なことや短所 |
外部環境 | 機会(Opportunity) 社会や市場の変化などにより、自社にとってプラスになること | 脅威(Threat) 社会や市場の変化などにより、自社にとってマイナスになること |
テーマや項目ごとにSWOT分析を行うことで課題が明確になり、戦略の方針を立てやすくなります。また、プレゼンテーションの際にも説得力が生まれるでしょう。
参考:マンガでわかる「SWOT分析」 | 経済産業省 中小企業庁
フロー
フローとは、全体の流れや関連性を可視化するためのツールのことです。「プロセス」と呼ばれることもあります。さまざまな形の図形と矢印を用いて、個々を時系列でつないでいきます。
フローは、個々の関係性を整理して全体を把握したいときに適しているツールです。ただ、形が決まっていないことが多いので、作成するのに時間がかかるという欠点もあります。
ロジカルシンキングの鍛え方
ロジカルシンキングは、トレーニングにより誰でも身につけることができるビジネススキルです。最後に、ロジカルシンキングを鍛える方法を紹介します。
自分の「思考の癖」を知る
これまでの経験により形成された判断基準(価値観)だけでなく、誰でも思考の癖というものを持っています。ロジカルシンキングの基本の思考法であるゼロベース思考でものごとを考えるためには、まずは自分の無意識の思考の癖やパターンに気づくことが大切です。
このために、クリティカル・シンキングを意識してみましょう。クリティカル・シンキングとは、既成概念を疑い、ものごとを客観的な視点で分析して判断することをいいます。
日頃から「この前提は正しいのか」「ほかの考え方もあるのではないか」と意識することで、自分の思考の癖に気づきやすくなり、既成概念にとらわれずにものごとを捉えられるようになります。
具体的な言葉を使う
冒頭でもお伝えしたように、ロジカルシンキングは本来「ロジカル・コミュニケーション」として生まれたものであり、相手の考えを理解することに視点を置き、コミュニケーションを成立させるための方法です。自分の考えをわかりやすく相手に伝えるために、日頃からできるだけ具体的な言葉を使うように心がけましょう。
たとえば、「できるだけ早めに提出します」では、相手はいつまで待てば良いのかわかりません。受け取る人によって度合いが変わるような抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉で正しく伝えるようにすることで、ロジカルシンキングが鍛えられます。
セルフディベートを実施する
セルフディベートとは、その名のとおり一人で行うディベートのことです。1つのテーマを設定し、そのテーマに対する賛成意見と反対意見の両方を一人で考え、それぞれを深く掘り下げ、最終的に1つの結論を出します。
これを実施することで、ものごとを客観的に検討する力や、説得力のある意見を出す力を鍛えることができるでしょう。
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まとめ
ロジカルシンキングとは、各種の要因・要素をモレ・重複なく整理して全体を把握し、的確な結論を導き出すことです。これを身につけることで、複雑な問題でも最短ルートで最適な結論にたどり着けるようになります。
日本でロジカルシンキングが広まるきっかけとなった『ロジカル・シンキング』という本では、ロジカルシンキングとは思考にとどまらず、相手に伝える・相手の考えを理解するための手段、つまりコミュニケーションを成立させるためのスキルとして紹介されています。ロジカルシンキングを学ぶ際は、考える力だけでなく、相手に伝える力も身につけられるよう意識してみましょう。
参考:「図解入門ロジカル・シンキングがよーくわかる本(第2版)」(著者:今井信行 / 出版社:秀和システム)
「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。