新入社員研修のビジネスマナー|教える内容の選び方と効果的な進め方を解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

新入社員研修では、挨拶や敬語、電話応対、ビジネスメールなど、さまざまなビジネスマナーを扱います。しかし、一般的な内容を一通り教えるだけでは、配属後の実務で適切に行動できるとは限りません。

大切なのは、自社の業務に必要なマナーを選び、「どのような場面で何ができればよいか」を明確にしたうえで、実践やフィードバックまで含めて研修を設計することです。

本記事では、新入社員研修で教えたい主なビジネスマナーから、自社に必要な内容の選び方、実務で使えるようにする研修の進め方、配属後の評価・フォローまで解説します。

 

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新入社員研修で教える主なビジネスマナー

新入社員向けのマナー研修において、社会人として働くうえで不可欠な基本スキルを指導することは一般的です。ただし、決まった型を覚えるだけでは、実際の業務で状況に応じて行動できるとは限りません。その行動がなぜ必要なのかも含めて理解できるようにすることが大切です。

ビジネスマナーは、相手への敬意や配慮を行動で示し、社内外で円滑にやり取りするための基本です。新入社員研修で扱う主な内容には、次のようなものがあります。

分類主な内容研修で扱うポイント
基本姿勢身だしなみ、挨拶、お辞儀相手や場面に応じた身だしなみ、挨拶のタイミングや姿勢
言葉遣い敬語、場面に応じた言葉遣い上司・同僚・顧客など、相手との関係に応じた表現の使い分け
社外対応電話応対、来客対応、訪問、名刺交換基本的な流れ、自社の対応ルール、相手に応じた受け答え
文書・連絡ビジネスメール、仕事上の文章・連絡件名や文章の組み立て方、要点を分かりやすく伝える方法
仕事の進め方指示の受け方、報告・連絡・相談指示内容の確認、適切なタイミングや相手への情報共有

たとえば、挨拶や言葉遣いは多くの職場で必要になりますが、電話応対や名刺交換をどの程度使うかは、職種や配属先によって異なります。

そのため、一般的なビジネスマナーをすべて同じ時間をかけて教えるのではなく、配属後に新入社員がどのような業務を担当するのかを踏まえて研修内容を決める必要があります。

 

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自社に必要なビジネスマナーの選び方

新入社員へのビジネスマナー研修では、一般的に必要とされる内容を並べるだけでなく、自社の業務で使うものを選ぶことが重要です。配属後の業務場面を確認し、そこで必要となるマナーを対応させたうえで、誰にどこまで教えるかを絞り込みます。ここでは、業務場面の洗い出し、必要なマナーの整理、対象者と優先度の決め方を解説します。

配属後の業務場面を洗い出す

新入社員が配属後にどのような場面で人とやり取りするのかを洗い出します。ビジネスマナーの項目から考えるのではなく、実際の仕事を起点にするのがポイントです。

例えば、次のような場面があります。

  • 上司や同僚へ挨拶する
  • 上司から指示を受ける
  • 社外からの電話に対応する
  • 顧客へメールを送る
  • 来客を案内する
  • 取引先を訪問する
  • 社内で報告・連絡・相談を行う

洗い出す際は「配属後すぐに任せる業務は何か」「社外の人と接する機会はあるか」「電話・メール・対面のうち、どの手段を使うか」といった観点から確認します。

この段階では、「電話応対を教える」「名刺交換を教える」と研修内容まで決める必要はありません。新入社員がどのような場面でビジネスマナーを使うのかを具体化します。

厚生労働省の「事業内職業能力開発計画」でも、仕事の種類やレベルに応じて、身につける内容と必要な教育訓練を整理する考え方が示されています。ビジネスマナー研修でも、実際の職務から必要な内容を整理する際の参考にできます。

参考:事業内職業能力開発計画|厚生労働省

業務に必要なマナーを整理する

洗い出した業務場面に対して、必要になるマナーや行動を対応させます。たとえば、社外から電話を受ける場面では電話応対、顧客へメールを送る場面ではビジネスメール、取引先を訪問する場面では訪問時のマナーや名刺交換が候補になります。

次のように整理すると、業務と研修内容の対応関係が見えやすくなります。

業務場面必要なマナー・行動主な対象例
上司から指示を受ける指示の受け方、確認、報告共通研修の候補
社外から電話を受ける電話応対電話対応がある部署
顧客へメールを送るビジネスメール顧客対応を行う部署
来客を案内する来客対応来客対応がある部署
取引先を訪問する訪問、名刺交換営業職など

ここで確認したいのは「知っていたほうがよいか」ではなく「配属後の業務で実際に使うか」です。名刺交換は代表的なビジネスマナーの1つですが、配属後に社外の人と対面する機会がほとんどない職種であれば、他の内容より優先度を下げることも考えられます。

一方、配属直後から顧客の電話を受けるのであれば、電話応対は研修で扱う必要性が高くなるでしょう。業務場面とマナーを対応させることで、「なぜこの内容を研修に入れるのか」も明確になります。

対象者と優先度を決める

必要なマナーが整理できたら、全員が学ぶ内容と職種・配属先に応じて学ぶ内容に分けましょう。

挨拶や基本的な言葉遣い、指示の受け方、報告・連絡・相談などは、複数の部署で使う内容として共通研修に含めることが基本となります。一方、電話応対や訪問、名刺交換などは、実際にその業務を担当するかを確認したうえで対象者を決めます。

研修時間が限られている場合は、次のような観点から優先順位をつけましょう。

  • 配属後すぐに使うか
  • 実際に練習しなければ対応しにくいか
  • 誤った対応が社外とのやり取りに影響しやすいか

これは一律の基準ではなく、自社で研修内容を絞り込む際の判断軸です。

一般的なビジネスマナーと、自社独自のルールも分けて整理します。電話の名乗り方、服装規定、メールのテンプレート、社内チャットの使い方などに社内ルールがある場合は、一般的な考え方を示したうえで、自社での運用を伝えましょう。

「誰が」「どの業務で」「どのマナーを使うか」まで整理しておけば、必要以上に研修内容を広げず、その後の演習や評価も設計しやすくなります。

関連記事:新入社員研修の内容とは?基本カリキュラム9選と研修の進め方を解説

新入社員へのビジネスマナー研修の効果的な進め方

研修で扱う内容が決まったら、知識を伝えるだけでなく、新入社員が実際の業務で行動できる状態を目指して研修を設計します。そのためには、研修後に求める状態を明確にし、対応例の提示や実践、フィードバックまで組み合わせることが重要です。ここでは、到達目標の設定、対応例の示し方、実務を想定した練習、フィードバックの進め方を解説します。

1.到達目標を行動レベルで設定する

研修終了時に、新入社員が「何をできる状態にするか」を具体的にします。

「敬語を理解する」「電話応対を学ぶ」といった目標では、研修後にどこまで身についたかを判断しにくくなります。「どのような場面で」「誰に対して」「どのような行動が取れるか」まで明確にすると、演習や評価にもつなげやすくなるでしょう。

例えば、次のように置き換えます。

抽象的な目標行動で表した目標の例
敬語を理解する顧客や上司との想定会話で、相手と場面に応じた言葉遣いを選んで話せる
電話応対を学ぶ社外からの電話に対し、自社のルールに沿って名乗り、用件を確認・復唱して適切に取り次げる
ビジネスメールの書き方を理解する指定された業務場面に対し、自社のルールに沿ったメールを作成できる
報告・連絡・相談を理解する想定した業務場面で、必要な相手に状況や要点を伝えられる

目標を設定したら、「第三者が見て、できているかどうかを判断できるか」を確認します。「理解する」「意識する」「身につける」といった表現が残っている場合は、実際の発言や動作に置き換えましょう。

厚生労働省の「職業能力評価基準」でも、仕事に必要な知識や技能だけでなく、求められる行動が「職務行動例」として整理されています。ビジネスマナー研修でも、研修後に求める行動を具体化する際の参考にできます。

参考:厚生労働省「職業能力評価基準」

2.目的と適切な対応例を示す

ビジネスマナーは、型だけを覚えるのではなく、その行動がなぜ必要なのかまで理解できるように伝えることが大切です。

電話応対であれば、「用件を確認しないまま取り次ぐと何が起こるか」「相手の話を復唱するのは何のためか」といった問いから、業務や相手への影響を考えてもらいます。

目的を理解したうえで、具体的な対応例を示します。電話応対なら、一連のやり取りを実演し、「どのような言葉を使うか」「どのタイミングで確認するか」など、受講者が確認すべきポイントを明確にしましょう。

不適切な例と適切な例を比較する方法もあります。「どこに問題があるか」「相手の受け取り方はどう変わるか」を考えてもらうことで、正しい型だけでなく、状況に応じて判断するための基準も共有できます。

ビジネスメールでも、定型文を覚えるだけでなく、なぜ件名や用件を簡潔にする必要があるのかまで伝えましょう。たとえば、相手が一目で用件を把握できる件名や、結論・用件が伝わりやすい文章を比較しながら考えてもらうと、テンプレートにない場面でも適切な書き方を判断しやすくなります。

3.実務場面を想定して練習する

ビジネスマナーの練習方法は、身につけたい内容に応じて使い分けましょう。基本的な知識を確認する場合と、実際に話したり動いたりできる状態を目指す場合では、適した方法が異なります。

身につけたいこと研修方法の例
基本的な知識を確認する講義、クイズ
場面に応じて判断するケース演習、文章作成
実際に話す・動くロールプレイング、反復練習

敬語やビジネスメールでは、具体的な業務場面を提示し、適切な表現を選んだり、実際に文章を作成したりする方法があります。

電話応対、来客対応、訪問、名刺交換などは、相手役を置いたロールプレイングを取り入れると、実際の発話や動作を確認できます。到達目標と同じような場面を演習に設定すれば、「知っているか」だけでなく「できるか」まで確認できるため、おすすめです。

複数のビジネスマナーを組み合わせて学ばせたい場合は、ゲームやアクティビティを取り入れた体験型研修を活用する方法もあります。株式会社IKUSAでは、ビジネスマナーを実践的に学べる体験型研修を提供しています。講義を聞くだけでなく、受講者が実際に考えたり行動したりしながら学べるため、研修に演習を取り入れたい場合の選択肢になります。

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4.行動を基準にフィードバックする

演習後のフィードバックでは、設定した到達目標を基準に、できていた行動と改善が必要な行動を具体的に伝えましょう。

「印象が悪い」「もっとしっかり話す」といった感覚的な表現だけでは、受講者は何を修正すればよいのか判断しにくくなります。電話応対であれば、「名乗りと用件確認はできていた」「用件を復唱してから取り次ぐ」といったように、行動単位で伝えるのがポイントです。

受講者同士で確認する場合も、自由な感想だけで終わらせず、あらかじめ設定した行動目標をチェック項目として使います。指摘された点は同じような場面でもう一度試し、行動を修正できたかまで確認しましょう。

行動モデリング研修を扱ったTaylorらのメタ分析では、見本を用いた訓練について、学習や職務上の行動と、学習内容を職場へ移すための設計要素が検討されています。ビジネスマナー研修でも、対応例を見るだけで終わらせず、実践やフィードバックを組み合わせる際の参考になる考え方です。

参考:Taylor, Russ-Eft, Chan(2005)“A meta-analytic review of behavior modeling training”

ビジネスマナーを定着させる評価・フォローの方法

新入社員へのビジネスマナー研修は、研修中にできたかどうかを確認して終わりではありません。配属後の実務でも適切に行動できているかを確認し、必要に応じて指導を続けることが重要です。ここでは、研修終了時の評価、配属先への共有、実務での定着状況の確認について解説します。

研修終了時に到達度を確認する

研修終了時は、設定した到達目標を基準に、どこまでできるようになったかを確認します。

基本的なルールや知識であればテストでも確認できますが、電話応対や名刺交換、来客対応など、実際の行動を目標としている内容は、ロールプレイングなどを使って評価しましょう。

電話応対であれば、たとえば次のような項目を確認します。

  • 自社のルールに沿って名乗れているか
  • 相手の用件を確認できているか
  • 必要事項を復唱できているか
  • 適切に取り次げているか

研修前に設定した目標を評価項目として使えば、「何を教えるか」「何を練習するか」「何を評価するか」の基準をそろえられます。

配属前に求める到達度は、担当する業務や自社の基準によって異なります。研修内ですべてを完璧にできることだけを目指すのではなく、配属後も確認が必要な項目を把握することも評価の役割です。

未達項目を配属先へ共有する

研修内で十分にできなかった項目は、配属先の上司やOJT担当者へ共有します。

「電話応対が苦手」「敬語に不安がある」といった曖昧な情報ではなく、どの行動までできていて、何を継続して確認する必要があるのかを具体的に伝えましょう。例えば「電話応対で用件確認まではできているが、復唱を忘れやすい」「顧客役との会話で、場面に合った敬語表現を選ぶ際に迷うことがある」といった形です。

厚生労働省の「職業能力評価シート」では、本人と上司が共通の職務能力項目を確認し、その結果を能力開発に活用する仕組みが示されています。ビジネスマナー研修でも、研修中に使用した行動項目を配属先と共有することで、研修とOJTで確認する基準をそろえやすくなるでしょう。

参考:職業能力評価シートについて|厚生労働省

実務で定着状況を確認する

配属後は、研修から一定の日数が経過した時点ではなく、「対象となる業務を実際に経験したタイミング」で定着度を確認することが重要です。

例えば、電話応対を経験したあとであれば、本人とOJT担当者が研修時と同じ項目を使って振り返り、できなかった行動の原因を確認して必要に応じて再度練習します。一方で、取引先への訪問経験がない新入社員に名刺交換の定着度だけを確認しても、実務で適切に行動できているかまでは判断できません。該当業務を経験した直後に振り返るほうが、具体的な改善につながります。

Fordらは、研修で学んだ知識や技能を仕事の場へ移し、維持する「Training Transfer(学習の転移)」に関する研究を整理しています。研修当日の理解度だけで完結させず、実際の仕事で学んだ内容を使えているかを確認する視点が重要です。

参考:Ford, Baldwin, Prasad(2018)“Transfer of Training: The Known and the Unknown”

研修時の評価結果をあらかじめ配属先へ共有しておけば、OJT担当者も適切なタイミングで再確認しやすくなり、研修と配属後の指導がスムーズに連携します。

関連記事:新入社員フォローアップ研修とは?目的・実施時期・カリキュラム設計・効果測定を解説

まとめ

新入社員向けのビジネスマナー研修を成功させるには、一般的な作法を網羅的に教えることではなく、配属後の実務に直結する内容を厳選する必要があります。

まずは、現場で生じる具体的な業務場面から必要なマナーを洗い出し、誰にどこまで教えるかを整理しましょう。そのうえで、「知っているか」ではなく「特定の場面で何ができるか」という行動レベルの到達目標を設定し、対応例の提示やロールプレイング、的確なフィードバックを重ねていくことが大切です。

さらに、研修を実施して終わりにするのではなく、受講者の到達度を配属先と共有し、実際の業務を経験したタイミングで振り返る仕組みをつくります。「何を教えるか」にとどまらず、現場のOJTと連携して「実務で適切に行動できる状態」へと導く研修を設計しましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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