新入社員の定着率を高める方法|平均・離職原因の把握から施策選定・効果測定まで
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新入社員の定着率を高めるには、メンター制度や研修を増やす前に、自社で「いつ・どこで・なぜ離職しているのか」を把握し、原因に合った施策を選ぶことが大切です。労働条件に課題がある企業と相談相手が少ない企業では、必要な対応が異なります。また、メンター制度や1on1を導入していても、実施自体が目的になると形骸化しやすくなります。
本記事では、厚生労働省の統計や新入社員の組織適応に関する研究をもとに、定着率の平均と計算方法、離職原因を把握する質問例、課題に合った施策の選び方、メンター制度や1on1の運用改善、体験型チームビルディングの取り入れ方、効果測定までを解説します。
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新入社員の定着率の平均と自社状況の確認方法
定着施策を考える前に、まず自社の定着状況を把握します。全国平均と比較するだけでなく、企業規模や入社からの経過期間など条件をそろえ、自社で離職が集中している時期や部署まで確認することが大切です。
厚生労働省が2025年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、2022年3月卒業者の就職後3年以内離職率は、大卒33.8%、高卒37.9%でした。大卒者の場合、同じ対象・期間でみると、3年以内に最初の事業所を離職していない割合は66.2%です。
一方、離職率は企業規模によって差があります。大卒では、従業員5人未満の事業所が57.5%、500~999人が31.5%でした。そのため、自社の離職率が全国平均を上回っているかだけで、状況の良し悪しを判断することはできません。
また、この統計は新規学卒就職者を対象としており、中途採用者を含む「新入社員全体」の平均ではない点にも注意が必要です。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
自社の定着率は、次の式で確認できます。
定着率(%)=一定時点まで在籍している人数÷当初の採用人数×100
確認する際は、同じ採用年の社員を1つの集団として追跡しましょう。たとえば「2026年4月入社者」について、3か月、6か月、1年、3年時点の在籍人数を記録します。
部署・職種・勤務地などに分ければ、「特定の部署で6か月以内の離職が多い」といった偏りも確認できます。外部データと比較するときは、企業規模や経過期間などの条件をそろえ、自社で離職が集中している時期や部署まで把握しておくと、次の原因分析につなげやすくなります。
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新入社員の定着率を高めるメリット
新入社員の早期離職が減れば、欠員補充のための採用活動や後任者への教育を繰り返す負担を抑えられます。また、短期間で担当者が入れ替わる状況を減らすことで、引き継ぎや周囲のフォローにかかる時間を抑え、既存社員が本来の業務に取り組みやすくなるでしょう。
新入社員の離職原因を特定する方法
自社の定着状況を把握したら、次は離職の原因を特定します。一般的な離職理由を参考にしたうえで、在籍中の新入社員が感じている不満や認識のずれを確認することが大切です。ここでは、公的調査から離職原因の候補を把握し、自社のアンケートや面談で原因を絞り込む方法を解説します。
公的調査から離職原因の候補を把握する
厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査」では、初めて勤務した会社を辞めた15~34歳の若年労働者が挙げた主な理由として、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%、「人間関係がよくなかった」26.4%、「賃金の条件がよくなかった」21.8%、「仕事が自分に合わない」21.7%などが挙げられています。
対象は新卒者に限りませんが、若年者の離職理由には、人間関係だけでなく、労働条件や仕事内容など複数の要因があることが分かります。
また、労働政策研究・研修機構(JILPT)の2025年の調査では、勤続期間が短い離職者ほど、「仕事上の悩みはあったが誰にも相談しなかった」割合が高い傾向が確認されています。入社前に得ていた情報と入社後の状況についても、労働時間や仕事内容などで違いがあった人がいました。
参考:労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.250 若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況」
こうした調査から、自社でも「労働条件」「人間関係・相談」「仕事内容とのミスマッチ」「入社前後の認識のずれ」などを確認する必要があると分かります。
アンケート・面談で自社の原因を確認する
一般的な離職理由を確認したら、自社の新入社員が実際に何を感じているかを把握します。退職時のヒアリングだけではなく、在籍中から定期的にアンケートや面談を行うと離職に至る前の不満や認識のずれを捉えやすくなります。
たとえば、次のような項目を確認します。
- 入社前に聞いていた仕事内容や働き方と、実際との間に差を感じるか
- 自分に求められている役割が分かっているか
- 困ったときに相談できる人がいるか
- 上司・先輩・同僚から必要な支援を得られていると感じるか
- 今後の成長やキャリアをイメージできるか
回答形式は、5段階評価などの選択式に加えて理由を書ける自由記述欄も設けると、数値だけでは分からない不満や認識のずれを把握しやすくなります。率直に回答しやすくするため、匿名回答にする、回答の閲覧範囲を事前に伝えるなど、評価への不安を減らすことも検討しましょう。
集めた回答は、「労働条件」「仕事内容・期待とのずれ」「関係性・相談」「役割・能力」「キャリア」などに分けて整理します。どの項目に課題が集中しているかを確認することで、自社で優先して取り組むべき施策を選びやすくなります。
新入社員の定着施策の形骸化を防ぐ確認ポイント
離職原因を特定したら、すでに実施している施策がその課題に対応できているかを確認します。1on1やメンター制度は、実施回数だけではなく、新入社員の相談しやすさや役割理解などが変化しているかを見ることが大切です。
新入社員が組織になじんでいく過程は「組織社会化」と呼ばれます。Bauerらによるレビュー・メタ分析では、新入社員の適応を示す要素として「職場の一員として受け入れられている感覚(Social Acceptance)」「自分に求められている役割が分かっている状態(Role Clarity)」「自分と職場が合っているという感覚(Perceived Fit)」などが整理されています。これらは、職務満足や組織コミットメント、離職意向などとの関連も報告されています。
定着施策が形骸化していないかを確認する際は、たとえば次の状態がないかを点検しましょう。
- 面談が業務の進捗確認だけで終わっている
- 新入社員が何を相談すればよいのか分からない
- 上司やメンターによって面談内容が大きく異なる
- 実施回数は多いのに「相談できる人がいない」という回答が減っていない
1on1の回数やメンターの配置人数だけを追うのではなく、施策を通じて新入社員の状態がどう変わったかを確認します。課題が残っている場合は、制度を追加する前に、目的や面談内容、担当者の役割など現在の運用を見直しましょう。
自社に合った新入社員定着施策の選び方
離職原因を特定したら課題に対応する施策を選びます。研修や1on1など実施しやすいものから始めるのではなく、原因に応じて優先順位をつけることが大切です。
定着施策は次の流れで検討します。
- 同じ採用年の定着状況を確認する
- アンケートや面談から原因を分類する
- 原因に対応する施策を選ぶ
- 担当者や進め方、確認項目を決める
- 途中の変化と定着率を測定し、施策を改善する
厚生労働省の「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主等が適切に対処するための指針」では、募集時の情報提供や適切な雇用管理、計画的なOJT・OFF-JT、キャリア形成に必要な情報提供やキャリアコンサルティングの機会確保などが示されています。課題に応じて、必要な取り組みを選ぶことが重要です。
参考:厚生労働省「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主等が適切に対処するための指針」
自社で確認した課題と施策は、次のように整理できます。
| 主な課題 | 優先して確認・検討すること |
| 労働時間・休日・ハラスメントなど | 労働時間・休日の運用やハラスメント防止体制を改善する |
| 仕事内容や入社前の説明とのずれ | 採用時の情報提供や仕事内容・配属理由の説明を整える |
| 相談相手がいない、人間関係に課題がある | 相談経路を明確にし、メンター制度や関係構築の機会を設ける |
| 役割が分からない、仕事への不安が強い | OJT・OFF-JT、役割説明、フィードバックを強化する |
| キャリアの見通しが持てない | キャリア情報の提供や面談機会を設ける |
特に、長時間労働やハラスメントなど職場環境そのものに課題がある場合、コミュニケーション研修だけで解決しようとするのは適切ではありません。原因に直接関わる制度や運用から改善します。
実際に社員の声を起点に施策を決めた例があります。厚生労働省の事例では、イヨスイ株式会社が新卒社員の離職率の高さをきっかけに個別ヒアリングやアンケートを実施しました。「休みにくい」という声を受けて完全週休二日制を導入しており、掲載時点ではここ2年間で新卒採用者の離職はないとされています。
参考:厚生労働省「イヨスイ株式会社:働き方・休み方改善取組事例」
複数の課題が見つかった場合は、まず優先順位を決めます。緊急性が高いものや該当する社員が多いもの、離職が多い部署・時期と重なる課題から対応しましょう。そのうえで、現場の担当者だけに任せず、人事や会社側で制度や運用として対応できる方法を検討します。
メンター制度や1on1の見直し方法
離職原因を分析した結果、相談のしにくさや役割理解に課題があり、すでにメンター制度や1on1を導入している場合は、新しい施策を追加する前に現在の運用を見直します。制度の目的や担当者の役割、面談内容が曖昧なままでは、実施すること自体が目的になりかねません。ここでは、既存制度を見直す際のポイントを解説します。
制度の目的と担当者の役割をそろえる
まず「何のために実施する制度なのか」を明確にします。相談先をつくる、仕事上の役割を確認する、キャリアについて対話するなど、目的によって担当者に求める役割や面談で扱う内容は異なります。
あわせて、メンターと上司、人事の役割分担も決めておきましょう。たとえば、業務上の指導は上司、日常的な相談はメンター、労働条件やハラスメントなどは人事部門が対応するなど相談内容に応じた窓口を明確にします。
担当者だけで解決しようとせず、必要に応じて別の部署へつなげられる仕組みを整えておくことで、特定の担当者に負担が集中するのを防ぎやすくなります。
面談内容と評価方法を共通化する
面談内容を担当者にすべて任せるのではなく、共通して扱うテーマや進め方を決めておきます。担当者によって質問内容が大きく異なると、新入社員の状態を継続して把握しにくくなるためです。
たとえば、次の項目を共通の確認事項として設定します。
- 現在困っていることはあるか
- 仕事上で判断に迷っていることはあるか
- 困ったときに相談できる相手がいるか
- 自分に求められている役割を理解できているか
- 今後身につけたいことや挑戦したいことはあるか
最後に、制度全体を次の項目で確認します。
- 制度の目的が明確になっているか
- メンターや上司に期待する役割を共有しているか
- 面談で扱う共通テーマがあるか
- 対応が難しい場合の相談先が決まっているか
- 実施回数だけでなく、相談状況や役割理解の変化を確認しているか
不足している項目があれば、目的や担当者の役割、面談内容を順に見直します。新しい制度を増やす前に、現在の仕組みが新入社員の課題に対応できているかを確認することが大切です。
新入社員の定着率向上に向けたチームビルディングの取り入れ方
相談できる相手が限られている、同期や他部署との接点が少ないといった課題には、複数人で協力する機会を設ける方法があります。体験型チームビルディングもその選択肢の1つです。ただし、単発の交流イベントで終わらせず、解決したい課題を明確にしたうえで、日常の関係づくりにつなげることが大切です。ここでは、新入社員の定着率向上につなげるための取り入れ方を紹介します。
1.新入社員の関係面の課題を明確にする
まず、体験型チームビルディングで解決したい課題を決めます。「社員同士を仲良くする」といった抽象的な目的ではなく、研修後に確認できる状態まで具体化しましょう。
たとえば、次のように整理できます。
- 新入社員が部署外にも相談できる相手をつくる
- 普段接点の少ない社員同士が協力する機会をつくる
- 新入社員が先輩社員へ声をかけるきっかけをつくる
前章までのアンケートや面談で把握した内容をもとに、どのような関係面の課題を解消したいのかを整理しましょう。
2.課題に合った参加者とワークを選ぶ
目的が決まったら参加者とワークを選びます。同期同士の関係づくりが目的なら新入社員を中心に、教育担当者への相談のしにくさが課題なら先輩社員や教育担当者も参加対象にするなど、目的に合わせて設計しましょう。
ワークは、参加者同士の会話や役割分担、協力が必要になるものを選びます。日本乾溜工業株式会社様は、新入社員8名と教育担当者7名を対象に、株式会社IKUSAが提供する謎解きアクティビティ「ミッションスクランブル」と講義・ワークを組み合わせたコミュニケーション研修を実施しました。新入社員と教育担当者が同じチームで取り組み、立場を越えて交流する機会を設けています。
事例記事:新入社員と教育担当者が垣根を越えてつながる。謎解きアクティビティと講義を掛け合わせたコミュニケーション研修
研修後のコミュニケーションにつなげる
体験型チームビルディングは、研修中の交流だけで終わらせず、その後の関わり方まで考えておきます。研修の最後に、「誰とどのように協力したか」「今後どのような場面で声をかけたいか」などを振り返り、日常で実践する行動を決めましょう。
研修後は、1on1やOJT、日常業務での協働など参加者同士が継続して関われる機会を設けます。一定期間後には、「相談できる相手が増えたか」「教育担当者へ声をかけやすくなったか」などを確認し、関係面の課題がどのように変化したかを振り返りましょう。
新入社員の定着施策の効果測定方法
定着施策を実施した後は、定着率だけでなく、途中で新入社員の状態がどう変化したかも把握します。離職結果だけを見ていると施策の問題に気づくまで時間がかかるためです。ここでは、「施策の実施状況」「新入社員の状態」「定着率」の3段階で効果を測る方法を解説します。
1.施策が計画どおり実施されているかを見る
まず、計画した施策が実際に運用されているかを見ます。たとえば、1on1や研修の実施状況、相談先の周知状況、メンターとの面談機会などを把握しましょう。予定どおり進んでいない場合は、施策の内容を評価する前に、担当者や実施頻度、業務負担など運用上の問題を見直します。
2.新入社員の状態変化を把握する
次に、施策の実施前後で新入社員の状態がどう変わったかを見ます。定期的なアンケートや面談では次の項目を尋ねましょう。
- 困ったときに相談できる人がいるか
- 自分に求められている役割を理解できているか
- 必要な支援を受けられていると感じるか
- 職場の一員として受け入れられていると感じるか
同じ質問を継続して使用すると、施策の前後で変化を比較しやすくなります。
たとえば、1on1の実施率は高いのに「相談できる人がいる」という回答が増えていなければ、実施回数を増やすのではなく、面談内容や相談経路の見直しが必要です。
3.定着率の推移を追跡する
最後に、同じ採用年の新入社員について、3か月、6か月、1年、3年など一定時点の定着率を追跡します。部署や職種ごとに分けると、離職が集中している箇所に変化があったかも把握できます。
途中の状態が改善していても、最終的な定着率まで追うことが必要です。一方で、定着率だけで施策の良し悪しを判断せず、実施状況や新入社員の状態とあわせて見ることで、どこを見直すべきか判断しやすくなります。
まとめ
新入社員の定着率を高めるには、施策を増やす前に、自社で離職が起きている時期や部署、背景にある課題を把握することが大切です。アンケートや面談から原因を整理し、労働条件、仕事内容、関係性、役割、キャリアなど、課題に合った施策を選びます。
すでにメンター制度や1on1を導入している場合は実施回数だけでなく、制度の目的や担当者の役割、面談内容が機能しているかを点検しましょう。関係性や相談経路に課題がある場合は、新入社員と先輩・教育担当者が交流できる体験型チームビルディングを取り入れる方法もあります。
施策の実施後は、新入社員の状態変化と定着率の推移を継続して追い、結果に応じて内容や運用を改善していきましょう。
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この記事の著者
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