組織活性化とは|停滞原因の診断・施策の選び方・KPI設定まで解説
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組織活性化は、社内イベントや制度を増やすことから始めるものではありません。まず自社が目指す状態を定め、停滞の原因を把握したうえで、原因に合った施策を選ぶことが重要です。施策を実施しても参加が広がらない、やらされ感が生じる、予算の必要性を説明しにくいといった場合は、進め方そのものを見直す必要があります。
本記事では、原因診断、施策選定、社員が参加しやすい進め方、予算承認、KPI設定、体験型施策の活用、実施後の見直しまでを解説します。
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組織活性化とは
組織活性化とは、組織の目標達成に向けて社員が必要な情報や知見を共有し、協力しながら能力を発揮できる状態を目指す取り組みです。
単に交流や社内イベントを増やすことではなく、経営・事業上の課題解決につながる変化を生み出すことが目的です。経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも、人的資本経営では経営戦略と人材戦略の連動が重視されています。組織活性化でも、施策から考えるのではなく、自社が目指す組織状態を明確にすることが出発点です。
自社が目指す状態は、「経営・事業上の課題→必要な組織行動→変化を確認する指標」の順に整理すると具体化しやすくなります。
参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」
「そもそもチームビルディングとは?」「何から進めればいい?」という方のために、基本の考え方からチームづくりの5段階、すぐ使えるフレームワーク15選までを1冊にまとめた入門ガイドをご用意しました。
組織が停滞する原因を特定する方法
組織活性化の施策を選ぶ前に、まず「自社では何が組織の動きを妨げているのか」を明らかにする必要があります。同じ「コミュニケーション不足」でも、情報共有の仕組み、上司との関係、評価への不満、業務負荷など背景によって必要な対応は異なります。ここでは、データと社員の声を組み合わせて、停滞の原因を絞り込む手順を解説します。
1.データから問題が起きている場所を把握する
最初に、離職、欠勤、残業、業績、手戻りなどの既存データから問題が起きている部署や場面を確認します。全社平均だけでなく部署や職位別にも確認し、詳しく調べる対象を絞り込みましょう。この段階では原因を決めつけず、問題が起きている場所や状態の把握にとどめます。
2.サーベイと対話で原因を深掘りする
次に、サーベイやヒアリングで原因を深掘りします。原因整理の参考になるJD-R(仕事の要求度―資源)モデルでは、仕事上の負荷である「仕事の要求度」と仕事を進めるうえで役立つ「仕事の資源」を分けて捉えます。
匿名サーベイでは満足度などの「状態」だけでなく、裁量、上司の支援、情報共有、評価などの「要因」も確認します。そのうえで、自由記述や1on1、ヒアリングから背景を掘り下げましょう。
参考:Demerouti et al.(2001)“The job demands-resources model of burnout”
参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 第2-(3)-8図 仕事の要求度–資源モデル(JD-Rモデル)とワーク・エンゲイジメントについて」
3.複数の情報から優先課題を絞り込む
最後に、データ、サーベイ、ヒアリングを照らし合わせ、複数の情報が共通して示す問題を優先課題として整理します。サーベイの1項目だけで原因を断定せず、経営・事業上の課題とつながっているかも確認しましょう。
厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータル」に掲載されたブラザー工業の事例では、ストレスチェックの集団分析をもとに部門長へ結果をフィードバックし、ワークショップを経て、各部門でアクションプランを策定しています。アクションプランには、着目する仕事の資源などに加え、狙い、実施計画、実行メンバー、数値目標を設定しています。分析結果を具体的な改善行動へつなげる運用例として参考になります。
組織課題に応じた施策の選び方
組織が停滞している原因を特定したら、その原因に合った施策を選びます。実施しやすさや話題性だけで選ぶと課題と施策がかみ合わず、十分な改善につながらない可能性があります。ここでは、診断した原因から施策候補を整理し、優先順位を決める方法を解説します。
原因に合う施策候補を整理する
同じように見える問題でも、背景にある原因によって必要な対応は異なります。前章で特定した原因を起点に、直接働きかけられる施策を候補として洗い出しましょう。
| 組織で見られる問題 | 確認したい原因 | 施策候補 |
| 部署間で情報が共有されにくい | 情報共有の仕組み、部門間の連携 | 情報共有ルールの見直し、部門横断の取り組み、協働型研修 |
| 意見や相談が出にくい | 上司の対応、心理的安全性 | 管理職の関わり方の見直し、対話や振り返りの機会づくり |
| 施策へのやらされ感が強い | 目的理解、参加・選択の機会 | 企画段階への社員参加、選択できる範囲の設定、目的の共有 |
| 評価への不満が強い | 評価基準、手続き、説明、対人対応 | 評価基準やプロセス、説明・フィードバック方法の見直し |
| 仕事への意欲が低い | 裁量、支援、フィードバック、仕事の設計 | 職務の見直し、フィードバック、育成・支援の強化 |
| チームの連携が弱い | 役割や目標の不明確さ、協力行動の不足 | 役割・目標の再確認、チームワーク研修、協働型の演習 |
たとえば、評価への不満が確認された場合は、評価額だけでなく、評価の決め方や説明、上司の対応まで分けて確認しましょう。Colquittら(2001)のメタ分析では、分配的公正・手続的公正・対人的公正・情報的公正と職務満足や組織コミットメントなどとの関連が整理されています。
判断基準をもとに施策の優先順位を決める
原因に対応する施策が複数ある場合、すべてを一度に進める必要はありません。次の観点で整理すると優先順位を決めやすくなります。
- 原因への直接性:特定した原因に直接働きかける施策か
- 経営課題への影響度:経営・事業上の課題改善につながるか
- 影響範囲:どの部署・社員に影響するか
- 実行可能性:現在の権限、人員、期間で実施できるか
- 費用・工数:必要な予算や担当者の負担は現実的か
- 測定可能性:実施前後の変化を確認できるか
- 時間軸:短期間で試せるか、中長期の見直しが必要か
なかでも最初に確認したいのは「原因への直接性」です。原因に直接働きかける施策を候補として残し、経営課題への影響度や実行可能性、費用・工数、測定可能性などを比較しましょう。短期で試せる施策と制度改定のような中長期施策を分けて整理すると、着手する順番も決めやすくなります。
社員が参加しやすい組織活性化の進め方
自社の課題に合った施策を選んでも、社員が意見を出しにくかったり一方的に決められたと感じたりすると、十分な参加につながらない可能性があります。施策を実行する際は、内容だけでなく、社員が関わりやすい環境や進め方を整えることも必要です。ここでは、発言しやすい環境づくりと企画段階から社員が関われる仕組みについて解説します。
発言しやすい環境を整える
社員から意見や相談が出にくい場合は、交流の機会を増やす前に、普段の会議や1on1で発言しにくくなっていないかを確認します。
Edmondson(1999)は、心理的安全性を、対人関係上のリスクを伴う発言をしても安全だとチーム内で共有されている状態として捉えています。異論や質問、失敗報告に対する上司や周囲の反応を確認し、責任追及に偏っている場合は、上司の受け止め方や会議・1on1の運用を見直しましょう。
参考:Edmondson(1999)“Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams”
企画段階から参加できる仕組みをつくる
施策への「やらされ感」を抑えるには、実施当日に参加を求めるだけでなく、企画の段階から社員が関われる余地を設けることが大切です。
自己決定理論では、自律性・有能感・関係性が基本的な心理的欲求として整理されています。組織活性化においても、社員自身が選択したり、意見を反映したりできる範囲を設ける際の参考になる考え方です。
参考:Deci & Ryan(2000)“The ‘What’ and ‘Why’ of Goal Pursuits”
この考え方を参考に、企画段階から社員が関われる進め方を整理すると次のようになります。
- 経営側が取り組む目的と、変更できない条件を示す
- 対象となる社員から現状の課題や困りごとを集める
- 集めた意見をもとに施策案を検討する
- 施策の内容や参加方法に社員が選択できる余地を設ける
- 小規模に試し、参加者・不参加者の双方から意見を集める
- 結果を踏まえて内容を修正し、必要に応じて対象を広げる
すでに決まっている事項と社員が選べる事項はあらかじめ分けて示しておきます。すべてを社員に委ねるのではなく、どこまで意見を反映できるのかを明確にしておくことで、参加への納得感も得やすくなるでしょう。
組織活性化施策の予算承認を得るための考え方
組織活性化の施策を実行するには、経営層に「なぜこの施策が必要なのか」を説明し、予算の承認を得る必要があります。単に「コミュニケーションを活性化したい」と伝えるだけでは、経営課題とのつながりや投資の妥当性が見えにくくなります。ここでは、施策の必要性を説明するための予算申請の組み立て方と費用対効果の考え方を解説します。
経営課題から施策の必要性を説明する
予算申請では、「現状→経営への影響→原因→施策と選定理由→予算→測定指標→継続条件」の順で整理すると、施策の必要性を説明しやすくなります。経営課題から施策、効果測定までを一続きで示すことがポイントです。
「人的資本可視化指針(改訂版)」でも、経営戦略と人材戦略を連動させ、必要な人的資本投資や指標・目標につなげて考える重要性が示されています。
参考:内閣官房・金融庁・経済産業省「人的資本可視化指針(改訂版)」
費用対効果は自社の数値をもとに考える
費用対効果は、自社で把握できる採用費、教育費、欠員による残業・外注費、手戻り工数などを使って試算します。たとえば、離職の抑制を目的とする場合は採用・教育にかかっている費用、業務連携の改善が目的なら手戻りや残業にかかっている工数など、解決したい課題と関係する数値を選ぶことが大切です。
一方、社員の発言しやすさや部署間連携など、金額換算しにくい変化まで無理に金額へ置き換える必要はありません。サーベイや行動指標も組み合わせ、施策によって何がどの程度変化したかを確認します。予算申請時には、使用した数値と試算の前提も明記しておきましょう。
組織活性化施策の効果を測るKPIの設定方法
施策を実施したあとは、目的としていた変化が起きたかを確認する必要があります。参加率や満足度だけでは組織の課題が改善したかまでは判断できません。ここでは、施策の目的に合ったKPIの設定方法と実施前後の変化を確認するための測定方法を解説します。
KPIを3段階に分けて整理する
組織活性化施策の効果は、1つの指標だけで判断するのではなく、施策の実施状況から経営上の成果まで段階を分けて確認すると整理しやすくなります。確認する指標は次の3段階に分けて整理できます。
1. 実施状況を確認する指標
参加率、実施回数、実施直後の満足度など、施策が予定どおり行われたかを確認します。
2. 社員や組織の変化を確認する指標
上司からの支援、裁量、心理的安全性、ワーク・エンゲイジメントなど施策によって変化させたい社員や組織の状態を確認します。
3. 経営・業務上の成果を確認する指標
離職、欠勤、手戻り、生産性など最初に設定した経営・事業上の課題に関わる数値を確認します。
たとえば、部署間の連携改善を目的に施策を実施する場合、参加率だけを追っても連携が改善したかは分かりません。参加状況に加え、部門間の情報共有に関するサーベイや手戻り件数なども確認することで、目的に近い変化まで追いやすくなります。
すべての指標を設定する必要はありません。施策の目的から逆算して、実施状況・中間的な変化・最終的な成果のうち必要なものを選ぶことがポイントです。
基準値と測定時期を決める
施策の効果を確認するには、実施前の状態を基準値として把握しておきます。施策後の数値だけを見ても、どの程度変化したのか判断できないためです。
測定時期は指標に応じて設定します。満足度は実施直後、職場での行動や部署間連携は一定期間後など、確認したい変化によって適したタイミングは異なります。
また、施策前後で数値が変化しても、すべてを施策の成果とは判断できません。人事異動や業務量など同時期の変化も確認し、結果を施策の継続・修正を判断する材料として使いましょう。
体験型施策を組織活性化に活用する方法
社内イベントやチームビルディング研修などの体験型施策は、組織活性化の選択肢の1つです。ただし、どの課題にも適しているわけではありません。導入する際は、自社の課題との相性を確認したうえで、体験を職場での行動につなげる設計や実施体制まで考える必要があります。ここでは、体験型施策を取り入れる際の判断ポイントを解説します。
体験型施策が適する課題を見極める
体験型施策は、チームワークや協働など実際に他者と関わりながら行動する力を扱いたい場合に検討しやすい方法です。McEwanら(2017)の系統的レビュー・メタ分析では、チームワーク介入がチームワークとチームパフォーマンスの向上に有意な効果を示したことが報告されています。部署間の協力やチーム連携が課題なら、体験型研修も施策候補になります。
体験を職場での行動につなげる
体験型施策を実施するときは「参加して楽しかった」で終わらせず、職場でどのような行動につなげたいのかを事前に決めておきます。
具体的には、次の流れで進めます。
- 自社の課題から、増やしたい行動を決める
- その行動を実際に試せるアクティビティを選ぶ
- 体験後に、うまくいった点や難しかった点を振り返る
- 職場で実践する行動を具体化する
- 一定期間後に、実践状況や変化を確認する
アクティビティ自体を目的にせず、体験で試した行動を職場で実践し、その後の変化まで確認することがポイントです。
⇒体験を職場での行動につなげる「あそぶ社員研修」の資料を見てみる
内製か外部委託かを判断する
社内に企画・進行を担える人材がいる場合は内製も可能です。一方、運営リソースが不足している場合、専門的なゲーム・シミュレーションを取り入れたい場合は外部委託も選択肢になります。委託時は、自社の課題と研修テーマが合っているか、体験後の振り返りまで設計されているかを確認しましょう。
組織活性化の取り組みを継続する方法
組織活性化の施策は、一度実施して終わりではありません。実施後の結果を確認し、必要に応じて内容や対象を見直しながら改善を重ねることが大切です。こうしたサイクルを繰り返すことで、自社の課題や状況に合った取り組みへと近づいていきます。ここでは、施策を小さく試す方法と、得られた結果を次の改善につなげる考え方を解説します。
小さく試して結果を確認する
最初から全社で大規模に実施すると、施策と課題が合っていなかった場合の修正が難しくなります。まずは1部署や特定のチームなど、範囲を絞って試しましょう。
実施前には、前章で設定したKPIの基準値を確認しておきます。そのうえで施策を行い、一定期間後に社員の行動や業務上の変化が見られたかを検証します。
小規模な実施で課題が見つかれば、全社へ広げる前に内容を修正できます。反対に、目的とした変化が確認できれば、対象部署を増やすなど次の段階へ進む判断もしやすくなるでしょう。
結果をもとに原因と施策を見直す
想定した成果が得られなかった場合は、施策そのものだけを評価するのではなく、そこに至るまでの前提にも目を向ける必要があります。次の5点を確認し、どの段階に見直しが必要かを整理しましょう。
- 原因の捉え方は合っていたか
- 選んだ施策は原因に直接働きかけていたか
- 対象とする部署や社員は適切だったか
- 実施内容や期間は十分だったか
- 設定したKPIは目的に合っていたか
確認する際は、「施策が悪かった」と一括りにせず、どの段階で想定と実態にずれが生じたのかを切り分けることが重要です。たとえば、施策への満足度は高いものの業務上の変化が見られない場合は、施策の内容だけでなく、職場で実践する機会やフォロー方法に課題がないかも確認します。
一方、参加自体が広がらなかったのであれば、対象者や周知方法、実施条件に見直す余地があるかもしれません。結果を分解して確認することで、施策を継続するのか、内容を修正するのか、別の施策へ切り替えるのかを判断しやすくなります。
成果が出なかったこと自体を失敗と捉えるのではなく、次の改善につなげる材料として活用していきましょう。
まとめ
組織活性化を進める際は、施策を増やす前に、自社で何が停滞の原因になっているのかを把握することが大切です。人事・業務データや社員の声から課題を整理し、その原因に直接働きかける施策を選びます。
実施にあたっては、社員が意見を出しやすく、意見を反映できる余地のある進め方も大切です。さらに、施策前にKPIを設定して小規模に試せば、効果を確認しながら必要な修正を加えやすくなります。
まずは既存のデータを確認し、気になる部署やチームへのヒアリングから始めてみてください。原因が絞り込めれば、優先すべき施策だけでなく、必要な予算や実施方法についても判断しやすくなるでしょう。
エンゲージメントを高める鍵は、日々の対話の質にあります。「あそぶ社員研修」では、働きがいと関係性の質を高める対話スキルを体験的に学べる研修をご用意しています。 ⇒「エンゲージメント向上研修」の企画書を無料でダウンロードする 「どの研修が自社に合うかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。目的やご予算に合わせて最適なプログラムをご提案します。
この記事の著者
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