コミュニケーション研修にゲームを取り入れる方法|効果・選び方・設計・振り返りを解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

コミュニケーション研修では、知識を学ぶだけでなく、実際のやり取りを通して自分やチームのコミュニケーションを振り返ることが大切です。その方法の1つとして、参加者同士が協力しながら課題に取り組むゲームを活用できます。

一方、ゲームを取り入れても、研修目的とのつながりが曖昧なままでは「楽しかった」で終わってしまう可能性があります。自社の課題に合うゲームを選び、ゲーム中の行動を観察し、振り返りや実務への接続まで設計することが重要です。

本記事では、コミュニケーション研修でゲームを活用する効果、ゲームの選び方、事前設計、ファシリテーション、振り返りの方法を解説します。

 

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コミュニケーション研修にゲームを取り入れる効果

コミュニケーション研修にゲームを取り入れることで、参加者同士の会話や協力を促しながら、「聞く」「伝える」「質問する」「役割を分担する」「意見をまとめる」といった行動を実際に経験できます。また、ゲーム中の行動を振り返ることで、自分やチームのコミュニケーションの特徴に気づき、改善点を具体化しやすくなります。

こうした「経験したことを振り返り、次の行動へつなげる」という学習の流れを考えるうえで参考になるのが、David A. Kolbの経験学習理論です。Kolbは、学習を「具体的な経験→振り返り→考え方や原則の整理→次の実践」という循環で捉えています。

参考:David A. Kolb「The Process of Experiential Learning」

ゲームを使った学習については、Traci Sitzmannが2011年にコンピューター型シミュレーションゲームの教育効果を検証した65研究・6,476人のデータを分析し、比較群より自己効力感や知識などで高い値を報告しています。

ただし、対象はコンピューター型シミュレーションゲームであり、企業研修のすべてのゲームに同じ効果があるとは言えません。ゲームは、研修で増やしたい行動が必要になるか、終了後にその行動を振り返れるかという観点で選ぶことが重要です。

参考:Traci Sitzmann「A Meta-Analytic Examination of the Instructional Effectiveness of Computer-Based Simulation Games」

 

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自社の課題に合うゲームを選ぶ4ステップ

コミュニケーション研修で使うゲームは、知名度や盛り上がりやすさだけでなく、自社の課題や研修で身につけてほしい行動に合っているかを確認することが大切です。そのためには、まず職場で起きている課題を具体的な行動に置き換え、研修後に増やしたい行動を明確にしたうえで、ゲームの内容や実施条件と照らし合わせます。ここでは、自社の課題に合うゲームを選ぶための4つのステップを紹介します。

ステップ1.職場で起きている課題を具体的な行動にする

まず、「コミュニケーション不足」「部署間の連携が悪い」といった抽象的な課題を、実際に職場で起きている行動まで具体化しましょう。たとえば「必要な情報を共有しない」「会議で一部の人しか発言しない」などです。「若手が発言しない」という課題も、「分からないことがあっても質問しない」といった行動に置き換えます。第三者が見ても確認できる行動まで整理することで、研修で何を変えたいのかが明確になります。

ステップ2.研修後に増やしたい行動を決める

次に、ステップ1で整理した課題に対して、研修後の職場でどのような行動を増やしたいのかを決めます。「必要な情報を共有しない」という課題なら「必要な情報を自分から端的に伝える」、「一部の人しか発言しない」のであれば「ほかのメンバーへ意見を尋ねる」といった行動が考えられます。

ほかにも「相手の説明を要約して認識を確認する」「異なる意見の理由を尋ねる」など、実際の職場で確認できる行動にすることがポイントです。一度の研修で多くの行動を扱うと観察や振り返りの焦点がぼやけるため、中心となる行動は1~2個程度に絞りましょう。

ステップ3.増やしたい行動が必要になるゲームを選ぶ

増やしたい行動が決まったら、その行動をゲーム中に実際に使う必要があるかを確認します。

情報共有を扱いたい場合は、参加者ごとに異なる情報を持ち、互いに伝えなければ進めないゲームが候補になります。部署間の連携を扱う場合は、複数の参加者やグループが持つ情報を集め、1つの答えを導く仕組みが向いています。合意形成なら、互いの意見や理由を聞きながら、チームで結論を出すゲームがおすすめです。

ただし「若手の発言不足ならこのゲーム」のように、課題とゲームを機械的に結びつけるのは避けましょう。同じ行動でも、知識不足や上下関係など背景は異なるため、現場の状況まで踏まえて選ぶことが大切です。

ステップ4.人数・時間・実施環境で絞り込む

最後に、候補となったゲームを実施条件と照らし合わせます。参加人数、確保できる研修時間、対面・オンラインの別、会場の広さなどを確認し、自社で実施できるものに絞り込みます。

最終的には「研修で増やしたい行動がゲーム中に必要になるか」「一部の参加者だけで進められないか」「終了後に行動を振り返れるか」「人数や時間などの条件に合っているか」を確認すると、目的に合うゲームを選びやすくなります。

コミュニケーション研修に活用できる6つのアクティビティ

「あそぶ社員研修」にはさまざまな研修テーマに対応するアクティビティがあります。今回紹介する6つのアクティビティでは、情報共有や役割分担、対話、巻き込み、意思決定など、チームで仕事を進めるうえで必要なコミュニケーションを実践できます。ここでは、コミュニケーション研修に活用できる6つのアクティビティについて、特徴と研修で学べることを紹介します。

謎解き脱出ゲーム|情報共有・役割分担を実践的に学ぶ

謎解き脱出ゲームは、参加者自身が物語の主人公となり、チームで協力して謎を解きながら脱出を目指すアクティビティです。限られた時間内で謎を解くためには、メンバー同士で情報を共有し、それぞれの得意分野を活かして役割を分担する必要があります。

「必要な情報を共有できたか」「相手の話を聞いて確認できたか」「状況に応じて役割を分担できたか」などを振り返ります。ゲーム中の行動を振り返ることで、「聴く・伝える・確認する」といった双方向のコミュニケーションや、主体的にチームへ関わることの重要性を学べます。

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謎パ|参加者同士の協力・情報共有を実践する

謎パは、参加者全員が協力し、制限時間内のクリアを目指すアクティビティです。少人数のチームだけで完結するのではなく、参加者全体で協力して謎を解き明かします。

自分たちだけで課題を抱え込まず、周囲と協力しながら進めることが求められる点が特徴です。「必要な情報を周囲へ伝えられたか」「ほかの参加者へ自分から働きかけられたか」などを振り返ることで、組織のなかで情報を共有し、周囲を巻き込みながら課題に取り組むためのコミュニケーションを考えられます。

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GREAT TEAM|チームを巻き込む対話と意思決定を学ぶ

グレートチームは、人材の育成や採用、メンバーの配置などを考えながら、チームでプロジェクトを進めるマネジメントシミュレーションゲームです。メンバーをどのプロジェクトへ配置するかについて、プレイヤー同士で相談しながら進めます。

主にリーダーシップやマネジメントを学ぶアクティビティですが、限られた人材や資源をどのように活かすかをチームで話し合うため、周囲を巻き込みながら意思決定するコミュニケーションも実践できます。自分の考えを伝えるだけでなく、メンバーの意見を踏まえて合意をつくる過程を振り返ることがポイントです。

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サバ研|役割分担と連携を通して意思決定を実践する

サバ研は、サバイバルゲームを通じて「OODA LOOP」を実践的に学ぶ研修アクティビティです。変化する状況を把握しながら意思決定を繰り返し、チームでミッションの達成を目指します。隊長や通信兵、衛生兵など、メンバーごとに異なる役割を担うことも特徴です。

主なテーマはOODA LOOPですが、チームで成果を出すには、状況を共有し、それぞれの役割を果たしながら連携する必要があります。「必要な情報を共有できたか」「役割に応じて周囲と連携できたか」といった観点から、チーム内のコミュニケーションも振り返れます。

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コンセンサスゲーム|価値観の違いを踏まえて合意形成を実践する

コンセンサスゲームは、ある状況での意思決定について一人ひとりが考えた後、チームで話し合い、合意形成を目指すアクティビティです。考え方や価値観が異なるメンバー同士で議論し、全員が納得できる結論を導く過程を通して、合意形成の重要性や方法を学びます。

自分の意見を伝えるだけでなく、相手の考えやその理由を聞き、互いの意見を踏まえて結論をつくることが求められます。「異なる意見の理由を確認できたか」「根拠を伝えられたか」などを振り返ることで、合意形成に必要な対話を実践できます。

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OODAチャンバラ合戦|対話と役割分担を繰り返し、迅速な判断を学ぶ

OODAチャンバラ合戦は、チャンバラ合戦を通じてOODA LOOPを学ぶアクティビティです。「軍議→調略→合戦」の流れを繰り返し、軍議ではチームの方針や役割について話し合ったうえで実戦に臨みます。

変化する状況のなかで、それぞれの役割を活かしながら判断を繰り返すことが求められます。チームで戦略や役割を話し合い、実践することで、迅速な意思決定や役割分担、連携の重要性を学べる点が特徴です。

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ゲームを学びにつなげるための研修設計

ゲームを取り入れるだけでは、研修の目的を十分に達成できるとは限りません。ゲーム中にどのような行動を実践してほしいのかを明確にし、振り返りや講義、実務への接続までを1つの研修として設計することが大切です。ここでは、ゲームでの体験を学びにつなげるための研修設計のポイントを紹介します。

研修目的とゲーム中に観察する行動を決める

研修で身につけてほしい行動を明確にし、ゲーム中に観察するポイントを決めます。たとえば、情報共有が目的なら「必要な情報を自分から共有したか」、合意形成なら「異なる意見の理由を聞いたか」などです。

研修目的と観察する行動を対応させておくことで、「楽しかった」「難しかった」といった感想だけでなく、具体的な行動を振り返りやすくなります。

体験・振り返り・講義・実務接続までを1つの流れにする

ゲームで得た気づきを職場での行動につなげるには、アクティビティだけで研修を終えず、振り返りや講義、実務への落とし込みまでを1つの流れとして設計します。

研修で学んだ内容を職場で活用し、その状態を維持する「研修転移」について、Baldwin & Fordは、研修設計だけでなく、受講者の特性や職場環境も関わる要因として整理しています。ゲームで気づきを得るだけでなく、その後に学びを整理し、職場でどう実践するかまで考えることが重要です。

参考:Timothy T. Baldwin、J. Kevin Ford「Transfer of Training: A Review and Directions for Future Research」

コミュニケーション研修でゲームを活かすファシリテーションのポイント

コミュニケーション研修にゲームを取り入れる場合は、ルールを説明して進行するだけでなく、参加者がゲーム中の行動を振り返り、コミュニケーションの特徴や改善点に気づけるよう支援することが大切です。そのためには、率直に話せる環境を整えてゲーム中の行動を観察したうえで、振り返りにつながる問いを投げかけます。ここでは、コミュニケーション研修でゲームを活かすためのファシリテーションのポイントを紹介します。

率直に振り返れる環境を整える

参加者がゲーム中の失敗や迷いを率直に話せるよう、振り返りの場では行動の良し悪しを責めないことが大切です。発言の少なかった人を評価したり失敗した場面だけを指摘したりすると、そのとき何を考えていたのかを話しにくくなります。

こうした場づくりを考えるうえで参考になるのが、Amy Edmondsonによる心理的安全性の研究です。心理的安全性とは、チームのなかで発言や質問などの対人的なリスクを取っても安全だと感じられる状態を指します。Edmondsonは、製造企業51チームを対象とした研究で、心理的安全性とチームの学習行動との関連を報告しています。

ゲームを取り入れた研修によって心理的安全性が高まると示した研究ではありませんが、「失敗を責めず学びの材料として扱う」「勝敗だけでなく途中のコミュニケーションも振り返る」「役職にかかわらず意見を出す」といったルールを共有する際の参考になります。

参考:Amy Edmondson「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」

評価ではなく、行動の事実を観察する

ゲーム中は「積極的だった」「協力できていた」といった印象ではなく、実際に確認できる行動を観察します。「誰に発言が偏っていたか」「相手の発言を確認・要約したか」などです。「Aさんは消極的だった」と評価するのではなく、「ほかのメンバーへ意見を尋ねる場面が少なかった」のように、実際に起きたことを記録しましょう。

観察項目を具体的な行動として捉える考え方は、AHRQのTeamSTEPPSにあるチーム行動の測定ツールも参考になります。医療チーム向けの資料ですが、印象ではなく観察可能な行動を見るという考え方はコミュニケーション研修で参加者の行動を振り返る際にも応用できます。

参考:AHRQ「TeamSTEPPS Measurement Tools」

観察した事実をもとに、行動の背景を尋ねる

ゲーム終了後は、観察した事実を示し、そのとき何を考えていたのかを尋ねます。たとえば、「情報共有が少ないように見えました。そのとき、どのように進めようと考えていましたか」と問いかけます。事実を示してから背景を尋ねることで、参加者自身が行動の理由を振り返りやすくなります。

問いかけ方を考えるうえでは、Jenny W. Rudolphらが医療シミュレーション教育で示したデブリーフィングの考え方も参考になります。企業研修向けに検証された手法ではありませんが、ファシリテーターが観察した事実や見方を伝えたうえで、参加者の考えを尋ねる方法として応用できます。

参考:Jenny W. Rudolphほか「There’s no such thing as “nonjudgmental” debriefing: a theory and method for debriefing with good judgment」

コミュニケーション研修でゲームの学びを深める振り返り方法

コミュニケーション研修にゲームを取り入れる場合は、体験しただけで終わらせず、ゲーム中に何が起きたのかを振り返る時間を設けることが大切です。具体的な行動やその背景を整理することで、自分やチームのコミュニケーションの特徴に気づき、職場での実践につなげやすくなります。ここでは、ゲームでの体験を具体的な学びにつなげるための振り返り方法を紹介します。

感想だけで終わらせず、行動を具体的に振り返る

ゲーム終了後は、「楽しかった」「協力できた」といった感想だけで終わらせず、実際にどのような行動があり、そのとき何を考えていたのかまで振り返ります。

「誰がどの情報を共有したか」「意見が出ていない人へ声をかけたか」など、実際に確認できる行動まで掘り下げましょう。うまく進まなかった場面も「情報を共有しなかった」と結論づけるだけでなく「自分の担当ではないと思って伝えなかった」など、そのときの状況や判断まで確認することが重要です。

こうした体験後の振り返りは、「デブリーフィング」と呼ばれます。Tannenbaum & Cerasoliは、デブリーフィングの効果について46サンプル・2,136人を対象にメタ分析を行いました。その結果、デブリーフィングを行った場合は、行わなかった場合よりパフォーマンスが高い傾向が報告されています。ゲームを活用したコミュニケーション研修に限定した研究ではありませんが、体験後に行動や判断を振り返る意義を示す研究の1つです。

参考:Scott I. Tannenbaum、Christopher P. Cerasoli「Do Team and Individual Debriefs Enhance Performance? A Meta-Analysis」

「事実→背景→学び→実践」の4段階で振り返る

ゲーム後の振り返りを職場での実践につなげるには、「事実→背景→学び→実践」の4段階で整理すると考えやすくなります。ゲーム中に起きたことから順番に振り返ることで、感想だけで終わらず、職場で取る行動まで具体化しやすくなります。

1.事実:ゲーム中に何が起きたか

実際に起きた出来事や参加者の行動を確認します。

2.背景:なぜその行動を取ったのか

その行動の背景にあった考えや判断を振り返ります。

3.学び:そこから何に気づいたか

「早い段階で情報を共有したほうが全体を把握しやすかった」「異なる意見の理由を聞くことで別の考え方に気づけた」など今後にも活かせる気づきを整理します。

4.実践:職場で何を試すか

「会議では発言していない人にも意見を聞く」「認識が曖昧なときはその場で確認する」など、実際の仕事で取る行動へ落とし込みます。

この順番で振り返ることで、ゲーム中の出来事と普段のコミュニケーションを結びつけ、職場でどのような行動を変えるのかまで整理できます。

まとめ

コミュニケーション研修にゲームを取り入れる際は、自社の課題や研修後に増やしたい行動を明確にし、その行動を実践できるゲームを選ぶことが大切です。あわせて、ゲーム中の行動を観察し、振り返りや講義、実務への接続まで1つの流れとして設計することで、体験を具体的な学びに変えやすくなります。

研修で得た気づきをその場限りにせず、職場で実践する行動まで落とし込み、日々のコミュニケーション改善に活かしましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

あそぶ社員研修は、企業の研修担当者向けのお役立ち情報を発信するメディアです。研修に関するノウハウ、組織・人材開発の手法、ビジネススキルなどをわかりやすく紹介します。

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