社員の帰属意識を高めるには?原因の特定から施策選定・効果測定まで

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

社員の帰属意識を高めるには、懇親会や研修を先に決めるのではなく、まず「どこで、なぜ所属感が弱くなっているのか」を確認することが重要です。社員同士のつながり、上司との関係、評価への納得感など課題によって必要な施策は異なります。

しかし、何から調べればよいのか分からない、あるいはイベントや研修を企画しても社員に「やらされ感」を与えてしまうのではないかと悩む人事担当者もいるでしょう。

本記事では、帰属意識の基本から、原因の特定、施策の選び方、社内イベント・研修の実施ポイント、体験型チームビルディング、テレワーク対応、効果測定までを解説します。

 

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帰属意識とは

帰属意識とは、自分が組織やチームの一員であり、そこに居場所やつながりがあると感じる感覚です。

JenaとPradhan(2018)は、職場における帰属意識(workplace belongingness)を測定する尺度を開発し、職場での所属感を独立した概念として検証しています。

参考:Jena & Pradhan(2018)「Conceptualizing and validating workplace belongingness scale」

エンゲージメント・ロイヤルティとの違い

帰属意識と混同されやすい言葉にエンゲージメントやロイヤルティがあります。それぞれの違いは、以下のとおりです。

用語 意味・着目点
帰属意識自分が組織やチームの一員であり、居場所やつながりを感じている状態
エンゲージメント仕事や組織に対する熱意や、主体的に関わろうとする意欲
ロイヤルティ会社への忠誠心や支持する気持ち

それぞれ関連する部分はありますが、同じ意味ではありません。帰属意識を確認するときは、仕事への熱意ではなく、組織やチームとのつながりや居場所を感じられているかに着目することが大切です。

 

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帰属意識が重視される理由

帰属意識は、社員の離職や職場での行動を考えるうえで確認したい要素の1つです。

帰属意識そのものを対象とした研究ではありませんが、近い概念である「感情的コミットメント」について、Meyerら(2002)のメタ分析では、離職に関する指標と負の関連があり、職務上の成果や組織市民行動などとも関連することが報告されています。

参考:Meyer et al.(2002)「Affective, Continuance, and Normative Commitment to the Organization: A Meta-analysis of Antecedents, Correlates, and Consequences」

ただし、離職の原因を帰属意識だけで説明することはできません。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」では、前職を辞めた理由として、賃金、労働時間・休日、人間関係、会社の将来性など複数の要因が挙げられています。

参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」

そのため、帰属意識は離職や組織課題を把握するための一つの観点として、待遇や働き方、人間関係などとあわせて確認することが重要です。

帰属意識が低下する原因を特定する方法

帰属意識を高めるには、施策を考える前に「なぜ低下しているのか」を把握する必要があります。交流不足、上司からの支援不足、評価への不満など、原因によって適した対応は異なります。ここでは、帰属意識低下の兆候を確認し、サーベイやヒアリングを使って原因を絞り込む方法を解説します。

帰属意識低下のサインを確認する

帰属意識の低下は、離職者が増える前から表れる場合があります。部署を越えたやり取りが少ない、相談できる相手がいない、会社の方針への不満が多いといった傾向があれば、サーベイやヒアリングで背景を確認しましょう。

サーベイで社員の状態を把握する

サーベイでは、社員が組織やチームとのつながりをどのように感じているかを確認します。eNPSやパルスサーベイなども、社員の状態を把握する方法の1つです。eNPSは、自社を働く場所として他者に勧めたいかなどを尋ねる指標ですが、帰属意識そのものを直接測る指標ではありません。

また、パルスサーベイは短いアンケートを定期的に行う方法です。Brown(2022)の研究では、一定の信頼性が確認された一方、変化やグループ間の違いを十分に捉えられない場合も示されています。

参考:Brown(2022)「Investigating the promise and pitfalls of pulse surveys」

そのため、サーベイだけで原因を決めるのではなく、「どこに課題がありそうか」を見つけるために活用します。設問例は以下のとおりです。

確認したいこと設問例
組織への所属感自分はこの組織の一員だと感じる
チームへの所属感自分は現在のチームの一員だと感じる
相談のしやすさ困ったときに相談できる人が職場にいる
意見の言いやすさ異なる意見や失敗について安心して話せる
組織からの支援会社は自分の貢献を大切にしていると感じる

これらは実務上の設問例であり、共通の基準値があるわけではありません。点数だけで判断せず、部署ごとの傾向や自由記述も確認しましょう。

1on1やヒアリングで原因を深掘りする

サーベイで気になる傾向が見つかったら、1on1やヒアリングで具体的な背景を確認しましょう。「最近、会社やチームの一員だと感じにくかった場面はあったか」「困ったときに誰へ相談しているか」「評価や意思決定に納得できなかったことはあるか」など、具体的な出来事を聞くと原因を整理しやすくなります。退職者へのヒアリングでも、人間関係だけでなく、仕事内容、評価・待遇、勤務条件、会社の将来性などを分けて確認します。

会社全体とチームの課題を切り分ける

調査結果は、会社全体への認識と直属チームへの認識を分けて整理します。Rikettaとvan Dick(2005)のメタ分析では、組織全体への心理的な結びつきと所属するワークグループへの結びつきは区別して捉える必要があることが示されています。

参考:Riketta & van Dick(2005)「Foci of attachment in organizations: A meta-analytic comparison of the strength and correlates of workgroup versus organizational identification and commitment」

たとえば、会社の方針には納得していても直属チームでは相談しにくい場合と、チーム内の関係は良好でも会社への不信が強い場合では、必要な対応が異なります。サーベイとヒアリングの結果をもとに、横のつながり、上司や会社からの支援、評価への納得感、意見の言いやすさなど、どこに課題があるのかを整理し、次の施策選定につなげましょう。

帰属意識を高める施策の選び方

原因を整理したら、その課題に直接関係する施策を検討します。社内イベントや研修が適する場合もあれば、1on1や評価プロセスなどを先に見直すべき場合もあります。ここでは、課題と実施条件の両面から施策を選ぶ方法を解説します。

課題ごとに対応の方向性を整理する

主な課題と取り組みの方向性は以下のとおりです。

課題取り組みの例
社員同士・部署間のつながりが弱い協働型ワーク、部署横断のチームビルディング、体験型研修
上司や会社からの支援を感じにくい1on1の運用見直し、フィードバック方法の改善、管理職研修
評価や意思決定への不満がある評価基準や手続き、説明方法の見直し
意見や失敗について話しにくい会議の進め方、管理職の関わり方、発言しやすい運営方法の見直し
会社の理念や方針が社員に浸透していない理念を自分の仕事に置き換えて考えるワーク、経営層との対話、ビジョン共有

上司や会社から支援されている感覚が弱い場合は、社員同士の交流を増やすだけでは十分とは限りません。RhoadesとEisenberger(2002)のレビューでは、知覚された組織的支援には、上司からの支援や公平性などが関連すると報告されています。

参考:Rhoades & Eisenberger(2002)「Perceived organizational support: A review of the literature」

また、評価や意思決定への不公平感が強い場合は、交流機会を増やすよりも評価基準や手続き、説明方法を見直すほうが課題に直接対応できます。Colquittら(2001)のメタ分析では、組織における公平性と組織コミットメントや職務満足などとの関連が確認されています。

参考:Colquitt et al.(2001)「Justice at the millennium: A meta-analytic review of 25 years of organizational justice research」

実施条件から優先順位を決める

取り組みの候補を整理したら、課題の範囲や優先度を確認します。制度や管理職の対応など根本的な課題がある場合は、交流イベントよりも原因に直接関わる改善を優先しましょう。

そのうえで、予算や準備時間、参加者・運営担当者の負担を踏まえ、実施可能な方法を選びます。少人数の協働型ワークなど小さく始める方法もあります。

社内イベント・研修の「やらされ感」を防ぐポイント

イベントや研修が自社の課題に合っていても、目的が伝わっていなかったり、参加者への配慮が不足していたりすると、負担感につながります。ここでは、社員が納得して参加しやすい企画・運営のポイントを解説します。

目的と参加条件を事前に伝える

案内では、抽象的な説明ではなく、課題と実施目的を具体的に伝えます。たとえば「普段関わる機会の少ない部署同士で協力し、相談しやすい関係づくりにつなげる」と示します。所要時間や内容、身体活動の有無、服装なども事前に共有しましょう。

Salamonら(2021)の研究では、研修に自発的に参加したと感じる程度が、研修内容を職場で活かそうとする動機や本人が認識した研修転移と正に関連していました。また、参加の自発性が低い場合には、上司からの支援も重要であることが示されています。

参考:Salamon et al.(2021)「The interplay between level of voluntary participation and supervisor support on trainee motivation and transfer」

参加しやすい進行にする

イベントや研修の内容をすべて参加者に任せる必要はありませんが、意見や選択を反映できる余地を設けます。Slempら(2018)のメタ分析では、本人の視点を尊重することや、選択・意見表明の機会を設けるといった自律性を支援する関わりが自律的な動機づけなどと関連することが報告されています。

参考:Slemp et al.(2018)「Leader autonomy support in the workplace: A meta-analytic review」

また、発言や個人的な経験の共有を無理に求めないことも大切です。Edmondson(1999)は、心理的安全性を「対人的なリスクを取っても安全だというチームの共有された認識」として扱っています。

参考:Edmondson(1999)「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」

もちろん、1回の研修だけで心理的安全性を醸成できるとは限りません。しかし、異なる意見や失敗を話しにくい進行にしてしまうと、十分に参加できない社員が出る可能性があります。発言量が一部の参加者に偏らないよう調整し、自己開示を強制しないなど参加しやすい進行を意識しましょう。

必須参加の場合は業務としての扱いを明確にする

会社が参加を求める研修やイベントでは、形式上「任意参加」とするだけでなく、実際の参加条件を明確にします。厚生労働省のガイドラインでは、業務上義務づけられている研修や参加しないことで不利益が生じ事実上参加を強制されている研修などは、労働時間として扱う考え方が示されています。実質的に参加が必要な施策であれば、業務として参加できる時間を確保し、通常業務との調整も行いましょう。

参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

体験型チームビルディングの選び方

社員同士のつながりや協働の機会が不足している場合は、体験型チームビルディングも候補になります。ここでは、自社の課題に合ったプログラムを選ぶポイントを解説します。

協力や情報共有が必要な内容か確認する

Kleinら(2009)のメタ分析では、目標設定、対人関係、問題解決、役割の明確化などを含むチームビルディングについて、チームの感情面やチーム内のプロセス、認知、パフォーマンスに全体として正の効果が確認されています。

参考:Klein et al.(2009)「Does Team Building Work?」

Reuterら(2025)の系統的レビューでは、企業や組織におけるゲーム・ゲーミフィケーションについて、組織学習や研修、従業員エンゲージメント、協働などの観点から研究結果が整理されています。

参考:Reuter et al.(2025)「The role of games and gamification in business and training: a systematic review」

ゲームの楽しさだけでなく、相談や情報共有、役割分担が必要な内容かを確認しましょう。

自社で増やしたい行動を体験できるか確認する

プログラムは、自社で増やしたい行動と照らし合わせて選びましょう。部署間の情報共有に課題がある場合は、参加者同士で情報を持ち寄らなければ進められない内容が候補になります。相談のしにくさが課題であれば、メンバーに声をかけたり、助けを求めたりする場面が生まれる内容が候補になります。

また、一部の人だけが中心となるのではなく、全員が何らかの形で協力できる設計かも確認しましょう。

外部サービスを利用する場合は対応範囲も確認する

自社だけで企画や進行、振り返りまで行うことが難しい場合は、外部サービスの活用も選択肢になります。サービスを選ぶ際は、プログラムの内容や費用だけでなく、自社の課題に合わせた調整ができるか、当日の進行や研修後の振り返りまで対応してもらえるかを確認しましょう。

体験を職場での行動につなげる振り返り方法

体験型研修は、参加して終わりにせず、体験中の行動を振り返り、普段の仕事に置き換えて考えることが重要です。ここでは、研修中の気づきを職場での行動につなげる振り返り方法を解説します。

体験中に起きたことを振り返る

振り返りでは、「楽しかった」「難しかった」といった感想だけでなく、実際に何が起きていたのかを整理します

TannenbaumとCerasoli(2013)のメタ分析では、構造化されたデブリーフィングを実施した条件は、比較条件より平均して約25%高いパフォーマンスを示したと報告されています。

参考:Tannenbaum & Cerasoli(2013)「Do Team and Individual Debriefs Enhance Performance? A Meta-Analysis」

たとえば、「必要な情報を持っていたのに共有できなかった」「途中から役割分担を変えたことで進みやすくなった」など、具体的な出来事を挙げましょう。そのうえで、「なぜうまくいったのか」「どこで連携が止まったのか」を考えると、チームの行動パターンを整理しやすくなります。

仕事で実践する行動を決める

体験中の行動を整理したら、普段の仕事にも同じ課題がないかを考えます。たとえば、ゲーム中に「必要な情報を持っている人が分からなかった」のであれば、実際の業務でも情報の所在が分かりにくくなっていないかを確認します。そのうえで、「連携を増やす」といった抽象的な目標ではなく、「判断に迷ったらチームに相談する」「必要な情報はメンバーへ共有する」など、実際に行動できる形まで具体化しましょう。

Blumeら(2010)のメタ分析では、研修で学んだ内容を職場で活用することには、本人の動機だけでなく、職場環境など複数の要因が関連することが報告されています。

参考:Blume et al.(2010)「Transfer of Training: A Meta-Analytic Review」

参加者本人に目標を決めてもらうだけでなく、上司やチームでも共有し、実践しやすい環境を整えましょう。

テレワーク環境での帰属意識向上のポイント

テレワークでは、雑談や相談の機会が減る場合がありますが、それ自体が帰属意識を低下させるとは限りません。ここでは、テレワーク環境で確認したい課題と対応方法を解説します。

テレワークそのものを原因と決めつけない

GajendranとHarrison(2007)のメタ分析では、テレワークが一律に職場の人間関係を悪化させるという結果ではありませんでした。一方、高頻度のテレワークでは、同僚との関係に不利な関連が見られています。

参考:Gajendran & Harrison(2007)「The good, the bad, and the unknown about telecommuting」

必要な情報にアクセスできるか、相談相手がいるか、意思決定に参加できているかなどを確認しましょう。

情報共有と交流の機会を確保する

テレワーク勤務者と出社している社員の間で情報格差が生じている場合は、会議で決まった内容を記録する、チャットで共有するなど、勤務場所に関係なく必要な情報を確認できる状態をつくりましょう。また、横のつながりが不足している場合は、オンラインで参加できる協働型ワークやチームビルディングも選択肢になります。

出社している社員だけで会話や意思決定が進んでいないかも確認し、テレワーク勤務者も意見を出したり議論に参加したりできる環境を整えることが大切です。

帰属意識向上施策の効果測定と改善方法

施策を実施したあとは、原因特定の段階で使用した項目をもう一度確認し、実施前後の変化を見ます。「自分はこのチームの一員だと感じる」といった帰属意識に関する回答だけでなく、「他部署へ相談する機会が増えたか」「必要な情報を共有するようになったか」など施策で増やしたかった行動も確認しましょう。

イベントや研修の場合、「楽しかった」「満足した」といった感想だけでは、当初の課題が改善したかまでは判断できません。部署間のつながりを増やすことが目的なら部署を越えた相談や情報共有、相談しやすさの改善が目的なら実際に声をかける機会など、施策の目的に対応した変化を見ることが重要です。

数値だけでは背景まで分からないため、自由記述やヒアリングも組み合わせます。変化が見られない場合は、施策の内容だけでなく、最初に特定した原因や実施方法が適切だったかを見直し、次の取り組みに反映しましょう。

まとめ

帰属意識を高めるには、まずサーベイやヒアリングを通じて、社員同士のつながり、上司からの支援、評価への納得感など、どこに課題があるのかを把握することが重要です。そのうえで、課題や予算、現場の負担に合わせて施策を選びましょう。

社内イベントや体験型研修を取り入れる場合は、目的を事前に伝えて参加しやすい進行にすることも大切です。社員同士のつながりが課題であれば、協力や情報共有が必要なチームビルディングも選択肢になります。

実施後は振り返りを行い、職場で実践する行動を具体化します。さらに、実施前後の変化や実際の行動を確認し、必要に応じて施策を見直すことで、継続的な改善につなげましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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