システム思考研修とは?内容・身に付くスキル・進め方・事例を解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

「同じ問題への対策を繰り返している」「部署間の連携がうまくいかない」――こうした組織課題に対応する研修を企画するなら、システム思考研修が選択肢になります。問題に関わる要素のつながりを捉え、課題を生み出す構造から改善策を考える研修です。

本記事では、システム思考研修の内容や身に付くスキル、役立つ場面を解説します。実施事例も踏まえながら、自社の課題に合う対象者や演習を選び、研修後の実践まで設計するためのポイントを紹介します。

 

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システム思考研修とは?注目される背景

部署をまたぐ問題や対策を講じても繰り返す問題に向き合う方法として、システム思考研修が注目されています。まずは研修で何を学ぶのかを見ていきましょう。

システム思考研修とは

システム思考研修とは、物事を構成する要素のつながりに着目し、問題が生じる仕組みを捉える方法を学ぶ研修です。ここでいう「システム」はITシステムではなく、人や業務、組織のルールなどが影響し合う仕組みを指します。

研修には、講義に加えてゲームやグループ演習を取り入れるものもあります。自社の課題を題材にすれば、学んだ考え方を業務に結び付けやすくなるでしょう。

システム思考研修が注目される背景

企業の課題は、一つの部署や原因だけでは説明できないことがあります。組織が大きくなれば関係者も増え、ある部署では効果のあった施策が、別の部署の負担につながる場合もあるでしょう。目の前の問題だけに対処していると、背景にある要因を見落とし、同じ問題を繰り返しかねません。

システム思考研修は、部署をまたぐ業務や人のつながりを整理し、組織全体を見渡しながら課題を考える際に役立ちます。立場の異なる社員が問題の構造を共有すれば、認識のずれにも気付きやすくなります。

 

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システム思考研修が役立つ場面

システム思考研修は、ある問題への対策が別の問題を生んだり、一度改善しても同じ問題が繰り返されたりする職場で役立ちます。たとえば、次のような課題が研修の題材になるでしょう。

役立つ場面具体的な課題
営業と生産の判断がかみ合わない受注を増やした結果、生産現場の負担が増え、品質の低下や納期遅延につながっている
部下の育成が進まない部下に主体性を求める一方で、上司が細かく指示を出しすぎ、自分で考える機会が減っている
既存事業と新規事業の両立が難しい新規事業に人員を割いた結果、既存事業の人手が不足し、業績に影響が出ている
採用しても人手不足が解消しない退職者を補うために採用を増やしても、離職の要因が残っており、人手不足を繰り返している

自社にこうした課題がある場合は、研修で具体的な業務を題材にすると、受講者が問題のつながりを捉え、改善策を話し合いやすくなります。

システム思考研修で身に付くスキル

システム思考研修では、目の前の問題を広い視野で捉え、改善策を考えるための力を養います。ここでは、システム思考研修で身に付く具体的なスキルを解説します。

1.課題を全体像と要素のつながりから捉える力

システム思考では、起きている問題だけでなく、関係する人や業務、組織のルールなどにも目を向けます。研修でこれらの要素を洗い出し、互いにどう影響しているかを考えることで、課題を全体像から捉える力が身に付きます。

たとえば、売上の伸び悩みを営業担当者だけの問題と決めつけず、商品供給や顧客対応など、関連する業務も含めて考えられるようになるでしょう。

2.問題が繰り返される構造を見つける力

システム思考研修では、問題が起きたときだけでなく、その前後に何が起きていたかを時系列で振り返ります。さらに、関係する要素が互いに与える影響をループ図などで整理します。

こうした分析を重ねることで、一時的に改善しても再発する問題について、繰り返しを生む構造を見つける力が身に付きます。目の前の出来事への対応にとどまらず、どの関係を見直す必要があるかを考えられるようになるでしょう。

3.施策の波及を考え、改善の糸口を探る力

一つの施策は、対象とする部署だけでなく、関連する業務や人にも影響するものです。システム思考研修では、ある施策を実施した場合に、関係する部署や業務へどのような影響が及ぶかも考えます。

時間がたってから現れる変化や別の問題が生じる可能性まで検討することで、施策の影響を広く見通す力が養われます。同時に、要素のつながりを踏まえ、どこに働きかければ改善につながるかを探る力も身に付くでしょう。

4.異なる立場の人と課題認識を共有する力

システム思考研修のグループ演習では、同じ問題について参加者それぞれの見方を出し合い、関係する要素を図に整理します。意見を出し合いながら図を作る経験を通じて、自分の見方を説明し、相手の視点を取り入れる力が身に付きます。

共通の図を使って話し合うことで、課題の捉え方をすり合わせる力も養われるでしょう。また、部署や役職によって把握している情報が異なることにも気付けます。

システム思考研修の進め方

システム思考研修を企画する際は、対象者と扱う課題を決めたうえで、考え方の理解から自社での実践へ進める構成が重要です。ここでは、研修の準備から実行計画の作成までを5つの手順で紹介します。

1.研修の目的と対象者を決める

まず、自社のどの課題にシステム思考を活かしたいかを明確にしましょう。たとえば、「部署をまたぐ問題を整理したい」「同じトラブルが繰り返される理由を考えたい」など、研修後に受講者へ期待する行動まで具体化します。

目的に合わせて、受講対象者も決めます。初めてシステム思考を学ぶ人が多い場合は、基本的な考え方を学ぶ時間を十分に確保しましょう。部署間の連携を見直すなら、関連する部署の管理職や担当者に参加してもらうと、それぞれの立場から課題を検討できます。

あわせて、研修後に作成した図を職場で共有したか、改善策を試したかなど、実践状況を確認する方法も決めておきましょう。

2.扱う業務課題と研修形式を選ぶ

研修で扱う課題は、複数の要因が関わり、参加者が自分の業務と結び付けて考えられるものを選びます。たとえば、部署間の引き継ぎで生じる手戻りや、人材育成に時間を割けない状況などです。課題が大きすぎると議論が広がりすぎるため、対象となる業務や期間を絞っておきましょう。

次に、目的に応じて研修の時間配分と実施形式を決めます。基本を知ることが目的なら、講義や動画による事前学習と短い演習を組み合わせる方法があります。一方、自社の課題を分析して改善策まで考えるなら、グループワークや発表に十分な時間が必要です。

参加者の経験や人数を踏まえ、対面・オンラインのどちらで意見交換しやすいかも検討しましょう。

3.ゲームや演習で「部分最適と全体最適」を体験する

システム思考の考え方を実感してもらうには、参加者が異なる役割を担うゲームや演習が役立ちます。

たとえば「ビールゲーム」は、サプライチェーンの仕組みや全体最適を学ぶためのビジネスゲームです。参加者は工場・卸・小売店などの役割に分かれ、手元の情報をもとに在庫や発注について判断します。それぞれが自分の役割にとってよい判断をしても、情報の遅れや判断の連鎖によって、全体では在庫過多や欠品が起こり得ることを体験できます。

結果を振り返る際には、「氷山モデル」を使うのもよいでしょう。氷山モデルは、目に見える出来事から、繰り返されるパターン、それを生み出す構造や行動の前提となる考え方へと掘り下げるための図です。ゲームで起きた欠品などを出発点に、「同じことは何度起きたか」「どのような判断や仕組みが影響したか」を話し合います。

ゲーム以外にも、部署ごとに異なる情報を与えるケース演習など、自社の目的に合う方法を選べます。

4.基本を学び、自社の課題を図で整理する

演習で得た気付きを、システム思考の基本的な考え方につなげます。目の前の出来事だけでなく、過去から続く変化や、関係する要素同士の影響を見ることを説明しましょう。そのうえで、自社の課題を題材に、問題がいつ、どのような状況で起きているかを整理します。

次に、人員、業務量、情報共有、判断のルールなど、課題に関わる要素を洗い出し、互いの影響をループ図に表します。ループ図とは、要素同士の影響を矢印で結び、そのつながりが巡って元の要素に影響を返す様子を示す図です。「この関係は事実か、推測か」「影響が現れるまでに時間差はあるか」を確認しながら、問題が繰り返される仕組みを考えましょう。

5.改善策を絞り込み、研修後の実行計画を作る

ループ図を作成したら、問題が繰り返される仕組みに関わる要素を確認し、どこに働きかけるかを話し合います。たとえば、引き継ぎの漏れが繰り返されている場合なら、担当者に注意するだけでなく、引き継ぐ情報や確認の手順に問題がないかを検討しましょう。対策によって別の部署の負担が増えないか確認することも重要です。

システム思考研修の最後には、改善策を試すための計画をまとめます。「何を、誰が、いつまでに試すか」に加え、結果を確認する時期と方法も決めておきましょう。参加者が計画を発表し、関係する部署や上司から意見をもらえば、実行前に必要な調整も見えてきます。

システム思考研修の事例

システム思考研修は、企業によって扱う課題や学習方法が異なります。ここでは、自社の研修を企画する際に参考になる2つの事例を紹介します。

みずほフィナンシャルグループ|職場の課題を構造から考えるワークショップ

みずほフィナンシャルグループでは、各部店が目指す職場の姿を実現するため、約半年間にわたる組織開発の取り組みを進めました。その一環として、2024年8月には5部店から86名が参加するオンラインワークショップを開催しています。

ワークショップでは、システム思考についての講義を受けたうえで、職場の課題を生み出す構造や、改善に向けて取り組むべき点について対話しました。参加者からは、グループでループ図を描き、自分とは異なる考え方に触れられたという声も挙がっています。

この事例からは、研修を単発で終わらせず、職場の目標設定やその後の活動計画と結び付ける進め方が参考になります。

参考:研修実績・事例紹介 – ビズパワーズ

寿精版印刷|事前学習と体験型研修を組み合わせた事例

寿精版印刷では、システム思考を社内で定着させるため、「システム思考入門/実践プログラム」を導入しました。予習用の動画で考え方に触れたうえで、集合研修では体験を通じて学ぶ構成です。

同社の担当者によると、研修後は曖昧だった情報を図や文章に整理して伝えたり、互いの前提を確認したりする機会が増えたといいます。システム思考を使って、職場の課題解決に取り組む動きも出始めています。

初めて学ぶ社員がいる場合には、事前学習と研修当日の体験を組み合わせ、学んだことを職場で使う機会につなげる方法が参考になるでしょう。

参考:導入企業の声 – 一般社団法人たまに

システム思考研修で学んだことを業務に活かす方法

研修で学んだシステム思考は、日々の会議や施策の企画、業務改善にも活かせます。ここでは、それぞれの場面でどのように使うかを具体的に見ていきましょう。

会議で課題の捉え方をそろえる

会議で意見がかみ合わないときは、参加者が別々の問題を想定している可能性があります。システム思考研修の学びを活かし、対策を話し合う前に「何が起きているか」「いつから続いているか」を確認し、関係する業務や人を書き出してみましょう。

たとえば、納期遅延について話す際に、営業担当者は受注時期、製造担当者は作業の集中に注目しているかもしれません。それぞれが持つ情報を一つの図に加えると、議論の対象をそろえやすくなります。

図にした関係のうち、事実として確認できたものと、まだ推測の段階にあるものも分けておくと、次に調べるべきことが明確になります。

新しい施策の企画時に影響を確認する

新しい施策を検討するときは、期待する効果だけでなく、その施策が関連する業務にどう影響するかを確認しましょう。たとえば受注拡大策なら、営業活動に加え、生産能力や納期、担当者の業務量との関係も考える必要があります。

企画段階で「誰の行動が変わるか」「効果が出るまでに時間差はあるか」「別の部署に負担が移らないか」を整理しておくと、施策の実施後に生じ得る問題を検討できます。関係する部署にも見立てを確認し、必要に応じて施策の内容や実施時期を調整しましょう。

業務の流れを確認し、小さな改善を試す

システム思考研修後は、計画した改善策を身近な業務で試します。

たとえば、引き継ぎ後の確認作業で手戻りが多いなら、どの情報が不足していたかを記録し、引き継ぐ側と受け取る側の双方に確認しましょう。そのうえで、共有する項目や伝えるタイミングを一つ変え、手戻りの回数や確認にかかる時間を見ていきます。

想定した変化がなければ、現場で分かったことを図に反映し、別の要因を検討します。こうした試行と確認を通じて、研修で立てた計画を実際の業務に合わせて調整できるでしょう。

システム思考研修の学びを職場に定着させるポイント

システム思考研修で課題の構造を理解しても、日々の業務で使わなければ学びは定着しません。受講者が職場で実践できるよう、研修後の取り組みもあわせて設計しましょう。

作成した図を職場で共有し、関係者の意見で見直す

研修で作成したループ図には、参加者が把握していない業務の事情が抜けている場合もあります。職場に持ち帰ったら、課題に関わる人にも図を見てもらい、「実際の業務の流れと合っているか」「見落としている要因はないか」を確認しましょう。

たとえば、部下の育成が進まない状況を扱った図なら、管理職だけでなく部下にも、業務量や相談のしやすさについて意見を聞きます。新たに分かったことを図に反映すれば、課題の捉え方を関係者と共有しながら、より現場に合った改善策を検討できます。

研修後の振り返りを予定に組み込む

システム思考研修で立てた計画を実行した後は、受講者が結果を持ち寄る機会を設けましょう。たとえば、研修から一定期間後に短い振り返りの場を設定し、「何を試したか」「想定した変化はあったか」「別の業務に影響は出ていないか」を確認します。

想定どおりに進まなかった場合も、現場で得た情報をもとに課題の捉え方や次の施策を見直せます。振り返る時期を研修時点で決めておくと、実践を一度きりで終わらせずに済みます。

管理職も巻き込み、業務の中で使う機会を作る

受講者が部署をまたぐ課題や業務のルールを見直そうとしても、本人だけでは進められない場合があります。そのため、システム思考研修の目的と受講者が考えた改善策を管理職にも共有し、必要な協力を得られる体制を整えましょう。

たとえば、定例会議で繰り返す問題を取り上げ、関係者と図を見ながら話し合う時間を設けます。管理職も対話に参加し、改善策を試すための調整を担えば、システム思考を特別な研修課題ではなく、日常の問題解決に活かしやすくなります。

まとめ

システム思考研修では、問題に関わる人や業務のつながりを捉え、課題を生み出す構造から改善策を考えます。自社で企画する際は、目的と対象者を明確にし、受講者が自分の業務に置き換えて考えられる題材や演習を選びましょう。
システム思考研修で得た気付きを職場で活かすには、関係者と課題の捉え方を共有し、改善策を試して振り返ることも大切です。研修後の実践まで見据えて設計し、繰り返す課題の見直しにつなげましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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