新入社員研修カリキュラムの作り方|6つの手順と優先順位の決め方、現場への質問例と作成例を紹介

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

新入社員研修のカリキュラムは、配属後に求める行動を明確にし、必要な研修項目を選んだうえで、実施時間や担当者などの条件に合わせて組み立てることが基本です。しかし、経営層や配属先の要望をすべて盛り込もうとすると、項目の優先順位を決められず、予定期間に収まらないこともあります。

本記事では、現場への質問例やカリキュラム表の記入例などを交えながら新入社員研修カリキュラムの作り方を6つのステップで解説し、配属前と配属後の研修・OJTを適切に切り分けながら実施可能な計画にまとめる方法を紹介します。

 

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【ステップ1】新入社員研修の到達目標と実施条件を決める

カリキュラムを作成する前に、配属後に求める行動と研修に使える条件を整理します。ここでは、到達目標を具体化する方法と、実施期間・予算・担当者などの条件の整理方法を解説します。

配属後に求める行動を具体化する

「主体性を身につける」「社会人としての自覚を持つ」といった抽象的な目標だけでは、必要な研修内容や達成度の確認方法を判断しにくくなります。まず、経営方針や配属先の期待を確認し、「どのような場面で、何ができるようになってほしいか」を具体的にしましょう。

例えば、「主体性を身につける」という目標なら、「担当業務で不明点が生じた際、自分で調べた内容と質問事項を整理し、上司へ相談できる」といった行動に置き換えられます。

厚生労働省の「事業内職業能力開発計画」でも、仕事の種類やレベルごとに身につけるべき能力と必要な学習・訓練を整理する考え方が示されています。

参考:事業内職業能力開発計画|厚生労働省

こうして配属後に求める行動を明確にしておけば、研修項目を洗い出す際に、その内容が目標の達成につながるかを判断しやすくなるでしょう。

期間・予算・担当者などの制約を整理する

到達目標とあわせて、研修の実施に必要な条件も整理します。確認する項目は次のとおりです。

  • 研修期間と1日あたりの実施可能時間
  • 対象者の人数と配属予定
  • 研修に使える予算
  • 講師・運営担当者と対応可能な時間
  • 会場・設備・教材の利用条件

例えば、研修期間が3日間でも、休憩や移動、準備に必要な時間を除くと、実際に研修へ使える時間は限られます。日ごとの実施可能時間を確認し、合計時間を算出してください。

次に、配属日や予算上限などの「変更しにくい条件」と、実施方法や講師の担当などの「調整できる条件」を分けます。

条件を整理した結果は、後から研修項目の優先順位を決めたり、必要な時間が予定を超えた際に内容を調整したりするための判断材料として使用しましょう。

 

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【ステップ2】現場へのヒアリングで必要な研修項目を洗い出す

到達目標と実施条件が決まったら、配属先の管理職やOJT担当者に、実際の業務で必要な知識・技能を確認します。ここでは、現場への質問例と、集めた回答を研修候補に整理する方法を解説します。

管理職・OJT担当者へ6つの質問をする

現場へのヒアリングでは、「新人に何を教えたいですか」と尋ねるだけでなく、配属後に任せる業務やつまずきやすい場面まで確認しましょう。

人事・人材育成の専門団体である英国CIPDの「Learning needs analysis」でも、育成上の必要性を把握する方法として、関係者への聞き取りや業務資料の確認などが紹介されています。

具体的には、次のような質問を用意すると、研修に必要な情報を整理しやすくなります。

  • 配属後1か月以内に任せる具体的な業務は何ですか。
  • その業務で最低限できるようになってほしいことは何ですか。
  • 新入社員が最初につまずきやすい場面や失敗は何ですか。
  • 配属前の集合研修で教えておくべき知識・技能は何ですか。
  • 配属後のOJT(実務を通じた指導)で教えられる内容は何ですか。
  • 習得できたか、現場では何を見て確認しますか。

例えば、「コミュニケーション能力が必要」という回答があれば「誰との、どのような場面で必要なのか」を追加で確認します。また、部署によって求める能力や水準が異なる場合もあるため、配属先と回答者も記録しておきましょう。

参考:Learning needs analysis|CIPD

回答を業務場面・行動・知識・研修候補に整理する

ヒアリングで集めた要望は、そのまま研修項目にするのではなく、「業務場面」「必要な行動」「必要な知識・技能」「研修候補」の4つに分けて整理します。

例えば、「報告が遅い」という課題が挙がった場合は、次のように具体化できます。

区分記入例
業務場面作業中に問題が発生したとき
必要な行動状況と相談事項を整理して上司に報告する
必要な知識・技能報告のタイミング、伝える項目、事実と意見の区別
研修候補報連相の基本、問題発生時の報告演習

 「報告が遅い」という要望だけでは、必要な知識が不足しているのか、連絡手段や業務上のルールに問題があるのか判断できません。原因を確認し、研修で習得できる内容を候補として挙げます。

こうして洗い出した研修候補は、次のステップで到達目標と照らし合わせ、具体的な内容や実施方法を決める際に使用しましょう。

なお、新入社員研修で扱う代表的なテーマについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

関連記事:新入社員研修の内容とは?基本カリキュラム9選と研修の進め方を解説

【ステップ3】到達目標に合う研修内容と評価方法を設計する

研修候補がそろったら、それぞれの項目について、何を教え、どのように習得状況を確認するかを決めます。ここでは、研修項目ごとの到達目標の設定方法と目標に合った学習内容・実施方法・評価方法の決め方を解説します。

研修項目ごとの到達目標を具体化する

ステップ1で設定したのは、配属後に求める行動です。この段階では、その実現に向けて、各研修の終了時点で何ができるようになっていればよいかを具体化します。

例えば、配属後の目標が「問題発生時に上司へ適切に相談できる」ことであれば、報連相研修では「問題の発生状況、自分が対応した内容、相談事項を整理して報告できる」といった到達目標が考えられます。

目標を設定する際は、次の3点を明確にすると整理しやすくなります。

  • どのような場面で行うのか
  • どのような条件で行うのか
  • 何ができれば達成と判断するのか

「報連相を理解する」といった抽象的な表現ではなく、研修中に確認できる行動として記載することがポイントです。

到達目標に合わせて研修内容・実施方法・評価方法を決める

到達目標が決まったら、その達成に必要な知識・技能を洗い出し、実施方法と評価方法を組み合わせます。

カーネギーメロン大学の教育設計資料では、学習目標・指導方法・評価方法を対応させる考え方が示されています。企業研修においても、教える内容と習得状況の確認方法にずれがないかを点検するうえで参考になる手法です。

例えば、報連相研修は次のように設計できます。

設計項目具体例
到達目標問題の発生状況や相談事項を整理して報告できる
研修内容報告のタイミング、伝える項目、事実と意見の区別
実施方法基礎説明、事例検討、ロールプレイ
評価方法模擬報告で必要な情報を伝えられるか確認

知識の習得を目標とする場合は、確認テストなどが選択肢になります。一方、実際の対応が求められる場合は、ロールプレイによる行動確認が適しています。

実施方法を決めたら、到達目標に必要な練習ができるか、評価方法で達成度を確認できるかを見直しましょう。ここで整理した内容は、次のステップで研修項目の優先順位を判断する際にも使用します。

参考:Align Assessments, Objectives, Instructional Strategies|カーネギーメロン大学 Eberly Center

【ステップ4】研修項目を絞り込み、優先順位を決める

研修内容を具体化したら、自社の業務や研修期間に合わせて、実施する項目を絞り込みます。ここでは、研修項目の必要性を確認する方法と優先順位に応じて実施時期や担当を振り分ける方法を解説します。

5つの観点から研修項目の必要性を確認する

ステップ3で具体化した研修候補について、配属前に実施する必要があるかを確認しましょう。判断する際は、次の5つの観点から検討すると整理しやすくなります。

  1. 配属直後の業務で必要になるか:配属直後から使用する知識・技能は優先的に扱います。一方、数か月後に必要となる応用的な内容は、実施時期を遅らせることも検討します。
  2. 未習得のまま業務に入る影響が大きいか:情報管理や安全衛生など、知識不足による事故やトラブルが懸念される内容は優先度を高くします。法令で求められる教育については、対象業務や実施条件を別途確認する必要があります。
  3. 他の研修を受ける前提になっているか:応用的な演習に必要な基礎知識は、先に習得する内容として残します。複数の研修で説明が重複している場合は、共通部分をまとめることも検討します。
  4. 配属後のOJTで習得できるか:部署固有のシステム操作や業務手順などは、現場で教える方法も考えられます。ただし、OJT担当者や指導時間を確保できることが前提です。
  5. 新入社員全員に必要な内容か:全社共通の内容と特定職種だけで必要な内容を区別します。例えば営業職向けの商談演習は、職種別研修に分ける方法が考えられます。

判断に迷う場合は、要望を出した部署に「どの業務で、いつまでに必要か」を確認しましょう。

研修項目を実施時期や担当に応じて振り分ける

5つの観点で必要性を確認したら、研修候補を「配属前に実施」「配属後に延期」「OJTで実施」「今回の対象外」に振り分けます。例えば、次のように整理できます。

研修候補 振り分け先判断理由
報連相の基本配属前に実施配属直後から必要
応用的な交渉スキル配属後に延期使用する時期が先
部署固有のシステム操作OJTで実施配属先で指導できる
他の研修と重複する講義今回の対象外別の研修で必要な内容を扱える

 配属前に実施する内容のうち、特定の職種だけに必要なものは、職種別のカリキュラムへ分けましょう。

また、配属後に延期した内容やOJTへ移した内容については、実施時期・担当者・習得状況の確認方法を決めておく必要があります。

振り分けが終わったら、配属前に実施する研修項目の所要時間を合計し、確保した時間内に収まるかを次のステップで確認します。

【ステップ5】所要時間を見積もり、時間不足を調整する

研修項目を絞り込んだら、必要な時間を算出し、実施可能時間と比較します。ここでは、所要時間の見積もり方と、時間が不足した場合の3つの調整方法を解説します。

研修項目ごとの所要時間を算出する

各研修に必要な時間を「説明」「演習」「理解度確認・振り返り」に分けて算出し、合計します。休憩や移動時間も考慮し、ステップ1で確認した実施可能時間と比較してください。

例えば、使用できる時間が360分、研修に必要な時間が450分であれば、90分の超過です。この場合は、到達目標に必要な内容を残しながら、実施方法や時期を見直します。

カーネギーメロン大学の授業設計ガイドでも、学習活動に必要な時間を見積もり、予定に合わせて調整する考え方が紹介されています。

参考:Plan Your Course Content and Schedule|カーネギーメロン大学 Eberly Center

基礎知識の説明を事前学習へ移す

会社概要や基本ルールなど、資料や動画で学べる内容は、集合研修の前に学習してもらう方法があります。先ほどの計画であれば、30分の基礎説明を事前課題に変更し、集合研修では理解度の確認と演習を中心に実施する形が考えられます。

事前学習を取り入れる際は、教材・受講期限・学習状況の確認方法を決めておきましょう。受講者の負担や学習環境も確認し、集合研修の前に無理なく取り組めるかを判断してください。

配属後の研修・OJTへ移す

事前学習への移行だけで時間が足りない場合は、ステップ4で整理した優先順位を再確認します。配属後に習得しても業務に支障がない内容や現場で指導できる内容が調整の候補です。例えば、先ほどの計画から30分を事前学習へ、さらに60分をOJTへ移せば、集合研修は360分に収まります。

ただし、集合研修の時間を減らしても、必要な学習そのものがなくなるわけではありません。移行先の担当者・実施時期・習得状況の確認方法を決め、配属後の育成計画に反映します。

複数の学習目標を1つの演習にまとめる

研修内容に重複がある場合は、複数の学習目標を1つの演習でまとめて実施できないか検討します。情報共有と意見の伝え方を別々の演習で練習する代わりに、チームで課題に取り組む活動を設け、それぞれの行動を確認する方法も選択肢です。

ただし、内容をまとめることで必要な練習が不足したり評価しにくくなったりする場合は、無理に統合する必要はありません。

実施方法を変更する際は、調整後の所要時間を再計算するとともに、各到達目標に必要な演習と評価の機会が確保されているかを確認します。

【ステップ6】カリキュラム表を作成し、実施前に点検する

研修項目と所要時間が決まったら、実施計画をカリキュラム表にまとめます。ここでは、表の作成方法と、実施前に確認すべき項目を解説します。

決定事項をカリキュラム表にまとめる

カリキュラム表には、実施時期・対象者・研修テーマ・到達目標・研修内容・実施方法・所要時間・担当者・評価方法を記載します。報連相研修を題材とした記入例は、次のとおりです。

項目記入例
実施時期入社1週目
対象者新入社員全員
研修テーマ報連相
到達目標問題発生時に状況と相談事項を整理して上司に報告する
研修内容報告の基本、事例演習
実施方法説明、ロールプレイ
所要時間90分
担当者人事・現場担当者
評価方法模擬報告で必要な情報を伝えられるか確認

作成する際は、ステップ4で決めた優先順位とステップ5で調整した所要時間を反映します。職種別研修は対象者を明記し、配属後の研修やOJTに移した項目も別途管理しておきましょう。

実施前に4つの項目を点検する

カリキュラム表が完成したら、研修担当者や配属先の管理職と内容を共有し、計画どおりに実施できるかを点検します。主な確認項目は、次の4つです。

  • 目標・評価: 到達目標に必要な研修内容と演習があり、評価方法も対応しているか
  • 時間・負荷: 説明・演習・振り返り・休憩の時間を確保できているか
  • 担当者・設備: 講師、会場、教材、機器などの準備が整っているか
  • 現場連携: OJTへ移した項目の担当者・実施時期・確認方法を共有できているか

不備が見つかった場合は、該当する工程に戻って修正しましょう。評価方法が不明確ならステップ3、時間が不足しているならステップ5、OJTの指導体制に問題があればステップ4から見直します。

確認が完了したら、日別・時間帯別のスケジュールを確定し、教材や受講案内などの準備を進めます。より詳しい時間割の作成方法については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:研修スケジュールを作成する流れとポイント・具体例を解説

まとめ

新入社員研修のカリキュラムを作成する際は、配属後に求める行動を基準に必要な研修項目を選ぶことが大切です。現場からの要望をすべて取り入れるのではなく、配属直後の業務で必要か、別の時期や方法で教えられないかを確認し、優先順位を決めます。

予定時間に収まらない場合も必要な演習を安易に削るのではなく、事前学習やOJTへの移行などを検討しましょう。
まずは、配属先へ「最初の1か月で任せる業務」を確認し、研修に使える時間とあわせて整理するところから始めてください。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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