新入社員研修の設計手順|現場課題の整理から効果測定まで7ステップで解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

新入社員研修を設計するときは、「何を教えるか」から考えるのではなく、まず現場でどのような課題が起きているのかを把握することが出発点です。そのうえで、受講者の現状を確認し、研修後に求める行動を明確にして学習目標へ落とし込みます。

本記事では、新入社員研修の設計手順を7つのステップで解説します。現場課題の整理から、受講者の現状把握、学習目標の設定、タイムスケジュール作成、内製・外部委託の判断、OJTとの連携、効果測定まで順に紹介します。

 

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STEP1|新入社員研修で解決する課題を明確にする

最初に、現場から挙がっている要望の背景を確認します。「報連相を強化したい」「主体性を高めたい」といった声があっても、その原因が新人の知識・技能にあるとは限りません。

関係者から情報を集め、研修で改善を目指す課題と、職場の仕組みやOJTで対応すべき課題を切り分けます。ここでは、課題の集め方と整理方法を解説します。

関係者から課題を集める

米国人事管理局(OPM)は、研修ニーズを「組織」「職種」「個人」の3つのレベルから確認する考え方を示しています。

参考:U.S. Office of Personnel Management「Planning & Evaluating」

CDCでは、ニーズ分析の方法として、既存データの確認、インタビュー、アンケート、フォーカスグループなどを挙げています。こうした方法で現状と求める状態の差、その背景にある原因を確認しましょう。

参考:CDC「Assess Training Needs: Conducting Needs Analysis」

新入社員研修では、こうした考え方を踏まえ、経営陣や配属先など異なる立場から情報を集めると課題を多面的に捉えやすくなります。前年の受講者がいる場合は、配属後に感じた不足や研修で役立った内容も確認するとよいでしょう。

  • 経営陣:「入社半年~1年後に、どのような状態になっていてほしいか」「新人育成によって改善したい組織上の課題は何か」
  • 配属先:「新人が最初の1~3カ月で担当する業務は何か」「例年どこでつまずくか」「その原因は知識・技能・手順などのどこにあるか」
  • 前年の受講者がいる場合:「研修で役立った内容は何か」「配属後に初めて困ったことは何か」「研修では足りなかった内容は何か」

複数の立場から情報を集め、共通して挙がる課題や認識の違いを確認します。

研修で解決できる課題かを切り分ける

ヒアリングで挙がった要望は、そのままカリキュラムへ入れるのではなく、背景にある原因まで確認します。

同資料では、知識・技能・行動に課題がある場合は研修が解決策になり得る一方、方針や職場環境、組織、業務手順などに原因がある場合は、研修以外の対応も検討するとしています。

たとえば、「新人の報告が遅い」という課題があったとします。「報告するタイミングを知らない」「伝える内容を整理できない」といった知識や技能の不足であれば、研修で扱う候補になります。

一方、「部署ごとに報告のルールが違う」「上司によって求める方法が異なる」「質問しづらい」といった問題は、新人本人への研修だけでは改善しにくいでしょう。業務ルールやOJTの運用も含めた見直しが必要です。

判断に迷う場合は、「正しいやり方を知り、練習すれば新人本人が改善できる課題か」を基準にします。本人への教育だけでは変えにくい原因は、研修外で対応する課題として分けておきましょう。

最終的に、ヒアリングで挙がった課題を「研修で扱うもの」と「業務ルールやOJTで対応するもの」に分けます。研修で扱う課題が決まったら、次は受講者の現状を確認します。

 

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STEP2|受講者の現状を把握する

研修で扱う課題を整理したら、次に受講する新入社員の現状を確認します。同じテーマを扱う場合でも、すでに知識や経験がある人と初めて学ぶ人では、必要な説明量や演習の難易度が異なるためです。

「最近の新入社員は〇〇」といったイメージだけで設計せず、研修前のアンケートなどを活用し、自社の受講者がどのような状態にあるのかを把握しておきましょう。

確認項目の例は、次のとおりです。

  • 経験したことがある業務
  • 不安を感じていること
  • 身につけたいこと
  • 配属後に心配していること

こうした回答は、扱う内容の重点や、説明量・演習の難易度を調整する材料になります。たとえば、報連相に不安を感じる人が多い場合は、ケース演習の前に基本的な考え方を確認する時間を設けます。反対に、すでに基本を理解している人が多ければ、知識説明を減らし、判断を求めるケース演習へ時間を回すのもおすすめです。

また、必要な研修内容は職種や配属予定先によっても変わります。受講者情報を確認しておけば、全員共通で学ぶ内容と配属先ごとに扱う内容も分けやすくなるでしょう。

STEP3|求める行動と学習目標を設定する

受講者の現状を把握したら、研修後に「何ができるようになってほしいか」を明確にします。「主体性を高める」「報連相を徹底する」といった抽象的な目的を現場で確認できる行動へ変え、学習目標と評価方法まで落とし込んでいきます。

ここでは、求める行動の具体化と、学習目標・評価方法の決め方を解説します。

抽象的な目的を「現場で確認できる行動」に変える

CDCは、学習目標を具体的かつ測定可能な内容にし、その目標に合った学習活動と評価方法を設計する考え方を示しています。

参考:CDC「Design Training: Learning Objectives」

たとえば「報連相を徹底する」だけでは、研修後に何ができれば達成したといえるのかが曖昧です。そこで、「判断に迷ったとき、自分の考えと確認したい点を整理して上司へ相談できる」のように、職場で確認できる行動まで具体化します。

「主体性を高める」という目的も同様です。「指示を待つ前に、担当業務で次に必要な作業を整理し、不明点があれば相談できる」など実際の行動に置き換えると、研修で何を扱うべきかが見えやすくなります。

行動から学習目標と評価方法を決める

求める行動が決まったら、研修内で練習・確認できる学習目標へ分解します。たとえば「判断に迷ったとき、自分の考えと確認したい点を整理して上司へ相談できる」という行動なら、次のように設定できます。

  • ケースを読み、報連相が必要な場面を判断できる
  • 状況、自分の考え、確認したいことを整理できる
  • ロールプレイで要点を伝えられる

評価方法も、学習目標と同時に決めておきましょう。目標を書く際は、「理解する」「意識を高める」といった達成状況を判断しにくい表現を避け「説明できる」「判断できる」「作成できる」「実践できる」など、確認可能な動詞に置き換えるのがポイントです。

STEP4|学習目標からタイムスケジュールを組み立てる

学習目標が決まったら、必要な説明・演習・振り返りを時間割へ落とし込みます。先に「午前は講義、午後はワーク」と枠を埋めるのではなく、各目標を達成するために必要な活動から考えることが大切です。

ここでは、1日研修では時間単位で、複数日研修では期間全体でタイムスケジュールを組み立てる方法を解説します。

1日研修は時間単位で組み立てる

たとえば、「必要なタイミングで報連相できる」を1日の学習目標にする場合は、次のように組み立てられます。時間配分は標準値ではなく、目標との対応を考えるための例です。

【例】

  • 9:30~10:00 学習目標の共有・受講者の現状確認
  • 10:00~11:00 報連相が必要な場面や基本的な考え方の説明・例示
  • 11:00~12:00 ケースを使った判断練習・フィードバック
  • 13:00~14:30 ロールプレイによる伝え方の練習
  • 14:45~16:00 より実務に近いケースで再実践
  • 16:00~17:00 振り返り・配属後に実行する行動の整理

各ブロックは、学習目標と対応させて配置します。「報連相が必要な場面を判断できる」という目標ならケース演習、「要点を整理して相談できる」ならロールプレイなど、目標に合った活動を選びましょう。

また、演習後にはフィードバックを受けて再び試す時間も確保します。作成後に時間割を見直し、学習目標と結びつかない内容は削る一方、必要な練習が不足していれば追加します。

複数日研修は期間全体で組み立てる

複数日にわたる場合も、テーマを日ごとに並べるだけではなく、「学ぶ→試す→振り返る→再び使う」という流れを期間全体につくります。

たとえば、1週間なら次のような構成が考えられます。

  • 1日目:会社理解、学習目標の共有
  • 2日目:ビジネスマナー、報連相などの基本行動
  • 3日目:業務で必要な思考・コミュニケーションの練習
  • 4日目:複数の学習内容を使う模擬業務
  • 5日目:総合演習、振り返り、配属後の行動整理

2日目に報連相を学んだのであれば、そこで完結させず、4日目の模擬業務でも報連相を評価項目に含めるなど、別の場面で再び使う機会を設けましょう。

1カ月以上にわたる場合も、「何日研修するか」から考えるのではなく、必要な行動をいつ学び、いつ試し、いつ振り返るのかを決めて期間全体を組み立てます。

関連記事:研修スケジュールを作成する流れとポイント・具体例を解説

STEP5|内製と外部委託を切り分ける

タイムスケジュールまで決まったら、各テーマを社内で実施するか外部へ依頼するかを決めます。研修全体を「すべて内製」「すべて外部委託」のどちらかに統一する必要はありません。

ATDでは、研修を自社で開発するか外部から購入するかを検討する際の判断材料として、予算、人員、時間、必要な支援などを挙げています。

参考:Association for Talent Development「Build Versus Buy: Lessons From Peers」

新入社員研修では、カリキュラムをテーマごとに分け、次のような項目を確認すると判断しやすくなります。

  • 社内でしか教えられない内容か
  • 適切に教えられる人材がいるか
  • 教材作成や運営に必要な時間を確保できるか
  • 外部へ依頼する場合、どの学習目標を任せるのか

企業理念や社内制度、業務手順、社内システムなどは、自社の事情を理解している社員が扱いやすい領域です。一方、社内に講師や研修設計の知見がないテーマや大人数での運営に多くの準備が必要なプログラムは、外部委託も選択肢になります。

外部へ依頼する場合は、STEP3で設定した学習目標とのつながりも確認しましょう。研修の内容や形式だけで選ぶのではなく、「どの行動を練習できるか」「振り返りやフィードバックの機会があるか」「配属後の実践につなげられるか」といった点まで確認することが大切です。

たとえば「チームワークを高めたい」という目的だけで選ぶのではなく、「自分の考えを伝える」「他者の意見を聞いたうえで判断する」など、研修で身につけてほしい行動まで具体化して比較します。

STEP6|研修とOJTをつなぐ

研修で学んだことを配属後の仕事で実践できるようにするには、研修とOJTを別々に考えず、連携方法を決めておくことが大切です。

ここでは、配属先と学習目標・行動項目を共有する方法と配属後の実践状況やつまずきの原因を確認するポイントを解説します。

配属先と学習目標・行動項目を共有する

研修内容を職場で活用し続けることは、研修の「転移」と呼ばれます。職場環境に関するメタ分析では、上司・同僚・組織からの支援と、研修内容の職場での活用との関連が報告されています。

参考:Hughes et al.(2020)“The Role of Work Environment in Training Sustainment: A Meta-Analysis”

研修とOJTをつなぐ際は、次の流れで配属先と情報を共有します。

  1. 実施前:研修で扱う学習目標と、配属後に実践してほしい行動を共有する
  2. 研修終了時:本人が配属後に取り組む行動を整理する
  3. 配属後:上司・OJT担当者が同じ行動項目で実践状況を確認する

OJT用に別の評価基準を新しく作る必要はありません。STEP3で設定した「現場で確認できる行動」を、そのまま配属後の確認項目として使います。研修とOJTで同じ行動を見ることで、配属後にどこまで実践できているかを追いやすくなるでしょう。

配属後の実践状況とつまずきの原因を確認する

配属後は、「実践する機会があったか」「実際にできていたか」「難しかった場面は何か」を確認します。できていなかった場合もすぐに「研修が足りなかった」と判断するのではなく、原因を分けて考えることが大切です。

たとえば、次のような可能性があります。

  • 実践する機会そのものがなかった
  • 研修で扱った方法と、現場で求められる方法が異なっていた
  • 知識は理解しているが、実際の場面では判断に迷っていた

原因によって必要な対応は異なります。研修内容を見直すだけでなく、実践機会のつくり方や上司・OJT担当者との認識のずれも含めて見直しましょう。研修とOJTで同じ行動を確認しておけば、配属後に集めた情報を効果測定や今後の研修改善にも活用できます。

STEP7|効果測定と改善の流れを設計する

STEP3で決めた評価方法をもとに、研修直後と配属後で何を確認するかを整理します。研修中に学習目標を達成できたかだけでなく、配属後に実際の仕事で行動できているかまで確認することが大切です。

ここでは、研修直後と配属後で測定内容を整理する方法とその結果を報告や次回の研修改善に活用する方法を解説します。

研修直後と配属後で測る内容を分ける

研修の効果は、「反応・学習・行動・結果」の4つの観点に分けて整理できます。カークパトリックの研修評価モデルで用いられる区分です。

ただし、Alliger & Janak(1989)は、「満足度が高ければ学習し、学習すれば行動や成果につながる」といった単純な因果関係として捉えることには注意が必要だと指摘しています。4つの観点は、何を確認するか整理するための枠組みとして活用しましょう。

参考:Alliger & Janak(1989)“Kirkpatrick’s Levels of Training Criteria: Thirty Years Later”

  • 反応:仕事内容との関連性や難易度、実務で使いたいと感じた内容
  • 学習:知識テスト、ケース判断、ロールプレイなどの結果
  • 行動:配属後に、研修で扱った行動を実際の仕事で使えたか
  • 結果:研修で改善を目指した現場課題に、どのような変化があったか

なお、「結果」は研修だけで決まるものではないため、ほかの要因も含めて変化を確認します。

CDCでも、研修前後の学習状況や一定期間後に職場で活用できたかを確認する評価方法が示されています。

参考:CDC「Evaluate Training: Measuring Effectiveness」

研修直後は、STEP3で決めた評価方法を使って学習目標の達成度を確認しましょう。配属後は、同じ行動を実際の仕事で実践できているかを見ていきます。必要に応じて本人だけでなく、上司やOJT担当者にも同じ項目を尋ねると、認識の違いも把握しやすくなるでしょう。

STEP3で設定した学習目標と評価項目は、効果測定でもそろえておくことが大切です。研修中は「相談場面を判断できる」を目標にしていたのに、終了後は「研修は楽しかったか」だけを聞く、といったずれがないようにします。

関連記事:研修の効果測定とは?方法・課題・ポイントを解説

効果測定の結果を報告・改善に活用する

効果測定の結果は、確認して終わりにせず、社内への報告や次回の研修改善に活用します。報告する際は、テストの点数や満足度だけを並べるのではなく、「当初の課題に対して、どこまで変化を確認できたか」が分かる形にまとめましょう。

報告内容は、次の4項目で整理できます。

  1. 研修の目的:解決したかった現場課題と学習目標
  2. 達成度:テスト、ケース、ロールプレイなどの結果
  3. 配属後の状況:設定した行動を実践できているか、現場からどのような声があったか
  4. 次回の改善:達成できなかった目標と、カリキュラムやOJTで見直す点

効果測定の結果からどの段階に課題があるのかを確認します。研修直後の達成度が低ければ、対応する講義や演習、フィードバックを見直しましょう。配属後の実践に課題がある場合は、STEP6で確認したOJTや職場での支援も含めて改善点を検討します。

効果測定を「報告のための作業」で終わらせず、次回の研修設計へ戻すところまで含めて考えることで、設計と改善のサイクルをつなげられます。

まとめ

新入社員研修を設計する際はカリキュラムを先に決めるのではなく、まず現場の課題を把握し、研修で解決すべきものを明確にします。そのうえで、受講者の現状と求める行動を整理し、学習目標・演習・評価方法を一続きで設計することが大切です。

また、研修を実施して終わりにせず、OJTや配属後の効果測定までつなげることで、実務での行動変化も確認しやすくなります。

まずは配属先へ「新人にどのような行動ができるようになってほしいか」「現在どこでつまずいているか」を確認するところから始めてみてください。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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