入社前研修の内容・進め方|賃金・強制参加の注意点と実施のポイント
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入社前研修では、ビジネスマナーなどの基礎知識を扱うだけでなく、入社後の仕事や役割への理解を深めたり同期や社員との関係づくりにつなげたりすることも大切です。
一方で、「何を実施すればよいか」「賃金の支払いは必要か」「参加を必須にしてよいか」「自社で実施するか外部へ委託するか」など、企画段階で迷う研修担当者も少なくありません。
本記事では、新人の組織適応に関する研究や公的資料をもとに、入社前研修の目的や参加条件に関する注意点、内定者が主体的に参加しやすい研修の設計方法を解説します。体験型ワークの取り入れ方や実施時期・頻度、内製・外部委託の選び方も紹介します。
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入社前研修の主な目的
企業が入社前研修の内容を決める前に、まず「何のために実施するのか」を明確にする必要があります。新人の組織適応を扱ったBauerら(2007)の研究では、「役割の明確さ」「自己効力感」「社会的受容」が新人の適応状態として扱われています。ここでは、これらを参考に入社前研修の主な目的を3つ紹介します。
入社後の仕事や役割への理解を深める
内定者のなかには、入社前の段階では実際にどのような仕事をするのか、自分に何が求められるのかを具体的にイメージできていない人もいます。
そのため、企業側は業務内容や入社後の流れ、配属後に想定される仕事などを伝える機会を設けましょう。会社説明だけで終わらせず、先輩社員との座談会や質疑応答を取り入れると、内定者が入社後の働き方を具体的にイメージしやすくなります。
入社後の仕事に対する不安を減らす
内定者が抱える「仕事についていけるだろうか」「社会人として必要なことが身についているだろうか」といった不安に対応することも入社前研修の目的の1つです。
ビジネスマナーや基本的なPC操作など、入社後に必要となる基礎的な内容を研修に取り入れましょう。ただし、内定者に入社前から高度なスキルの習得を求めるのではなく、安心して仕事を始めるための準備として位置づけることが大切です。
同期や社員との関係をつくる
内定者が入社前に同期や社員との接点を持てるようにすることも、研修の役割の1つです。
自己紹介や懇親会に加えて、少人数のグループワークや先輩社員との対話など、互いに関われる機会を設けましょう。入社前から同期や社員の顔や人柄を知ることで、入社後に声をかけたり相談したりするきっかけをつくりやすくなります。
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入社前研修の賃金・強制参加に関する注意点
企業が入社前研修を実施する際は、研修内容だけでなく、参加を必須とするか、賃金の支払いが必要かも事前に整理しておく必要があります。入社前であっても、実施方法によっては研修時間が労働時間に該当します。ここでは、研修担当者が賃金や参加条件を判断する際の考え方と実施時に押さえておきたい点を紹介します。
研修が労働時間に該当するかを確認する
入社前研修で賃金が必要かどうかを判断する基準となるのが、その研修時間が「労働時間」に当たるかどうかです。
厚生労働省のガイドラインでは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を労働時間としています。東京労働局も入社前研修について「内定者が研修担当者の指揮監督下にあるか」「研修に業務性があるか」などを判断のポイントに挙げています。
たとえば、企業が参加を義務づけている研修や欠席によって不利益が生じるなど実質的に参加を強制されている研修は、労働時間に該当する可能性があります。これに対し、内定者が自由に参加を選べ、業務上の義務もない研修は、原則として労働時間には当たりません。
労働時間に該当すれば、企業には最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。「入社前だから」「任意と案内しているから」と形式だけで判断せず、参加条件や実際の運用まで含めて判断することが重要です。
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
任意参加と必須参加を明確にする
研修担当者は、研修を企画する段階で内定者の参加を任意とするのか、必須とするのかを明確にします。
企業が任意参加とする場合は、案内文だけでなく、実際の運用も任意になっているかを確認します。欠席した内定者に不利益を設けたり研修担当者が参加を繰り返し求めたりすると、形式上は任意でも実質的な強制と受け取られる可能性があります。
企業が参加を義務づける場合は、その研修が労働時間に該当するかを確認し、必要に応じて賃金の支払いなどの対応を行いましょう。
参加条件は、研修に関わる社員やリクルーターにも共有しておくことが大切です。研修担当者によって案内内容が異なると、内定者が参加条件を正しく判断しにくくなります。
学業や現職に配慮して案内する
企業が新卒の内定者に入社前研修を実施する場合は、学業への配慮も欠かせません。内閣官房などによる就職・採用活動に関する要請では、企業に対して学生の学業や学事日程への配慮が求められています。
開催日を決める際は、内定者の授業や試験、卒業研究などと重ならないかを確認します。中途採用者で現職がある場合は、現在の勤務に支障が出ない日程や時間帯かという視点も必要です。
研修を案内する際は、次のような内容を整理して伝えると内定者が参加条件を把握しやすくなります。
- 研修の目的と内容
- 開催日時と実施形式
- 任意参加か必須参加か
- 賃金の扱い
- 交通費など費用の扱い
- 欠席する場合の連絡方法
企業が任意参加として実施する場合は、不参加によって入社後の評価などに不利益が生じないことも明確にしておくとよいでしょう。
参考:内閣官房「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請事項」
欠席者にも必要な情報を共有する
任意参加の研修では、参加しなかった内定者だけが入社後に必要な情報を得られない状態にならないよう注意が必要です。
たとえば、入社初日の集合場所や必要な手続きなど全員が知っておくべき情報を任意研修の中だけで伝えると、内定者にとっては実質的に参加しなければ困る状態になります。
全員に必要な情報は研修とは別に共有し、欠席した内定者も確認できるようにしておきましょう。共有可能な研修資料がある場合は、後から内容を確認できるようにする方法もあります。
内定者が主体的に参加しやすい研修の設計
入社前研修は参加条件を整えるだけでなく、内定者自身が目的を理解し、納得して取り組める内容にすることも大切です。ここでは、自己決定理論や心理的安全性の考え方を参考に主体的に参加しやすい研修の設計・運営方法を紹介します。
研修の目的を伝えて納得感を高める
内定者に参加を求めるだけでは、「なぜこの研修を受けるのか」が分からず、やらされていると感じることがあります。そのため、研修の目的に加えて学んだことが入社後にどのように役立つのかまで、事前に伝えておくことが大切です。
Gagné & Deci(2005)は、仕事における動機づけを自己決定理論の枠組みから整理しています。自己決定理論で扱われる基本的な心理的欲求は、「自律性」「有能感」「関係性」の3つです。また、Hagger & McAnally Star(2026)のメタ分析では、職場における心理的欲求への支援や欲求の充足、自律的な動機づけなどの関連が示されています。
こうした考え方を入社前研修に取り入れるのであれば、目的を説明するだけで終わらせないことがポイントです。たとえば、参加者自身が考えたり選んだりできる場面を設ける、無理なく取り組める難易度に調整する、同期や社員と交流できる機会をつくるといった工夫が考えられます。
参考:Gagné & Deci(2005)「Self-determination theory and work motivation」
参考:Hagger & McAnally Star(2026)「Self-Determination Theory and Workplace Outcomes: A Meta-Analysis」
発言や質問をしやすい雰囲気をつくる
内定者の主体的な参加を促すには、自分の考えを伝えたり分からないことを質問したりしやすい雰囲気づくりも大切です。
Edmondson(1999)は職場チームを対象とした研究で、心理的安全性と学習行動との関係を示しています。心理的安全性とは、質問や意見の表明など対人的なリスクを伴う行動を取っても安全だとチーム内で共有されている認識のことです。
研修運営に取り入れる場合は、参加者が発言や質問をためらわないように進め方を工夫します。たとえば、冒頭で「正解を競う場ではない」「分からないことは質問してよい」と伝えておくとよいでしょう。最初から全体の前で発言を求めるのではなく、まず1人で考える時間を設け、その後に少人数で共有する流れにするのもおすすめです。
心理的安全性は、特定のゲームやワークそのものの効果を説明する考え方ではありませんが、内定者が安心して研修に参加し、自分の意見や疑問を出せる環境を整えるための視点として取り入れるとよいでしょう。
参考:Edmondson(1999)「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」
入社前研修に体験型ワークやゲームを取り入れる方法
入社前研修では座学だけでなく、参加者同士で考えたり話し合ったりする体験型ワークやゲームを取り入れる方法もあります。盛り上がる企画を選ぶのではなく、研修の目的に合った内容にすることが重要です。ここでは、体験型ワークやゲームを研修に取り入れる際のポイントを紹介します。
研修の目的に合うワークを選ぶ
体験型ワークやゲームを取り入れる際は、まず「参加者に何を経験してほしいのか」を明確にします。
たとえば、同期同士の相互理解を深めたい場合は参加者同士で情報を共有するワークが向いています。意見をまとめる力を身につけてもらいたい場合は、複数の意見を出し合い、チームとして1つの結論を決めるワークがおすすめです。
Reuterら(2025)の系統的レビューでは、ビジネスや研修におけるゲーム・ゲーミフィケーションについて、学習への参加や交流、協働、動機づけなどとの関連が示されています。ゲームを実施すること自体を目的にするのではなく、研修で扱いたいテーマや参加者に経験してほしいことに合わせて内容を選ぶことが大切です。
振り返りで入社後の行動につなげる
体験型ワークは、実施して終わりにせず、終了後に振り返りの時間を設けます。参加者自身がワーク中の出来事を振り返ることで、自分の行動やコミュニケーションの特徴を整理しやすくなります。
「どのように話し合ったか」「うまくいったことは何か」「難しかった場面では何が起きていたか」といった問いを使い、体験を振り返りましょう。他の参加者の考えを聞くことで自分とは異なる進め方や考え方に気づくきっかけにもなります。
そのうえで、振り返りで得た気づきを入社後の具体的な行動に置き換えます。たとえば、「分からないことは早めに質問する」「相手の意見を確認してから自分の考えを伝える」「チームで必要な情報を共有する」といった行動です。
ワーク中の出来事を振り返り、仕事でどう生かすかまで考えることで、体験型ワークを単なるレクリエーションで終わらせず、入社後につながる学びとして整理できます。
入社前研修の実施時期・頻度
入社前研修の実施時期や頻度を検討する際は、研修の目的や内定者の学業・現職への負担を考慮することが重要です。また、内定から入社までの期間が長い場合は、すべての内容を一度に実施するのではなく、時期に応じて目的を分ける方法もあります。
| 実施時期 | 主な目的 | 内容例 |
| 内定直後 | 会社や仕事への理解を深める | 会社説明、仕事内容の紹介、先輩社員との座談会 |
| 入社までの中盤 | 同期や社員との関係をつくる | グループワーク、体験型ワーク、社員との交流 |
| 入社直前 | 入社に向けて準備する | ビジネスマナー、基本的なPC操作、入社時の案内 |
上記は一例であり、特定の時期に特定の内容を実施することが必須ではありません。採用時期や入社までの期間、自社の研修目的に合わせて調整します。
頻度や1回あたりの時間についても、一律の基準があるわけではありません。「何回実施するか」を先に決めるのではなく、必要な研修内容を整理したうえで回数や時間を設定しましょう。
新卒の内定者であれば授業や試験、卒業研究、中途採用者であれば現職の勤務などへの負担にも配慮し、参加しやすい日程や所要時間になっているかを確認することが大切です。
入社前研修の内製・外部委託の選び方
入社前研修は、自社で実施する方法と研修会社などへ外部委託する方法があります。どちらが適しているかは、研修の内容や必要な専門性、社内の運営体制によって異なります。以下の観点から検討しましょう。
| 判断項目 | 内製が向いているケース | 外部委託が向いているケース |
| 研修内容 | 企業理念や事業内容、社内制度など、自社独自の内容を伝える | ビジネススキルやコミュニケーションなど、汎用的なテーマを扱う |
| 専門性 | 社内に研修を設計・進行できる人材がいる | 社内だけでは研修の設計・進行が難しい |
| 運営体制 | 準備や当日の運営に必要な人員・時間を確保できる | 準備や当日の運営に必要な人員・時間を確保しにくい |
すべての研修を内製または外部委託のどちらかに統一する必要はありません。企業理念や入社後の流れは自社で説明し、コミュニケーション研修や体験型ワークは外部へ委託するなど内容によって使い分ける方法もあります。
研修で扱う内容を整理し、自社に必要な専門性や運営体制があるかを踏まえたうえで、内製・外部委託・併用のいずれが適しているかを決めましょう。
入社前研修にはIKUSAの「あそぶ社員研修」がおすすめ
体験型ワークやコミュニケーション研修を外部へ委託する場合は、研修の目的に合ったアクティビティを選ぶことが重要です。株式会社IKUSAの「あそぶ社員研修」は、体験型アクティビティとその体験に紐づく振り返りや講義などを組み合わせた研修サービスです。
内定者向けのプログラムも用意されており、参加者同士で協力しながら取り組むアクティビティに加え、実施後の振り返りや要望に応じた講義も取り入れられます。
研修の目的に合わせてアクティビティや振り返りの内容を設計することで、体験を通してコミュニケーションやチームワークについて考える機会につなげられます。
まとめ
入社前研修を企画する際は、まず「入社前に内定者にどのような状態になってほしいか」を明確にし、その目的に合った内容を選ぶことが大切です。仕事や役割への理解、不安の軽減、同期や社員との関係づくりなど、自社の課題に応じて研修内容を組み立てましょう。
実施する際は、賃金や参加条件、学業・現職への負担にも配慮が必要です。また、体験型ワークやゲームを取り入れる場合は、実施すること自体を目的にせず、振り返りを通して入社後の行動につなげることが重要です。
自社だけでの企画・運営が難しい場合は、研修会社などの外部サービスを活用する方法もあります。自社で伝える内容と外部の専門性を生かす内容を切り分けながら、自社に合った入社前研修を設計しましょう。
内定者フォローの成否は、入社後の定着と活躍を左右します。「あそぶ社員研修」では、内定者同士が自然に打ち解け、入社意欲が高まる体験型プログラムをご用意しています。 「どの研修が自社に合うかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。目的やご予算に合わせて最適なプログラムをご提案します。
この記事の著者
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