デザイン思考研修とは?研修で扱う内容・育成できるスキル・進め方を解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

顧客ニーズや市場環境が変化し続けるなか、新たな商品・サービスの企画や業務改善を担える人材の育成が多くの企業で課題となっています。デザイン思考研修は、社員がユーザーへの共感から課題の定義、アイデアの発想、試作・検証までのプロセスを学び、顧客起点で価値を生み出す力を養うための施策です。

本記事では、デザイン思考研修で扱う内容や育成できるスキル、研修の進め方、導入事例、企画・実施時の注意点を解説します

 

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デザイン思考とは

デザイン思考とは、デザイナーが実践してきた思考法を、ビジネス上の課題解決や新たな価値の創出に活用するアプローチです。ここでいう「デザイン」とは、色や形などの見た目を整えることだけではなく、顧客や利用者にとって望ましい体験・仕組みを設計することを指します。

デザイン思考は一般的に、「共感」「問題定義」「発想」「試作」「テスト」の5段階で進めます。利用者の行動や感情を理解したうえで本質的な課題を定め、解決策を形にしてフィードバックを得ながら改善を重ねる点が特徴です。

近年では、新規事業や商品・サービスの開発に加え、既存業務や顧客体験の改善にも活用されています。

 

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デザイン思考研修が注目されている理由

デザイン思考研修が注目されている背景には、顧客が求める価値の変化や、DX(デジタルトランスフォーメーション)を事業変革につなげる人材育成の必要性があります。ここでは、企業や行政でデザイン思考への関心が高まっている主な理由を解説します

ユーザーの価値観やサービスを選ぶ基準が多様化している

市場が成熟し、機能や価格だけで商品・サービスを差別化することが難しくなるなか、利用者が重視する価値も変化しています。近年では、製品そのものを所有する「モノ消費」だけでなく、利用時の利便性や楽しさ、共感できる世界観といった体験価値を求める「コト消費」へと関心が広がっています。

このため企業には、顧客の発言だけでなく、行動や感情の背景にあるニーズを捉え、期待に応える体験を設計する視点が求められるようになりました。デザイン思考研修は、ユーザー理解を起点に新たな価値を検討する考え方を学べるため、こうした市場環境への対応策として注目されています。

DXを事業変革につなげる人材の育成が求められている

多くの企業でデジタル化や業務効率化は進んでいる一方、新規の商品・サービスの創出や、顧客起点でのビジネスモデル変革まで成果を広げられていないケースもあります。DXを本来の変革へつなげるには、導入する技術ありきで考えるのではなく、顧客・利用者が求める価値や体験を捉え直す必要があります。

そこで求められるのが、顧客視点で課題を発見し、アイデアを試作・検証しながら解決策を磨ける人材です。デザイン思考研修は、企画・新規事業・DX推進に関わる社員が、デジタル技術と顧客ニーズを結び付け、価値創出へつなげる力を育てる施策として注目されています。

顧客・住民起点で制度やサービスを見直す必要がある

デザイン思考は民間企業の商品・サービス開発に限らず、行政分野でも活用が検討されています。行政が提供する制度や公共サービスは、住民や事業者など多様な利用者の暮らしや事業活動に関わるため、提供者側の都合だけではなく、利用者が感じる不便さや利用時の体験を踏まえて見直すことが重要になるからです。

企業においても、顧客接点や業務の実態から課題を捉え直す姿勢が求められています。デザイン思考研修は、利用者視点を組織に浸透させ、部門横断で価値を検討する人材を育てる機会として役立ちます。

参考:行政で広がる「デザイン思考」経済産業省

デザイン思考研修で扱う内容

デザイン思考研修を企画する際は、顧客・利用者の潜在的なニーズを起点に課題を発見し、解決策を検証・改善するまでの一連のプロセスを扱うことが重要です。ここでは、カリキュラムに盛り込みたい知識や考え方を解説します

1.デザイン思考の基本プロセスとマインドセット

デザイン思考研修では一般的に、「共感」「問題定義」「発想」「試作」「テスト」の5段階で進める基本プロセスを学びます。各段階の目的とつながりを理解し、顧客・利用者の視点から課題を捉える姿勢を身に付けることが重要です。

また、最初から正解や完成度の高い案を求めるのではなく、試行錯誤を重ねながら改善する考え方も扱います。検証結果に応じて前の段階へ戻り、課題やアイデアを見直すことを前提とした学びを取り入れることで、変化の大きい課題にも柔軟に対応できる土台をつくれます。

2.ユーザー理解から本質的な課題を見つける手法

デザイン思考研修には、顧客・利用者の行動や感情、置かれた状況を理解し、表面的な要望の奥にある困りごとや願望を捉える視点も含めたいところです。提供者側の思い込みや既存の業務プロセスを起点にするのではなく、利用者にとっての価値を起点に考える重要性を伝えます。

研修では、集めた情報をそのまま受け取るのではなく、利用者の発言や行動の背景を読み解き、解決すべき課題の本質を見極める考え方を扱うとよいでしょう。課題の捉え方や設定の仕方によって、その後に検討する解決策の方向性が左右されることも、押さえておきたいポイントです。

3.チームで多角的にアイデアを出し合う思考法

デザイン思考研修では、本質的な課題に対して、既存の方法や前例にとらわれず、多様な解決策を考える発想法も学びます。一つの案に絞り込む前に、異なる角度から数多くの可能性を検討し、その後で目的やユーザーへの提供価値を踏まえて整理する考え方が大切です

あわせて、異なる経験や専門性を持つメンバーが協働する意義も伝えましょう。他者の意見を否定せず、発想を重ねながら考える姿勢を促すことで、一人では見落としがちな視点を取り入れやすくなります。新たな価値を生み出すための対話や共創の重要性について、部門横断で学べるよう設計することが重要です。

4.アイデアを基にプロトタイプを作成し、検証・改善する手順

アイデアを実務につなげるには、考えた解決策を具体化し、利用者や関係者の反応を基に見直す視点も重要です。デザイン思考研修では、プロトタイプを「仮説の妥当性や利用場面での課題を確認するための手段」として位置付け、その役割を理解できるようにしましょう

得られた意見は、試作品の修正だけでなく、アイデアの方向性や問題設定そのものを見直す材料としても役立ちます。検証と改善を繰り返すプロセスを理解することで、顧客・利用者にとって価値のある解決策を継続的に磨き上げる考え方を身に付けられます。

デザイン思考研修で育成できるスキル

デザイン思考研修では、顧客や利用者の潜在ニーズを捉え、本質的な課題の解決へ導くための実践的なスキルを育成できます。研修の目的や対象者に応じて、次のような力を伸ばせるカリキュラムを設計しましょう。

  • ユーザー視点で課題を捉える力
  • 解決すべき課題を明確にする力
  • 多様な視点から解決策を発想する力
  • アイデアを試せる形に落とし込む力
  • チームで新たな価値を生み出す協働力
  • 仮説検証を通じて改善を重ねる力

デザイン思考研修の進め方

デザイン思考研修を企画する際は、「共感」「問題定義」「発想」「試作」「テスト」という5つのプロセスを講義で説明するだけでなく、演習を通じて一連の流れを体験できる構成にすることが重要です。ここでは、デザイン思考研修に取り入れたい具体的な進め方を解説します

1.共感|顧客・利用者を観察し、ニーズを探る

共感の段階では、定性リサーチとしてインタビューや行動観察を行い、顧客・利用者の行動、感情、利用環境に関する一次情報を集める演習を取り入れます。そのうえで、対象ユーザーの特徴を整理するペルソナや、利用前後の行動・感情を可視化するカスタマージャーニーマップを作成しましょう。

共感マップを活用し、利用者が見聞きすること、考えること、感じること、行動を整理する方法も有効です。発言内容だけで判断せず、実際の行動や利用環境にも目を向けることで、本人も意識していない潜在的なニーズやインサイトを発見しやすくなります。

2.問題定義|解決すべき課題を明確にする

次に、共感の段階で得た情報を整理し、「誰が、どのような場面で、何に困っているのか」を明確にします。課題が広すぎるとアイデアの方向性が定まりにくくなるため、対象となるユーザーと状況を具体化することが大切です。

「着眼点(POV:Point of View)」や「How might we」といった手法を活用すると、集めたニーズやインサイトを、チームで取り組むための問いへ落とし込みやすくなります。また、必要に応じてSWOT分析を行い、自社の強みや制約を整理しておくと、実務で実行できるアイデアを検討しやすくなります。

3.発想|新しいアイデアや解決策を生み出す

問題定義を基に、ブレインストーミングなどを活用して、多様な解決策を考えます。この段階では実現可能性やコストを急いで判断せず、既存の方法や前例にとらわれないアイデアをできるだけ多く出せるようにしましょう。受講者同士が互いの意見を否定せず、他者の発想に意見を重ねながら考えられる場をつくることも重要です。

アイデアが出にくい場合は、「オズボーンのチェックリスト」を用いて、既存のサービスや業務を別の角度から捉え直す方法があります。また、出された案を整理する際には、「KJ法」で関連性の高いものをグループにまとめたり、図やイラストで方向性を可視化したりする方法も有効です。

4.試作|アイデアを簡易的に形にする

チームで選んだアイデアは、完成品を作る前に、簡易的なプロトタイプとして形にします。例えば、アプリやWebサービスであれば画面イメージ、業務改善なら新しい業務フロー、無形のサービスならストーリーボードやロールプレイなどが考えられます。

ここでの目的は、簡易的な素材(紙の模型や図など)を用いてアイデアを具体的に共有・検討できる状態にし、関係者や利用者が実際の利用場面を想像できるようにすることです。短時間でも試作まで行うことで、実務で小さく試す意識を育めます。

5.テスト|フィードバックを得て改善につなげる

最後に、作成したプロトタイプを他チームの受講者や現場担当者に見せ、フィードバックを得る場を設けます。使いやすさや分かりにくさ、利用意向、改善点などを具体的に確認しましょう。「ジャベリンボード」のような、仮説や検証結果を整理する手法を取り入れると、受講者が検証の流れや重要性を理解しやすくなります。

得られた意見や検証結果を基に試作品を修正し、必要に応じてアイデアや問題定義まで戻って見直します。研修後も振り返りや実践報告の機会を設け、検証と改善を継続することで、利用者にとって価値のある解決策へと磨き上げられます。

デザイン思考研修を業務に活かした事例

デザイン思考研修は、顧客・利用者への理解を深め、部門を越えた対話や試行錯誤を促すことで、組織の文化や人材育成にも変化をもたらします。ここでは、デザイン思考を業務や組織変革に活かした事例を紹介します

1.富士通|デザイン思考を全社に広げ、部門横断の協働を促進した事例

富士通は全社DXプロジェクトの一環として、デザイン思考をグループ全体に広げる取り組みを進めました。営業部門を対象にeラーニングを実施した後、オンライン上に組織横断コミュニティ「やわらかデザイン脳になろう」を立ち上げ、社員同士が対話や情報共有を行う場を整備しています。

コミュニティには3,000名以上が参加し、従来は接点のなかった部門・社員間で交流や活動が生まれました。デザイン思考を学ぶ機会と実践・共有の場を組み合わせたことで、顧客・利用者を中心に課題を考える視点の浸透と、組織の壁を越えた協働につながった事例です。

参考:デザイン思考は、企業文化に何をもたらしたのか?富士通ラーニングメディア

2.キヤノンマーケティングジャパン|イノベーション人材の育成効果を可視化した事例

キヤノンマーケティングジャパンは、新たな価値を創造する「イノベーション人材」の育成に向け、グループ全体を対象とした教育プログラムを実施していました。一方で、必要なスキルを定量的に把握し、教育効果を測ることが課題でした。そこでデザイン思考テストを導入し、「違和感に気付く力」「多角的に捉える力」「課題を設定する力」などを可視化しています

その結果、イノベーション人材に必要な能力を定量的に把握でき、人事情報と組み合わせた適性配置の検討にも活かせる手応えを得ました。研修や教育施策は、実施するだけでなく、スキルの変化を確認し、次の育成施策へつなげることが重要だと分かります。

参考:企業における事業創出力強化に向けてデザイン思考テスト

3.特許庁|対象者別の研修設計で、デザイン思考の組織的な活用を促進した事例

特許庁は、特許行政の品質向上と継続的な価値提供を目指し、デザイン思考を学ぶ研修を実施しました。若手職員、管理職、幹部を対象に、それぞれの役割に応じた研修目的を設定した点が特徴です。管理職向け研修では、外部人材へのインタビュー、ユーザータスクの可視化・分析、アイデアのストーリー試作、組織としての実現検討までを1日のワークショップで体験しました。

研修後には、デザイン統括責任者(CDO)の設置とプロジェクトチームの立ち上げも決定しました。研修目的を対象者別に設定し、実務に近い演習と組織的な推進体制を組み合わせる重要性を示す事例です。

参考:経済産業省 特許庁「デザイン組織」をつくるための管理職向けデザイン思考養成研修株式会社CONCENT

デザイン思考研修の注意点

デザイン思考研修を成果につなげるには、手法を学ぶだけでなく、研修後も実践を継続できる環境やアイデア実装まで見据えた設計が必要です。デザイン思考研修を企画・実施する際は、次の点に注意しましょう

1.研修後の実践機会を設け、学びを定着させる

研修でデザイン思考の流れを理解しても、実際の業務で使わなければ知識は定着しにくいでしょう。研修後は、自社の顧客に近い対象者や身近な業務課題をテーマに、少人数・短期間で実践する機会を設けることが大切です

小さなテーマで共感、問題定義、発想、試作、テストを一通り経験し、得られた学びを社内で共有します。研修担当者が実践テーマや振り返りの場を用意することで、周囲の理解を得ながら、デザイン思考を組織に浸透させやすくなります。

2.デザイン思考だけでは解決しにくいケースもある

デザイン思考は、正解が明確でない複雑な課題や、新しい価値の創出を目指す場面に適した手法です。一方、法令・安全基準などに沿って正確かつ迅速に対応すべき業務や、解決策がすでに明確な定型業務には、必ずしも適しているとは限りません
このような場合は、標準化や業務改善、ロジカルシンキングなど、目的に合った手法を選ぶ必要があります。研修の対象者や扱うテーマを選定する際は、課題の性質を見極め、他の手法と組み合わせて活用することが重要です。

3.結果だけでなく、プロセスも評価する

デザイン思考では、短期的な売上や事業化の有無だけで成果を判断すると、失敗を避けようとして大胆な仮説を試しにくくなる可能性があります。研修の評価指標を設計する際は、ユーザー理解が深まったか、課題を具体的に定義できたか、検証からどのような知見を得たかといったプロセスも確認しましょう。

受講後アンケートだけで終わらせず、実践テーマの進捗や、業務での活用状況を確認することも有効です。結果と学びの両方を評価することで、次の実践や研修内容の改善につなげられます。

4.アイデアの実現可能性と事業性も検討する

ユーザーにとって魅力的なアイデアでも、技術的に実現できない、コストに見合わない、法規制や運用面の課題を解決できない場合は、事業・施策として継続できません。デザイン思考では利用者にとっての望ましさを重視しますが、試作・検証を重ねる過程で、実現可能性や事業性も確認する必要があります。

アイデア出しや付箋を使ったワークショップだけで終えると、実装につながらない机上の空論になりかねません。関係部署や意思決定者を巻き込み、予算、技術、運用体制、期待効果を踏まえて実行計画へ落とし込むことが重要です

まとめ

デザイン思考研修では、顧客・利用者への共感を起点に、本質的な課題を定義し、アイデアの発想、試作、検証・改善を繰り返すプロセスを学べます。研修を企画する際は、知識を伝えるだけでなく、受講者が自社の業務課題に当てはめて実践できる演習を取り入れることが重要です。

研修後には実践機会や振り返りの場も設け、顧客起点で価値を生み出す人材・組織づくりにつなげましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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