人事評価制度が形骸化するのはなぜ?原因と対策を紹介

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

形骸化とは、本来の目的や機能、意義が失われ、形だけが残った状態を指す言葉です。

「人事評価制度に対する不満の声が多い」

「人事評価が年1回のイベントのようになっている」

このような状態なら、人事評価制度が形骸化している可能性があります。

本記事では、まず株式会社IKUSAが実施した調査結果をもとに、人事評価制度が形骸化する主な原因を解説します。そのうえで、形骸化の兆候が見られたら何をすればよいのか、人事評価制度を形骸化させないための対策を紹介します。

 

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人事評価制度が形骸化する原因とは?

人事評価制度が形骸化する原因は、さまざまなものがあります。まずは、株式会社IKUSAが実施した調査の結果(※)を交えながら、形骸化の主な原因を紹介します。

※調査の概要

調査名調査名 人事評価制度に対する満足度と納得感についての実態調査
実施時期2026年3月
調査対象社会人1~5年目の方
有効回答数400名 
調査方法インターネット調査

評価基準が曖昧

明確な評価基準がない場合、評価者(主に上司)の主観が強い結果となってしまいます。これでは、公平な評価は行えません。また、明確な評価基準は用意されていても、それが被評価者である社員に十分共有されていないために、不公平感や不満が生まれることもあります。

冒頭で紹介した株式会社IKUSAの調査結果(以下、同調査)においては、評価基準について以下のような結果が得られています。

  • 評価に対して不満を感じた理由は何ですか?(評価結果について納得感がないと回答した方に対して)→「評価基準が不明確(17.7%)」「上司の主観が強い(16.3%)」「成果が正当に評価されない(16.3%)」
  • 評価基準は明確に共有されていますか?→「あまり共有されていない(27%)」「まったく共有されていない(19.3%)」の合計が46.3%
  • あなたが重視する評価のポイントは何ですか?→「明確な基準(26.8%)」「公平性(26%)」

これらの結果から、評価基準は被評価者としても重視するポイントであること、しかしながら会社がそのニーズに応えられていない実態がうかがえます。人事評価を形骸化させないためには、明確な評価基準を整備し、それを社員にも共有しておくことが重要です

評価者のスキル不足

人事評価制度がうまく機能しない原因が、評価者のスキル不足である場合もあります。評価者のスキルや人事評価制度に対する理解度に差があると、成果は同じでも評価結果にばらつきが生じます。

また、人事評価の納得感を高めるには、評価面談で被評価者に対して結果を丁寧に説明し、具体的なフィードバックをすることが重要です。このスキルが不足していると、「納得できない」「面談なんて意味がない」などといった不満も生まれ、評価面談が「形だけ」の状態になる恐れがあります。

同調査でも、「重視する評価のポイント」として26.3%が「フィードバックの具体性」を、17.0%が「対話の質」を挙げています。しかしながら、評価面談が成長に役立っていると回答した層は43%に留まっています(「非常に役立っている(14.5%)」「やや役立っている(28.5%)」の合計)。この結果から、評価面談が形骸化しているケースも少なくないのではないかと考えられます。

評価が昇給・昇進に反映されない

良い評価をつけてもらえたとしても、それが給与やキャリアに反映されなければ、被評価者のモチベーションは下がってしまいます。「報われない」「意味がない」と感じ、より自分の努力を認めてくれて成長できる場所へ転職を考え始めるかもしれません。

同調査でも、「評価に対して不満を感じた理由」として16.7%が「給与への反映が小さい」を、「重視する評価のポイント」として11.3%が「報酬への反映」を挙げています。人事評価制度を機能させるためには、待遇や育成計画と連動させることが重要です。

その他

同調査では、以下のような結果も得られています。

  • 理想的な評価制度はどれに近いですか?→「チーム成果重視型(24.5%)」「プロセス重視型(20.5%)」
  • あなたが重視する評価のポイントは何ですか?→「チーム貢献の評価(12.3%)」「挑戦の評価(6.0%)」

この結果から、チームへの貢献度や日々の取り組み、姿勢などを評価されたいと考えている人も少なくないことがわかります。人事評価制度と自分が重視するポイントのズレが、不満や形骸化の原因になることもあるのではないでしょうか。

また、人事評価制度を浸透させるためには、評価面談以外のフィードバックや、日々のコミュニケーションも重要です。しかし、それらが足りておらず、人事評価が期末のイベントのようになっているケースもよく見られます。

このように、人事評価制度が形骸化する原因はさまざまで、複数が絡み合っている場合もあります。うまく機能させるためには、原因に合わせた対策が必要です。

IKUSAのプレスリリース:「人事評価制度に対する満足度と納得感についての実態調査」の結果を公表 – IKUSA.jp

 

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形骸化の兆候が見られたときにまずやるべきこと

人事評価制度が形骸化している兆候があるなら、改善が必要です。どこをどのように改善すべきかを判断するために、まずは以下の3つのことを行いましょう

1.現状を把握する

まずは、組織の現状を客観的に把握しましょう。評価結果や勤怠状況、離職率などの定量的なデータを分析し、人事評価制度や人材の定着についての課題を抽出します

また、お伝えしたように人事評価制度は待遇と結びついていることが重要です。社員の年齢、勤続年数、等級と給与・賞与などとの関係を整理し、給与や賞与が市場水準と比較して低すぎないかも確認しましょう。

2.社員の声を聞く

社員が人事評価制度にどのような不満を持っているかを把握することも大切です。これにより、定量的なデータだけではわからない課題が見えてきます。

また、人事評価制度に対して不満を持つのは被評価者だけではありません。被評価者の声だけを拾うと、評価者側からの不満が強くなる可能性もあります。そのため、被評価者と評価者、双方の声を聞くことが重要です

具体的な方法としては、社員満足度調査やエンゲージメントサーベイを実施する、面談で直接話を聞くなどが考えられます。

3.組織のビジョンや戦略について理解を深める

人事評価制度は、単なる「評価のためのツール」ではなく、「個人と組織を成長させるための仕組み」であるべきです。そのような制度を構築するために、組織のビジョンや戦略について理解を深めましょう。そして、人事評価制度の目的を改めて言語化することが大切です。

人事評価制度を形骸化させないための対策

ではここからは、人事評価制度を形骸化させないための対策を紹介していきます

明確な評価基準を設定する

先ほど紹介したように、評価基準が曖昧であることや、共有が不十分であることが不満の原因になっているケースは少なくありません。人事評価制度を形骸化させないためには、明確な評価基準を設定し、評価期間が始まる前に被評価者にも共有しておくことが大切です

評価基準は、目標達成度や成果を評価する「業績評価」、仕事で求められる知識・スキルなどの能力を評価する「能力評価」、勤務態度や姿勢を評価する「情意評価」の3つの指標を軸に設計するのが一般的です。3つそれぞれに、具体的な評価項目を設定します。

このとき、評価項目が多くなりすぎないように注意が必要です。評価項目が多すぎると、評価がただの確認作業になり、本質的な部分を見落としてしまう恐れがあります。また、評価者・被評価者の双方にとって負担も大きくなりますので、自社が求める人物像を明確にし、必要な項目のみに絞り込むことがポイントです。

評価が給与やキャリアアップにつながる仕組みを整える

人事評価制度とは、単に社員を評価するだけでなく、その結果を給与や賞与、昇進などに反映させる仕組みを指します。等級制度、評価制度、報酬制度の3つで構成されており、これらを三位一体で運用することが、人事評価制度をうまく機能させるポイントです

  • 等級制度……役割やスキルなどに応じて社員を階層に分類する制度
  • 評価制度……社員の行動や成果を客観的に、公平に評価する制度
  • 報酬制度……等級や評価結果をもとに、報酬を決定する制度

社員が「努力が報われた」ことを実感できるよう、評価が給与やキャリアアップにつながる仕組みを整えておきましょう。

人事評価制度の浸透に力を入れる

人事評価制度の形骸化を防ぐためには、制度の内容を被評価者である社員にも正しく理解してもらうことが重要です。どれだけ制度や仕組みを整えても、理解が不十分である場合、不満や不公平感が生まれやすくなります。

しかし、新しい制度は簡単に浸透するものではありません。特に今までの制度から大幅な変更を行った場合は、社内に混乱が生まれたり、抵抗感や拒否感を示す社員が出てきたりする恐れもあります。時間をかけて丁寧にコミュニケーションをとり、理解を求めることが大切です。

新制度についての資料を配布するだけで終わるケースも見られますが、できれば社員向けの説明会を開催することをおすすめします。経営トップが自ら社員に向けて説明することで、新制度を導入した目的や想いが伝わりやすくなります。さらに理解を深めてもらうために、説明会後に個別面談を行うことも検討しましょう。

また、人事評価制度を浸透させるためには、全社員が理解できるくらい「わかりやすい」制度にすることもポイントです。制度を設計する際は、その点も意識しましょう。

評価者研修を行う

決定した評価基準、評価手法にもとづき客観的で公平な評価が行えるよう、評価者に対して研修を実施することも大切です。これをしないと、評価者の主観が強い評価となる恐れがあります。

一般的な評価者研修の内容は、以下の通りです。

  • 人事評価制度の説明(目的や仕組みなど)
  • 評価者に求められる考え方
  • よくある人事評価エラー
  • 評価のつけ方
  •  面談のやり方

評価のつけ方や面談のやり方などは、演習などで実際にやってみて覚えてもらいましょう。このような研修を評価期間のはじめに実施することで、評価者は日頃から部下の行動をチェックすることの重要性を認識できます。

評価面談以外の対話・フィードバックの機会を設ける

評価面談の中でのフィードバックの質を高めることはもちろん重要ですが、評価面談は一般的には期末に実施するものです。そのタイミングでどれだけ具体的なフィードバックを与えたとしても、被評価者は対象となった出来事を覚えていないかもしれません。改善点の指摘であったなら、「その時に言ってほしかった」と感じるでしょう。また、日々のコミュニケーションが不足している場合、「現場や自分のことを知らない人に評価してほしくない」という不満が生まれることもあります。

フィードバックは、できるだけリアルタイムに行うことが大切です。そして、被評価者に「ちゃんと行動や努力を見ている」ことを伝えるためにも、評価面談以外の対話やフィードバックの機会を設けられるとよいでしょう。そうすることで、人事評価に対する納得感や満足度も高められる可能性があります。

評価者がマネジメント業務に時間を使えるようサポートする

評価者のスキルが足りないのではなく、マネジメント業務に充てられる時間が少ないために、評価や面談が「形だけ」になってしまっている可能性もあります。

社員の評価は、一般的には管理職の仕事です。しかし現代の管理職の多くは、マネージャー兼プレイヤーの「プレイングマネージャー」であり、マネジメント業務のための時間を十分確保できていない人が多いのです。ただでさえ時間が足りないのに、「評価スキルを高めるために研修を受けて」「もっと部下との対話の機会を増やして」などといわれるとどうでしょうか。会社に対して不満や不信感が生まれるだけでなく、限界が来て心身に不調をきたす恐れもあります。

社員の健康を守るためにも、評価者に負担がかかりすぎていないか、一度リソース配分を見直してみましょう。そして、DXにより業務効率化を図る、プレイヤー業務を減らすなどして、評価者がマネジメント業務に注力できるようサポートすることが求められます。

人事評価制度は定期的に見直しをする

人事評価制度は、定期的に見直しを行いましょう。なぜなら、時間の経過や環境の変化により、制度が合わなくなってくることがあるためです。制度を導入してから5年以上経っている場合や、事業内容や組織体制、方針などに大幅な変更があった場合は、一度制度全体の見直しを行うことをおすすめします

また、社員や組織の成長に合わせて評価項目を見直すことで、さらなる成長を促すこともできます。たとえば、マイナスの評価がつく社員がほとんどいない項目がある場合は、その項目をクリアできるくらい全体が成長しているということなので、より高いレベルの項目を設定すべきといえます。特別な変化や変更などがなくても、評価項目は定期的に見直しを行いましょう。

人事評価制度は単なる「評価のためのツール」ではありません。「個人と組織を成長させるための仕組み」と捉え、改善し続けていくことが大切です。

人事評価システムを導入する

人事評価システムとは、人事評価に関する情報の管理や集計、分析などを行えるツールのことです。一般的には、以下のような機能が搭載されています。

  • 社員情報管理……社員の持つ資格やスキル、経験、人事評価結果などの情報を登録・管理できます。
  •  評価シートの作成・配布・集計……テンプレートで簡単に評価シートを作成し、配布・集計までシステム上で行うことができます。
  • 進捗管理……目標や評価にかかわる業務の進捗状況をリアルタイムで確認できます。進捗が遅れている場合は、アラートや自動通知で知らせることができるツールもあります。
  • 評価データの分析……評価データを自動で集計・分析ができます。

先ほどお伝えしたように、現代の評価者の多くは「プレイングマネージャー」であり、ただでさえ時間がない状況の中で評価を行っています。このようなシステムを導入して手間がかかる作業を自動化することで、評価者の負担やストレスを軽減できるでしょう。また、得られたデータは人事評価だけでなく、人材育成や採用計画、離職防止策、人材配置などにも活用できます。

まとめ

人事評価制度が形骸化する主な原因としては、「評価基準が曖昧」「評価者のスキル不足」「評価が昇給・昇進に反映されない」などが考えられます。ただ、他にもさまざまな原因が考えられ、一つではなく複数が絡み合っている場合が多いです。まずは定量的なデータと社員の声を集めて現状を把握し、原因をしっかり分析することが重要です

また、時代や環境が変われば、人事評価制度が合わなくなってくることもあります。形骸化の兆候や社員からの不満がなかったとしても、人事評価制度は定期的に見直しをして、改善し続けていくことが大切です。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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