グループシンクとは?原因・具体例・対策を解説
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大学卒業後、クラシック音楽業界にて制作・マネジメント・プロデュースに従事し、アートと教育の融合をテーマに、「体験を学びとして届ける」手法を追求してきた。
その後、体験型コンテンツ会社を経て、株式会社IKUSAにクリエイティブプロデューサーとして入社。
現在は研修事業部の責任者として、体験型・ゲーム型の社員研修事業を統括している。
ユーザー視点に立ったサービス開発を得意とし、「楽しさが行動変容を生む」という信念のもと新しい研修体験を創出している。
組織において、チーム内で対立がなく議論がスムーズに進むことは、理想的な状態であり、問題がないように感じるかもしれません。しかし、実は、チーム内での合意を優先し、質の低い意思決定に至る「グループシンク」に陥っている可能性があります。
グループシンクは、議論を進めていくなかで表面上では納得し、全員が合意しているため、当事者ではグループシンクに陥っていることに気づきづらいという特徴があります。そのため、グループシンクについて理解を深め、チームがグループシンクに陥っていないかを確認することが重要です。
本記事では、グループシンクとはなにか、グループシンクのリスクや陥る原因、具体例、対策について解説します。
グループシンクとは
グループシンクとは、集団内で合意を優先するあまり、多角的な視点や批判的思考が欠け、結果として質の低い決定に至る現象です。「集団浅慮」とも呼ばれ、アメリカの社会心理学者アーヴィング・ジャニスによって提唱されました。
グループシンクは、「集団の凝集性」が高い場合に発生しやすくなります。集団の凝集性とは、集団内の結びつきが強く、メンバーが集団の一員であろうとする力のことを指します。
多くの場合では、組織の結束力の強さや帰属意識の高さ、メンバーが積極的でモチベーションも高いなど、良い側面を示すものです。しかし、凝集性が強まると、同調圧力や批判への抵抗が生じやすくなり、集団内で「対立を起こさないように」という流れが形成されます。これにより異論や反対意見が抑え込まれ、合意を優先するグループシンクに陥ってしまいます。
ただし、グループシンクを、単に「集団で議論することが悪い」と捉えるのは適切ではありません。本来であれば、集団による意思決定は、多角的な視点から検討できるため、見落としや偏りの少ない結論を導くうえで非常に有効ですが、グループシンクに陥ってしまうと、こうした本来の強みが失われてしまう点こそが問題なのです。
グループシンクを防ぎ、本来の集団の強みを活かして、質の高い意思決定を目指すことが重要といえます。
グループシフトとの違い
グループシンクと類似したものとして、グループシフトがあります。両者とも、個人が集団に属することで意思決定に影響を受ける現象です。両者が関連する場面もあるため、違いについて知っておくとよいでしょう。
グループシンクは、主に「合意を優先する」ことが原因で起こります。異論や多様な意見が抑え込まれやすく、非合理的な意思決定がされる現象です。
それに対して、グループシフトは、個人で意思決定するときよりも、集団での意思決定をするときに極端な方向に偏ってしまう現象です。わかりやすいグループシフトの例を以下に挙げてみましょう。
- 用心深い考えを持つ人で集まって議論すると、保守的な結論になりやすい
- 挑戦的な志向の人が集まって議論すると、大胆な結論になりやすい
上記のような集団全体の傾向が、議論の傾向を左右することがグループシフトです。また、それだけではなく、以下のように集団全体の傾向とは反対方向に偏る「リスキーシフト」や「コーシャスシフト」も含まれます。
リスキーシフト
リスキーシフトとは、集団での意思決定が個人の決定よりもリスクを伴う方向に傾く現象です。これは中立的な集団や、慎重な集団でも起こり得ます。
【リスキーシフトの例】
- 集団の議論になることで、個人が感じる責任や不安が軽減され、大胆な決定を下しやすくなる
- 集団内でリスクを取る意見が「勇敢」「革新的」とポジティブなイメージを伴うことで、他のメンバーもそれに同調してしまい、実際の計画性や見通しが無視されやすくなる
コーシャスシフト
コーシャスシフトとは、集団での意思決定が、個人の決定よりも保守的な方向に傾く現象です。もともとリスクを取る姿勢が強い集団でも、慎重な方向に転じることがあります。
【コーシャスシフトの例】
- 集団全体としてのリスク回避が「賢明」だと評価される場合、「安全第一」の同調圧力により保守的な結論となりやすくなる
- 集団内で「失敗のリスクや責任を負うことを避けたい」という心理が強く働くことで、安全な選択肢に偏りやすくなる
グループシンクとグループシフトは独立した現象ですが、連動することもあります。たとえば、グループシンクによって反対意見が抑え込まれた結果、もともとあった意見への偏りが強まり、それがグループシフトを引き起こすといったケースもあります。
グループシンクのリスク
チームで議論しても摩擦がなく、スムーズに話し合いが進むという点で、一見すると問題がないように見えてしまうのがグループシンクです。しかし、その裏では質の低い意思決定による、以下のようなリスクを抱えていることがあります。
建設的な意見であっても対立を避けてしまう
チームに対立する意見であっても、それが建設的で意味のある意見であればチーム内で議論すべきです。しかし、チームの調和を重んじて、意見を出すことを控えてしまうことがあります。その結果、画期的なアイデアが表に出ず、潜在的な問題を抱えたままになるリスクにつながります。
どのようなアイデアでも受け入れてしまう
自身のチームに対して過度な信頼があることで、出されたアイデアの質を吟味せず、受け入れてしまう傾向があります。批判的な視点を欠くことで、アイデアへの見落としやミスにも気づきにくくなります。
リーダーの意向が優先される
議論の流れや出された意見とは関係なく、リーダーの意向が優先されてしまうことで、多様な意見や独自の視点が排除されてしまいます。その結果、チームである強みを活かせず、リーダー一人の判断による結論に至りがちです。
外部の意見を軽視する
チーム内の暗黙の了解やルールに縛られてしまうと、他部署といった外部からの意見を受け入れられない傾向が強くなります。それによりチーム内の視野が狭くなり、議論をしても同じような結論になる、新しいことに挑戦できなくなるといったリスクにつながります。
責任の所在が曖昧になる
表面上は全員が納得して結論を出していることで、個人が責任を感じにくくなることがあります。意思決定に対する責任意識が分散し、不適切な判断への検討や反省が行われなくなります。
グループシンクに陥る原因
グループシンクが発生する背景には、集団特有の心理的・構造的な要因があります。先にも述べたように、集団の凝集性が高い場合にグループシンクが発生しやすくなります。集団内の結束力の高さが、かえって同調圧力や批判への抵抗につながり、グループシンクを呼び起こすというものです。
以下では具体的な性質に分け、グループシンクの原因について解説します。
自分たちのチームへの過大評価
自分たちの能力や判断、チームそのものを過大に評価してしまうことはグループシンクの原因のひとつです。
チーム内の評価が高すぎると「自分たちは間違えるはずがない」「自分たちの行動は正しい」という認識が生まれ、批判的思考がしづらくなります。また、異論や反対意見が出たとしても、「チームの意思に反する」と見なされ、排除されやすくなります。
これにより、多様な意見が生まれず、問題点や危険性を見落とし、誤った結論を出す可能性が高まります。
外部を排除する心理
チームの理解者は自分たち以外にいないという、客観性に欠けている状態もグループシンクを引き起こしやすいです。
「チームのことは自分たちが一番よく知っている」という姿勢は、外部からの意見や指摘を軽視し、新たな視点や情報を取り入れることを妨げます。
対立が悪だと考える風潮
スムーズに話し合えることが良いことだと感じ、対立が悪だと考える風潮がチーム内にあることもグループシンクの原因になります。
これにより議論の流れに違和感を覚えても、「波風を立てたくない」という心理が働き、自分の意見を抑えてしまうことがあります。
その結果、本来必要な反対意見や批判的視点が欠けたまま議論が進んでしまいます。
リーダーを中心にチームが動きすぎている
通常であれば、リーダーがチームの中心に居て、チームを主導していくことは悪いことではありません。しかし、その度合いが強くなると、他のメンバーがリーダーに対して異論を出しづらくなり、最終的な意思決定権をリーダーが持つ状態になってしまいます。
ただし、これはリーダーの能力だけに限った問題ではありません。優秀なリーダーであり、周囲の意見を積極的に取り入れようとしても、周囲がリーダーの決断に依存していれば、リーダーの意見に合意する方向で話を進めてしまい、グループシンクが起きてしまいます。
グループシンクの具体例
グループシンクについて理解を深めても、自分のチームがグループシンクに陥っていることに気づくのは難しいものです。
そのため、客観的にチームを見る材料として、グループシンクの具体例となるシチュエーションを2つ紹介します。
① 結束力が高いチームのケース
1つ目は、典型的なグループシンクの例として、結束力の高さを自覚しているチームでの具体例を紹介します。
このケースでは、長期間の共同作業により、メンバー同士が仲を深め、強い結束力を築いています。しかし、チームの結束力に居心地の良さを感じ、チームへの信頼が高くなっているため、アイデアに対する批判的な思考が欠け、問題の見落とすリスクにつながっています。
とくに「全員が賛成しているなら間違いない」と考え、異論を避ける姿勢はグループシンクの典型的な症状といえるでしょう。
②主導的なリーダーに依存しているケース
2つ目は、主導的なリーダーがおり、そのリーダーに対してメンバーが依存しているケースを紹介します。
このケースでは、一見すると活発なディスカッションのように見えますが、最終的には意見同士を検討するのではなく、リーダー一人の判断で意見がまとめられてしまっています。これは実質的にリーダーの意見や考えを優先するものであり、多角的な意見が抑え込まれている状況です。
さらに、メンバーが過去の成功体験からリーダーを信頼し、依存しているため、自分たちで判断する力も弱くなっており、問題点を見逃がす原因となっています。
グループシンクの対策
グループシンクに気づくため、また陥らないための対策を紹介します。
話し合いの時間に余裕を持たせる
グループシンクを防ぐためには、議論に十分な時間的余裕を確保することが重要です。時間のない状況や締め切りが差し迫っている状況では「結論を早く出すこと」を優先しがちです。その結果、異論や多様な意見が十分に検討されず、「とりあえずの合意」というグループシンクに陥る可能性が高まります。
時間的な余裕を持つことで、短絡的な結論を避け、論理的な意思決定につながります。
少人数で話し合う場を設ける
グループシンクを防ぐためには、はじめに少人数で議論し、その後にチーム全体で議論を行うことが効果的です。少人数の議論では、全員が発言する機会を持ちやすくなり、自分の意見が影響を与えやすい環境となるため、責任感や主体性が高まり、議題に対する当事者意識が高まります。
少人数での議論を経ることで、各自が議題に対する理解を深め、チーム全体での議論の際に質の高い意見を持ち寄ることができます。これにより、各自が自分の意見に責任と自信を持ちやすく、チーム全体の議論でも一方的な意見に流されず、質の高い意思決定につなげることができます。
心理的安全性を確保する
グループシンクを防ぐためには、メンバーが自由に意見を発言できる環境を整えることが重要です。ここで重要となるのが「心理的安全性」の確保です。心理的安全性とは、チーム内で行う発言や行動に対して否定や批判を恐れず、自分の考えを安心して共有できる状態を指します。
心理的安全性を確保できていない場合、メンバーは反対意見や懸念を口にすることを避け、表面的な同意を示す傾向が強くなるでしょう。
心理的安全性を確保するためには、以下がポイントになります。
- リーダーが率先して反対意見を受け入れる姿勢を示す
- 意見を述べたメンバーに対して、批判ではなく質問を投げかける
会議の冒頭で、リーダーが「この会議では多様な意見を求めています」と明言するだけでも、心理的安全性に繋がります。また、発言しやすい雰囲気を作るために「全員が必ず意見を述べるタイミング」を設けることも有効です。
チームメンバーの特性を確認する
チームメンバーの特性を客観的に把握することも、グループシンクを防ぐ有効な手段です。
たとえば、慎重に物事を進めるメンバーがいるのか、あるいはリスクを過小評価しがちなメンバーがいるのかなどを理解することで、議論における多様性を意識しやすくなります。
このような特性を事前に把握していれば、特性に応じて「あえて異なる視点からの意見を求める」といった進め方ができるようになり、議論の流れに一石を投じて偏りを防ぐことができます。
外部の視点を取り入れる
議論を客観的かつ多角的に進めるためには、外部から第三者を招き、議論の観察やフィードバックをしてもらうことが重要です。
たとえば、他部署のメンバーに議論を見てもらうことで、チーム内では見過ごされがちなポイントに気づく可能性が高まります。外部の視点は、チームにおける暗黙の了解や、特定の価値観に疑問を投げかけ、議論を広げるきっかけとなります。また、外部の視点を意識することで、メンバーも自分たちの議論をより客観的に振り返りやすくなります。
まとめ
集団の意思決定は、本来であれば多角的な視点や意見を得られるため、見落としを減らし、偏りの少ない結論に導くことが期待されます。しかし、グループシンクに陥ると本来のこうした強みが失われてしまいます。
チームにおける話し合いがスムーズに進んでいるとき、その流れを維持するように動いてしまいがちです。しかし、上手くいっているように見える状態のときこそグループシンクであることを疑い、チームの在り方や意思決定に疑問をもって声を上げることが、結果的に良い結論を導き出せる可能性が高まります。
本記事を参考にグループシンクへ対策を講じて、よりよいチームを目指していきましょう。
以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。
1.合意形成研修
合意形成研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。
学びのポイント
- 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
- 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
- より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す
2.PDCA研修
PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。
学びのポイント
- 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
- 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく
3.戦略思考研修
戦略思考研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、労働力や資本を使って事業を設立し、利益を稼ぐことを目指します。
学びのポイント
- 不確実な状況のなかで自チームにとって最適な行動方針を考え、実行していく
- 戦略を決めるために与えられた手段のなかでどの情報を取得していくかの優先順位決めが求められる
4.コミュニケーション研修
コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
- 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる
5.ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。
学びのポイント
- 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
- 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる
6.クリティカルシンキング研修
クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。
学びのポイント
- 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
- フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
- 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する
7.リーダーシップ研修
リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。
学びのポイント
- メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
- 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、自分らしいリーダーシップを学べる
8.ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修のアクティビティ「ビジトレ」では、実践形式・クイズ形式のアクティビティを通して、ビジネスマナーを楽しく学びます。
学びのポイント
- 堅い内容になりがちなビジネスマナー研修にゲーム形式を取り入れることで、受講者が没入して学べる
- 名刺交換や報連相などを実行し、動作・マナーに慣れることで、翌日から実践できるようになる
9.防災研修
防災研修のアクティビティ「先が見えない防災訓練からの脱出」では、チームで協力して、防災のアイテムや知識を使用しながら謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 謎解きの答えが災害時のNG行動にまつわる内容となっており、解説時になぜ行なってはいけないかもセットで学ぶ
- 被災時は様々な情報が飛び交うため、情報を取得する際にどのようにすれば惑わされないかを学ぶ
10.OODA LOOP研修
OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。
学びのポイント
- 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
- ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う
この記事の著者
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