観察学習とは?やり方やポイントを解説
- 学習法

観察学習とは、他者を観察し、模倣して学ぶことを意味する心理学用語です。「モデリング」と呼ばれることもあります。この観察学習は、ビジネスにも応用できるといわれています。「もっと成果を上げられるようになりたい」「理想のリーダー像に近づきたい」などという思いがあるなら、観察学習を実践してみてはいかがでしょうか。
本記事では、観察学習とは何か、実施するメリット、やり方とポイントを解説していきます。
観察学習とは

観察学習とは、簡単にいうと「他者を観察・模倣して、自分がどのように行動するのかを学習する」ことです。
カナダ人心理学者のアルバート・バンデューラ氏が提唱した観察学習と、心理学NLPの観察学習のそれぞれの意味、観察学習の具体例を見ていきましょう。
バンデューラ氏が提唱した観察学習
アルバート・バンデューラ氏は、1977年に「社会的学習理論」を発表した人物です。それまでのアメリカは「行動主義」が主流で、「行動は報酬や懲罰といった条件づけの結果である」と考えられていました。これに対してアルバート・バンデューラ氏は、「人は条件づけよりも、自分の周りにいるモデルの行動を観察し、模倣することで学習するのではないか」と主張したのです。
自分の周りにいる「モデル」とは、親や兄弟、友だち、学校の先生といった身近にいる人物だけでなく、テレビ番組に登場する有名人のほか、本や映画の登場人物といった実在しない人物も含まれます。そして「行動」には、目に見えるものだけでなく、言葉で説明された行動も含まれます。
アルバート・バンデューラ氏は、モデルの行動を観察し、模倣することで、人は自分がどのように行動するのかを学習するという自身の考えを証明するために、ある実験を行いました。
ボボ人形実験
アルバート・バンデューラ氏が行った実験は、ボボ人形という空気で膨らませるビニール人形が使われたため、「ボボ人形実験」と呼ばれています。このボボ人形は、倒れてもすぐに起き上がる仕組みになっていました。
実験では、男女の幼い子どもたちを集めて3つのグループに分け、それぞれ次のようなことを行いました。
グループ1 | 子どもたちに、モデル(大人の男女1名ずつ)が乱暴な言葉を吐きながら、ボボ人形に暴力を振るっている様子を見せました。 |
グループ2 | 子どもたちに、モデル(大人の男女1名ずつ)がボボ人形を無視し、他のおもちゃで遊んでいる様子を見せました。 |
グループ3 | 子どもたちにはモデルを見せませんでした。 |
その後、子どもたちにはボボ人形とその他のおもちゃがある部屋に移動してもらいました。その様子を観察した結果、攻撃的なモデルを見せたグループ1の子どもたちには、モデルと同じような攻撃的な言動が多く見られたのです。この傾向は、特に男児に顕著に表れました。
観察学習の4つのプロセス
ボボ人形実験により、子どもが大人の行動を観察して学習することが示されましたが、見ただけで必ず学習が成立する(行動が変わる)というわけではありません。アルバート・バンデューラ氏は、観察学習が成立するためには、「注意過程」「保持過程」「運動再生過程」「動機づけ過程」という4つの要件が必要になるとしています。
1.注意過程 | モデルの行動に注意を向けます。注意がそれると、学習によくない影響が出るとされています。 |
2.保持過程 | モデルの行動を頭にインプットして、後で思い出せるようにします。 |
3.運動再生過程 | インプットしたモデルの行動を、実際に自分でやってみます。 |
4.動機づけ過程 | その行動をこれからも続けていくモチベーションを高めます。 |
観察して覚えた行動を実際に自分でやってみたときに、それに対して何らかの報酬があれば、その行動は継続されます。逆に、罰が与えられればその行動をとらなくなります。
これに当てはめて考えると、職場で部下に仕事を教えるときも、上司が手本としてやって見せるだけでは足りないということがわかります。まずは上司がやって見せた後、実際に部下にやらせてみて、それに対して肯定的なフィードバック(報酬)を与えることが重要なのです。そうすることで、行動を継続するモチベーションも高まり、主体的に動いてくれるようになることが期待できます。
心理学NLPの観察学習
ここまで紹介してきたアルバート・バンデューラ氏の観察学習は、「人はモデルの行動を観察し、模倣することにより学習が成立する」という理論です。これに対して心理学NLPの観察学習は、なりたい人になるためのスキル、もしくはテクニックのことをいいます。まずは、自分のお手本とする人を決めて、その人のことをよく観察し、行動だけでなく、感じ方や価値観なども含めて同じように模倣します。これを習得すれば、憧れの人と同様の状況や成果を得られるようになるでしょう。心理学NLPでは、観察学習よりも「モデリング」と呼ばれることが多いかもしれません。
観察学習の具体例
ここで、観察学習をより深く理解するために、いくつか具体例を紹介します。
たとえば、親が何も教えていなくても、子どもは親と同じような発言・行動をするようになることがあります。親が玄関で靴を脱ぎ散らかしていれば、子どももそれを見て、同じように靴を脱ぎ散らかすようになるかもしれません。親がきちんと靴を揃える姿を見せ、子どもがそれを真似したときに褒めてあげれば、靴を揃えることが習慣になっていくでしょう。これが、観察学習です。
また、スポーツをしていた人であれば、憧れの選手のフォームなどをよく観察して、気づいたことを自分も取り入れてみたことがあるという人も多いのではないでしょうか。これも、観察学習です。ビジネスにおいても同様に、仕事ができる先輩の行動や話し方、考え方などを観察し、模倣することで、今よりも成果を上げられるようになるかもしれません。ビジネスパーソンとしてレベルアップしたいと考えているなら、観察学習を実践してみてはいかがでしょうか。
観察学習を実施するメリット
観察学習を実施するメリットは、短期間で成長できる可能性があるということです。たとえば、自分にとって「理想のリーダー像」があるなら、成功事例として身近な人の行動パターンや思考パターンも含めてモデリングできるため効率的といえます。心理学NLPの観察学習は、行動だけでなく考え方や価値観なども含めてモデルとする人になりきるものです。これを習慣的に行えるようになれば、モデルの思考パターンも習得できるでしょう。モデルが近くにいないときでも、「あの人だったらどうするだろう」と考え行動できるようになります。モデルをよく観察し、正確に模倣することで、短期間でその人と同じような成果を出せるようになることが期待できます。
また、観察学習は、やったことない仕事に取り組まないといけないときにも有効です。「何から手をつければいいのかわからない」というようなときでも、前に同じ仕事をやっていた人のやり方を模倣すれば、とりあえずスタートを切ることができます。真似をして取り組んでいるうちに、だんだん状況も見えてくるようになるでしょう。正確に模倣しようとするうちに、仕事への理解も深まっていくはずです。
観察学習のやり方

ではここからは、観察学習のやり方を紹介していきます。
1.目標を設定する
最初のステップは、目標(ゴール)の設定です。今の自分を客観的に見て、できていること・できていないことを明らかにしたうえで、どのような結果を得たいのかを考えてみましょう。
目標を設定しておかないと、適切なモデルを選ぶことができません。モデル選定を誤ると、得たい結果も得られず、間違った方向に進んでしまうこともあります。まずは、目標を明確にしておきましょう。
2.モデルにする人を決める
次に、誰をモデルにするのかを決めます。モデルは、前のステップで設定した目標をもとに選びます。設定した目標をすでに達成している人、または目標達成に近づいていると感じる人をモデルにするとよいでしょう。
なかなか適切な人物が自分の周りで見つからない場合は、有名人や芸能人、本や映画の登場人物、または高いパフォーマンスを発揮できていたときの自分をモデルとしても構いません。ですが、できれば身近にいる人が望ましいです。どうしても見つからないときは、部署内でもっとも優秀な人をモデルにするというのも一つの方法です。
3.モデルにする人のことを深く知る
モデルが決まったら、その人のことをよく観察し、理解を深めていきましょう。行動や発言だけでなく、何を見ているのか、何を考えているのか、姿勢や表情、習慣などを、注意深く観察してみてください。
身近にいる人をモデルにしたのなら、わからない部分は直接質問してみてもよいでしょう。なぜその行動・発言をしたのか、そこに至るまでに何を考えていたのかなど、理由や背景まで理解できるようになると、より多くのことを学習できるでしょう。
身近な人以外をモデルにしたのなら、まるでその人が自分の目の前にいるかのように、具体的にイメージしてみてください。
4.実践する
次は、いよいよ模倣するステップです。頭のなかにモデルを強くイメージし、モデルになりきって同じようにやってみます。このとき、自己流にアレンジせずに、モデルが行った通りに忠実に模倣することが重要です。
しかし、いきなり全部を模倣するというのは難しいでしょう。まずは真似しやすい外的要素(服装、振る舞い、話し方など)から模倣し、それができるようになってきたら内的要素(価値観、考え方など)を模倣するというように、徐々に精度を高めていくのがおすすめです。外的要素には内的要素が表れるので、外的要素を模倣することで、内的要素の理解も深まっていくでしょう。
5.振り返りを行う
実践した後は、振り返りを行います。どのような行動をして、どのような結果になったのか、なぜそうなったのかを振り返っていきましょう。モデルが身近にいる人なら、本人に報告してフィードバックをもらうのもおすすめです。
ここまでのステップを、何度も繰り返していきます。繰り返すうちに、モデルをより正確に模倣できるようになっていきます。結果はすぐには出ないかもしれませんが、根気強く取り組んでいきましょう。
観察学習を実施するときのポイント
最後に、観察学習でより多くのことを学ぶためのポイントを紹介します。
観察力を鍛える
観察力とは、簡単にいうと物事を注意深く見る力のことです。観察学習は、まずはモデルをじっくりと観察し、その人のことを深く理解する必要があります。観察力を鍛えることで、モデルの小さな変化にも気づけるようになり、より忠実に模倣できるようになるでしょう。
観察力を高めるには、まず普段から周りの人や出来事に興味を持ち、意識を向けることが大切です。それらを見て、何か変わったことはないか、新しいものはないかなどを探す癖をつけていきましょう。続けているうちに、徐々にちょっとした変化にも気づけるようになってくるはずです。
見えない部分は想像してみる
理想とするモデルにより近づくために、ただ見たままを真似するだけでなく、見えない部分を想像したうえで真似をするようにしてみましょう。見えない部分とは、その行動や発言をした理由(意図)や、そこに至った背景、どのような視点で物事を見ているのかなどです。モデルが身近にいる人なら、本人に直接質問してみてみてもよいでしょう。
初めのうちは表面的な行動しか真似できないかもしれませんが、実践するたびに振り返りを行い、理由や背景まで想像することで、モデルの視点や思考も理解できるようになっていきます。続けていくうちに、模倣の精度も高まっていくでしょう。
自分に合うモデルを選ぶ
観察学習は、モデル選びが非常に重要です。
まず、モデルの行動を再現できる能力が自分になければ、観察学習は成立しません。そのため、自身にとって適切なレベルのモデルを選ぶことが重要です。高い目標を持つことも大切ですが、今の自分が努力すれば到達できるレベルの目標を設定したうえで、モデルを探すようにしてみてください。
また、「この人みたいになりたい」と思う人の考え方ややり方が、自分に合うとは限りません。明確な目標を設定して、適切なモデルを選んだつもりでも、いざ模倣してみると合わないこともあります。実践のたびに振り返りをして、違和感を覚える場合は、モデルを変更することも検討してみましょう。
まずは小さいことから真似してみる
モデルは、できれば身近な人のなかから選ぶのが望ましいです。しかし、自分が理想とする人が周りにいるとは限りません。近くで見ているとダメなところも見えてしまいますし、「優秀だけれどやり方が独特で、とても真似できない」というような人もいるでしょう。しかし、どんな人にも真似できるところはあるはずです。周りにモデルにできるような人がいないと感じる場合は、周りにいる人のなかで、真似ができるところを探してみるようにしましょう。
たとえば、「誰よりも早く出社している」「いつも笑顔で挨拶する」「いつもデスク回りが整理整頓されている」など、どんな些細なことでも構いません。じっくり観察してその人のよいところを見つけて、小さなことから真似してみましょう。
また、観察学習ではありませんが、よくないところを見つけたらその人を反面教師にすることもできます。まずは普段から、周りの人をよく観察する癖をつけるところから始めてみてはいかがでしょうか。
自分の考え方や価値観は手放す
考え方や価値観というのは、人によって違います。そのため観察学習をするなかで、モデルの行動を理解できなかったり、「やりたくない」と思ってしまったりすることもあるでしょう。モデルになりきるには、自分の考え方や価値観を手放す必要があります。しかし、これは容易なことではありません。ときには、苦悩や苦痛を伴うこともあるでしょう。それを一度だけ真似するのではなく、習慣的に行えるようになるには時間と労力も必要になります。「観察して模倣する」というと簡単に聞こえてしまうかもしれませんが、観察学習は意外と難しいものなのです。
まずはモデルを忠実に模倣することが大切ですが、最終的にはモデルと全く同じ人になる必要はありません。実践するたびに振り返りをして、モデルの行動と自分の行動を照らし合わせながら、目標達成のために必要なもの・必要ではないものを分けていきましょう。
まとめ
心理学用語の観察学習について解説しました。観察学習は簡単ではありませんが、習慣的に行えるようになれば、ゼロから学ぶよりも短期間で目標を達成できる可能性があります。
観察学習は、その名の通り観察することで学習します。より多くのことを学ぶには、観察力を鍛える必要があります。観察力はビジネスパーソンに欠かせないスキルの一つです。まずはこれを磨くことから始めてみてはいかがでしょうか。
以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。
1.合意形成研修
合意形成研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。
学びのポイント
- 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
- 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
- より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す
2.PDCA研修
PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。
学びのポイント
- 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
- 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく
3.戦略思考研修
戦略思考研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、労働力や資本を使って事業を設立し、利益を稼ぐことを目指します。
学びのポイント
- 不確実な状況のなかで自チームにとって最適な行動方針を考え、実行していく
- 戦略を決めるために与えられた手段のなかでどの情報を取得していくかの優先順位決めが求められる
4.コミュニケーション研修
コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
- 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる
5.ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。
学びのポイント
- 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
- 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる
6.クリティカルシンキング研修
クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。
学びのポイント
- 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
- フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
- 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する
7.リーダーシップ研修
リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。
学びのポイント
- メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
- 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、自分らしいリーダーシップを学べる
8.ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修のアクティビティ「ビジトレ」では、実践形式・クイズ形式のアクティビティを通して、ビジネスマナーを楽しく学びます。
学びのポイント
- 堅い内容になりがちなビジネスマナー研修にゲーム形式を取り入れることで、受講者が没入して学べる
- 名刺交換や報連相などを実行し、動作・マナーに慣れることで、翌日から実践できるようになる
9.防災研修
防災研修のアクティビティ「先が見えない防災訓練からの脱出」では、チームで協力して、防災のアイテムや知識を使用しながら謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 謎解きの答えが災害時のNG行動にまつわる内容となっており、解説時になぜ行なってはいけないかもセットで学ぶ
- 被災時は様々な情報が飛び交うため、情報を取得する際にどのようにすれば惑わされないかを学ぶ
10.OODA LOOP研修
OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。
学びのポイント
- 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
- ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う
この記事の著者
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