リバースメンタリングとは?導入するメリット・事例を解説
- 組織・人材開発

大学卒業後、クラシック音楽業界にて制作・マネジメント・プロデュースに従事し、アートと教育の融合をテーマに、「体験を学びとして届ける」手法を追求してきた。
その後、体験型コンテンツ会社を経て、株式会社IKUSAにクリエイティブプロデューサーとして入社。
現在は研修事業部の責任者として、体験型・ゲーム型の社員研修事業を統括している。
ユーザー視点に立ったサービス開発を得意とし、「楽しさが行動変容を生む」という信念のもと新しい研修体験を創出している。
人材育成やキャリア開発支援のために、先輩社員が若手社員をサポートする「メンタリング」を取り入れる企業が増えています。さらに近年は、このメンタリングの立場を逆にした「リバースメンタリング」の注目度も高まっています。
本記事では、リバースメンタリングとはどのような取り組みなのか、メリットと注意点、導入の流れ、リバースメンタリングの事例を紹介します。
リバースメンタリングとは
リバースメンタリングとは、若手社員が先輩社員や上司に対して助言をして成長をサポートするという、近年注目されている人材育成の手法です。一般的なメンタリングの立場が逆になったものであるため、「逆メンタリング」「逆メンター制度」などと呼ばれることもあります。
まずは、そもそもメンタリングとはどのようなものなのか、リバースメンタリングが普及した背景、どのような企業に向いているのか、詳しく解説していきます。
メンタリングとは
メンタリングとは、先輩社員と若手社員の組み合わせで実施する面談のことです。若手社員に指示を与えたり評価をしたりするような一般的な面談とは違い、メンタリングは若手社員の成長をサポートすることを目的としており、双方向のコミュニケーションをとるのが特徴です。
メンタリングでは、サポートする側の先輩社員を「メンター」、サポートしてもらう側の若手社員を「メンティー」といいます。メンターは、メンティーの仕事上の悩みや課題だけでなく、職場の人間関係や、キャリアに関する悩みなどにも耳を傾け、メンティーが自ら解決できるようにサポートします。メンタリングの目的はさまざまですが、職場における新たな人間関係の構築や、キャリア開発の促進、女性活躍推進の取り組みとして実施している企業もあります。
メンタリングは、基本的にはメンターとメンティーの1対1で行われます。一般的には、直属の上司や先輩ではなく、利害関係のない別の職場の先輩社員がメンターになります。比較的メンティーと年齢が近い先輩社員がメンターとなることが多いようです。
リバースメンタリングは、このメンタリングの立場を逆転(リバース)させたものなので、若手社員がメンター、先輩社員や上司がメンティーとなります。
参考:メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル – 厚生労働省(PDF)
リバースメンタリングが普及した背景
リバースメンタリングを初めて導入したのは、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)の元CEOであるジャック・ウェルチ氏だといわれています。リバースメンタリングで、若手社員が管理職や経営陣に対し、インターネットに関する知識を教えたそうです。
その後は他社でもリバースメンタリングの導入が進み、最近はベテラン社員にソーシャルメディアやデジタルマーケティングなどを学んでもらうため、企業としてダイバーシティ&インクルージョンを推進するためなどの目的で実施している企業もあるようです。
テクノロジーの進展や時代の変化などにより、ビジネス環境は非常に速いスピードで変わり続けています。これに対応していくためには、ベテラン社員にも知識をアップデートしてもらわなければなりません。デジタル技術や最新のトレンド情報など、ベテラン社員よりも若い世代のほうが強い分野もあります。それらをベテラン社員が効率よく学ぶ方法として、リバースメンタリングを取り入れる企業が増えてきているようです。
リバースメンタリングが効果的な企業
では、リバースメンタリングはどのような企業におすすめの取り組みなのでしょうか。
前項でお伝えしたとおり、リバースメンタリングはベテラン社員の知識をアップデートする方法として注目されています。新しい概念や技術を理解し、ビジネスに取り入れていきたいと考えているなら、リバースメンタリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。たとえば、AIなどの最新技術や、ダイバーシティ&インクルージョン、SDGsなどについてベテラン社員に学んでほしい場合は、リバースメンタリングが有効かもしれません。
また、リバースメンタリングを実施することで、ベテラン社員は新しい知識を得られるだけでなく、若手社員の視点や価値観も理解できるようになります。そのため、企業に古い体制や文化が根付いており、それを変えたいと思っているような場合にも、有効な取り組みと考えられます。たとえば、年功序列で成果よりも年齢や勤続年数が重視されている、体育会系的な上下関係があるというような場合です。また、社員の平均年齢が高い、社員の男女比に偏りがあるというような場合にも、高い効果が期待できるともいわれています。リバースメンタリングを実施することで、若手社員の視点や価値観を経営に取り入れられるようになるだけでなく、中堅~ベテラン社員のマネジメント力の向上も期待できるでしょう。
さらに、リバースメンタリングを重ねて相互理解が進めば、信頼関係を築きやすくなります。組織全体のコミュニケーションを活性化させたい場合にも、リバースメンタリングはおすすめです。
リバースメンタリングのメリット
次に、リバースメンタリングを実施することで、具体的にどのようなメリットが得られるのかについて、詳しく見ていきます。
社員の成長につながる
リバースメンタリングを実施することで、メンター、メンティー双方の成長につながります。
まずメンティー(先輩社員、上司など)ですが、リバースメンタリングで若手社員から多くの新しいことを教えてもらうことで、持っている知識をアップデートできます。また、若手社員の視点や価値観を理解できるようになれば、視野も広くなり、マネジメント力も向上するでしょう。
そして、メンター(若手社員)も、メンティーをサポートするなかで成長できます。具体的には、メンティーに自分が持っている知識や情報を伝えていくなかで、プレゼンテーション能力が磨かれていきます。自分の言葉で説明することで、その分野に対する理解もさらに深まっていくでしょう。積極性・主体性も身につくことが期待できます。さらに、対話を通じてメンティー世代の考え方や価値観を学べるというのも、若手社員にとってのメリットの1つといえるでしょう。
社内コミュニケーションが活性化する
企業の規模や社員数によっては、なかなか若手社員がベテラン社員や経営トップと話す機会がないというケースもあるでしょう。リバースメンタリングという形で、縦の交流を促す機会をあえて設けることで、社内全体のコミュニケーションが活発になることが期待できます。社内コミュニケーションが活性化すれば、報告や相談もしやすくなり、業務がよりスムーズに進むようになるでしょう。活発な意見交換が行えるようになれば、新しいアイデアも生まれやすくなるかもしれません。
どのような目的で実施するかにもよりますが、リバースメンタリングも一般的なメンタリング同様、利害関係のない者同士を組み合わせたほうがよいといわれています。そうすることで、多様な考え方や価値観を理解できるようになり、社内コミュニケーション活性化につなげることができるでしょう。
若手社員のエンゲージメント向上につながる
エンゲージメントとは、社員が企業に対して自発的に貢献意欲を持っている状態を指す言葉です。「愛社精神」と表現するとわかりやすいかもしれません。
リバースメンタリングを導入すると、若手社員はメンティーに知識や情報を伝えることを通じて、自分が「企業の役に立っている」ということを実感できるようになります。やりがいや達成感を得られるようになり、エンゲージメントが向上することが期待できます。
さらに、初めはなかなか難しいかもしれませんが、若手社員も回数を重ねていくと、自分よりも立場が上のメンティーに対しても、徐々に話したいことを話せるようになっていくでしょう。そうすると、心理的安全性も向上します。心理的安全性とは、周りの人の反応を気にすることなく、自分の意見をいえたり、思った通りに行動できたりする状態のことをいいます。これも、社員のエンゲージメントを高めるために重要な要素です。
若手社員のエンゲージメントを高めることができれば、生産性の向上や離職率の低下といった効果も得られるでしょう。
リバースメンタリングを導入するときの注意点
リバースメンタリングを効果的に行うために、導入の際は以下の2点に注意しましょう。
若手社員に負担がかからないよう工夫する
さまざまなメリットが期待できるリバースメンタリングですが、若手社員にとっては大きな負担になってしまう可能性があります。若手社員は、先輩社員や上司、ベテラン社員といった、自分よりも立場が上の人に教えることになります。そのため、初めは特に心理的に大きな負担がかかるでしょう。メンティーに遠慮してしまって話したいことを話せない、教えることに慣れていないため何をどう話せばいいかわからないといった状態になってしまう可能性があります。
リバースメンタリングを実施するなら、できるだけ若手社員に負担がかからないようにして、自分の強みを発揮してもらえるように工夫する必要があります。具体的には、一般的なメンタリングは基本的にメンターとメンティーの1対1ですが、メンターを複数人体制にするという方法が考えられます。また、事前に若手社員に研修を実施して伝え方や教え方を学んでもらったり、リバースメンタリング実施後にメンティーから若手社員に「今回気づけたこと・学んだこと」を伝えてもらったりするのもよいでしょう。
さらに、若手社員のモチベーションを維持するためには、リバースメンタリングを人事評価に反映するというのも1つの方法です。
社内にお互いを認め合う考え方を浸透させる
メンティーとなる先輩社員や上司、ベテラン社員のなかには、若手社員からの助言を素直に受け取れない、もしくは抵抗を感じるというような人もいるかもしれません。このような状態でリバースメンタリングを実施しても、あまり効果は得られないでしょう。新しい学びを社内に広げていくためには、相手を認め、尊重し合うことが重要です。あらかじめリバースメンタリングの目的やメリットを共有し、意識づくりを行っておくことも大切です。
また、このような新しい考え方や取り組みを定着させるためには、まずは上から変わる必要があります。リバースメンタリングも、経営層からスタートさせるのがよいのではないでしょうか。
リバースメンタリングを導入する流れ
ではここからは、リバースメンタリングを導入する流れを紹介していきます。
1.目的を設定し、周知する
まずは、何のためにリバースメンタリングを実施するのかという目的を明確にして、社内に周知します。この際、リバースメンタリングとはどういったものか、ルールや仕組み、ポイントなどもあわせて伝えて、社員と組織の成長につながるものであることを理解してもらいましょう。
事前に社員に向けて説明会を開催したり、詳細を動画でまとめて説明したりしている企業もあるようです。
2.メンター・メンティーの組み合わせを決める
次に、メンターとメンティーの組み合わせを決めます。一人のメンティーに何人メンターをつけるのか、誰と誰を組み合わせるのかを、具体的に決めていきましょう。先ほどお伝えしたように、リバースメンタリングも一般的なメンタリング同様に、利害関係のない者同士を組み合わせるのがおすすめです。実施する目的やメンター・メンティーに望む変化なども考えて決定しましょう。
また、運営が組み合わせを決めるのではなく、参加は公募制としてアプリでマッチングしている企業もあります。
3.リバースメンタリングを実施する
組み合わせが決まったら、日程を調整してリバースメンタリングを実施しましょう。1回あたりのメンタリングは30分~60分程度としているところが多いです。頻度は企業によってさまざまですが、テーマやルール、組み合わせなどを見直しつつ、継続して実施していきましょう。
そして、実施して終わりにしないことも重要なポイントです。アンケートなどでメンタリングの効果や双方の満足度を確認し、改善につなげていきましょう。
リバースメンタリングの事例
最後に、リバースメンタリングの事例として、ジョンソン・エンド・ジョンソンと岩手県の取り組みを紹介します。
ジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、2021年にリバースメンタリングを導入しました。DE&I(※)の啓発を行うグループが事務局となり、これを実施しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのリバースメンタリングは、まず参加希望者がアプリから応募をして、プロフィールなどを見てメンティーがメンターを選ぶという仕組みになっています。そして、マッチングが成立したらリバースメンタリングを実施するという流れです。テーマはお互いに相談して設定し、1回30分~60分のメンタリングを2~4週間ごとに計3、4回実施します。最後のメンタリング終了後には、アンケートも実施しています。
効果的なリバースメンタリングとするために、事務局から参加者に事前にポイントも伝えているそうです。具体的には、メンターとメンティーの立場が逆にならないように意識すること、助言する側の立場に慣れていない若手社員を思いやることなどがあります。
参考:J&Jの「リバースメンタリング」とは?-トップが若手から取り入れる経営のヒント | ジョンソン・エンド・ジョンソン (jnj.co.jp)
岩手県
岩手県は、2021年度に「岩手版リバース・メンター制度」を創設しました。岩手県内、または岩手県にゆかりのある若者(40歳未満)がメンターとなり、県幹部職員(総括課長級以上)に助言をするという仕組みです。岩手県の若者が県行政へ思いを伝える機会の拡充することや、県幹部職員のマネジメント力を向上させることを目的としています。
企業では難しいかもしれませんが、組織の外からメンターを選出するという、画期的なリバースメンタリングの事例です。
参考:「岩手版リバース・メンター制度」の創設について – 岩手県(PDF)
まとめ
目まぐるしく変化するビジネス環境に対応していくためには、ベテラン社員や経営層も知識やスキル、価値観をアップデートしていかなければなりません。そのための方法として、リバースメンタリングが注目されるようになっています。
リバースメンタリングを導入することで、助言をもらう側だけでなく、助言をする側である若手社員も成長できます。また、異なる世代の多様な考え方や価値観を知ることができるため、信頼関係も築きやすくなります。その結果、社内コミュニケーション活性化やエンゲージメントの向上といった効果も期待できるでしょう。
以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。
1.合意形成研修
合意形成研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。
学びのポイント
- 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
- 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
- より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す
2.PDCA研修
PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。
学びのポイント
- 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
- 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく
3.戦略思考研修
戦略思考研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、労働力や資本を使って事業を設立し、利益を稼ぐことを目指します。
学びのポイント
- 不確実な状況のなかで自チームにとって最適な行動方針を考え、実行していく
- 戦略を決めるために与えられた手段のなかでどの情報を取得していくかの優先順位決めが求められる
4.コミュニケーション研修
コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
- 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる
5.ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。
学びのポイント
- 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
- 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる
6.クリティカルシンキング研修
クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。
学びのポイント
- 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
- フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
- 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する
7.リーダーシップ研修
リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。
学びのポイント
- メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
- 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、自分らしいリーダーシップを学べる
8.ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修のアクティビティ「ビジトレ」では、実践形式・クイズ形式のアクティビティを通して、ビジネスマナーを楽しく学びます。
学びのポイント
- 堅い内容になりがちなビジネスマナー研修にゲーム形式を取り入れることで、受講者が没入して学べる
- 名刺交換や報連相などを実行し、動作・マナーに慣れることで、翌日から実践できるようになる
9.防災研修
防災研修のアクティビティ「先が見えない防災訓練からの脱出」では、チームで協力して、防災のアイテムや知識を使用しながら謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 謎解きの答えが災害時のNG行動にまつわる内容となっており、解説時になぜ行なってはいけないかもセットで学ぶ
- 被災時は様々な情報が飛び交うため、情報を取得する際にどのようにすれば惑わされないかを学ぶ
10.OODA LOOP研修
OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。
学びのポイント
- 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
- ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う
この記事の著者
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