人材定着率を高めるには?離職原因の調べ方と優先施策の選び方

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

人材定着に取り組む際は、施策を先に決めるのではなく、自社で「いつ・どこで・なぜ」離職が起きているのかを把握することが出発点です。原因によって、採用時の情報提供を見直すべきか、入社後のフォローや管理職の関わり方を改善すべきかは異なります。

本記事では、人材定着率の把握方法から離職原因の特定、優先施策の選び方までを解説します。あわせて、RJP、オンボーディング、1on1、チームビルディングの具体的な進め方も紹介します。

 

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人材定着率の計算方法と目安

人材定着の改善策を考えるには、まず現在の状況を同じ条件で測れる状態にする必要があります。ここでは、人材定着率と離職率の計算方法、公的統計と比較するときの注意点を解説します。

人材定着率と離職率の計算方法

人材定着率は、対象とする社員と期間を決めたうえで、次のように算出します。

定着率=一定時点まで在籍している対象者数÷基準時点の対象者数×100

たとえば、ある年度に入社した社員10人のうち1年後に8人在籍していれば、1年後の定着率は80%です。対象者や分母、期間が同じ場合には表裏の関係になります。

自社では、新卒・中途など対象を分け、入社後90日、1年、3年など同じ時点で継続して確認しましょう。人数が少ない企業では1人の退職で率が大きく変わるため、割合と実人数を併記すると状況を把握しやすくなります。

参考:厚生労働省「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)企業入力マニュアル 第2版」

公的統計と比較するときの注意点

厚生労働省「令和7年 雇用動向調査」によると、2025年の常用労働者の年間離職率は13.7%です。

参考:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」

また、2022年3月卒の大卒者の3年以内離職率は33.8%でした。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」

対象や期間が異なる数値は直接比較せず、自社と近い条件を参考にしながら、同じ条件で推移を追います。

 

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離職原因を特定する診断手順

定着率を把握したら、次は離職が「いつ・どこで・なぜ」起きているかを確認します。原因を人間関係や若手の価値観などに決めつけず、複数の情報を組み合わせることが必要です。ここでは、離職データの確認、社員へのヒアリング、原因整理の手順を解説します。

1.離職データから「いつ・どこで」辞めているかを確認する

まず、確認できる期間の退職者を一覧にし、勤続期間を「90日以内」「1年以内」「1~3年」などに分けます。さらに部署や職種でも分類し、離職が特定の時期や場所に偏っていないかを確認しましょう。

入社直後の離職が目立つなら、採用時の情報提供や受け入れ体制を詳しく見る必要があります。特定部署に偏っていれば、その部署の仕事量、人間関係、育成方法、管理職との関係などを確認するきっかけになります。

この段階では原因を断定せず、詳しく調べる場所を絞るための仮説として扱います。

2.在籍社員・退職者から「なぜ」を確認する

離職が多い時期や部署を把握できたら、次はその背景にある原因を確認します。離職時期や所属だけでは、「なぜ辞めたのか」までは分からないためです。

離職原因を探る際は、退職者の声だけで判断せず、在籍社員の状況もあわせて確認します。その際、どのような点を確認するかを考える参考になるのが、公的な離職理由の調査です。厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」では、若年者が初職を辞めた理由として、労働時間・休日・休暇、人間関係、賃金、仕事内容などが挙げられています。

参考:厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」

こうした調査を踏まえると、自社でも原因を「人間関係」「給与」など1つに決めつけず、複数の観点から確認する必要があります。

在籍社員には、たとえば「期待されている役割は分かるか」「仕事を進めるうえで必要な支援を受けられているか」「仕事量に無理はないか」「評価の基準や説明に納得できているか」などを尋ねると、現在感じている困りごとを把握しやすくなります。

一方、退職者には、退職理由だけでなく、離職を考えるまでの経緯をたどるように聞くことが大切です。具体的には次のような質問が考えられます。

  • 入社前と入社後でギャップを感じた点はありますか
  • 働きにくさや不満を感じ始めたのはいつ頃ですか
  • その頃、仕事や職場でどのようなことがありましたか
  • 仕事内容、人間関係、評価、労働時間、給与のなかで、特に気になったものはありますか
  • 会社や上司から、どのような支援があればよかったと感じますか

3.集めた情報から離職原因を整理する

在籍社員や退職者から情報を集めたら、回答を個別に見るだけでなく、共通する内容を整理します。前の章で確認した離職時期や部署とも照らし合わせることで、どの課題を優先して確認すべきか絞り込みやすくなるでしょう。

整理する際は、たとえば次のように分類できます。

  • 採用時の期待とのずれ:仕事内容や働き方が入社前のイメージと異なっていた
  • 入社後の支援:役割や仕事の進め方、相談先が分かりにくかった
  • 上司・職場との関係:上司に相談しにくい、職場内で連携しにくいといった課題があった
  • 評価・キャリア:評価の基準や理由が分かりにくい、今後のキャリアを描きにくかった
  • 労働条件:労働時間、休日、給与などに不満があった

1つの回答が複数の課題に関わる場合は、無理に1つへ分類する必要はありません。評価への不満も、結果だけでなく基準や説明のされ方まで分けて確認します。整理できたら、次に優先して対応する課題を決めます。

離職原因に応じた施策の選定と見直し

離職原因を整理できたら、次は確認された課題に応じて取り組む施策を選びます。すべての施策を同時に実施するのではなく、離職が起きている時期や背景と照らし合わせながら、優先順位を決めることが必要です。ここでは、優先施策の選び方と、実施後の見直し方を解説します。

離職時期と原因から優先施策を選ぶ

優先する施策を決める際は、「いつ辞めているか」と「どのような不満や課題が多いか」を組み合わせて考えましょう。
たとえば、次のように整理できます。

  • 入社直後に、仕事内容や働き方へのギャップが多い
    →採用時に伝えている仕事内容や職場情報を見直す
  • 入社初期に、役割や相談先が分からないという声が多い
    →オンボーディングや相談体制を見直す
  • 特定の部署で、上司との関係や評価への不満が多い
    →1on1などの日常的な関わり方や、評価の伝え方を確認する
  • 部署間で相談や協力がしにくいという声が多い
    →チーム内・部署間の連携方法を見直す
  • 労働時間や給与などの労働条件への不満が多い
    →業務量や労働条件そのものを確認する

たとえば、労働時間への不満が主な原因として挙がっている場合に、交流イベントを増やしても確認された課題への直接的な対応にはなりません。実施しやすい施策から選ぶのではなく、前の章で整理した離職原因との対応関係を確認しながら優先順位を決めます。

施策後の変化を同じ指標で確認する

施策後は、離職原因として確認した課題に変化があったかを同じ項目で確認します。入社初期の支援なら「役割が明確か」「相談先が分かるか」、1on1なら「必要な支援を受けられているか」など目的に対応する項目を継続して追いましょう。変化がなければ、施策の進め方か原因仮説を見直し、対応を調整します。

採用時のミスマッチを防ぐRJPの実践方法

離職原因を整理した結果、入社前のイメージと実際の仕事内容・働き方とのずれが目立つ場合は、採用段階での情報提供を見直します。求職者が入社後の仕事を具体的にイメージできるように、よい面だけでなく実際の職場や仕事に関する情報を伝えることが必要です。

RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前提示)は、求職者に仕事や職場の実態をありのままに伝える考え方です。Earnestら(2011年)のメタ分析では、RJPと自発的離職との関係が検討され、「組織が誠実である」という認識が両者をつなぐ主要な仕組みの1つとして整理されています。

参考:Earnest et al.(2011)“Mechanisms Linking Realistic Job Previews With Turnover: A Meta-Analytic Path Analysis”

また、厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引 第3版」では、企業全体の平均的な情報だけでなく、配属予定部署やプロジェクト単位の情報を提供することも示されています。

参考:厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引 第3版」

実務では、応募段階では事業内容や基本的な労働条件を伝え、選考が進んだ段階で、配属予定部署の仕事内容、求められる役割、働き方などより具体的な情報を共有します。職場の様子を伝えにくい場合は、選考とは別の面談や配属予定部署の社員との交流、職場見学を設ける方法もあります。

求職者が入社後の働き方を判断できる情報を、実態に沿って伝えましょう。

入社初期のオンボーディングとフォロー体制

採用時に仕事内容や働き方を具体的に伝えていても、入社後に役割や仕事の進め方が分からなかったり、困ったときの相談先が曖昧だったりすると、職場への適応を進めにくくなります。ここでは、新入社員の適応状況を確認する方法と、相談しやすい体制の整え方を解説します。

30・60・90日で新人の適応状況を確認する

Bauerら(2007年)のメタ分析では、新人の職場適応に関わる要素として「役割の明確さ」「自己効力感」「職場で受け入れられている感覚」が整理され、職務満足や組織コミットメント、離職に関する指標などとの関連が検討されています。

参考:Bauer et al.(2007)“Newcomer adjustment during organizational socialization”

入社後のフォローでは、これらの観点を一度だけ確認するのではなく、一定の期間ごとに状況を見ていく方法があります。30・60・90日という区切りは同研究で示されたものではありませんが、実務上の確認時期として、たとえば次のように整理できます。

  • 0~30日:担当業務や期待されている役割、仕事の優先順位、相談先が分かっているかを確認します。
  • 31~60日:1人で進められる業務と、まだ支援が必要な業務を整理し、仕事を進めるうえで困っていることがないかを確認します。
  • 61~90日:担当できる業務の範囲や今後の目標を確認するとともに、入社前に抱いていたイメージとのずれや、職場でまだ不安に感じていることがないかを振り返ります。

30・60・90日はあくまで目安です。新卒・中途、職種、経験などに応じて、確認する時期や内容を調整しましょう。

新入社員が相談できる体制を整える

適応状況を定期的に確認するだけでなく、困ったときに相談できる相手や窓口を明確にしておくことも必要です。特に、業務指示や評価を行う直属の上司だけに相談先が限られていると、内容によっては話しにくさが生じることがあります。

厚生労働省の2025年の調査研究では、中途採用者のオンボーディングに関する企業事例として、チームミーティングや他部署との接点、定期的な上司との面談などを組み合わせた取り組みが紹介されています。

参考:厚生労働省「中途採用・経験者採用が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究」

自社で相談体制を整える際は、「誰に、どのような内容を相談できるのか」を分かる状態にしましょう。たとえば、業務の進め方や目標については上司、日常的な疑問や社内の相談先への橋渡しはメンターなど、役割を分ける方法があります。

制度名や担当者を設けること自体が目的ではありません。新入社員が「誰に聞けばよいか分からない」「相談したいが相手を選べない」という状態を減らせるよう、相談先と役割を具体的に示すことが大切です。

管理職の日常マネジメントの改善方法

入社初期のフォロー体制を整えたあとは、日常的な上司との関わり方にも目を向けます。社員の困りごとや必要な支援を把握するには、業務の指示や進捗確認だけでなく、継続的に話せる機会を設けることが必要です。ここでは、1on1で社員の状況を確認する方法と評価を伝える際のポイントを解説します。

1on1で困りごとと必要な支援を確認する

上司による支援と社員の認識の関係を考えるうえでは、Eisenbergerら(2002年)の研究が参考になります。同研究では、上司から支援されているという認識が、組織から支援されているという認識と関連し、離職との関係も検討されています。

参考:Eisenberger et al.(2002)“Perceived supervisor support: contributions to perceived organizational support and employee retention”

1on1では、業務の進捗だけでなく、仕事を進めるうえで困っていることや、本人が必要としている支援を確認します。たとえば、次のような質問が考えられます。

  • 最近、仕事でうまく進んでいることはありますか
  • 仕事を進めるうえで困っていることはありますか
  • 上司やチームから必要な支援はありますか
  • 役割や仕事の優先順位で分かりにくいことはありますか
  • 今後取り組みたい仕事や伸ばしたいことはありますか

UC Berkeleyの「UC Experience Conversations」でも、仕事の経験やキャリア、所属感、上司からの支援などについて話す機会を、通常の業績評価とは分けて設ける方法が紹介されています。

参考:University of California, Berkeley「UC Experience Conversations」

1on1で聞いた内容は、その場で話して終わりにせず、上司が対応することと本人が取り組むことを整理し、次回の対話で状況を確認できるようにしましょう。

評価の基準と理由を丁寧に説明する

社員から評価への不満が挙がっている場合は、評価結果だけでなく、どのような基準や手続きで評価が決まり、本人にどう説明されているかまで確認します。

Colquittら(2001年)のメタ分析では、組織における公正さについて、結果の配分だけでなく、意思決定の手続き、人との接し方、情報提供といった側面が整理され、職務満足や組織コミットメントなどとの関連が示されています。

参考:Colquitt et al.(2001)“Justice at the millennium”

たとえば「評価に納得できない」という声があった場合は、単に評価結果への不満として扱うのではなく、「評価基準が分からない」「評価に至った理由の説明が不足している」「上司によって評価の仕方が異なる」など、どこに不満があるのかを具体的に確認します。

そのうえで、評価を伝える際には、結果だけを伝えるのではなく、どの基準にもとづいて判断したのか、今後どのような点を期待しているのかまで説明しましょう。1on1で日常的な困りごとや必要な支援を確認する場と、評価結果を伝える場の目的を分けておくと、それぞれの対話で扱う内容も整理しやすくなります。

人材定着におけるチームビルディングの活用方法

離職原因として、チーム内の相談のしにくさや部署間の連携不足が見えている場合は、社員同士の関係や協働のあり方にも目を向けます。単に交流の機会を増やすのではなく、自社で確認された課題に合わせて内容を設計することが必要です。ここでは、課題に応じたチーム活動の設計方法と、体験を実務につなげる方法を紹介します。

自社の課題に合わせてチーム活動を設計する

チーム活動を企画する際は、先に「何を改善したいのか」を明確にします。たとえば、部署間の情報共有が不足しているのか、役割分担が曖昧なのか、意見を出しにくいのかによって、取り上げる内容は変わります。

Kleinら(2009年)のメタ分析では、チームビルディングの主な要素として「目標設定」「対人関係」「問題解決」「役割明確化」が整理され、チームの感情面やプロセス面などとの関連が報告されています。

参考:Klein et al.(2009)“Does Team Building Work?”

自社で「部署間の情報共有が不足している」という課題が確認されているなら、参加者同士で情報を共有しながら課題に取り組む活動を選ぶなど、診断した課題と内容を対応させましょう。

体験を振り返り、実務での行動につなげる

チーム活動は、実施して終わりにせず、体験の中で起きたことを振り返り、日常業務での行動につなげます。活動中のやり取りを振り返ることで、職場でも改善したい行動を具体化しやすくなるでしょう。

たとえば、活動中に一部のメンバーへ情報が偏ったのであれば、「業務でも必要な情報が特定の人に集中していないか」と振り返ることができます。役割が曖昧で進行が止まった場合は、普段の業務でも役割分担を明確にできているか確認するきっかけになります。

人材定着を目的とする場合も、研修そのものを離職対策と考えるのではなく、事前に確認した「相談のしにくさ」「役割分担」「部署間の連携」といった課題を扱い、職場での行動を見直す機会として活用しましょう。

まとめ

人材定着に取り組む際は施策を先に決めるのではなく、まず自社の離職が「いつ・どこで・なぜ」起きているのかを把握することが大切です。離職データと社員の声を組み合わせることで、採用時のミスマッチ、入社後の支援、上司との関係、評価、労働条件など優先して確認すべき課題を絞り込めます。

原因を整理したらその課題に対応する施策を選び、実施後も同じ観点で変化を確認しましょう。まずは自社の定着率と、退職者の勤続期間・所属を整理し、どこに課題が集中しているのかを確認するところから始めてください。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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