グループダイナミクスとは?チーム力を高める方法を紹介
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グループ(組織や集団)と、それに属する個人とは、互いに影響を与え合っています。このように、集団の中で起こる相互作用や影響について研究する学問を、「グループダイナミクス」といいます。
本記事では、グループダイナミクスとは何か、企業がグループダイナミクスを活用するメリット、グループダイナミクスを活用してチーム力を高める方法、ポジティブな効果を生み出すためにできることについて解説します。
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グループダイナミクスとは
グループダイナミクスとは、「集団力学」と呼ばれる社会学の一つの分野のことです。または、グループの特性やシステムを指すこともあります。「個人の行動や思考は、所属する組織や集団から影響を受けると同時に、組織や集団に対して影響を与えもする」という意味で用いられることが多いです。
たとえば、チームのリーダーが変わると、そのチームの雰囲気やメンバーの意見、行動などが変わることがあります。逆に、チームの雰囲気やメンバーの個性などから、リーダーが影響を受けることもあります。このような相互作用や影響を研究する学問が、グループダイナミクスです。
グループダイナミクスは、「社会心理学の父」と呼ばれるドイツ生まれの心理学者、クルト・レヴィン氏が1930年代に提唱したものといわれています。
グループダイナミクスには、ポジティブな面もあれば、ネガティブな面もあります。それを説明するために、ここからは、集団凝集性、集団圧力、集団浅慮について解説します。
集団凝集性
集団凝集性は、グループダイナミクスの主要な研究対象の一つです。集団凝集性とは、組織や集団に所属する個人に「このグループの一員でいたい」と思わせるような魅力や、動機づけの度合いを指します。
集団凝集性が高まると、グループに結束力や一体感が生まれます。全員がまとまって同じ方向に向かっていけるため、グループとして高い業績目標を設定していれば、大きな成果を生み出せることが期待できます。また、集団凝集性が高まると、心理的安全性やメンバーの帰属意識も高まるため、「グループを離れる」という選択をされにくくなります。企業としては、集団凝集性を高めることで、離職防止の効果も期待できるというわけです。
ただ、集団凝集性はいつもポジティブに働くとは限りません。たとえば、グループとしての目標がないのに集団凝集性が高い状態である場合、業績が低くても現状に甘んじるようになる恐れがあります。また、ただの「仲良しの集まり」になってしまい、意思決定の質が下がることもあるでしょう。さらに、一つの集団の中に複数の集団凝集性が存在すると、対立が生まれやすくなるともいわれています。
集団圧力
集団圧力も、グループダイナミクスの主要な研究対象の一つです。集団圧力とは、組織や集団において、意見や行動を多数派のメンバーに合わせるよう圧力がかかることです。同調圧力ともいわれます。
たとえば、「AとBのどちらを選ぶか」を話し合っているときに、「Bがいい」というメンバーが多かったとします。個人的にはAがいいと思っているのにそれを言わずに、周りに合わせて自分もBを選んでしまうというのが、集団圧力です。誰でも一度は経験があるのではないでしょうか。
ここで、心理学者のソロモン・アッシュ氏が行った、集団圧力に関する有名な実験を紹介します。8人の学生に問題を出し、一人ずつ順番に回答してもらいました。問題は、ほとんどの人が正解できるようなとても簡単な問題でした。しかし、最初の学生も、その次の学生も、さらに次の学生も、誤った答えを口にしたのです。実は、8人のうち7人は「さくら」であり、答えをわざと間違えていました。周りのメンバーの答えが間違っているときに、一人の被験者は正しく答えることができるのか、というのがソロモン・アッシュ氏が行った実験の内容です。これを何度か行った結果、周りに合わせて間違った回答をしてしまったケースが多くあったそうです。
日本人は、海外の人に比べてこの集団圧力を受けやすいともいわれています。
集団浅慮
集団浅慮とは、集団で合意形成をすることで、物事を判断・評価する能力が欠落してしまうことです。英語では「グループシンク(group think)」といわれます。
人は集団の中にいると、どうしても「個人の意思決定よりも、集団の意思決定のほうが適切」と考えてしまいやすくなります。自分では深く考えずに、周りに合わせてしてしまうこともあるでしょう。これにより、個人で考えれば当たり前に気づけたことが見落とされてしまう場合もあるのです。
集団浅慮は、結束力が強い(=集団凝集性が高い)グループや、グループが外部から隔絶した状態にある場合、グループのリーダーが支配的である場合などに起こりやすいとされています。
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グループダイナミクスを活用するメリット
ここまでに紹介したように、グループダイナミクスにはポジティブとネガティブの両面がありますが、集団の特性を上手く活用してポジティブな効果を生み出すことができれば、企業としては以下のようなメリットが期待できるといわれています。
エンゲージメントが向上する
エンゲージメントとは、自分の所属している組織や集団に対する貢献意欲のことです。企業であれば、従業員の企業に対する貢献意欲を指します。
先ほどお伝えしたように、集団凝集性が高まると、心理的安全性も高まります。心理的安全性とは、周りのメンバーの目や反応を気にすることなく、自分の意見を言えたり、思った通りに行動したりできる状態をいいます。心理的安全性が高いと、エンゲージメントも高まりやすくなるといわれています。つまり、集団凝集性を高めることで、エンゲージメントの向上が期待できるのです。
さらに、エンゲージメントが高まると、人材が定着し離職率が下がる、組織が活性化するなどの効果があるといわれています。
モチベーションが向上する
集団凝集性が高まれば、メンバー同士の結びつきが強まります。「このメンバーと一緒だから頑張れる」「このチームで目標を達成したい」という気持ちも生まれるでしょう。これにより、個人の仕事に対するモチベーションが高まることが期待できます。
モチベーション高く仕事に取り組めるようになると、パフォーマンスも向上します。一人ひとりのモチベーションが高まれば、そのグループや組織全体のパフォーマンスも向上するでしょう。
生産性が向上する
集団凝集性を高め、エンゲージメントやモチベーションが向上した結果として、生産性の向上も期待できます。企業という大きな組織の中には、部署やプロジェクトチームなどのさまざまなグループがあります。それぞれのグループの生産性が向上すれば、企業全体としての生産性が向上し、競争力を強化することにもつながるでしょう。
グループダイナミクスを活用してチーム力を高める方法
グループダイナミクスを活用すれば、チーム内の一体感を高めたり、協力関係を生み出したりすることができます。「グループダイナミクスを活用する」とは、つまり「集団凝集性を高める」ことです。ここでは、その具体的な方法を紹介します。ただ、先ほどお伝えしたように、集団凝集性がもたらす影響はポジティブなものばかりではありません。その点は、注意する必要があります。
明確な目標を設定する
集団凝集性が高いグループの特徴の一つに、「共通の目標を持っている」ということが挙げられます。チームとしての明確な目標があると、全員で一丸となって同じ方向に向かっていけるようになります。また、その目標を達成しようと、お互いに協力し合う風土も醸成されやすくなります。
ただ、そのためには全員が同じように理解できる目標であることが重要です。目標を設定する際は、「SMARTの法則」というフレームワークを活用してみましょう。SMARTは、以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。
- Specific(具体的である)……内容が具体的である
- Measurable(測定できる)……達成度合いを測定できる
- Achievable(達成できる)……現実的に達成することが可能である
- Relevant(関連性のある)……組織の目的や事業、個人の利益と目標の間に関連性がある
- Time-bound(期限がある)……達成期限が定められている
これを意識することで、明確で、メンバーにとってもわかりやすい目標を設定することができるでしょう。5つすべてを満たす必要はありませんが、グループダイナミクスでポジティブな効果を生み出したいなら、できればRは満たしておきたい要素といえます。
「SMARTの法則」については以下の記事で詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。
SMARTの法則とは?目標設定の方法や活用例・ポイントを解説
チームの人数を絞る
集団凝集性は、グループの規模が小さいと高まりやすいといわれています。グループを構成する人数が少ないと、自分以外のメンバー一人ひとりとしっかり向き合うことができ、絆が深まりやすくなるためです。プロジェクトや仕事の内容によっても必要な人数は変わりますが、集団凝集性を高めたいなら、できるだけチームの人数を絞るとよいでしょう。
また、グループの中に「似ている」人がいると、集団凝集性が高まりやすいともいわれています。考え方や価値観、これまでの経歴などが似ている人を同じチームにするというのも、一つの方法です。ただ、似ている人ばかりを集めると、ただの「仲良しの集まり」になってしまったり、意見が偏ったりしやすくなるというデメリットもありますので、メンバーを決める際はその点も考慮する必要があるでしょう。
ちなみに、同じような考え方や意見を持つ人たちで議論をすることで、方向性や進め方が極端になってしまう現象は、グループシフト(集団傾向)と呼ばれています。
チームビルディングを実施する
メンバーと一緒に同じ体験をすると、結束力が生まれやすくなります。特に一緒に成功体験を積み重ねていくことで、つながりをより強いものにできるでしょう。
集団凝集性を高めたいなら、チームのメンバーと成功体験を積み重ねる機会として、チームビルディングを実施するのもおすすめです。チームビルディングとは、一人ひとりのメンバーが持てる力を最大限に発揮して、全員で目標を達成できるようなチームを作る取り組みのことです。
いろいろなやり方がありますが、おすすめはチームビルディングにつながるワークやビジネスゲームを実施するという方法です。多くのワークやゲームは、チームにミッションが与えられ、それを全員でクリアするという作りになっています。わかりやすい「ゴール」が設定されているため、自然に全員で同じ方向に向かっていけるようになるでしょう。取り組む中で、チームにおける役割分担の大切さや、自分の役割についての理解も深められます。また、「楽しい」要素があることで、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、相互理解も促進されるでしょう。
これらの結果として、チーム力が高まることが期待できます。
グループダイナミクスでポジティブな効果を生み出すために
最後に、グループダイナミクスのポジティブな側面を引き出すために意識したいこと、企業ができることを紹介します。
少数派の意見もしっかり聞く
仕事をする中では、関係者が集まって話し合い、何かを決めなければならない場面が多々あります。そのときは、少数派の意見もしっかり聞いたうえで結論を出すようにしましょう。
何かを決めるときに、「多数決」が用いられることがあります。これが悪いというわけではありませんが、多数派の意見ばかりを聞いていると、グループシフトが起きやすくなります。
会議やミーティングでは、少数派の意見も取り入れられるように、全員が発言できるような仕組みや雰囲気を作ることが重要です。しかし、参加者の人数が多い場合、全員の意見を聞いている時間を確保できないこともあるでしょう。その場合は、会議の前にヒアリングシートに意見を書いてもらうのも一つの方法です。
リーダーの育成に力を入れる
グループのリーダーが支配的であったり、大きな権力を持っていたりすると、集団浅慮が起きやすくなるといわれています。「リーダーの〇〇さんが考えたことであれば、間違いないだろう」などという考えになりやすくなるのです。
また、リーダーとして自分のチームの結束を強くすることは大切ですが、お伝えしたように一つの集団の中に複数の集団凝集性が高まると、対立が生まれやすくなるといわれています。リーダーには、このような集団の特性を理解したうえで、リーダーシップを発揮することが求められます。
グループを構成するメンバーの中でも、リーダーがグループや個人に与える影響は大きいと考えられます。グループダイナミクスのポジティブな効果を引き出したいなら、リーダーの育成に力を入れ、適切にリーダーシップを発揮できるようになってもらいましょう。
【補足】クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ
グループダイナミクスを提唱したクルト・レヴィン氏は、1939年にリーダーシップを3つのタイプに分類しています(レヴィン・アイオワ研究)。このうち最も有効であるのは「民主的リーダーシップ」とされています。
- 専制型リーダーシップ……意思決定や指示、監督をすべてリーダーが行うスタイル。メンバーは受け身で、リーダーに従う形となる。未熟なグループに効果的。
- 放任型リーダーシップ……文字通り放任するスタイル。意思決定や作業手順などもメンバーに任せる。メンバーの技術、グループの成熟度が高い場合には効果的。
- 民主型リーダーシップ……メンバーの意見を取り入れながら、リーダーが方針を決定する。目標や作業手順などはメンバーに任せ、リーダーはそれを援助する。
この他にも、これまでに多くの学者により多様なリーダーシップ理論が提唱されています。企業によって、場面によって、時代によっても、求められるリーダーシップは変わります。リーダーには有名なリーダーシップ理論や、企業として求めるリーダー像などを学んでもらい、効果的にリーダーシップを発揮できるようになってもらいましょう。
まとめ
グループダイナミクスとは、社会学の分野の一つです。または、グループの特性やシステムを意味する言葉として用いられています。グループダイナミクスの主要な研究対象の一つである集団凝集性を高めることで、チームに結束力や一体感を生み出すことができます。これにより、エンゲージメントやモチベーションの向上、さらに生産性の向上も期待できるでしょう。ただ、集団凝集性を高めることによるネガティブな影響もあるので、その点は注意が必要です。
リーダーには、グループダイナミクスのネガティブな側面も理解してもらったうえで、効果的なリーダーシップを発揮することが求められます。グループダイナミクスやリーダーシップ理論を学んでもらうために、リーダーを対象に研修を実施してみてはいかがでしょうか。
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この記事の著者
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