先行オーガナイザーとは?ビジネスシーンでの使い方をわかりやすく解説
- 学習法
- ロジカルシンキング


学校の授業や企業の研修に先行オーガナイザーを活用することで、学習者が効率よく新たな知識・スキルを習得できるようになります。
本記事では、先行オーガナイザーとは何か、先行オーガナイザーにより促進される「有意味受容学習」とはどういった学習なのか、先行オーガナイザーのビジネスシーンでの使い方や、学習内容の「枠組み」をつくるために必要なロジカル・シンキングについて、わかりやすく解説します。
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先行オーガナイザーとは
先行オーガナイザーとは、新しい題材を提示する前に、学習者にあらかじめ学習内容の「枠組み」を情報として与えておき、学習や理解を促進する方法です。心理学辞典では、「これから学ぶ中心的内容についての抽象的・概念的な枠組みあるいは概念的知識」と説明されています。概観や要約と混同しがちですが、これらよりももっと抽象的なレベルで提示するのが先行オーガナイザーです。
はじめに先行オーガナイザーを実施しておくことで、内容の理解が促進されるといわれています。つまり、先行オーガナイザーとは、効率よく「予習」してもらうためのツールであるといえるでしょう。
先行オーガナイザーは、学校の教室での授業のような直線状の情報提示に用いられる方法です。学習の導入点が定まっていないような場合だと、あまり高い効果は期待できません。
先行オーガナイザーは、大きく分けて「説明による先行オーガナイザー」と「比較による先行オーガナイザー」の2種類があります。
説明による先行オーガナイザー
説明による先行オーガナイザーは、学習者がこれから学習することに関連する知識をほとんど持っていない場合に有効な方法です。
たとえば、業務効率化のために新しいITツールを導入するとします。社員にそのITツールを使いこなせるようになってもらいたいときに、いきなり使い方を教えるのではなく、まずはそのITツールは何をするためのものなのか、どんな機能があるのかという情報を社員に提示します。こうすることで、基本的な使い方や活用の仕方もスムーズに理解できるようになります。これが、説明による先行オーガナイザーです。
説明による先行オーガナイザーは、口頭や文章で説明するだけでなく、ピラミッドなどの図が用いられることもあります。
参考:「Design Rule Index」(著者:William Lidwell、Kritina Holden、Jill Butler 出版社:ビー・エヌ・エヌ 発売:2004年)
比較による先行オーガナイザー
比較による先行オーガナイザーは、学習者がすでにこれから学習することに関連する知識を持っている場合に有効な方法です。これから学習することと、学習者がすでに持っている情報とを比較して提示します。
たとえば、アメリカ人の学生に対して仏教のことを教える際に、アメリカ人の学生にとってより身近なキリスト教と仏教とを比較して、「仏教の〇〇はキリスト教でいうなら△△」のように説明した例が有名です。
先行オーガナイザーは「有意味受容学習」を促す
学習には、いくつかの種類があります。D・P・オーズベル氏とF. G. ロビンソン氏は、「受容学習―発見学習」「有意味学習―機械的学習」の2軸を設け、以下のとおり学習を4つに分類しています。
| 受容学習 | 発見学習 |
有意味学習 | 有意味受容学習 | 有意味発見学習 |
機械的学習 | 機械的受容学習 | 機械的発見学習 |
【横軸】
- 受容学習……指導者や教師が提示するものから学ぶ学習(いわゆる一斉授業のタイプ)。
- 発見学習……学習者自身が問題や知識、答えを見つける学習。
【縦軸】
- 有意味学習……学習者自身がすでに持っている知識を関連づけながら新しいことを学ぶ学習。
- 機械的学習……新しいことをただ覚えるだけの学習。
つまり有意味受容学習とは、指導者や教師から与えられる情報と、自分自身がすでに持っている知識を結びつけながら新たな知識を学習していくことをいいます。先行オーガナイザーは、これを促進するためのツールです。先行オーガナイザーを活用することで、知識同士を関連付けて応用する、自分の言葉で説明できるようになるといった「深い学び」が実現できるでしょう。
ビジネスシーンでの使い方
先行オーガナイザーは、学校教育だけでなくビジネスシーンでもさまざまな場面で活用できます。たとえば、以下の例が挙げられます。
- プレゼンテーションを行う前に、概要をまとめたレジュメを作成して配布しておく。
- 会議の際にはインデックスを準備しておく(例:ホワイトボードに会議のテーマや目的、ゴールなどを書いておく)。
- 顧客との交渉や、上司への報告・連絡・相談は、まず話し合いの目的を端的に伝える。
また、先行オーガナイザーは企業研修にも有効です。たとえば、研修を実施する前に、あらかじめ受講者に研修の内容をまとめた資料を配布しておきます。研修当日までに受講者に予習をしてもらっておくことで、研修ではより実践的な内容に時間を割けるようになります。このように、先行オーガナイザーを活用すれば、知識・スキル習得の効率も高めることができます。
「枠組み」づくりに必要なのはロジカル・シンキング
せっかく先行オーガナイザーで学習者に事前に情報を与えても、その情報がわかりやすくまとまっていなければ、学習者は効果的な予習をすることができません。学習内容の「枠組み」をつくるために欠かせないスキルが、ロジカル・シンキングです。
ロジカル・シンキングとは、全体をモレ・重複なく整理して全体を把握し、的確な答えを導き出して、相手にわかりやすく伝える力のことをいいます。日本語では「論理的思考法」とも呼ばれているビジネススキルです。最後に、ロジカル・シンキングの基本である「MECE」という考え方と、代表的なツールであるロジック・ツリーを紹介します。
ロジカル・シンキングについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:ロジカルシンキングとは?思考法やツールをわかりやすく解説
MECE
MECEとは、以下の4つの頭文字を取ったものです。ミーシーまたはミッシーと読みます。
- Mutually:相互に
- Exclusive:排他的な
- Collectively:集合的な
- Exhaustive:網羅的な
ある事柄についてモレ・重複なく全体を整理したうえで最適な状態を目指すという、ロジカル・シンキングの基本ともいえる考え方です。先行オーガナイザーで与えた情報にモレや重複があると、学習者は情報を正しく理解することができません。「枠組み」をつくるときは、このMECEを意識しましょう。
MECEについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:MECEとは?アプローチ方法・フレームワークについて解説
ロジック・ツリー
ロジック・ツリーは、ものごとを体系的に整理するためのツールです。一つのテーマを分解してサブテーマをつくり、そのサブテーマをさらに分解していくというもので、その形が木(ツリー)に似ていることからロジック・ツリーと呼ばれています。
ロジック・ツリーは、細かい分析が必要なときやプレゼンテーションの際にも役立ちますが、ロジカル・シンキングの基本であるMECEを厳守しながら分析するのには時間がかかるというデメリットがあります。
ロジック・ツリーについては、以下で詳しく紹介しています。
関連記事:ロジックツリーとは?作り方・注意点・テンプレートを解説
まとめ
先行オーガナイザーとは、深い学び(有意味受容学習)を促進するためのツールです。あらかじめ学習内容の「枠組み」を情報として与えておくことで、学習者が効果的な予習ができるようになり、効率的に知識やスキルを身につけられるようになります。
先行オーガナイザーは、学校教育だけでなくビジネスシーンでも活用できます。プレゼンテーションや会議、企業研修などを行う際は、ぜひ取り入れてみてください。
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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。
1.ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。
学びのポイント
- 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
- 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。
2.クリティカルシンキング研修
クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。
学びのポイント
- 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
- フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
- 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する
3.PDCA研修
PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。
学びのポイント
- 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
- 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく
4.OODA LOOP研修
OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。
学びのポイント
- 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
- ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。