リーダーシップとは?定義や理論をわかりやすく紹介

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組織やチームを率いていく力のことを、「リーダーシップ」といいます。リーダーシップは、一部のカリスマ的な存在や権力者だけが持つ能力ではありません。また、生まれながら持つ特性で決まるものでもなく、誰もが身につけることができるビジネススキルです。

本記事では、まずリーダーシップの意味や定義、マネジメントとの違いについて、わかりやすく解説します。さらに、リーダーシップ研究の歴史と代表的なリーダーシップ理論、リーダーに求められる能力・スキル、社員のリーダーシップを開発・育成する方法を紹介します

 

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リーダーシップとは

リーダーシップ(leadership)は、「統率力」や「指導」、「指導者」などの意味を持つ英単語です。「導く」「生み出す」などの意味を持つ古英語の「lædan」が語源であるといわれています。

リーダーは、組織やチームが目標を達成するために、メンバーの先頭に立ち、全員を同じ方向へ率いていく役割があります。つまりリーダーシップとは、わかりやすく表すと「組織やチームをまとめ、目標達成に向けて導いていく力」と言い換えることができるでしょう。

「リーダーシップを発揮する」とは、ある人の行動が周りのほかのメンバーに良い影響を与え、組織やチーム全体が活性化したり、成果につながったりすることをいいます。

リーダーシップの定義

リーダーシップには、いろいろな定義があります。

たとえば、「マネジメントの父」と呼ばれているオーストリア・ウィーン生まれの社会生態学者、ピーター・F・ドラッカー氏は、リーダーシップとは「組織の使命を考えぬき、それを目に見える形で明確に確立すること」と定義しています。そして、リーダーシップとは「仕事」であり、個人の才能や性格に左右されるものではないとも述べています。

また、厚生労働省と経済産業省は、次のようにリーダーシップを説明しています。

  • 厚生労働省:目標達成しようとするグループで、リーダーが目標達成に役立つ影響を与えること

(資料01_リーダーシップを発揮しよう テキスト – 厚生労働省(PDF)

  • 経済産業省:「リスクを取って新しく何かを始めようとする、率先して現状を変えようと動く」マインドセット

(資料「我が国産業における人材力強化に向けた研修会」(人材力研究会)報告書 平成30年3月 – 経済産業省(PDF)

後ほど詳しく紹介していますが、リーダーシップに関する研究や理論もさまざまなものがあります。

リーダーシップはリーダーだけが発揮するものではない

かつては、リーダーシップは先天的な才能やカリスマ性を発揮して、皆を導くことと考えられていました。しかし、リーダーシップに関するさまざまな研究や議論が行われるなかで、リーダーシップは「生まれつきの能力や性格に関係なく、誰もが身につけられるもの」であると考えられるようになってきています。

経済産業省も、先ほど紹介した資料のなかで、リーダーシップは「すべての人材が、それぞれのポジション等に応じて獲得・発揮できるものである」と説明しています。リーダーシップはリーダーだけが発揮するものではなく、「すべてのビジネスパーソンが身につけるべき能力」といえるでしょう

リーダーシップとマネジメントの違い

マネジメントにもさまざまな考え方がありますが、有名なのがピーター・F・ドラッカー氏の定義です。ピーター・F・ドラッカー氏は、著書『マネジメント』のなかで、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関」であるとしています。わかりやすくいうと、「目標を達成するために、ヒト・モノ・カネを管理すること」がマネジメントです

マネジメントは、上司が部下に対して行うものですが、リーダーシップは、上司や管理職だけでなく、組織やチームに所属するすべてのビジネスパーソンに求められる「全体を率いていく力」だといえるでしょう。

リーダーシップとマネジメントの特徴をまとめると、このようになります。

リーダーシップ

マネジメント

  • ヒトに対して発揮する
  • 組織やチームを変化させたい
  • 行動を重視する
  • 視点は外に向いている
  • ヒト・モノ・カネを管理する
  • 組織やチームの秩序を維持したい
  • 効率を重視する
  • 視点は内に向いている

 

リーダーシップの理論・種類については、以下の記事で詳しく紹介しています。

リーダーシップの種類と特徴をわかりやすく解説

 

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リーダーシップ研究の変遷

  • 【1900年代~1940年代】特性理論
  • 【1940年代~1960年代】行動論
  • 【1960年代後半~】コンティンジェンシー(条件適合型)理論
  • 【1970年代~】コンセプト理論

それぞれの時代にどのような研究が行われていたのか、代表的な理論を交えながら詳しく解説します。

【1900年代~1940年代】特性理論

1940年代までは、リーダーの特性(資質)に着目した研究が行われていました。リーダーは努力をしてなるものではなく、生まれながらリーダーの特性を持った人がなれるものだと考えられていたからです。特性とは、たとえば向上心や判断力、協調性、自信、他者を導こうとする欲求、他者と良い関係を構築する力などが挙げられます。

しかし、一般的にリーダーと認められる人を複数人取り上げて分析しても、共通する特性を特定することはできませんでした。そのため、1950年代以降は「リーダーシップは生まれながら持つ特性で決まるものではない」として研究が行われるようになります。

【1940年代~1960年代】行動論

1950年代以降は、「リーダーは行動によってつくられる」という考え方から、リーダーがとる「行動」に着目した研究が盛んに行われるようになります。

この時代に提唱された理論にはさまざまなものがありますが、リーダーシップは「業績面」と「人間関係面」の2つの行動により発揮されるとしている理論が多いです。業績面の行動とは、生産性やタスクを重視した行動のことで、具体的にはメンバーの役割分担をする、メンバーにルールや手順を守らせるといった行動が考えられます。人間関係面の行動とは、メンバーの緊張をほぐす、メンバーを尊重するというような、メンバーとの信頼関係を重視した行動のことです。

この時代に提唱された代表的な理論の一つに、PM理論があります。

三隅二不二の「PM理論」

PM理論は、1966年に社会心理学者の三隅二不二(みすみじゅうじ)氏により提唱されましたリーダーシップは、P(Performance function:目標達成機能)と、M(Maintenance function:集団維持機能)の2つの能力要素で構成されているという考え方です

  • P(目標達成機能):計画を立てる、メンバーを指導するなど、組織やチームが目標を達成するための働き。
  • M(集団維持機能):メンバーの意見を聴く、コミュニケーション活性化を図るなど、メンバーをまとめて士気を高める働き。

三隅二不二氏は、この2軸でリーダーシップをマトリックス化し、以下のように4つに分類しました。

高↑

目標達成機能

↓低

<Pm型リーダーシップ>

目標は達成できるが、メンバーにまとまりがない

<PM型リーダーシップ>

メンバーが協力して目標を達成できる

<pm型リーダーシップ>

メンバーがまとまらず、目標も達成できない

<pM型リーダーシップ>

メンバーはまとめられるが、目標は達成できない

低 ← 集団維持機能 → 高

もっとも理想なリーダーシップはPM型であり、Pm型、pM型、pm型はそれぞれ訓練により不足部分を強化するべきであるという理論です。もしくは、Pが優れたリーダーとMが優れたリーダーがお互いを補い合い、2人以上のリーダーでPM型リーダーシップを完成させるという方法もあります。これを、コ・リーダーシップ(共同リーダーシップ)といいます。

しかし、組織が大きく複雑になると、これまでリーダーシップを発揮できていたリーダーがリーダーシップをうまく発揮できなくなるという現象が見られるようになりました。そのため1960年代後半からは、リーダーを取り巻くメンバーやビジネス環境にも着目した研究が活発になっていきます。

【1960年代後半~】コンティンジェンシー理論

1960年代後半からは、リーダーシップはリーダーの行動だけでなく、環境によって決まるのではないかという研究が行われるようになります。

コンティンジェンシー(contingency)は、「偶発性」「不測の事態」などの意味を持つ英単語です。コンティンジェンシー理論とは、リーダーは環境に合わせて行動を変化させていく必要があり、そうすることで効果的に成果を引き出せるという考え方で、日本語では条件適応理論とも呼ばれています。

この時代に提唱された代表的な理論の一つに、パス・ゴール理論があります。

ハウスの「パス・ゴール理論」

パス・ゴール理論は、1971年にロバート・ハウス氏により提唱されました。リーダーは、メンバーや組織・チームが置かれた状況に応じて適切なパス(道筋)をつけることで、目標を達成できるという考え方です。

ロバート・ハウス氏は、リーダーシップを「指示型」「支援型」「参加型」「達成志向型」の4種類に分け、状況に応じて使い分けるのが効果的だとしました。

リーダーの行動

メンバーや組織・チームの状況

指示型

目標を達成する方法、手順など、細かく具体的な指示を与える。

メンバーのスキルが低く、経験も少ない。

組織・チームとしてまとまっていない。

支援型

メンバーの状態に配慮して、仕事を進めやすい体制をつくる。

やるべきことが明確で、リーダーとメンバーの権限がはっきり分かれている。

参加型

意思決定の前にメンバーにも意見を求める。

メンバーの能力と経験値、自律性、自己解決意欲が高い。

達成志向型

高い目標を設定して、メンバーにそれを達成するための努力を求める。

メンバーの能力と経験値、主体性が高い。

たとえば、能力が低く経験が少ない新人メンバーばかりのチームや、結成されたばかりでまだメンバーがまとまっていないチームに対しては「指示型」で具体的な指示を出し、ある程度メンバーにスキルや知識が身につき、チームにまとまりが出てきたら「支援型」や「参加型」をとる、というように使い分けます。

経験が豊富で能力も高く、主体性が高いメンバーばかりのチームの場合は、目標を設定してやり方などはメンバーに任せる「達成志向型」をとることで、メンバーの仕事に対するモチベーションも維持しやすくなるでしょう。

【1970年代~】コンセプト理論

コンティンジェンシー理論を継承しつつ、環境や組織・メンバーの状況に合わせて、リーダーシップのとり方をより具体化していったものが、コンセプト理論です。代表的なものとして、以下の5つのリーダーシップが挙げられます。

  1. カリスマ型リーダーシップ
  2. 変革型リーダーシップ
  3. EQ型リーダーシップ
  4. ファシリテーション型リーダーシップ
  5. サーバント型リーダーシップ

どのようなリーダーシップなのか、一つずつ詳しく見てみましょう。

1.カリスマ型リーダーシップ

コンセプト理論における「カリスマ」とは、生まれながら持つ優れた特性や才能ではなく、「メンバーにカリスマと認知されること」を意味します

カリスマ的リーダーシップの測定尺度などを示した研究者であるコンガー(J.Conger)とカヌンゴ(R.Kanungo)は、アメリカとカナダの管理職750名を対象に、カリスマ的リーダーシップ行動に関する調査を実施しました。この結果、メンバーにカリスマと認識されるリーダーには、以下の6つの特徴があることがわかりました。

  1. ビジョンの表明……ビジョンを有し、フォロワーの意識を高めたり機会を与えたりする。
  2. 環境への感受性……目的を達成するなかで存在し得る環境や、メンバーの能力・スキルを認識している。
  3. 型にとらわれない行動……前例のない手段を用いたり、ユニークな行動をとったりする。
  4. リスクをいとわない……目的達成のためにリスクをとる、大きな責任を背負う。
  5. メンバーのニーズに対する感受性……メンバーと尊敬し合える関係を築く、メンバーのニーズや感情に関心があることを示す。
  6. 現状の否定……現状に満足することなく、変化と成長を求める

コンガーとカヌンゴは、のちにこれをより精緻化し、「コンガー=カヌンゴのカリスマ的リーダーシップ測定尺度」も開発しています。

参考:フォロワーの視点から見たカリスマ的・変革型リーダーシップ – 国立情報学研究所(PDF)

カリスマ型リーダーシップがうまく機能すると、メンバーの満足度が向上し、組織やチームが大きく発展します。しかし、リーダーの存在が大きすぎてメンバーのリーダーへの依存度が高くなったり、後継者が育ちにくくなったりするというデメリットがあります。

2.変革型リーダーシップ

変革型リーダーシップは、組織の仕組みや方針の変革を実現するためのリーダーシップです

1988年、ハーバードビジネススクールの教授であるジョン・コッター氏は、リーダーシップは変革能力、マネジメントは管理能力であると明確な違いを定義しました。そして、多くの企業はマネジメント過多でリーダーシップが不足していると述べ、変革を実現する8ステップを提唱しました。

  1. 変革の必要性を理解する。
  2. 変革チームを結成する。
  3. 変革の方向性やビジョンを明示する。
  4. ビジョンや戦略を共有する。
  5. 変革の実現をサポートする(障害物の排除、制度・組織の変更、行動の変化など)。
  6. 計画を策定し実行する。
  7. さらなる変革を目指す。
  8. 変革を定着させる。

また、ジョン・コッター氏は、変革を起こすためには組織やチームの内外を問わず、多くの人と良好な関係を築くことができる「対人スキル」と、高いレベルのエネルギー(情熱)が必要であると主張しています。

3.EQ型リーダーシップ

EQ型リーダーシップは、職場の人間関係やモチベーションを重視するリーダーシップです。アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマン氏により提唱されました。EQは「Emotional Intelligence Quotient」の略称で、日本語では「心の知能指数」と呼ばれています。

EQは、以下の5つの要素で構成されています。

  • 自己認識……自分の感情や強み・弱み、他者に及ぼす影響などを正しく認識している。
  • 自己抑制……自分の破壊的な感情や衝動を抑えられる。
  • 動機づけ……成果に向けた情熱があり、他者にも達成感を与えられる。
  • 共感性……思いやりがある。
  • ソーシャルスキル……他者と良好な人間関係を築ける。

ダニエル・ゴールマン氏は、リーダーの能力差のほぼ9割はIQ(知能指数)ではなくEQにあると主張しています。

参考:組織のリーダーとして成功を収めるにはEQ(こころの知能指数)が不可欠である ダニエル・ゴールマン 心理学者 | リーダーシップ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

4.ファシリテーション型リーダーシップ

ファシリテーションとは、簡単に言うと「会議やミーティングが円滑に進むよう進行およびサポートすること」で、これを実行する人をファシリテーターと呼びます

ファシリテーション型リーダーシップは、メンバーの自律性を重視し、成長を促すリーダーシップです。このタイプのリーダーは、上司と部下という関係であっても、メンバーと目線を合わせて、上下関係のないファシリテーター的なコミュニケーションをとります。質問や傾聴などによりメンバーの意見を引き出し、メンバー主導で意見をまとめ、自ら結論を出させることで、メンバーの成長を促すのです。

ファシリテーション型リーダーシップがうまく機能すると、メンバーの主体性やモチベーションが向上します。しかし、メンバーの意見の取りまとめができなければ、対立が生まれ、メンバー同士の関係や組織・チームの雰囲気が悪くなってしまうことも考えられるでしょう。このタイプのリーダーシップを発揮したいなら、まずはリーダーがファシリテーションスキルをしっかり身につける必要があります。

5.サーバント型リーダーシップ

英単語のサーバント(servant)には、「召し使い」や「使用人」などの意味がありますサーバント型リーダーシップとは、メンバーが顧客業務に集中できるようにリーダーがメンバーに奉仕・サポートすることで、顧客満足度を向上させビジネスの好循環を生み出すというものです

サーバント型リーダーシップには、以下の10の特性があります。

  • 傾聴……メンバーの話を聞き自分が何をすべきか考える。
  • 共感……メンバーの立場に立って感情を理解する。
  • 癒し……メンバーの心の傷を癒し、本来の力を取り戻させる。
  • 気づき……メンバーと気づきを与え合う。
  • 納得……メンバーに納得してもらう。
  • 概念化……夢やビジョンを持ち、メンバーに共有する。
  • 先見力……現在・過去から将来を予測する。
  • 執事役……自分の利益よりメンバーの利益に喜びを感じる。
  • メンバーの成長……メンバーの資質と特性を理解し、個々の成長を促す。
  • コミュニティづくり……メンバーが協力し合い、それぞれが成長できるコミュニティをつくる。

サーバント型リーダーシップは、1970年にグリーンリーフ氏により提唱された理論ですが、一人ひとりに主体性が求められる今、再び注目を集めています。

サーバントリーダーシップについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

サーバントリーダーシップとは?特徴や10の特性について解説

近年注目を集めているリーダーシップ理論

ここまでリーダーシップ研究の歴史を紹介してきましたが、現在も、国内外でリーダーシップに関するさまざまな研究が進められています。そのなかで、近年注目を集めているのが、オーセンティック・リーダーシップとオープン・リーダーシップです。それぞれどのようなリーダーシップ理論なのか、詳しく見てみましょう。

ビル・ジョージの「オーセンティック・リーダーシップ」

英単語のオーセンティック(authentic)には、「確実な」「本物の」などの意味がありますオーセンティック・リーダーシップは、2003年にビル・ジョージ氏が提唱した理論で、倫理観を重視しながら、自分らしさに基づきリーダーシップを発揮するというものです

オーセンティック・リーダーシップには、5つの特性があります。

  1. 自らの目的や存在意義を理解している。
  2. 自らの価値観や倫理観に忠実に行動する。
  3. 情熱を持ち全力で人をリードする。
  4. 人と良好な関係を構築する。
  5. 自分を統制・管理する。

情報化が進み、一人のリーダーだけでは情報を処理しきれなくなってきています。時代の変化に対応していくためには、誰か一人に頼るのではなく、誰もが自分らしくリーダーシップを発揮し、組織・チーム全体で対処していくことが大切であるとして、オーセンティック・リーダーシップが注目されています。

シャーリーン・リーの「オープン・リーダーシップ」

オープン・リーダーシップは、シャーリーン・リー氏が著書『Open Leadership』のなかで提唱した概念です。オープン・リーダーシップは、「謙虚に、かつ自信を持ってコントロールを手放すと同時に、相手から献身と責任感を引き出す能力を持つリーダーのあり方」と定義されています

オープン・リーダーシップには、5つのルールがあります。

  1. 顧客や社員が持つパワーを尊重する
  2. 絶えず情報を共有して信頼関係を築く
  3. 好奇心を持ち、謙虚になる
  4. オープンであることに責任を持たせる
  5. 失敗を許す

インターネットやSNSが普及したことで、組織にとって都合の良い情報だけを発信するというのが難しくなってきました。また、顧客や組織・チームのメンバーがビジネスに与える影響もどんどん大きくなってきています。このような背景から、新たなリーダーシップのあり方としてオープン・リーダーシップが注目されています。

リーダーに求められる能力・スキル

高いリーダーシップを発揮するためには、具体的にどのような能力・スキルを鍛えればよいのでしょうか。ここからは、リーダーに必要な6つの能力・スキルを紹介します。

1.セルフ・リーダーシップ

セリフ・リーダーシップとは、その名のとおり、ほかの誰かではなく自分自身をより良い方向に導く力のことです。まずは自分自身で目標を持つ、感情をコントロールする、モチベーションを保つといったことができなければ、他者をリードすることは難しいでしょう。組織やチームのなかにセルフ・リーダーシップを発揮できる人がいると、メンバーが良い刺激を受け、組織やチーム全体が活性化します。

セルフ・リーダーシップは、以下の3ステップで高めることができます。

  1. 自分が将来どうなりたいのか、明確なビジョンと目標を持つ
  2. 理想と現実のギャップを分析し、何をすべきか考える
  3. 実際の行動を起こしたら、成果を客観的に振り返る

この3ステップを回し、自分自身を改善し続けていくことで、セルフ・リーダーシップが身につきます。

セルフリーダーシップについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

セルフリーダーシップとは?身につけるメリットや高め方を紹介

2.目標設定能力

ここからは、他者を率いていくために必要な能力・スキルを紹介します。まずは、目標設定能力です。

リーダーの役割の一つに、目標の設定があります目標は、誰が見てもわかりやすく、かつ努力すれば現実的に達成できるレベルのものとすることが重要です。こうすることで、メンバーは自分のやるべきことを理解しやすくなり、モチベーションも維持しやすくなります。

目標には、達成ラインを数値で示した定量目標と、達成した状態を言葉で表した定性目標があります。

【例】

  • 定量目標:事務コストを10%削減する。
  • 定性目標:メンバーのモチベーションを向上させる。

定性目標だと達成度合いが測定しにくいので、できるだけ定量目標とすることが望ましいです。また、「いつまでに達成するのか」も明確に決めておきましょう。

3.コミュニケーション能力

メンバーに的確な指示を出すために、リーダーには「伝える力」が求められます。また、メンバーへの動機づけや育成もリーダーの役割です。これを実行するためには、メンバーを深く理解する必要があるため、「聴く力」も欠かせません。コミュニケーションは双方向で成り立つものですので、「伝える力」「聴く力」の両方を鍛えることが大切です。

また、自分とメンバーだけでなく、リーダーはメンバー同士の人間関係にも配慮しなければなりません。メンバー同士のトラブルや、小さな変化・予兆なども見逃すことがないように、日頃からメンバーと積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。

4.実行力

他者を動かすためには、ただ指示や命令を出すだけでなく、リーダー自ら率先して行動して、メンバーの良いお手本になることが大切です

しかし、「仕事は見て覚えなさい」というスタンスは今の時代にそぐわないといえます。まずは言葉で示し、次に行動で示すという「有言実行」を継続することで、メンバーから信頼を得やすくなるでしょう。

5.決める力

決める力には、「判断力」と「決断力」の2種類があります「判断力」は経験やデータをもとに現状を分析し評価する力、「決断力」は自らの意思でものごとをはっきりと決定する力です。

判断力があれば、過去の経験やデータから最善策をジャッジすることはできますが、決断力がなければ、現状を打破するような大きな決定をすることは難しいでしょう。どちらの決める力もリーダーには欠かせないものですが、前例のないことに挑戦するときや、勝負をしなければならない場面においては、リーダーの決断力が特に重要になります。

大きな決断をするには勇気が要りますし、当然リスクもあります。「この条件がそろわなかったら中断する」というように、あらかじめ基準を決めておくと、思い切った決断がしやすくなるでしょう。

6.寛容力

一つの組織やチームには多様な人が集まっています。まずはリーダーが多様な価値観や考え方を受け入れ、メンバー同士の相互理解を促進させることで、一人ひとりが十分に能力を発揮できる強い組織・チームをつくることができるでしょう

また、リーダーにはメンバーの失敗を受け入れる器の大きさも求められます。失敗があったときは、メンバーの悪かったところを指摘するだけでなく、「メンバーの失敗はチームの失敗であり、リーダーである自分にも非があったかもしれない」と、自身の行動を振り返れるかどうかがポイントです。

社員のリーダーシップを開発・育成する方法

社員のリーダーシップを開発・育成するために、リーダーシップ研修を実施するという方法があります。研修の内容は対象者によっても異なりますが、リーダーの役割やコミュニケーション能力、部下への指導法、リーダーの仕事の進め方などを学ぶためのカリキュラムが組まれます。

リーダーシップ研修を実施する際は、リーダーシップ理論やノウハウを座学で学ぶだけでなく、複数人で取り組むゲームやワークショップなど体験型のプログラムをカリキュラムに組み込むと効果的です。「チームで課題を解決する」という体験をすることで、座学で学んだことが定着しやすくなります。また、体験型のプログラムを組み込むことで、コミュニケーションも自然に活発になり、チームビルディングにもつながります。

【リーダーシップを基礎から学べる】あそぶ社員研修

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

リーダーシップは、一部のカリスマ的な存在や権力者だけが持つ能力ではなく、すべてのビジネスパーソンに求められる能力です。生まれながら持つ特性や性格で決まるものではなく、研修などで誰でも身につけることができます。

リーダーシップには多くの理論があり、現在も国内外で研究や議論が進められています。近年サーバント型リーダーシップやオープン・リーダーシップが注目されているように、環境や時代が変われば求められるリーダーシップ像も変わってきます。さまざまな理論と照らし合わせながら、自社にはどんなリーダーシップが必要かを考えてみてはいかがでしょうか。

参考:リーダーシップ理論の流れと リーダーシップの実践的開発方法 – 株式会社東レ経営研究所(PDF)

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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