コンセプチュアルスキルとは?要素の一覧と高め方を紹介

  • ビジネススキル

コンセプチュアルスキルは、経営者やマネージャー、リーダーなど、メンバーをまとめる立場に就いている人にとって特に重要なスキルだといわれています。

本記事では、まずコンセプチュアルスキルとはどのようなスキルなのか、カッツモデルとドラッカーモデルによる位置づけを説明し、コンセプチュアルスキルを構成する要素の一覧、コンセプチュアルスキルの高め方を解説します

 

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コンセプチュアルスキルとは

コンセプチュアルスキルとは、日本語では「概念化能力」とも呼ばれているスキルです。物事の本質を見極め、最終的に目指す姿や戦略などを構築する力といえるでしょう

次項で詳しく紹介していますが、マネージャー(管理者)に求められるスキルを階層別に示した「カッツモデル」という考え方があります。これを提唱したロバート・カッツ氏は、コンセプチュアルスキルを「企業を総合的に捉えることができる能力」としています。

参考:管理職に求められる「マネジメント」、管理職が執るべき行動の在り方について – 内閣府(PDF)

ビジネスシーンでは、さまざまな課題や問題に直面することがあります。そのような時にも、本質的な問題は何なのか、何を解決すればよいのかを素早く見極め、冷静な判断を下すことができる人は、コンセプチュアルスキルが高いといえるでしょう

コンセプチュアルスキルには、さまざまな能力や性質、スキルが含まれます。ただ、明確な定義はなく、後ほど構成要素を詳しく紹介していますが、何をコンセプチュアルスキルとするかは資料によって異なります。

カッツモデルの考え方

カッツモデルとは、ロバート・カッツ氏が1955年に発表したモデルです。このモデルでは、マネージャーを、トップマネジメント、ミドルマネジメント、ロワーマネジメントの3つの階層に分けています。そして、マネージャーに求められる3つのスキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキルの重要度は、以下の図のように階層によって変わることが示されています。コンセプチュアルスキルは、階層が上がるほど重要度が高くなり、最上階層のトップマネジメントにとって特に重要なスキルとされています

  • トップマネジメント……最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)、会長、社長、副社長など
  • ミドル……部長、課長、エリアマネージャー、支店長、工場長など
  • ロワーマネジメント……主任、係長、チーフ、プロジェクトリーダーなど

ヒューマンスキルとは、「対人関係能力」とも呼ばれているスキルで、チームのメンバー同士で協力できる場を作る力や、良好な人間関係を築く力などが含まれます。そして、テクニカルスキルとは、「業務遂行能力」とも呼ばれているスキルで、業務の遂行に必要な知識・スキルを指します

なお、カッツモデルについては、以下の記事で詳しく解説しています。

カッツモデルとは?スキル・構成要素・人材育成に活用する方法を紹介

ドラッカーモデルの考え方

ドラッカーモデルとは、「マネジメントの父」とも呼ばれているピーター・F・ドラッカー氏が、カッツモデルをもとに提唱したものだといわれています

ドラッカーモデルでは、カッツモデルの3つのマネジメント層の下に、もう一つナレッジワーカー(知識労働者)という階層が設けられています。そして、階層が上がるにつれて重要度が高くなるのは、コンセプチュアルスキルではなくマネジメントスキルとされており、コンセプチュアルスキルはすべての階層が身につけるべきスキルと位置づけられています。目まぐるしく変化するビジネス環境に対応していくためには、組織内のすべての人に自発性や柔軟性が求められるという考え方です

最近では、このドラッカーモデルを人材育成に取り入れ、あらゆる階層の社員に対してコンセプチュアルスキル習得のための取り組みを実施する企業も増えているようです。

 

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コンセプチュアルスキルの要素一覧

先ほどお伝えしたように、何をコンセプチュアルスキルとするかは資料によってさまざまですが、以下のような能力や性質、スキルが含まれるとされることが多いでしょう。

  1. ロジカルシンキング
  2. ラテラルシンキング
  3. クリティカルシンキング
  4. 多面的視野
  5. 柔軟性
  6. 受容性
  7. 俯瞰力
  8. 知的好奇心
  9. 探求心
  10. 応用力
  11. 洞察力
  12. 先見性
  13. チャレンジ精神

1つずつ、詳しく見ていきましょう。

1.ロジカルシンキング

ロジカルシンキングは、日本語では「論理的思考」とも呼ばれています。物事の要因・要素を体系的に整理し、筋道を立てて答えを導き出すという思考法です

ビジネスシーンで直面する課題や問題には、複数の要因・要素が関係していることも少なくありません。ロジカルシンキングで考え、それらをモレ・重複なく整理できるようになると、素早く最適な結論を出せます。また、ロジカルシンキングを身につけると、相手に「わかりやすく伝える力」も向上します。

なお、ロジカルシンキングについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

ロジカルシンキングとは?思考法やツールをわかりやすく解説 

2.ラテラルシンキング

ラテラルシンキングは、日本語では「水平思考」とも呼ばれています。常識や固定観念、過去の経験などにとらわれずに、自由に発想する思考法です

ビジネス環境や顧客のニーズ、トレンドなどが目まぐるしく変化していくなかで、前例や既存の枠組みにとらわれたままでは、なかなか新しい商品やサービスを生み出すことはできません。ラテラルシンキングで考えることで、斬新なアイデアが生まれやすくなり、変化にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

また、ラテラルシンキングとロジカルシンキングは、相互補完の関係にあります。両方を身につけることで、まずラテラルシンキングでアイデアを出し、ロジカルシンキングで最適な答えに絞り込んでいくという考え方ができます。

なお、ラテラルシンキングについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

ラテラルシンキングとは?ロジカルシンキングとの違いや鍛え方、例題を紹介

3.クリティカルシンキング

クリティカルシンキングは、日本語では「批判的思考」とも呼ばれています。あらゆる前提を疑い、物事を客観的に見て答えを導き出そうとする思考法です

時代とともに、ビジネス環境も変化し続けています。特に近年はVUCA時代と呼ばれるほど変化の激しい時代となっており、過去の成功体験が通用しないことも増えてきています。クリティカルシンキングを身につけ、あらゆることに疑問を持てるようになれば、問題の本質を正しく見極められるようになり、柔軟な発想ができるようになるでしょう。また、クリティカルシンキングは、溢れる情報のなかから正しいものを選択し、それらを客観的に分析するためにも必要となる思考法です。

なお、クリティカルシンキングについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

クリティカルシンキングとは?ロジカルシンキングとの関係や実践方法を紹介

4.多面的視野

多面的視野とは、目の前にある1つの事象を、あらゆる方向・角度から捉えることができる能力のことをいいます。簡単にいってしまえば、視野が広いということです。ただ、さまざまな視点で「見ることができる」というだけでなく、「分析できる」ということも求められます。

多面的視野が持てるようになると、1つの物事に対して複数の視点からアプローチを考えられます。また、何かの課題に直面した時も、自分だけでなく異なる立場の人の視点から物事を捉えられるようになるでしょう。

5.柔軟性

軟性とは、想定外のことが起こった時でも、臨機応変に対応し判断できる、変化に素早く適応できるといった性質のことです。柔軟性のある人は、急なトラブルが起こったとしても、焦らず冷静に対処ができます。

柔軟性は、メンバーを率いていくリーダーにとって特に重要な要素ですが、変化が激しい現代においては、リーダー以外にも求められるようになってきています。

6.受容性

受容性とは、自分と異なる意見や価値観、考え方などを受け入れることができる性質のことです

現代は、ダイバーシティ&インクルージョンが求められる時代となっており、ビジネスシーンでも多様な人と協働する機会が増えています。年齢や性別、国籍、障害の有無、キャリア、価値観もさまざまな人たちと信頼関係を構築していくためには、受容性が欠かせません。

また、自分以外の人の意見や考えを参考にすることは、適切な意思決定のためにも重要なことです。さらに、多様な価値観や考え方を受け入れることで、視野も広がり、斬新なアイデアや問題のより良い解決策も生まれやすくなるでしょう。

7.俯瞰力

俯瞰力とは、物事の全体像を把握する力のことです。主観的でも客観的でもなく、高いところからフラットに物事の全体を見る力を意味します。

俯瞰することで、それまでよりも広い範囲が見渡せます。すると、これまで見えていなかったことにも気づけるようになり、全体を正しく把握できます。逆に、俯瞰できないと、視野が狭いため自分本位になってしまいやすいといえます。これでは、適切な意思決定はできないでしょう。

俯瞰力は、問題解決のために非常に重要なスキルです。

8.知的好奇心

知的好奇心とは、新しいものや、自分が知らないことに対して興味を持ち、それについて学びたいと思う気持ち、または、そのような姿勢のことをいいます

時代とともに、新しいものが次々と生まれ、いろいろなものが変化しています。企業を成長させていくためには、これらを拒まずに吸収して、新たなイノベーションを生み出していくことが求められます。知的好奇心がある人は、新しいものを楽しみながら取り入れることができます。そして、それについて積極的に学ぼうとします。

知的好奇心は、能力やスキルというよりは、マインドに近いものです。

9.探求心

探求心とは、さまざまな事象や物事を、より深く理解しようと考えたり、分析しようとしたりする姿勢のことです。探求心がある人は、1つの物事をとことん突き詰めていくため、問題の本質を見つけることができます。課題や問題を根本から解決するために、欠かせないものといえるでしょう。

探求心も知的好奇心と同じく、スキルというよりはマインドに近いので、「こうすれば身につく」というものではありません。日頃から意識していろいろな物事に関心を持ってみたり、深く知ろうとしたりすることが大切です。

10.応用力

応用力とは、すでに自分が持っている知識やスキルを、新しいことや問題解決に活用する力のことです

基礎が身についていなければ、応用はできません。そのため応用力を鍛えるためには、まずはしっかりと基礎を身につける必要があります。また、過去の経験を活かせるようになるためには、振り返りと反省をきちんと行うことも大切です。

11.洞察力

洞察力とは、問題の表面だけを見るのではなく、その奥にある本質を見極める力のことです。周りをよく見ていて変化にすぐ気づける(観察力がある)というだけでなく、これまでの知識や経験から見えない部分を推理するのが洞察力といえるでしょう。

洞察力は、問題解決だけでなく、リスク回避や良好なコミュニケーションをとるためにも役立つスキルです。

12.先見性

先見性とは、未来の状況を見通す力のことをいいます。未来の状況とは、たとえば環境の変化やトレンドの変化、この先どのような問題が起こりうるかなどです。

先見性が身につくと、現状を正しく把握したうえで、今後どのように変化していくのかを見通せるようになります。経営者だけでなく、マネージャーやリーダーにも先見性が身につけば、ビジネスがよりスムーズに進むようになるでしょう。

13.チャレンジ精神

チャレンジ精神とは、難しい課題や新しいことにも、失敗を恐れず挑戦しようとする姿勢のことです

多様化するニーズに対応するためには、これまでにない新たなビジネスを生み出すことが求められます。そのために、チャレンジ精神は欠かせないものといえます。最近では、採用においてもチャレンジ精神が重視されるようになってきているようです。

コンセプチュアルスキルの高め方

では、コンセプチュアルスキルはどうすれば身につくのでしょうか。最後に、コンセプチュアルスキルの高め方を紹介します。

自分に足りない要素を知る

紹介したように、コンセプチュアルスキルは複数の能力や性質、スキルにより構成されています。コンセプチュアルスキルを高めるには、まずは今の自分にどの要素が足りていないのかを把握することが大切です。そのために、自己分析を行ってみましょう。

コンセプチュアルスキルの構成要素は資料によっても異なりますが、ロジカルシンキング、ラテラルシンキング、クリティカルシンキングの3つは、必ずといっていいほど含まれています。この3つの思考法は、近年ビジネススキルとしてのニーズが高まっており、これらをテーマとした研修を提供する研修会社も増えています。3つの思考法を身につけるなら、外部の研修を受けてみるのも1つの方法です。

他人の意見や新しいことに触れる

コンセプチュアルスキルが高い人は、1つの物事をさまざまな方向や角度から捉えて、解決策を考えることができます。自分の視野や思考の幅を広げるために、他人の意見に触れたり、新しいことを経験したりしてみるのもおすすめです。そして、その新たに触れたことを自分のなかに落とし込み、自分との共通点や相違点を探して抽象化してみましょう。

思考のトレーニングをする

最後に、コンセプチュアルスキルを高めるための思考のトレーニング方法を紹介します。普段からこれを意識して実践してみることで、コンセプチュアルスキルを鍛えられるでしょう

まずは、物事を抽象化します。たとえば、過去を振り返ってみると、「今回はうまくいった」、逆に「今回はうまくいかなかった」と感じたことがあったはずです。さまざま経験や出来事を思い出してみて、「うまくいった時」と「うまくいかなかった時」に共通する要素がないか、分析してみましょう。

次に、抽象化したことを定義します。たとえば、「こうすればうまくいく」「こうなると失敗する」というように、成功と失敗を言語化してみましょう。

そして最後は、具体化するステップです。共通する要素や物事の本質がわかると、成功や失敗につながるパターンや構造が見えてくるようになります。これを、業務のなかで活用できる形にしていきましょう。たとえば、成功の秘訣をまとめる、マニュアルを作るなどが考えられます。

コンセプチュアスキルを身につける研修

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

コンセプチュアルスキルは、経営者やマネージャー、リーダーに特に求められるスキルです。しかし、ドラッカーモデルでは、すべての階層に求められるスキルとされています。変化の激しい時代に対応していくために、若手社員にも早い段階でコンセプチュアルスキルを身につけてもらい、磨いていってもらうことをおすすめします。

コンセプチュアルスキルの構成要素のなかには、思考法のように研修などで学べるものもありますが、マインドに近いものも含まれています。そのため、コンセプチュアルスキルを高めるには、日頃から行動や考え方などを意識して変えていくことが大切です。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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