クリティカルシンキングとは?ロジカルシンキングとの関係や実践方法を紹介
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近年注目されている思考法の1つに、「クリティカルシンキング」があります。クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングを実践するためにも欠かせません。
本記事では、クリティカルシンキングとはどのような思考法なのか、ロジカルシンキングとの関係も含めて、わかりやすく解説します。さらに、クリティカルシンキングが必要とされている理由、実践するメリット、実践方法と鍛え方も紹介します。
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クリティカルシンキングとは
英単語のクリティカル(critical)には、「批判的な」の意味があり、クリティカルシンキングを直訳すると「批判的思考」となります。クリティカルシンキングの定義にはさまざまなものがありますが、簡単に表すと、「疑うことで物事の本質を見極め、正しい答えを導き出そうとすること」といえるでしょう。
人は、誰でも「無意識の思い込み」や「思考の癖」というものを持っています。これらに気づくことができないと、思考は限定されたものになるため、適切な答えは導き出せないでしょう。客観的に物事を分析するためには、「自分が正しいと思っていることは本当に正しいのだろうか?」と疑ってみることが大切なのです。
また、現代には非常に多くの情報が溢れていますが、なかには信頼性に欠ける情報や、デタラメな情報もあります。「これは信じられる情報だろうか?」と疑うことで、正しい情報を取捨選択し、適切に物事を判断できるようになります。
さらに、クリティカルシンキングは、問題や課題の解決方法を考えるときや、新しいアイデアを生み出したいときにも役立ちます。ビジネスパーソンなら、身につけておきたい思考法です。
クリティカルシンキングとは創造的なものである
「批判的」や「疑う」と聞くと、否定したり粗探しをしたりといったイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、クリティカルシンキングにおける「批判」とは、そのように物事の欠点を探すということではありません。あらゆる前提や常識に対して、「なぜ?」「本当に?」と疑問を持ってみることを意味します。
そして、疑った結果、それが間違いだとわかったら、改善案や代替案を提案するところまで行うのがクリティカルシンキングです。クリティカルシンキングは、本来は創造的なものであるため、「クリティコ・クリエイティブ・シンキング」と呼ばれることもあります。
参考:「クリティカル・シンキング実践ワークブック」(著者:中野明 / 出版社:秀和システム / 発売:2009年)
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの関係
クリティカルシンキングと比較されることが多い思考法に、ロジカルシンキングがあります。
ロジカルシンキングとは、物事をモレ・重複なく整理して、筋道を立てて論理的に考えることをいいます。ロジカルシンキングは、ただ筋道を立てて考えるだけでなく、その筋道が適切かどうか分析・評価する必要もあるため、自分で組み立てた論理を疑う態度が欠かせません。クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングの精度を上げるための思考法ともいえます。
クリティカルシンキングにもロジカルシンキングにも多様な定義があり、2つはまったく異なる思考法だと紹介されることもありますが、分離するのは難しいのではないでしょうか。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いや、それぞれのメリット、注意点などについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いとは?定義やメリット・注意点を解説
クリティカルシンキングが必要な理由
組織や人は、常に多くの問題や課題に悩まされています。問題や課題に直面すると、「以前このような方法で乗り越えたことがあるから、今回も同じ方法でやってみよう」と考えてしまいがちですが、ビジネス環境は目まぐるしく変化し続けており、過去の成功体験が通用しない場面も増えています。このようななかで、物事の本質を正しく見極め、柔軟な発想で解決策を見出す方法として、クリティカルシンキングが求められているのです。
また、先ほどお伝えしたように、現代は多くの情報で溢れています。正しい情報を見極め、それらを客観的に分析するためにも、クリティカルシンキングは欠かせない思考法といえます。
さらに、近年はダイバーシティの推進により、年齢や性別、国籍、価値観、考え方も多様な人材と協働しなければならない場面が増えてきました。仕事を円滑に進めていくためには、他者の視点で物事を考えるスキルが欠かせません。クリティカルシンキングは、多角的な視点を養うのにも役立つため、近年特に重要視されるようになってきたのではないでしょうか。
クリティカルシンキングを実践するメリット
次に、クリティカルシンキングで物事を考えることで、どのようなメリットがあるのかを紹介してきます。
より正しい判断が下せるようになる
当たり前や常識だと思っていたことを、「本当にそうなのか?」疑ってみることで、物事を客観的にとらえられるようになります。また、その疑問を解消するためには、データや情報を集めて仮説を証明しなければなりません。クリティカルシンキングで考えることで、物事の本質を見極められるようになり、データや情報を基により適切な判断が下せるようになるでしょう。
矛盾点や不足している部分を見つけやすくなる
クリティカルシンキングは、まず「疑う」ことから始めるので、矛盾点や不足している部分を見つけやすくなります。その結果、提案された問題解決策をより良いものにできたり、リスク回避につながったりすることもあるでしょう。
新たなアイデアが生まれることがある
クリティカルシンキングで考えることで、物事を多面的にとらえられるようになります。「対応策はこれしかない」と思っていた問題や課題に対しても、違った選択肢が見つかることもあるかもしれません。クリティカルシンキングは、新たなアイデアを生み出したいときにも適している思考法です。
話し合いがスムーズに進むようになる
クリティカルシンキングは、データや情報を基に答えを導き出すため、自分の意見の説得力が増します。相手に矛盾点や問題を指摘されても、感情的にならずに論理的な返しができるようになるため、話し合いや交渉も、今よりスムーズに進められるようになるでしょう。
また、クリティカルシンキングで出した答えには、データや情報などの根拠があるため、相手の納得も得やすくなります。その結果として、解決策を提示してから実際に行動に移すまでのスピードも速くなることが期待できるでしょう。
クリティカルシンキングの実践方法
ここらかは、クリティカルシンキングの基本的な手順を紹介します。クリティカルシンキングは、以下の3ステップで進めていきます。
- 課題と目的を設定する
- 分析する
- 仮説を検討し、意思決定を行う
1つずつ、詳しく見ていきましょう。
1.課題と目的を設定する
はじめに、どのような課題に取り組むのか、何を目的にクリティカルシンキングを行うのかを明確にしましょう。複数人で1つの課題に取り組むのなら、まずはこの部分をしっかり確認して、共通認識を形成することが重要です。
クリティカルシンキングは、あらゆる前提を疑い、物事を多面的に考えていくので、分析を進めていくうちに本来の課題から逸れてしまったり、目的を見失ってしまったりすることがあります。はじめに課題と目的を明確にしておき、常にこれを意識しながら進めていくことが大切です。
2.分析する
次に、目的を達成するために何を分析すればよいのか、必要な要素を列挙していきます。そして、「現状分析にはSWOT分析(※)を使おう」というように、各要素をどのようなツールを使って分析するかを決めていきます。クリティカルシンキングで物事を考えられるかどうかは、この思考手順の全体設計をうまく行えるかどうかで決まるともいえます。これには、ある程度経験も必要です。
思考手順を設計できたら、各要素を決定したツールで分析していきます。もし、作業を進めるなかで、そのツールが不適切であることに気づいたら、別のツールを検討しましょう。
3.仮説を検討し、意思決定を行う
最後に、分析結果から仮説を立てて、その仮説が正しいのかどうかを批判的に検討していきます。もし、仮説が証明できなければ、思考手順の全体設計か、立案した仮説のどちらかが間違っているということなので、再度見直してみましょう。
そして、仮説を証明できたら、何をするべきなのか、それをどのようなやり方で進めていくのかなど、具体的なアクションプランを決めていきます。決定したアクションプランを確実に実行するために、進捗管理の方法や評価基準も考えておくとよいでしょう。
参考:「図解入門ビジネスクリティカル・シンキングがよーくわかる本」(著者:今井信行 / 出版社:秀和システム / 発売:2012年)
クリティカルシンキングの鍛え方
ここからは、クリティカルシンキングを鍛える方法を紹介します。
前提を疑う癖をつける
クリティカルシンキングは、あらゆる前提や常識を「疑う」ことから始めるものです。日常のなかで、自分や相手が「無意識に思い込んでいること」や「偏った見方をしていること」を見つけたら、一度疑ってみましょう。
これらの見つけ方としては、「あいまいな表現を探す」という方法があります。あいまいな表現とは、たとえば「多い / 少ない」「うまくいく / うまくいかない」「急 / 不急」などが挙げられます。会話のなかでこのような表現を見つけたら、その根拠を考えてみましょう。これを積み重ねていくことで、疑う力が鍛えられます。
【あいまいな表現の例】
- 「急に変更されても対応できないよ」
→どのくらい前なら「急」じゃないのだろうか? - 「こうすれば多くの場合うまくいくよ」
→「多く」とは具体的にどのくらいだろう?「うまくいく」とはどのような状態を指すのだろうか?
思考の癖や偏りに気づく
クリティカルシンキングもロジカルシンキングも、まずは常識や固定観念を取り払って、頭のなかをクリアにすることが重要です。これらにとらわれたままでは、正しい答えを導き出すのが難しくなります。
自分の思考の癖や偏りに気づくために、オズボーンのチェックリストという発想法を活用してみるのもおすすめです。オズボーンのチェックリストとは、アメリカの実業家、アレックス・F・オズボーン氏が生み出した発想法で、次の9つの視点からアイデアを考えていきます。
- 転用:別の使い道はないか?
- 応用:似たようなもの、真似できそうなものはないか?
- 変更:色や動き、様式、型などを変えることはできないか?
- 拡大:より大きくできないか?
- 縮小:より小さくできないか?
- 代用:ほかのもので代用することはできないか?
- 置換:入れ替えてみたらどうだろうか?
- 逆転:前後、左右、役割などを逆にしてみたらどうだろうか?
- 結合:組み合わせたり、混ぜてみたりするのはどうだろうか?
十分検討したうえで「答えはこれしかない」と思える場合でも、オズボーンのチェックリストに当てはめて考えると、別の答えが見つかることがあります。
データや情報を重視する
クリティカルシンキングは、あらゆる前提や常識を疑い、関連するデータや情報を集めて分析して、正しい答えを導き出そうとするものです。普段から、主観的に判断するのではなく、データや情報を基に判断することを意識しましょう。
そして、収集したデータや情報が「本当に正しいのか?」と疑ってみること、しっかりとウラを取ることも大切です。すべてのデータや情報を鵜呑みにせずに、正しい情報を見極めたうえで整理、分析できるようになりましょう。データや情報の整理、分類、加工、分析といったことができるようになると、より正確な判断が下せるようになります。また、現代は新しい情報が次から次に出てきますので、常に新しい情報をキャッチしようとアンテナを張っておくことも重要です。
本から学ぶ
クリティカルシンキングに関する本は非常に多く出版されているので、本から学ぶのも1つの方法です。ただ、クリティカルシンキングにはさまざまな定義があり、本に書かれているのはその著者の主張なので、批判的に読むことを意識しましょう。
【おすすめの本】
- 「クリティカル・シンキング実践ワークブック」(著者:中野明 / 出版社:秀和システム / 発売:2009年)
- 「図解入門ビジネスクリティカル・シンキングがよーくわかる本」(著者:今井信行 / 出版社:秀和システム / 発売:2012年)
- 「改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング」(著者:グロービス経営大学院 / 出版社:ダイヤモンド社 / 発売:2014年)
- 「クリティカル・リーディング入門 人文系のための読書レッスン」(著者:大出敦 / 出版社:慶應義塾大学出版会 / 発売:2015年)
【企業事例】クリティカルシンキング研修を実施した例
最近は、クリティカルシンキングを習得できる研修を提供している研修会社もあります。そのような研修を受講するのも、クリティカルシンキングを鍛える方法の1つです。最後に、株式会社IKUSAが提供する「あそぶ社員研修」を実施いただいた事例を紹介します。
- 業種:製造業
東洋製罐株式会社様のチームビルディングを目的とした研修で、クリティカルシンキングを学べる「混乱する捜査会議からの脱出」を実施いただきました。「混乱する捜査会議からの脱出」は、チームで協力して証拠品や証言を集め、それらを整理・分析して事件の真相を究明する推理ゲームです。
当日は、ファシリテーターのフォローもあり、参加者全員が謎解きに取り組めていたようでした。参加いただいた方からは、「同期との仲が深められた」「チームで協力する大切さを学べた」などの声をいただき、研修の本来の目的であるチームビルディングも達成できたようです。当日の様子については、以下の記事で詳しく紹介しています。
入社3年目研修で「混乱する捜査会議からの脱出」を実施
また、株式会社IKUSAでは、この「混乱する捜査会議からの脱出」と、クリティカルシンキングに関する講義・グループワークを組み合わせた研修も提供しています。お気軽にお問合せください。
【講義+アクティビティ一体型】あそぶ社員研修
「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。
研修の特徴
- チームビルディング効果が高いアクティビティを通して受講者のエンゲージメントを向上させられる
- 誰もが没入できる「あそび」を取り入れた体験型アクティビティで受講者の主体性を引き出す
- 複数回のフィードバックによって学びを定着させる
まとめ
クリティカルシンキングとは、「疑う」ことで物事の本質を見極め、正しい答えを導き出そうとする思考法です。日本語では「批判的思考」と訳されることが多いですが、ただ否定したり、欠点を探したりするものではありません。疑うことで物事の本質を正しく見極めて、改善案や代替案の提案までを行う、創造的な思考法です。クリティカルシンキングを身につけることで、ロジカルシンキングの精度も高めることができるでしょう。
クリティカルシンキングは、日々の積み重ねにより誰でも鍛えることができます。本記事で紹介した方法を、ぜひ今日から実践してみてください。
「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。