バズセッションとは?実施手順・ポイントを紹介
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組織が直面している課題の解決策を考えるとき、新商品を開発したいときなど、ビジネスシーンでは多くのアイデアが必要になる場面が多々あります。そんなときに役に立つのが、「バズセッション」という手法です。
本記事では、バズセッションとは何か、バズセッションを実施することで得られるメリットと、実施方法を解説します。また、バズセッション以外にも有意義な話し合いを行うためのさまざまな手法があります。最後に、その具体例も簡単に紹介していますので、「会議を開いてもあまり意見が出ない」とお悩みの方の参考になれば幸いです。
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バズセッションとは
バズセッションとは、討議方法の1つです。話し合いに参加しているメンバーの人数が多いときに、参加者を小さなグループに分けて、まずはグループごとに話し合ってもらいます。そして、最後にグループで話し合った内容を代表者に発表してもらって、全体でさらに討議をするという流れで進められます。このバズセッションは、ヒルスデイル大学のドナルド・フィリップス学長が強く推奨したものだといわれています。
英単語のバズ(buzz)は、蜂の羽音のことです。そしてセッション(session)には、「会議」の意味があります。蜂がブンブンと飛び回るように、ガヤガヤと全員が意見を出し合ってにぎやかに会議をする(話し合う)というのが、バズセッションです。
いきなり大人数で話し合うと、発言の機会を得られないメンバーも出てくるかもしれません。まず少人数のグループで話し合ってもらうことで、全員から意見を聞くことができます。また、少人数のほうが、積極的に自分の意見をいうのが苦手な人でも発言しやすいというメリットもあります。このような特徴があるため、バズセッションは大人数での会議だけでなく、集合型研修でもしばしば用いられることがあります。
バズセッションはブレインストーミングの一種
バズセッションは、ブレインストーミングの変形の一種といわれています(※資料によっては、まったく異なるものとして紹介されることもあります)。プレインストーミングとは何か、スタンダードなブレインストーミングとバズセッションは何が違うのか、詳しく見ていきましょう。
ブレインストーミングとは
ブレインストーミングとは、複数人で自由な発想でアイデアを出し合い、創造的に問題を解決することを目指す討議方法のことです。略して「ブレスト」と呼ばれることもあります。人数に決まりはありませんが、参加者が多い場合は5~10人程度のグループに分かれて行われることが多いでしょう。ただ、これよりも大人数で実施することも可能です。
基本的には、以下のような流れで進められます。
- ブレインストーミングの意義、目的、進め方を説明する
- テーマを発表する
- テーマについて討議する(出た意見・アイデアはホワイトボードやカードなどに記録していく)
- 他の人の意見・アイデアを聞いて思いついたこと、組み合わせる・並び変えることにより生まれた新たなアイデアなどがあれば、どんどん出していく
ブレインストーミングは、多くのアイデアを出すために行うものなので、アイデアの質よりも量を重視しています。そのため、「他人の意見を否定せず受け入れる」「自由に発想する」「できるだけ多く意見を出す」「他人のアイデアを活用する・組み合わせる」という4つのことを原則として進めていきます。
バズセッションは「フィリップス66会議」とも呼ばれる
ドナルド・フィリップス学長は、テーマを細かく分けて、「1グループ6人で6分間」のブレインストーミングを行うという方法を推奨しています。そのため、バズセッションは「フィリップス66会議」と呼ばれることもあります。
この「6人で6分間」という、人数と時間に決まりがあるというのが、スタンダードなブレインストーミングと違うところです。また、グループで話し合った後に、その内容を代表者に発表してもらうというのも、スタンダードなブレインストーミングにはない、バズセッションの特徴です。
ただ、「6人で6分間」というのはあくまでも目安ですので、話し合ってもらうテーマやその他の都合に合わせて、人数や時間は調整していただいて構いません。バズセッションの実施方法は、後ほど詳しく紹介します。
バズセッションとグループディスカッションの違い
バズセッションとグループディスカッションの違いも整理しておきましょう。
グループディスカッションとは、その名の通りグループでディスカッション(あるテーマについて複数人で自由に意見を交わし合う)をするというものです。ディスカッションは、参加者同士で意見を主張し合って、最後には1つの結論(最も優れていると思われるアイデア、解決策など)を出すことを目的としています。これに対して、バズセッションを含むブレインストーミングは、意見やアイデアをより多く出すことが目的です。
また、ディスカッションでは自分の主張が最も有益であることを証明するために、ときには他人の意見を否定することもあります。これに対してバズセッションは、ブレインストーミングの一種ですので、基本的には「他人の意見を否定せず受け入れる」ことをルールとして進めたほうがよいでしょう。
また、人数や時間にも違いがあります。グループディスカッションは、名前に「グループ」と付いていますので、3人以上で行うディスカッションを指します。上限は特にありません。話し合いの時間は、人数やテーマにもよりますが、30分~1時間程度で行われることが多いでしょう。これに対してバズセッションは、先ほどお伝えした通り、「6人で6分間」話し合うという目安が設けられています。
バズセッションを実施するメリット
では、会議や集合型研修にバズセッションを取り入れることで、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。
発言しやすい
話し合いに参加するメンバーが多くなるほど、「話しすぎる人」と、逆に「まったく話さない人」が生まれやすくなります。実際に、会議で「他の人が次から次に発言するので、タイミングがつかめず自分の思っていることをいえなかった」という経験がある人もいらっしゃるのではないでしょうか。バズセッションは、まず少人数のグループに分かれて話し合いをするため、大人数でブレインストーミングを行うよりも、発言しやすいというメリットがあります。
しかし、少人数であっても発言者は偏ってしまうものです。ファシリテーターは、全員が当事者意識を持ち、自発的に参加してくれるように工夫をする必要があります。
多様なアイデアが生まれやすい
バズセッションは、話し合いの時間が限られており、その時間は「6分間」とあまり長くもないため、深く考えずに思ったままをいいやすいという特徴があるといえます。さらに、「他人の意見を否定せず受け入れる」ことを原則とすることで、自分のいったことを他の参加者に否定される心配もなくなります。そのため、多様な意見・アイデアが集まりやすいというメリットもあります。
また、バズセッションは最後にグループで話し合ったことを代表者に発表してもらうプロセスがあります。発表してもらった内容について、全体でさらに話し合うことで、さらに良いアイデアが生まれることもあるでしょう。
バズセッションを実施する目的やテーマにもよりますが、グループはなるべく多様なメンバーで構成することをおすすめします。さまざまな価値観・考え方を持ったメンバーを集めたほうが、多様なアイデアが生まれやすくなるためです。このようにグループ分けも工夫することで、より有意義な話し合いを行えるようになるでしょう。
大人数でも全員の意見を聞くことができる
会議では、全員の意見を聞いたうえで1つの結論を出さなければならないこともあります。しかし、参加者が多いと、全員で話し合うというのが難しいこともあるでしょう。まずは少人数のグループに分かれてバズセッションを行い、その後で全員で意見を整理していくという流れで進めていけば、参加者が多くても、全員の意見を平等に拾うことができます。これも、バズセッションのメリットの1つといえるでしょう。
バズセッションの実施方法
ではここからは、バズセッションの実施方法を紹介していきます。バズセッションの基本の流れ、バズセッションを実施するときのポイント、さらにファシリテーターが注意することについて、詳しく見ていきましょう。
バズセッションの流れ
バズセッションの基本的な手順は、以下の通りです。テーマは、あらかじめいくつか用意しておきましょう。
- バズセッション意義、目的、進め方を説明する
- 参加者を少人数のグループに分ける
- テーマを発表する
- 合図をして、グループ討議を始めてもらう
- 討議の後、グループで話し合った内容を代表者に発表してもらう
テーマを複数用意している場合でも、基本的にグループの組み替えは行いません。同じグループで、1つずつ話し合ってもらいましょう。
バズセッションを実施するときのポイント
次に、有意義なバズセッションにするためのポイントを紹介します。
適切な人数・時間に調整する
先ほどお伝えした通り、バズセッションの提唱者であるドナルド・フィリップス学長は、「1グループ6人で6分間」のブレインストーミングを行うことを推奨しています。ただ、この人数・時間はあくまで目安です。場合によっては、1グループ10人程度になっても構いませんし、テーマによっては6分では短すぎることもあるでしょう。会議や研修の内容に合わせて、適切な人数・時間に調整してください。
グループで役割分担をする
討議開始の前に、グループで役割分担を決めてもらいましょう。自分の意見をいうのが苦手な人もいますし、メンバー構成によっては上下関係を気にして思ったことをいえないということもあるかもしれません。どんなに少人数であっても発言者は偏ってしまいやすいので、話しやすい雰囲気づくりをしたり、参加者から意見を引き出したりするリーダーがいるとよいでしょう。また、バズセッションでは最後にグループで話し合ったことを発表してもらいますので、書記役も決めておくことをおすすめします。
ルールを決めておく
バズセッションはブレインストーミングの一種とされていますので、バズセッションを行うときも、先ほど紹介したブレインストーミングの4つのことを原則とし、質より量を重視して進めていくとよいでしょう。これに加えて、「全員が積極的に参加する」「他人の話はさえぎらずに最後まで聞く」などをルールとして設けておくのもおすすめです。
発言しやすい雰囲気をつくっておく
グループのメンバー構成にもよりますが、いきなり「グループで話し合ってください」といわれて、自分の意見を述べるのは、なかなか難しいものです。特に初対面の人が多い場合は、緊張して話せないこともあるでしょう。
活発な話し合いをしてもらうために、バズセッションに入る前に、参加者が発言しやすい雰囲気をつくっておくことも大切です。その方法の1つとして、アイスブレイクがあります。
アイスブレイクにはいろいろな種類がありますが、メインはバズセッションなので、自己紹介や〇×クイズなどのように、簡単に行えるものがよいのではないでしょうか。会議や研修の内容、参加メンバーなどに合わせて、どのようなアイスブレイクが効果的か検討してみてください。
ファシリテーターが注意すること
バズセッションでは、ファシリテーターの役割がとても重要です。バズセッションをスムーズに進めるために、ファシリテーターを任されたら注意すべきことがあります。
まずは、テーマはあらかじめ参加者に共有し、理解してもらっておくこと。いきなりテーマを示されて、「では6分間話し合ってください」といわれても、すぐに自分の意見がまとまらないかもしれないからです。
それから、グループ分けは事前に決めておいても、その場で決めても構いませんが、いずれにしても手際よく行うことが大切です。そして、グループ討議の間は各グループの様子を注意深く見守り、必要に応じて介入することも求められます。さらに、最後のグループ発表の後は、全体のまとめとして何らかの結論を出すのもファシリテーターの役割です。
ファシリテーターを任せる人には、あらかじめこれを行うためのスキルを身につけてもらっておきましょう。
話し合いに役立つその他の手法
ブレインストーミングやバズセッション以外にも、話し合いに役立つさまざまな手法があります。最後に、その一例を紹介します。
ワールドカフェ
ワールドカフェも、参加者から多くの意見を集めたいときに向いている手法です。少人数に分かれ、カフェのようなリラックスできる雰囲気のなかで自由に対話を行います。
基本は1グループ4人で、全体の人数としては16人以上が推奨されています。ワールドカフェでは、1つのテーマについて20分~30分の話し合い(「ラウンド」といいます)を、グループを組み替えながら行っていきます。全体の時間としては、2~3時間が目安です。
実施の流れ
ワールドカフェは、以下のような流れで行われます。
- 開始の挨拶
- ファシリテーターは自己紹介をして、ワールドカフェの目的やルールを説明する
- テーマを発表する
- テーマについて話し合う(第1ラウンド)
- 第1ラウンドが終了したら、1人だけがテーブルに残り(ホスト)、他の参加者は別のテーブルに移動して、さらに話し合いを深める(第2ラウンド)
- 第2ラウンドの後は、同様に第3ラウンドを行う
- 第3ラウンドが終了したら、全員最初のテーブルに戻り、得られた気づきなどを全員で共有する
親和図法
会議では、多くの意見・アイデアが出たら、それらをまとめて結論を出さなければなりません。その時に役に立つのが、親和図法という手法。集まった意見やアイデアを、親和性によりグループ分けして整理していくというものです。
実施の流れ
親和図法は、以下のような流れで行われます。
- 1つのカード(付箋でもOK)に、1つの意見を書き込む
- 内容が似ているカードを寄せて小グループをつくり、小グループに名前をつける
- 同じようにして小グループを寄せてグループをつくり、グループが3~5つくらいになるまで続ける
- 出来上がった図を見ながら、結論を文章でまとめていく
会議などでは、まずブレインストーミングで意見出しを行い、その後親和図法で整理していくという手法が用いられることが多いです。
なお、新和図法については以下の記事で詳しく解説しています。
親和図法とは?進め方、活用シーンをわかりやすく解説
まとめ
ブレインストーミングの一種であるバズセッションについて解説しました。会議や研修の参加人数によっては、少人数のグループに分かれて話し合うバズセッションのほうが、活発な討議を行えるでしょう。
話し合いの手法は、バズセッションの他にもさまざまなものがありますが、ファシリテーターにより有意義な話し合いが行えるかどうかが左右されるものも少なくありません。ファシリテーターには必要なスキルを身につけてもらい、自身の役割や、当日の手順なども確認してもらっておきましょう。
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この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。