自律型人材とは?育成するメリットやポイントを解説

  • 組織・人材開発

現代は、VUCA時代と呼ばれるほど環境の変化が激しく、将来を予測するのが難しい時代になっています。そのような時代のなかで、ビジネスにおいては「自律型人材」の必要性が高まっています。

本記事では、自律型人材とはどのような人材を指すのか、自律型人材の特徴、自律型人材が活躍できる組織の形、自律型人材を育成するメリット・デメリットとポイントを、わかりやすく解説していきます

 

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自律型人材とは

「自律」とは、他から支配されたり制約を受けたりすることなく、自分で立てた規範に従って行動できることを意味します。そして、近年ビジネスシーンで求められるようになっている自律型人材とは、上司から指示をもらう前に、自分で考えて業務を遂行していける人材のことをいいます

ただし、具体的にどのような能力や要素を求めるかは、企業によって異なります。そのため、自律型人材の育成に取り組む場合は、まずは自社にとっての自律型人材を明確に定義する必要があります。

似ている言葉との違い

ここで、「自律」と混同しがちな言葉との意味の違いを整理しておきましょう。

まずは、「自立」です。自立とは、他に依存することなく、自分の力だけでやっていくことを意味します。たとえば、親から経済的な手助けをしてもらわなくても一人で生活できるようになる、仕事を自分一人でこなせるようになるなどの状態を指します。自立は、経済力や能力、身体といった外的要因について、他に依存しないことです。一方の自律は、価値観や考え方といった内的要因について、他から支配や制約を受けないことをいいます。

そしてもう1つは、「自主性」です。自主性とは、自分のやるべきことを率先して行うこと、または、そうしようとする性質のことです自主性は、ある程度やるべきことが決まっており、それをこなそうと進んで行動しようとすることであり、自律のように「自分の規範に従って行動する」という意味合いはありません

なぜ自律型人材が求められているのか

現代社会は、VUCA時代と呼ばれるほど、速いスピードで環境が変化し続けています。経済のグローバル化、顧客ニーズの多様化、IT技術の進展などに企業が対応していくためには、変化に応じて自分で考えて仕事を進めていける自律型人材が必要なのです。従業員一人ひとりが自分の意志で行動できるようになれば、企業全体の活動のスピード感が上がります。環境の変化にも、迅速に対応できるようになるでしょう。

また、日本においてもテレワークが普及し、働き方が多様化したことで、上司が部下を直接マネジメントできる機会が減りました。そのため、上司から細かく指示を出さなくても、自分で考えて行動し、成果を上げられる人材が求められるようになってきています

さらに近年は、職務内容を定義して人材を採用する「ジョブ型雇用」を導入する企業も増えています。ジョブ型雇用では、職務を遂行できる知識・スキルを有しているかどうかだけでなく、自己研鑽を重ねられるかどうかという点も、しっかり見極める必要があります。そのため、自らの意思で学び続けることができる自律型人材に注目が集まっているのです。

 

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自律型人材の特徴

お伝えしたように、自律型人材の定義は企業によって異なりますが、共通してみられる特徴もあります。それが、以下の3つです。

1.自分で考えて行動できる

自律型人材には、上司の指示を待たずに、自分で考えて行動することができるという特徴があります。自分に与えられた役割や使命、企業から期待されていることなどを理解できており、それに応えられるように、自ら目標を設定して成果を上げることができます。

2.責任感がある

自分で設定した目標に対して責任を持っており、達成するために努力し続けるというのも、自律型人材の特徴の1つです。「自分で決めたことだから」という強い意識も持っているので、途中でミスやトラブルがあっても、投げ出さずに最後までやりとおそうとします。そして、ミスやトラブルも含め、結果を真摯に受け止め、改善するにはどうするべきかを考え、次につなげていくことができます。

3.自分の意志や価値観を持っている

自律型人材は、自分の意志や価値観、考え方というものをしっかりと持っているので、周りに流されることがありません。そのため、「自分らしい」仕事ができるというのも、1つの特徴です

これは、決して「頑固」であるとか、「一匹狼」であるということではありません。自律型人材は、自分らしさも大切にしますが、仕事を成果につなげるために、周りのメンバーと意見を交換しながら調整する能力にも長けています。

自律型人材が活躍できる組織

自律型人材に持てる能力を十分に発揮してもらうためには、組織の体制や職場環境を整えることも重要です。組織の在り方としては、ホラクラシー組織またはティール組織のような形が理想的といえます。

ホラクラシー組織

ホラクラシー組織とは、階層や役職、上司と部下といった上下関係がないフラットな組織のことです。日本では、2016年にホラクラシー組織の提唱者であるブライアン・J・ロバートソン氏の著書、『HOLACRACY 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』の日本語版が出版されてから、注目を集めるようになりました。

ホラクラシー組織では、目的に応じてチーム(サークル)が結成され、メンバー一人ひとりに役割(ロール)が与えられます。意思決定権もメンバーそれぞれに与えられており、メンバー間に指示を出す・受けるの関係がないため、全員が自分の役割を果たすために自主的に行動します。

このようなホラクラシー組織では、自分で考えて行動できる自律型人材に、十分に能力を発揮してもらうことができるでしょう。

なお、ホラクラシー組織とはどのような組織なのか、メリット・デメリットなどは、以下の記事でも詳しく解説しています。

ホラクラシー組織とは?メリット・デメリットと企業事例も紹介

ティール組織

ティール組織とは、2014年にフレデリック・ラルー氏の著書『Reinventing Organizations』で提唱された、次世代型の組織モデルです

ティール組織には指示系統がなく、ホラクラシー組織同様に全員がフラットな関係で、意思決定権もメンバー全員に平等に与えられています。何かをするために誰かから指示や許可をもらう必要がなく、独自のルールに基づき自ら決定して行動できます。そのため、ティール組織では、メンバー全員に自律的な行動が求められます。

ホラクラシー組織と似ていますが、提唱者のフレデリック・ラルー氏は、ティール組織には「セルフマネジメント」「ホールネス」「エボリューショナリーパーパス」という3つの要素があると述べています。ティール組織については、以下の記事で詳しく解説しています。

ティール組織とは?メリットや注意点、企業事例をわかりやすく紹介

自律型人材を育成するメリット・デメリット

次に、自律型人材を育成することで、どのようなメリット・デメリットがあるのかを確認していきましょう。

メリット

まずは、自律型人材を育成するメリットです。メリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。

管理職の負担を軽減できる

自律型人材は、上司が指示を出さなくても、自分でやるべきことを考えて行動することができるため、細かい部分まで管理したり、指示を出したりする必要がありません。自律型人材の育成に取り組み、従業員一人ひとりが自律的な行動ができるようになれば、管理職の負担も少なくなるでしょう。その分を従業員の成長をサポートする時間に回せば、企業全体の成長にもつながります。

イノベーションが生まれやすくなる

与えられた指示をただこなしているだけでは、指示の範囲内のものしか生み出すことができません。自分で考え、主体的に仕事に取り組むことで、新たなアイデアも生まれやすくなるでしょう

また、自律型人材は、自分の意志や価値観を大切にするため、前例や既存の手法にととらわれにくいという特徴もあります。さらに、一人ひとりが自分の意志や価値観を大切にするようになれば、提案や意見交換も活発になるでしょう。そこから、新たなイノベーションが生まれることもあるかもしれません。

業務効率化や生産性向上が期待できる

自律型人材は、上司から指示される前に自分で考えて行動できるため、仕事をこなすスピードも速いです。自律型人材の育成に取り組み、このような従業員が増えれば、企業全体の業務効率化や生産性向上も期待できるでしょう

また、自律型人材は、テレワークのように上司の監視の目がない環境でも、きちんと計画的に仕事を進めることができます。テレワークの割合が高い企業や、多様な働き方を導入している企業、またはこれからそのような働き方に変えていくことを検討している企業は、自律型人材を育成することで得られるメリットは大きいといえます。

デメリット

自律型人材を育成するデメリットとしては、主に以下の2つが挙げられます。

育成にコストがかかる

自律型人材を育成するには、まずは自社の自律型人材を定義するところから始まり、必要な知識・スキルを習得してもらうために研修を実施する、職場環境や制度を整備するなど、さまざまな取り組みが必要になります。そのため、時間的・金銭的なコストがかかります。この点は、自律型人材を育成するデメリットといえるかもしれません。

情報の管理が難しくなる

先ほど自律型人材が活躍できる組織の在り方として、ホラクラシー組織とティール組織を挙げましたが、組織の体制を変えていくのは容易ではありません。また、このような組織に体制を変えるなら、個人の裁量が大きくなるため、情報の管理が難しくなるといったデメリットがあります

自律型人材を育成するためのポイント

自律型人材の育成に取り組む際は、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。

1.自社にとっての「自律型人材」を定義する

冒頭でもお伝えしたとおり、自律型人材に具体的にどのような能力や要素を求めるかは、企業によって異なります。自律型人材を育成するためには、まずは自社にとっての自律型人材を明確に定義することが重要です。これには、2つの方法があります。

1つめは、経営戦略や企業の目標から考えるという方法です。経営戦略や企業の目標は、企業によって異なります。これらと照らし合わせて、経営戦略を実行するためにどのような人材が必要か、企業の目標を達成するためにどのような行動を望むかなどを検討し、人物像を定義します。

2つめは、すでに活躍している自律型人材を参考にするという方法です。社内に自律型人材だと思える従業員がいれば、その人の行動や能力を分析して、育成目標の項目とします。

いずれの場合も、自律型人材に期待する行動を具体的に定義することがポイントです。

2.自社の方針について理解を深めてもらう

自分で考えて行動できる力が身についても、自社の理念や戦略などを深く理解できていなければ、「企業にとって何がベストなのか」「自分は企業から何を求められているのか」を判断できません。単に従業員の自律性を高めるだけではなく、自社にとってベストな行動を考え、実行できる自律型人材を育成することが大切です。そのために、従業員には自社の方針についての理解も深めてもらいましょう。

3.研修を実施する

自社の自律型人材の定義や、求める行動を理解してもらうためにも、研修を実施することをおすすめします。そして、研修は実践につながるような内容にすることもポイントです。自律型人材の定義や求める行動をただ伝えるだけでなく、それらを実践する機会も、研修のなかに用意するとよいでしょう。

どのような研修内容にすれば良いかわからないという場合は、研修会社を利用するのも1つの方法です。自律型人材のニーズが高まっているため、従業員の自律性を高める研修や、管理職・上司向けの自律型人材の育成方法を学べるなど、自律型人材の育成に関する研修を提供する研修会社が増えています。ただ、お伝えしたように自律型人材の定義は企業によって異なりますので、内容をしっかり確認し、自社の定義に合う研修を選びましょう。

株式会社IKUSAでも、自律型人材育成研修を実施しています。研修内容のカスタマイズも可能ですので、お気軽にご相談ください。

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自律型人材育成研修

そして、研修で学んだことを定着させるために、研修後に実践の場を設けるということも大切です。成長に何より必要なのは「経験」なので、従業員には普段から「コルブの経験学習モデル」(具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験)を意識しながら、業務のなかで経験を積み重ねていってもらいましょう。「コルブの経験学習モデル」については、以下の記事で詳しく解説しています。

経験学習とは?コルブの経験学習モデル・実践のポイント・具体例を紹介

4.心理的安全性を確保する

心理的安全性とは、周りの目や反応に怯えることなく、自分らしく行動したり発言できたりする状態のことをいいます

職場の心理的安全性が低いと、従業員は自分なりの考えがあっても、それを言葉にしたり、行動に移したりするのを控えるようになります。つまり、自分で考えて行動する能力はあるのに、職場の心理的安全性が低いために、それを発揮できていないケースもあるということです。

自律型人材を育成するためには、従業員の自律性を高めるだけでなく、従業員が発言しやすい・チャレンジしゃすい環境をつくることも求められます。具体的な方法としては、定期的に1on1を実施するなどして振り返り・フィードバックの機会をつくる、社内コミュニケーション活性化に取り組むなどが考えられます。

5.評価基準を見直す

成果だけを評価するような評価基準では、与えられた仕事をこなして成果を上げれば良い評価をもらえてしまうので、自律型人材は育ちにくくなります。自律型人材の育成に取り組むなら、成果だけでなく行動も評価できるような評価基準に見直してみましょう

最後に事例として、自律型人材の育成に取り組むリコーグループの人事評価制度を簡単に紹介します。

リコーグループでは、目標管理型の人事評価制度を取り入れています。評価サイクルは半年。従業員は日々の業務をとおして期初に定めた目標の達成に取り組み、期末に成果を振り返り、評価を受けるという仕組みです。従業員の成長のために、上司はこのプロセスのなかで、適宜フィードバックやアドバイスを与えます。期末の評価は、従業員の成果と企業が求める期待行動成果による相対評価で判定しています。そして、評価の結果がきちんと報酬に反映される仕組みも整っています。

参考:人材育成 | リコーグループ 企業・IR | RICOH

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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2.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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まとめ

速いスピードで変化し続けるビジネス環境に対応し、企業を成長させていくために、自律型人材を育成する必要性が高まっています。自律型人材の育成に取り組むことで、上司から指示を出さなくても、従業員が自分で考えて行動してくれるようになることが期待できます。今よりも、スピード感のある企業活動を行えるようになるでしょう。

そして、自律型人材の育成に取り組む際は、ただ従業員の自律性を高めるというだけでなく、自社にとってベストな行動を考え、実行できる人材を育成することが重要です。本記事で紹介したポイントも参考にしていただきながら、自律型人材の育成に取り組んでみてください。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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