内発的動機づけとは?従業員のモチベーションを高める方法を紹介

  • 組織・人材開発

従業員のモチベーションは、企業の生産性や業務効率に大きな影響を与えます。業績を上げていくためには、従業員のモチベーションを高い状態で維持させるための取り組みが必要です。モチベーションは、日本語では「動機づけ」と呼ばれており、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類に分けられます。

本記事では、このうちの内発的動機づけについて解説していきます。内発的動機づけとは何か、メリット・デメリット、内発的動機づけが重要な理由、従業員の内発的動機づけを促す方法について、詳しく見ていきましょう

 

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内発的動機づけとは?

まず「動機づけ」とは、目的や目標に向かって行動を起こさせて、それを達成まで推進・持続させるプロセス、もしくはその機能のことをいいます。英語では、モチベーション(motivation)と呼ばれます。

動機づけは、「やる気」や「意欲」と言い換えられることもありますが、「やる気」や「意欲」は、欲求を満たしたいという一時的な感覚や、その強さを指す言葉といえます。一方の動機づけは、特定の欲求が行動に変換され、それが持続している状態を意味しています。

参考:星野リゾートの事例で考える「モチベーション」と「やる気」の大きな違い 組織の活性化に必要な「見極める力」【第1回】 | 戦略|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

そして、本記事で取り上げる「内発的動機づけ(内発的モチベーション)」とは、本人の内側から生まれる欲求(興味関心、好奇心、探求心など)により、自発的に行動を起こしている状態をいいます。たとえば、

  • 自分の仕事について「もっと知りたい・できるようになりたい」と感じている。
  • 仕事そのものが楽しい。
  • 仕事からやりがいや充実感を得ることができている。

このような理由により行動を起こしている状態が挙げられます。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

「外発的動機づけ(外発的モチベーション)」とは、外部から働きかけられる要因により、行動を起こしている状態をいいます。報酬や評価といったポジティブなものだけでなく、リスク回避のようはネガティブな要因により、動機づけが行われることもあります。たとえば、

  • 報酬がほしい。
  • もっと高く評価されたい。
  • 上司に怒られるのが恐い。

このような理由により行動を起こしている状態が挙げられるでしょう。

外発的動機づけは、「報酬を得る」「高く評価してもらう」「怒られない」というような明確なゴールがあるため、即効性が高いというのが特徴です。しかし、その効果は長く続くものではなく、報酬により動機づけを行う場合はコストがかかるというデメリットもあります。

一方の内発的動機づけは、本人の内側から生まれる欲求によるものなので、モチベーションが長続きしやすいです。ただ、外からアプローチするのが難しいことや、効果が出るまでに時間がかかるというデメリットがあります。

このように、内発的動機づけと外発的動機づけにはそれぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが優れているというわけではありません。また、この2つは相互に影響を与え合うものでもあります。たとえば、最初は報酬を得るための行動(外発的動機づけ)でしたが、行動するうちにやりがいを見つけて、内発的動機づけが促されるというようなケースもあります。

アンダーマイニング効果に注意

従業員の動機づけを行う際に注意したいのが「アンダーマイニング効果」です。アンダーマイニング効果とは、外部要因によって内発的モチベーションが下がってしまう現象のことをいいます。たとえば、やりがいや充実感を得るために取り組んでいたことが評価され、報酬を与えられたとします。すると、行動の目的が「やりがいや充実感を得ること」から「報酬を得ること」にすり替わり、内発的モチベーションが失われてしまうことがあるのです。

逆に、外部要因により内発的動機づけが促されることもあります。これを、「エンハンシング効果」といいます。たとえば、自分の行為や行動を他人から褒められることで、内発的動機づけが促されるといったケースです。

アンダーマイニング効果は、内発的モチベーションが高まっているときに起こるものであり、そもそも内発的モチベーションが低い状態である場合は、外発的動機づけを行うのが効果的といわれています。

内発的動機づけのメリット・デメリット

次に、内発的動機づけのメリットとデメリットを、もう少し詳しく見ていきましょう。

メリット

内発的動機づけは、本人の内側から生まれる欲求を原動力とするものです。仕事に関する内発的動機づけが促されると、自分の「もっと知りたい・できるようになりたい」という欲求を満たすために、仕事に能動的に取り組むようになります。そのため、パフォーマンスが向上するというメリットがあります。さらに、責任感や向上心が生まれるため、自身の成長にもつながるでしょう。

また、内発的動機づけは、仕事そのものに興味・関心や好奇心をもつことで初めて促されるものです。仕事に興味・関心をもち、仕事の意味や価値を感じられるようになれば、エンゲージメント(企業に対する貢献意欲)の向上も期待できるでしょう。

そして、能動的に仕事に取り組む姿は、周りにも良い影響を与えます。内発的動機づけを行うことで、職場の雰囲気が良くなり、組織の活性化にもつながるでしょう。

デメリット

内発的動機づけは、本人の内側から生まれる欲求によるものなので、外からアプローチするのが難しいというデメリットがあります。人によって興味・関心があることは違うため、内発的動機づけを促す万能な施策というものはありません。企業が従業員の内発的動機づけを行うなら、従業員一人ひとりに対する理解を深めて、個人に合わせたアプローチをする必要があります。そして、効果が出るまでに時間がかかることと、その効果がわかりにくいというのも、内発的動機づけのデメリットといえます。

また、内発的動機づけは、外発的動機づけに比べると長続きしやすいという特徴がありますが、目標が達成できなかったり、何かがきっかけでいきなり興味・関心をなくしてしまったりすると、内発的モチベーションも一気に下がってしまうことがあります。ゴールが明確な外発的動機づけより、マネジメントするのも難しいといえるでしょう。

なぜ内発的動機づけが重要なのか

内発的動機づけと外発的動機づけは、どちらが優れているというわけではありませんが、ビジネスにおいて特に重要視されているのが、内発的動機づけです。その理由としては、以下の3つが挙げられます。

企業を成長させるため

少子高齢化が進む日本では、1995年以降生産年齢人口(1564歳)が減少し続けています。今後は、さらなる減少が見込まれており、多くの業界・業種で人手不足がより深刻化することが予想されます。このようななかで企業を成長させていくためには、従業員一人あたりの生産性を向上させ、限られた人数でも成果を上げられるような強い組織をつくる必要があります

先ほどお伝えしたように、内発的動機づけを促すことで、パフォーマンス向上や自己成長、エンゲージメント向上、組織の活性化といったメリットが期待できます。その結果として、業務効率化、生産性の向上、新たなイノベーションの創出などにつながることもあるでしょう。企業を成長させていくためには、内発的動機づけが重要なのです。

参考:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

外発的動機づけを促すのが難しくなってきているため

これまで日本の企業は、終身雇用が一般的でしたが、価値観や働き方の多様化に伴い、近年これが崩れつつあります。終身雇用が一般的だった時代には、昇格や昇給といった要因により外発的動機づけを促すことができていましたが、これに依存できない時代になっています。そのため、本人の内側から生まれる欲求による内発的動機づけを促す重要性が高まっているのです。

人材を定着させるため

働く人の価値観や働き方が多様化したことで、自分のキャリアのために転職をすることも珍しくない時代となっています。雇用の流動化が進んでおり、企業としては、従業員に転職されるリスクも高くなっています

給与や福利厚生といった外的要因で動機づけを行うだけでは、従業員により条件の良い企業に転職されてしまうかもしれません。内発的動機づけを行い、仕事そのものに対する興味・関心や好奇心をもってもらい、やりがいや充実感を感じてもらうことができれば、人材が定着しやすくなるでしょう。

日本は長く売り手市場が続いており、人材の採用が難しくなってきています。このようななかで人材を確保していくためにも、内発的動機づけが重要なのです。

従業員の内発的動機づけを促す方法

最後に、従業員の内発的動機づけを促す具体的な方法を紹介していきます。

1.自己分析の機会をつくる

内発的動機づけを促すには、まずは従業員自身に、自分が何に興味・関心があるのか、どんなことにやりがいを感じるのかなどを知ってもらう必要があります。そのために、自己分析の機会を設けましょう。従業員の価値観を整理し、可視化することで、周囲もサポートをしやすくなります。

具体例には、1on1やキャリア面談などを実施し、そのなかで自己分析をしてもらうという方法が考えられます。自分ができていることや得意なことに、自分自身で気づけていない人もいますので、周りからの肯定的な評価を上司から伝えてあげるのもよいでしょう。

そして、仕事に没頭できるような状態をつくるためには、明確な目標を設定することも大切です。自己分析ができたら、従業員には仕事における目標を設定してもらいましょう。MBOOKRといった目標管理手法を取り入れている場合も、ただノルマとして目標を与えるのではなく、従業員主体で目標を考えてもらうことが重要です。

2.自律性を高める

アメリカの心理学者であるエドワード・L・デシは、内発的動機づけには、自律性・有能性・関係性の3つの欲求が重要であると述べています

  • 自律性の欲求……自分自身で決めて行動したいという欲求。
  • 有能性の欲求……「自分ならできる」という自信や確信をもちたいという欲求。
  • 関係性の欲求……他人とかかわりたい、信頼されたいという欲求。

自律性(自分で決めて行動している感覚)は、自己決定感と表現されることもあります。「他人からの指示をただこなすだけ」「強制的にやらされている」といった状態では、この感覚は得ることができません。自律性の欲求を満たすためには、従業員に仕事をある程度任せたり、従業員の意見を取り入れたりすることが重要です。具体的には、上司がもつ業務上の権限を部下に移譲する、ボトムアップ型の意思決定を行うといった方法が考えられます。

また、ジョブクラフティングも有効です。ジョブクラフティングとは、従業員自身が仕事やタスクに対する行動や認知を変えることで、やりがいや満足度を高める手法のことをいいます。詳しくは、以下の記事で解説しています。

ジョブクラフティングとは?実践方法やポイントを解説

3.自己効力感を高める

自己効力感とは、「自分ならできる」「自分は能力がある」という自信や確信のことです。前項で紹介した、有能性の欲求が満たされている状態ともいえるでしょう。これを高めることで、内発的動機づけが促されやすくなります。

自己効力感を高める具体的な方法としては、振り返りの習慣をつけてもらうというのがおすすめです。小さなことで構わないので、日々の業務のなかで「できたこと」、つまり成功体験を多く認識できるようになると、自己効力感が高まります。日誌や日報を書くときは、「できたこと」を書くように意識してもらいましょう。

また、従業員個人のレベルに合わせた業務を与え、徐々にハードルを上げていくというのも、自己効力感を高める1つの方法です。小さな成功体験を積み上げていくことで、次第に自分に自信がもてるようになり、自己効力感が向上します。

4.周りとの関係性を高める

先ほどお伝えしたように、人には他人とかかわっていたい、他人から信頼されたいという関係性の欲求があります。エドワード・L・デシは、内発的動機づけによる自発的な行動を持続させるには、この欲求を満たすことも重要であるとしています。特に、まだ従業員が自分の価値観や仕事における目標などを認識できていない初期段階においては、関係性の欲求へのアプローチが有効とされています。

具体的な方法としては、職場でチームビルディングを実施する、チームで何か(仕事、研修など)に取り組んでもらう、チームのなかで責任ある役割を任せるなどが考えられます。自分は企業やチームの一員であり、「役割を果たすことができている」「貢献できている」と認識できるようになると、関係性の欲求が満たされ、内発的動機づけが促されるでしょう。

5.定期的にフィードバックをする

内発的動機づけを促すには、定期的にフィードバックを与えることも重要です。結果だけでなく、そこに至るまでのプロセスに対してもフィードバックを与えましょう。

「定期的」と述べましたが、内発的動機づけを促すには、従業員の行動や取り組みをできるだけリアルタイムに評価することがポイントです。評価すること自体は外発的動機づけを促すアプローチですが、行動や取り組みを本人に振り返ってもらうことで、内発的動機づけを促すことができるでしょう。

また、フィードバックの際は、一方的にアドバイスを伝えるのではなく、「どうすれば良かったと思いますか?」と質問を投げかけ、まずは本人に考えてもらうのもポイントです。そうすることで、自律性(自己決定間)を高めることができるため、内発的動機づけが促されやすくなるでしょう。

6.研修を受けてもらう

内発的動機づけを促すために、動機づけに関する研修を受けてもらうのも1つの方法です。そもそも動機づけとは何か、モチベーションをコントロールする重要性やそのスキルを、研修をとおして学んでもらいましょう。内容は研修会社によってさまざまですが、実践につなげてもらうために、講義だけでなくワークで学べる研修がおすすめです。

また、「部下のモチベーションを上げる」ことも、上司やリーダーに求められる役割の1つです。自分自身のモチベーションをコントロールする方法に加えて、部下のモチベーションに働きかけてパフォーマンスを向上させる方法(モチベーションマネジメント)を学べる研修を提供している研修会社もあります。

株式会社IKUSAでもモチベーション研修を実施しています。従業員のモチベーションに関する課題があれば、お気軽にご相談ください。

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モチベーション研修

まとめ

内発的動機づけと外発的動機づけ、どちらが優れているというわけではありませんが、企業の成長や人材の定着を促すために、ビジネスにおいては内発的動機づけがより重要視されるようになっています。本記事で紹介した内容も参考にしていただきながら、従業員の内発的動機づけを促す方法を考えてみてください。

また、企業においては、従業員の動機づけを促すために、内的要因と外的要因の両方からアプローチすることになるでしょう。その際は、アンダーマイニング効果が生まれないように注意してください。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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