ホラクラシー組織とは?メリット・デメリットと企業事例も紹介

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日本だけでなく、世界中の多くの企業には、役職や階級、上司・部下といった上下関係が存在しています。近年、これらが一切ない「ホラクラシー組織」という新たな組織モデルが注目を集めています。

本記事では、ホラクラシー組織とはどんな組織なのか、従来のヒエラルキー組織との違いや、次世代型の組織モデル「ティール組織」との関係について、わかりやすく解説します。さらに、ホラクラシー組織が注目されている背景、メリットとデメリット、ホラクラシー組織にシフトする際の注意点、企業事例も紹介します。

 

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ホラクラシー組織とは

ホラクラシー組織とは、階級や役職、上司・部下といった上下関係が存在しない組織のことです「自主管理型モデル」「分散型モデル」といわれることもあります

ホラクラシー組織では、目的に応じてチームが組まれ、メンバーそれぞれに役割が与えられます。この流動的に生じるチームを「サークル」メンバーに与えられる役割を「ロール」といいます。ときには、一人のメンバーが同時期に複数のサークルに所属することもあります。前述のとおりホラクラシー組織には上下関係がありませんので、メンバーは誰かの指示を受けて動くのではなく、与えられたロールを果たすために、一人ひとりが自主的に行動します。

また、従来のピラミッド型の階層構造がある組織(ヒエラルキー組織)では、意思決定権はトップ層が有していますが、ホラクラシー組織には階層がありませんので、意思決定はサークルごと、またはメンバー個人で行うことができます。

ホラクラシー組織を考案したのは、ブライアン・J・ロバートソンという人物です。自身がCEOを務めていた会社で経営手法を実践し、ホラクラシー組織の概念を確立させました。2016年にブライアン・J・ロバートソン氏の著書『HOLACRACY 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』の日本語版が出版されて以降、日本でもホラクラシー組織が注目されるようになりました。

ホラクラシー組織とヒエラルキー組織の違い

ヒエラルキー組織は、ホラクラシー組織の真逆の形態といえます中央集権型・階層型の、現代の多くの組織が採用している組織モデルです。

ヒエラルキー組織には階級や役職があり、意思決定は経営者やリーダーが行います情報も権限を持つ人のところに集まり、下の層に開示される情報は限られています。上下関係があり、メンバーは上の層からの指示・命令を受けて行動するというのが特徴です。

ホラクラシー組織とヒエラルキー組織の違いをまとめると、以下のようになります。

ホラクラシー組織

ヒエラルキー組織

意思決定

各サークルまたはメンバー個人に与えられる。

経営者やリーダーなどトップ層が持つ。

情報

すべての情報を全員にオープンにする。

トップ層に集中しており、下の層には必要な情報のみ開示する。

人間関係

全員がフラットな関係。メンバー同士話し合いながら業務を遂行する。

上下関係がある。メンバーは上の層からの指示・命令に従い行動する。

マネジメント

それぞれが自らを自律的に管理する。

マネージャーや上司など、メンバーを管理する人がいる。

 

ホラクラシー組織とティール組織の関係

ティール組織とは、2014年にフレデリック・ラルーという人物が、自身の著書『Reinventing Organizations』の中で提唱した、次世代型の組織モデルですホラクラシー組織と同じく、階級や役職、上司・部下といった上下関係が存在せず、全員がフラットな関係で、意思決定権もメンバーそれぞれに平等に与えられています

フレデリック・ラルー氏は、ティール組織には共通する3つの要素があると述べています。

  1. セルフマネジメント(自主経営)
    メンバー一人ひとりが与えられた役割を果たすために自ら考えて行動する。
  2. ホールネス(全体性)
    メンバーが互いに認め合っており、一人ひとりが能力を最大限に発揮できる。
  3. エボリューショナリーパーパス(存在目的)
    組織が存在する意義、果たすべき役割をメンバー全員で追及し続ける。

ホラクラシー組織とティール組織には共通する部分が多々あり、捉え方はさまざまですが、ホラクラシー組織はティール組織(階層構造をもたない自由度の高い組織)の形態の一部であり、ホラクラシー組織はそのなかでも「個人とその繋がりのサークルで成り立つ組織」を一般的に意味します

ティール組織については、以下の記事で詳しく紹介しています。

ティール組織とは?メリットや注意点、企業事例をわかりやすく紹介

ホラクラシー組織が注目されている背景

現代の多くの組織は、ヒエラルキー組織に当てはまるでしょう。ヒエラルキー型の経営は、権限と責任の所在が明確である、メンバーが自分の役割をしっかり自覚できる、キャリアパスを描きやすいなどのメリットはありますが、以下のような課題もあります。

  • 意思決定に時間がかかる。
  • 下層の意向・意見が意思決定に反映されにくい。
  • 一人ひとりの業務範囲が決められているので、メンバーの視野が狭くなりやすく、柔軟性にも欠ける傾向がある。
  • 上の層は自身の業務に加えて下の層も管理も行わなくてはならないため、負担が大きい。

これらの課題をクリアし、スピード感のある経営で時代に対応していくために、ホラクラシー組織という新たな組織モデルが注目されているのです

ホラクラシー組織のメリット

ヒエラルキー組織からホラクラシー組織にシフトすることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。一つずつ詳しく見てみましょう。

スピーディーに意思決定が行える

ヒエラルキー組織では、業務の進め方を変えたいときや、必要な備品を購入するときなども、意思決定権を持つ経営者やリーダーの承認を得なければないため、どうしてもアクションを起こすまでに時間がかかってしまいます。それに対してホラクラシー組織は、各サークル、またはメンバー個人に意思決定権が与えられているため、スピーディーに意思決定を行えるというのがメリットの一つです

「改善策の検討 → 意思決定 → 実行 → 効果検証」というサイクルを早い周期で回すことができるようになるので、生産性向上も期待できるでしょう。

メンバーの主体性と考える力が向上する

ホラクラシー組織には階級や役職、上司・部下といった上下関係が一切ありません。メンバーは、誰かから指示や命令を受けて行動するのではなく、サークル内で決めた内容に従って、一人ひとりが自主的に業務を進めていきます。その結果、メンバーそれぞれの「主体性」と「考える力」の向上が期待できるでしょう

また、メンバー全員がフラットな関係であるため、上下関係によるストレスも生まれなくなり、業務に対するモチベーションを維持しやすくなるとも考えられます。

変化に柔軟に対応できる

ホラクラシー組織は、基本的にサークルという複数人体制で経営を進めていきますが、サークルは固定ではなく、タスクやプロジェクトごとなど状況に応じて形成され、目的が達成されれば解散となります。固定の役職や役割がないため、状況の変化に合わせて人材の配置転換をスムーズに行えるという点も、ホラクラシー組織の一つのメリットといえるでしょう

また、ホラクラシー組織では、メンバーは「与えられたこと」をこなすのではなく、「自分は何をすべきか」を自ら考えて行動します。メンバー個人の変化に対する対応力の向上も期待できるでしょう。

ホラクラシー組織のデメリット

ヒエラルキー組織からホラクラシー組織にシフトすることで、多くのメリットが得られることがわかりました。しかし、ホラクラシー組織にはデメリットもあります。一つずつ詳しく見てみましょう。

責任の所在が不明確になる

ヒエラルキー組織では、経営者やリーダーなどのトップ層に権限と責任が集中しています。それに対してホラクラシー組織は、メンバー全員がフラットな関係であり、権限も平等に与えられているため、トラブルが生じたときに責任の押し付け合いになる可能性があります。

ホラクラシー組織は、ヒエラルキー組織のように責任の所在が明確でない分、行動規範やルールをきちんと整備しておく必要があります。また、意思決定の際は、サークル内でコストの妥当性やリスク回避についてしっかりと議論することが大切です。

このような点を考えると、ホラクラシー組織はメンバー同士の距離が近く、信頼関係が構築できている組織に向いている形態といえるでしょう。規模が大きく、トップ層と現場のメンバーが顔を合わせる機会が少ないヒエラルキー組織の場合は、いきなり組織全体をホラクラシー型の経営にシフトしてしまうと、管理者がいなくなることで業務が滞ってしまう恐れもあります。

組織のコントロールが難しくなる

ホラクラシー組織はメンバー全員がフラットな関係であり、組織全体を管理する立場の人もいません。それぞれが自分の役割を果たすために個々で動くため、全体をまとめるのが難しくなるというデメリットがあります。ヒエラルキー組織に比べて、「誰がどこで何をしているのか」「業務はどれくらい進んでいるのか」といった進捗も把握しにくくなるので、定期的にメンバー同士で情報を共有する場を設けることが大切です。

ホラクラシー型の経営で組織を成長させるためには、メンバーの一人ひとりにセルフマネジメント力が求められます。また、組織に対するエンゲージメント(貢献意欲)も欠かせません。これらを向上・維持させるための取り組みも、持続的に実施していく必要があるでしょう。

定着するまでに時間とコストがかかる

ホラクラシー組織は、ヒエラルキー組織のようにトップ層の一部の人間が組織を動かしていくのではなく、メンバー全員で経営を進めていきます。ホラクラシー組織の概念とシフトする意義やメリットを、メンバー全員に理解してもらう必要がありますが、全員から共感を得るにはある程度時間がかかります。特に、ヒエラルキー型の経営が浸透している組織の場合、現在管理職やマネージャーを務めている人は、その立場を失うことになるので、反発が生まれる可能性もあるでしょう。

メンバーの共感を得るためには、ホラクラシー組織について理解を深めてもらうための研修を実施したり、働きやすいように職場環境を整備したりといった取り組みが必要になりますが、これらを実施するためにはコストもかかります

また、ホラクラシー組織の文化が定着すれば先ほど紹介したようなメリットが期待できますが、それまでは一時的に生産性が下がることもあるでしょう。

ホラクラシー組織にシフトする際の注意点

次に、ヒエラルキー組織からホラクラシー組織にシフトする際に注意すべきことを紹介します。

小さい規模から始める

ヒエラルキー組織からホラクラシー組織にシフトする場合、これまでの業務の進め方や考え方を大きく変えることになります。いきなり組織全体をホラクラシー型の経営にシフトすると、メンバーの混乱が大きくなりますので、まずは部署単位、チーム単位など小さい規模ではじめ、徐々に広げていくのがおすすめです

また、前項でご紹介したようにホラクラシー組織にもデメリットがあり、ホラクラシー型の経営がすべての組織に合うとは限りません。組織の活動内容や特徴に合わせて、ヒエラルキー型の経営と組み合わせて独自の組織づくりを進めている組織もあります。いずれにしても、まずは小さい規模からはじめ、実践しながら組織にフィットする形を見つけていくのが良いのではないでしょうか。

情報をオープンにする

ホラクラシー組織では、メンバー全員に意思決定の権限が与えられているため、判断基準となる情報に誰でもアクセスできるようにしなければなりません。たとえば、以下の例が挙げられます。

  • 業務の担当者
  • 進捗状況
  • 責任の所在
  • 結果、成果物

また、情報漏洩やセキュリティ対策も忘れずに行いましょう。与えられている権限が大きい分、背負っている責任も大きいということを、メンバーの一人ひとりに自覚してもらうことが大切です。

組織内のコミュニケーションを活性化させる

適切な意思決定を行うためには、メンバー同士がしっかりと情報を共有することと、アドバイスし合うことが大切ですメンバーが発言しやすい環境を整備し、コミュニケーションを促しましょう

また、せっかくホラクラシー組織にシフトしても、セルフマネジメント力やエンゲージメントが低いメンバーが多いと、組織がうまく機能しなくなってしまいます。これらを維持・向上させるためにも、定期的にコミュニケーションの機会を設け、組織としての目標やビジョン、それぞれの役割などについて、認識に相違がないか確認し合いましょう。

ホラクラシー組織の事例

最後に、ホラクラシー型の経営を実践している日本企業の事例を紹介します。

東京都港区にある株式会社アトラエは、求人メディア「Green(グリーン)」や、組織力向上プラットフォーム「Wevox(ウィボックス)」、ビジネス版マッチングアプリ「Yenta(イェンタ)」などの企画・開発などの事業を行っている企業です。

株式会社アトラエでは、個人の裁量を重視した自律分散型で組織を運用しています。階級や役職がなく、メンバー全員がフラットな関係であるため、出世争いや社内派閥といった問題が一切ありません。

参考:株式会社アトラエ | Atrae, Inc. | Culture

メンバーに最高のパフォーマンスを発揮してもらうため、働き方や職場環境も工夫しています。たとえば、以下のような制度が導入されています。

  • スーパーフレックス
    働く時間と場所をメンバーが各自で選択できるという制度です。メンバーの行動を管理・監視するようなルールはなく、性善説に基づいた最小限のルールだけを設けています。中には、オフィスに子どもを連れてくるメンバーもいるそうです。
  • 360度評価
    企業がメンバーを評価するのではなく、一緒に働くメンバーがお互いを評価しあうという制度です。評価は半年に1回行われ、企業のビジョン実現のためにどれくらい貢献できているかという点を判断基準に、給与の分配割合を決めています。
  • アトラエ的プレミアムフライデー(ATPF)
    月末の金曜日に、経営や組織、カルチャーなどをメンバー全員で考える機会を設けています。

参考:株式会社アトラエ | Atrae, Inc.| Work style

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まとめ

現代の多くの組織が当てはまるヒエラルキー型の経営は、メリットもありますが、意思決定に時間がかかる、柔軟性に欠ける、上下関係から生じるストレスなどさまざまな課題があります。これらをクリアし、時代に対応できる組織に成長していくために、階級や役職、上司・部下といった関係が存在しないホラクラシー組織が注目を集めています。

ヒエラルキー組織からホラクラシー組織にシフトすることで、スピーディーな意思決定が可能になる、メンバーの主体性が向上する、変化に強い組織になるといったメリットが期待できます。しかし、ホラクラシー組織の文化が定着するまでにはある程度の時間とコストがかかり、一時的に生産性が下がる可能性もあるということを覚悟しておきましょう。

また、ホラクラシー型の経営がすべての組織にフィットするとは限りません。強い組織をつくるためには、型にこだわらずに、組織に合った独自の形態を追求していくことが大切なのではないでしょうか。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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