ラポール形成とは?言葉の意味や代表的な手法・ポイントを紹介

  • ビジネススキル

心理学の分野で用いられてきた「ラポール」という言葉が、ビジネスにおいても注目されるようになっています。ラポール形成ができるようになれば、上司や部下、同僚、取引先、顧客といったビジネスでかかわるさまざまな人と、より良い関係を築けるようになり、仕事が今よりもスムーズに進むようになるでしょう。

本記事では、ラポール形成とは何か、従業員にラポール形成のスキルを身につけてもらうことで企業が得られるメリット、ラポール形成の代表的な手法と、うまくラポールを形成するためのポイントを、わかりやすく解説していきます

 

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ラポール形成とは

ラポールとは、人と人との間に築かれる「信頼関係」を指します。ラポールの語源は、フランス語で「架け橋」を意味する「rapport」です。ラポール形成とは、自分と相手との間にラポールを形成すること、つまり信頼関係を構築することをいいます

ラポール形成は、もともとは心理学の分野で使われていた言葉です。カウンセラーと相談者の間にラポールが形成できていると、相談者は安心して自分の悩みや不安な気持ちをカウンセラーに打ち明けることができます。

これは、ビジネスにおいても同様です。どのような仕事であっても、一人で完結できるようなものはほとんどありません。ラポールが形成できるようになると、仕事にかかわるさまざまな人と良好なコミュニケーションがとれるようになります。その結果、仕事がスムーズに進むようになり、成果も生まれやすくなるでしょう。

ラポール形成の3つの原則

生まれつきラポールを形成するのが得意な人もいますが、コミュニケーションのとり方を学ぶことで、誰でもラポールを形成できるようになります。ラポール形成の代表的な手法はのちほど詳しく紹介していますが、まずここでは、カウンセリングの基本態度である「ロジャーズの3原則」を紹介します。

アクティブリスニング(積極的傾聴)の提唱者であるアメリカの心理学者、カール・ロジャーズは、話を聴く側に必要な要素として、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」の3つを挙げています。これが、「ロジャーズの3原則」と呼ばれるものです。

【ロジャーズの3原則】

1.共感的理解

相手の立場になり、相手の気持ちに共感しながら話を聴くこと。相手の感じ方、考え方をできるだけ理解しようと努める。

2.無条件の肯定的関心

相手の話を評価したり、否定したりせずに、ありのまま受け止めること。話の背景にも肯定的な関心を持ちながら聴く。

3.自己一致

話を聴いている自分自身が心理的に安定していること。ありのままの自分で相手と向き合う。わからないところがあれば、相手に確認する。

ラポールを形成するためには、どのような手法を用いる場合であっても、この基本態度で相手の話を聴くことが、まずは何より重要です。

参考:傾聴とは|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)

 

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ラポール形成のメリット

次に、従業員にラポール形成のスキルを身につけてもらうことで、企業にはどのようなメリットがあるのかを解説していきます。

社内コミュニケーションが活性化する

ラポールが形成されると、人は安心感を得られるようになるので、自分の感情を素直に表現する、自由に振る舞うといったことができるようになります。そのため、従業員一人ひとりにラポール形成のスキルを身につけてもらうことで、職場全体のコミュニケーションが活性化することが期待できます

また、これにより良好な人間関係が維持されやすくなるというメリットもあります。社内コミュニケーションが活発ではない職場では、誤解や不満も生じやすくなります。たとえば、上司としてはわかりやすく部下に指示を出したつもりが、部下は内容を理解できていなかったというようなケースです。このようなコミュニケーションのズレは、1つひとつは小さなものでも、そこから人間関係のトラブルに発展することもあります。ラポールが形成され、社内コミュニケーションが活性化すれば、このようなことも起きにくくなるでしょう。

パフォーマンスが向上する

ラポールが形成されると、前項でお伝えしたように社内コミュニケーションが活性化するので、従業員同士で活発な意見交換を行えるようになります一人ひとりが自分の考えや思いをしっかり主張できるようになるので、多様な意見が集まりやすくなり、新たなアイデアも生まれやすくなります

また、社内コミュニケーションが活性化すると、職場の雰囲気も明るくなるので、働きやすさも向上します。従業員は、持てる能力を十分に発揮できるようになでしょう。

これらの結果として、チームや組織全体のパフォーマンス向上も期待できます。

業績アップにつながる

従業員にラポール形成のスキルを身につけてもらうことで、社内だけでなく、社外の人とも良好な関係を築けるようになります。取引先や顧客の本音を引き出せるようになれば、ニーズに沿った提案ができるようになるため、成果につながりやすくなります。その結果として、業績アップも期待できるでしょう。

ラポール形成の4つの手法

ではここからは、ラポール形成の代表的な4つの手法を紹介していきます。相手とコミュニケーションをとるときに、実践してみてください。

1.ミラーリング

ミラーリングは、自分がミラー(鏡)になったかのように、相手の動作や仕草を真似るというものです

人は、自分と共通点がある人や、自分と似ている人に対して、親近感や好感を抱きやすいものです。たとえば、「出身地が同じ」「お互いにペットを飼っている」などの理由で、初対面の人といきなり心理的な距離が縮まったという経験がある人も多いのではないでしょうか。このような心理効果を、「類似性の法則」といいます。

この「類似性の法則」は、相手の動作や仕草を真似することでも発動させることができます。具体的には、姿勢や座り方、身振り手振り、表情などを、相手の話を聴きながら真似してみます。ミラーリングのポイントは、「自然に真似する」ことです。あからさまに真似をすると、相手に不快感を与え、逆効果になる恐れがあるので、注意しましょう。

2.マッチング

マッチングは、話し方を相手に合わせるというものです。具体的には、声のトーン、話のテンポ、リズム、呼吸などを相手に合わせていきます。こちらも、「類似性の法則」を利用したものです。

たとえば、相手がゆっくり丁寧に状況を説明してくれているのに、こちらが早口だと、相手は焦りを感じたり、嫌悪感を持ったりすることがあります。このようなコミュニケーションのとり方では、説得や提案もなかなかうまくいかないでしょう。

話のペースを相手に合わせることで、「この人とはフィーリングが合う」「この人は話しやすい」と、居心地の良さを感じてもらえるようになり、信頼も得やすくなります。

ビジネスでは、相手と電話でやり取りをしなければならない場面も多々あります。マッチングは、対面でのコミュニケーションだけでなく、電話でも使うことができますので、ビジネスパーソンとして習得しておきたいスキルといえます。

3.バックトラッキング

バックトラッキングは、相手の言葉を繰り返すというものです日本語では「オウム返し」とも呼ばれます。

バックトラッキングは、相手に「ちゃんと話を聴いていますよ」ということを伝えること、そして相手に自分の発言を再認識してもらうことを目的としています。そのため、相手の言葉を一語一句変えずに繰り返さなくてはならないというわけではありません。

たとえば、相手が「この前仕事でミスをしてしまって、落ち込んでいます。」と話してきたら、「そうなのですか、ミスをして落ち込んでいるのですね。」というように、自然な形で返すようにしましょう。話が長くなってきた場合は、要約して相手に返すというのも1つのテクニックです。

しかし、バックトラッキングも多用しすぎると相手に不快感を与えることもあるので、適度な使用を心がけてください。

ここまでに紹介したミラーリング、マッチング、バックトラッキングの3つの手法を使いながら相手の話をしっかり最後まで聴くことを、「ペーシング」といいます。ペーシングは、ビジネスのさまざまな場面で役に立ちますので、習得されることをおすすめします。

4.キャリブレーション

キャリブレーションとは、表情や動作、仕草、話すスピード、声のトーンなどの非言語の部分から、相手の心理状態を読み取ることをいいます

人は無意識のうちに、非言語の部分でもさまざまなメッセージを発信しています。たとえば、一般的な傾向としては、「プレッシャーを感じているときはまばたきが多くなる」「興味がある話に対しては前のめりになる」などが挙げられます。ただ、どのような心理状態のときにどのような変化があらわれるかは、個人差があります。性別や文化によっても異なりますので、ラポールを形成したい相手を普段からよく観察しておくことが大切です。

キャリブレーションのスキルを磨くと、押すタイミングと引くタイミングも見極められるようになり、相手と良好な関係を築きやすくなるでしょう。

うまくラポールを形成するためのポイント

最後に、相手との間にラポールを築くためのポイントを6つ紹介します。

1.まずは自分を理解する

「ロジャーズの3原則」に「自己一致」があるように、話を聴くときは自分自身が安定していること、そして、自分でありのままの自分を受け入れているということが、まずは重要です

自分の強みと弱みをしっかり把握できていれば、自分に合ったラポール形成の方法も考えやすくなります。たとえば、自分が苦手な話題があるなら、その話題で無理して会話を盛り上げようとするよりも、自分の得意分野のなかで相手との共通点を探したほうが、より深い話ができるでしょう。また、自分が大勢の集まりが苦手なタイプなら、交流会や懇親会に積極的に参加するよりも、11でコミュニケーションをとれる機会をつくったほうがよいかもしれません。

「相手の立場になって」「相手のために」という心がけももちろん大切ですが、相手に素直な態度で向き合えるよう、まずは自分を理解するところから始めてみましょう。

2.アクティブリスニングを習得する

ラポールを形成するためには、相手の話をしっかり「聴く」ことが重要です。「聴く」とは、耳に入ってくる音や会話をただ聞くのではなく、それらをできるだけ正しく理解しようと、積極的に耳を傾けることをいいます。これは、「傾聴」と呼ばれるスキルです。

アクティブリスニング(積極的傾聴)は、この傾聴の種類の1つです。相手の話を聴きながら、質問を投げかけたり、言葉を添えたりすることで、言葉の背景にある思考や気持ちを引き出していきます。アクティブリスニングを実践することで、相手に「この人は自分の話を受け止めてくれている」「しっかり理解しながら聴いてくれている」という印象を与えることができ、信頼を得やすくなります。その結果、相手と良好な関係を築けるようになるでしょう。

傾聴には、アクティブリスニングのほかにも「受動的傾聴」「反映的傾聴」があり、受動的傾聴→反映的傾聴→アクティブリスニングと、段階的に使っていくのが効果的とされています。傾聴の種類やアクティブリスニングの実践方法については、以下の記事でも詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。

アクティブリスニングとは?得られる効果や実践方法をわかりやすく紹介

3.相手との共通点を探す

先ほどお伝えしたように、自分と同じ、または似ているものを持つ相手に対しては、「類似性の法則」が働くため、心理的な距離が縮まりやすくなります相手との会話のなかで、自分との共通点が見つかれば、その部分を掘り下げてみましょう。そうすることで、より深いコミュニケーションがとれるはずです。

会話のなかで共通点が見つけられなくても、普段から相手をよく観察していれば、共通点が見つかることがあります。たとえば、パソコンのデスクトップ画像がペットの写真になっている、自分が好きなメーカーのコーヒーを相手もよく飲んでいるなども、会話のきっかけにすることができます。

4.オープンクエスチョンを投げかける

どうしても共通点が見つからない場合は、オープンクエスチョンを投げかけるというテクニックも使ってみましょう。オープンクエスチョンとは、相手が自由に回答できる質問のことです。これに対して、「はい」か「いいえ」のいずれかで回答する質問や、複数の選択肢のなかから選んで回答するような質問は、クローズドクエスチョンといいます。

オープンクエスチョンを投げかけるときは、一言で答えられないような聞き方をするのもポイントです。相手に自分のことをできるだけ多く話してもらえるように、聞き方も工夫してみましょう。

ただ、質問ばかり続くと相手が負担に感じることもありますので、多用しすぎないように注意してください。また、オープンクエスチョンばかりだと、なかなか答えが浮かばない人もいます。そのような相手に対しては、5W1HWhen:いつ、Where:どこ、Who:だれ、What:なに、Why:なぜ、How:どのように)で、回答範囲をある程度決めてあげるとよいでしょう。

5.共感力を高める

相手との共通点が見つからなくても、共感することで、ラポールを形成することができます。そのために、共感力を高めましょう。

共感力とは、相手の立場になって思いや考えを想像し、自分も相手と同じ心理状態になることをいいます。心理学の分野では「エンパシー」と呼ばれているもので、近年はビジネススキルとしても注目されています。

共感することで、相手は「この人は自分に寄り添ってくれている」と感じ、安心して本音を話せるようになります。また、共感力を高めることで、相手が求めていることも理解しやすくなるので、的確な返しができるようになるでしょう。

先ほど紹介した「ロジャーズの3原則」のなかに「共感的理解」が含まれていることからも、共感は話を聴く側に欠かせない要素であることがわかります。これを意識してコミュニケーションをとるようにすると、相手と良好な関係を築きやすくなるでしょう。

なお、共感力については以下の記事でも詳しく解説しています。

共感力とは?ビジネスで求められる理由や高め方を解説

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

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学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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まとめ

1つの仕事には、さまざまな人がかかわっています。仕事をスムーズに進め、成果につなげるためには、コミュニケーションが欠かせません。従業員一人ひとりにラポール形成のスキルを身につけてもらうことで、社内外の人と良好なコミュニケーションがとれるようになり、パフォーマンス向上や業績アップといった効果も期待できるでしょう。

ラポール形成を学ぶには研修も有効ですが、スキルを短期間で習得するのは難しいかもしれません。ラポール形成のスキルを磨くには、経験を積み重ねていく必要があります。本記事で紹介した手法やポイントも、普段の生活のなかで実践してみてください。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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