共感力とは?ビジネスで求められる理由や高め方を解説

  • ビジネススキル

ビジネスパーソンに欠かせないスキルの1つに、「共感力」があります。英語では、エンパシー(empathy)と呼ばれるものです。

本記事では、まず共感力とは何か、エンパシーとシンパシーの違いにも触れながら、わかりやすく解説します。さらに、共感力が高い人の特徴、ビジネスにおいて共感力が必要なシーン、従業員の共感力を高めるメリットと、共感力を高める方法も紹介していきます。

 

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共感力とは

共感力とは、自分が相手の立場だったら何を思うか、どのように感じるかを想像して、相手のことをより深く理解するスキルのことです心理学の世界ではエンパシー(empathy)と呼ばれているもので、日本語では「自己移入」と訳されることもあります。

近年、ビジネスにおいて、この共感力が強く求められるようになってきています。その理由の1つとして、ダイバーシティの推進により、多様な人と協働しなくてはならない機会が増えているということが挙げられるでしょう。年齢や性別、国籍、経歴などが違えば、当然価値観や考え方も異なります。共感力は、自分と異なる価値観を持つ相手とも良好な関係を築き、仕事をスムーズに進めていくために欠かせないスキルです。

共感力と混同しがちな言葉に「協調性」がありますが、協調性は、立場や意見が異なる相手とも協力して、同じ目標に向かって行動できる能力のことをいいます。

エンパシーとシンパシーの違い

シンパシー(sympathy)も、日本語に訳すと「共感」となります。ここで、シンパシーとエンパシーとの違いを整理しておきましょう。

シンパシーは、相手の不幸や悲しみ、痛みを可哀そうに思ったり、気にかけたりする感情のことをいいます。「共感」以外にも、「同感」や「同情」と訳されることもあります。

シンパシーとエンパシーの違いは、「どちらの視点で物事を見るか」にあります。シンパシーは、自分の立場から物事を見たときに感じる自分の感情です。一方、エンパシーは、相手の立場に立って物事を見て、相手の心情を感じとることをいいます。

共感力が高い人の特徴

共感力が高い人には、次のような特徴が見られることが多いです。

周りの人に関心を持っている

共感力が高い人は、普段から周りの人に対して強い関心を持っており、人のことをよく観察しているという特徴があります。そして、相手とコミュニケーションをとるときも、相手の言葉をそのままとらえるのではなく、「なぜ、そうなったのだろう。」「そのとき、どのようなことを思っていたのだろう。」など、さまざまなことを考えながら会話をしています。自分とは異なる価値観や考え方を持つ相手にも寄り添うことができるので、周りの人たちと良好な関係を築くことができます。

逆に、共感力が低い人は、周りの人に対してあまり関心を持っていません。自分が興味のある話題でなければ、「そうなんだ」「ふーん」というような返しだけで会話を終わらせてしまったり、自分の話にすり替えたりしがちです。

相手の話を最後まで聞く

共感力が高い人は、相手が話している途中に何か思うことがあっても、相手の話を遮って自分の意見を述べたり、先回りして答えをいったりすることはしません。しっかりと相手の話を最後まで聞くという特徴があります

また、ただ静かに相手の話を聞き続けるのではなく、相手が話しやすい空気をつくるのもうまい人が多いです。たとえば、表情やジェスチャー、視線、声のトーンといった非言語の部分で、しっかりこちらが「聞いていますよ」というのを伝えています。つまり、傾聴のスキルが高いということです。

逆に、共感力が低い人は、相手が話している途中でも、「私ならこうするよ」「それは間違っているよ」など、かまわず自分の意見を主張したり、相手を否定したりしがちです。

経験が豊富である

人生経験が豊富な人は、共感力も高い人が多いです。共感力は、自分が経験したことがないことでも、相手の立場になって考え、「自分ごと」のように感じとるスキルです。しかし、やはりこれまでに喜怒哀楽さまざまな感情を伴う経験をたくさんしてきている人ほど、そのときの自分を重ねて想像することができるため、相手の思いや感情をよりリアルに感じられるのではないでしょうか。

ビジネスにおいて共感力が必要なシーン

では、共感力は、具体的にどのようなシーンで必要になってくるのでしょうか。

相手と信頼関係を構築するとき

仕事を遂行するためには、上司や部下、同僚、取引先、顧客など、いろいろな人たちとかかわらなければなりません。周りの人と良好な関係を築ければ、仕事もスムーズに進められるようになります。共感力は、仕事でかかわるさまざまな人と信頼関係を構築するのに役立つスキルです

共感力が高まると、コミュニケーションのとり方が変わります。具体的には、相手の話を遮らず最後まで聞くようになる、自分と異なる意見でも受け止められるようになる、「自分が相手の立場だったら」と想像しながら会話できるようになる、などです。相手に「この人は自分に寄り添ってくれている」という感覚や、安心感を与えられるようになるので、相手からの信頼を得やすくなります。

リーダーシップを発揮しなければならないとき

リーダーシップとは、組織やチームを目標達成に向けて率いていく力のことをいいます。リーダーシップに関しては、さまざまな研究や理論があり、時代によって求められるリーダーシップのスタイルも変化していますが、近年は、「サーバントリーダーシップ」というスタイルが注目されています

サーバントリーダーシップとは、メンバーに奉仕することで信頼関係を築き、そのあとでメンバーを導いていくという考え方です。メンバーを管理する、指示を出すといった従来のリーダーシップを「支配型」とするならば、サーバントリーダーシップは「支援型」であるといわれています。

サーバントリーダーシップには10の特性があり、そのなかには「共感」と「傾聴」も含まれています。サーバントリーダーシップについて、詳しくは以下で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

サーバントリーダーシップとは?特徴や10の特性について解説

また、このサーバントリーダーシップ以外にも、メンバーとの関係を重視するリーダーシップ理論は複数あります。共感力は、リーダーシップを発揮するためにも欠かせないスキルといえるでしょう。

なお、リーダーシップとは何か、代表的なリーダーシップ理論などについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

リーダーシップとは?定義や理論をわかりやすく紹介

新たな提案をするとき

共感力が高まると、相手の立場で物事を考えられるようになるので、相手が伝えたいことや求めていることが理解しやすくなります言葉の裏に隠れている相手の思いも把握したうえで、新たな提案ができるようになるので、結果につながりやすくなるでしょう。

たとえば営業であれば、自社の製品やサービスのアピールポイントが、顧客のニーズとズレてしまっていることがあります。これでは、なかなか成果につながりません。共感力が高まると、顧客のニーズを的確に把握できるようになるので、それに合わせて効果的に自社の製品・サービスをアピールできるようになります。

共感力を高めるメリット

次に、従業員の共感力が高まると、企業にはどのようなメリットがあるのかを解説していきます。

社内コミュニケーションが円滑になる

従業員の共感力が高まると、社内での意思疎通や情報共有がスムーズに行えるようになります。その結果、業務自体もより円滑に進められるようになるでしょう。

たとえば、部下の共感力が高まると、部下は上司が求めていることが理解できるようになります。共感力がない部下と、共感力がある部下のコミュニケーションの違いを、例で見てみましょう。

【共感力がない部下の場合】

  • 上司:「例のプロジェクトは、スケジュールどおりに進んでいる?」
  • 部下:「はい、問題ありません。」(心の中:少し遅れているけれど取り戻せる予定だし、上司も忙しそうだから心配かけないでおこう。)
  • 上司:「……了解。」(心の中:遅れがあるのかないのかどっちなのだろう。具体的に進捗状況を教えてほしいな。)

【共感力がある部下の場合】

  • 上司:「例のプロジェクトは、スケジュールどおりに進んでいる?」
  • 部下:(心の中:進捗状況を知りたいのだな。)
    「少し遅れていますが、〇〇〇のため取り戻せる予定です。期限には問題なく間に合います。」
  • 上司:(心の中:それなら安心だな。)
    「了解、ありがとう。引き続きよろしく。」

このように、報告もスムーズに行えるようになります。

一人ひとりが相手の考えに寄り添ったコミュニケーションがとれるようになれば、従業員同士の間に信頼関係が生まれ、職場全体の雰囲気も明るくなるでしょう。その結果として、業務効率化や、生産性向上といった効果も期待できます。

企業の信頼向上につながる

先ほどお伝えしたように、共感力を高めることで、立場の異なる相手の思いや考えを想像できるようになり、相手のニーズを把握したうえで最適な提案ができるようになります取引先や顧客に「この企業は、本当にいつもこちらのことを考えてくれているなぁ」と感じてもらうことができれば、企業に対する信頼も向上するでしょう。

企業が成長していくためには、社内のメンバーだけでなく、取引先や顧客をはじめとする外部のステークホルダー(利害関係者)との信頼関係も非常に重要です。企業の信頼向上のためにも、従業員の共感力の向上に取り組んでいきましょう。

顧客に刺さるビジネスが生まれやすくなる

めまぐるしく変化する時代のなかで、企業を成長させ続けるためには、現状の事業を維持していくだけでなく、新たなビジネスを生み出す必要があります。そして、その新たなビジネスは、顧客のニーズに沿ったものであることが重要です。どんなに画期的な製品やサービスも、顧客に刺さるものでなければ、成果につながりません。従業員の共感力を高めることで、顧客のニーズをとらえた製品やサービスを開発できるようになるでしょう

チームワークが向上する

企業が成長していくためには、従業員一人ひとりの能力だけでなく、チームワークを高める必要があります。チームワークを発揮するためには、メンバー同士の信頼関係が欠かせません。特に、リーダーとメンバーとの信頼関係は非常に重要です。

ここで、共感力が低いリーダーと、共感力が高いリーダーのコミュニケーションの違いを、例で見てみましょう。

【共感力が低いリーダーの例】

  • メンバー:「例の件、このように対応しようと思っているのですがよろしいですか?なぜなら……」
  • リーダー:「それは良くないだろう。以前私はこうしたから、同じやり方で対応して。」
  • メンバー:「……わかりました。」(心の中:理由も聞かずに自分の経験だけを押し付けるなんて……。)

このように、メンバーの話を遮ってしまうような共感力の低いリーダーだと、メンバーが意見をいえなくなったり、十分に力を発揮できなくなったりします。

【共感力が高いリーダーの例】

  • メンバー:「例の件、このように対応しようと思っているのですがよろしいですか?なぜなら~~~だからです。」
  • リーダー:「なるほど。確かにそれでも対応できるね。私が以前同じような状況になったときは、~~~だからこんな対応をしたのだけど、あなたはどう思う?」

このように、メンバーの話をしっかりと最後まで聞き、さらに指示を出すだけでなく、メンバーの意見を積極的に聞こうとしてくれるリーダーのほうが、メンバーからの信頼を得やすいでしょう。

リーダーの共感力を高めることで、チームにまとまりが生まれ、成果につながりやすくなります。

共感力を高める方法

最後に、共感力を高める方法を紹介します。

周りの人に興味を持つ

共感力は、簡単にいえば「相手を深く理解するスキル」です。興味・関心がないことについて理解を深めるのは難しいので、まずは人に興味を持つことからはじめてみましょう

そのために、普段から周りの人の言葉やしぐさを観察するようにしてみてください。繰り返し観察していると、「今の言葉はどんな気持ちで出たものだろう」「あの人がいつもやっているあのしぐさには何か意味があるのかな?」などと、自然と興味が湧いてくるでしょう。

さまざまな人と交流する

ものの考え方や感じ方は、人それぞれです。年齢、性別、国籍、文化などもさまざまな人と交流をすると、新たな気づきが得られることがあります。多様な価値観に触れることで、想像力や行動力、適応力なども養われるでしょう。交流するときは、相手の気持ちを想像しながら、話をしっかり「聴く」ことを重視するのがポイントです

映画を観る、本を読む

人の気持ちを感じとるトレーニングとして、映画を観たり、本を読んだりするのも1つの方法です登場人物のセリフだけでなく、置かれている状況や行動から心理状態を想像してみましょう。いろいろな登場人物を想像するだけではなく、一人の登場人物になりきって作品を楽しんでみるのもおすすめです。

先ほど、共感力が高い人の特徴として、「経験が豊富である」ことを挙げました。自分の人生で実際に経験できることは限られていますが、映画や本で「疑似体験」したことも、自分の1つの経験になります。経験を積み重ねて、引き出しを増やしていくことで、相手の心情を想像しやすくなるでしょう。

共感力を高める研修を受ける

共感力を高める研修を提供している研修会社もあります。共感力を高めたいなら、そのような研修を受けてみるのもよいでしょう。内容は研修会社によってさまざまですが、共感力とは何か、コミュニケーションのとり方などを、講義とワークで学ぶようなものが多いです

「共感力研修」「共感力発揮研修」といった名前のものだけでなく、「チームビルディング研修」や「アサーティブコミュニケーション研修」なども、共感力の向上におすすめです。研修をとおして、相手に寄り添ったコミュニケーションのとり方を学ぶことができます。

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まとめ

ビジネスシーンで求められている共感力(エンパシー)とは、相手の立場になって思いや考えを想像し、自分も同じ心理状態になることで、相手のことを深く理解するスキルのことをいいます。多様な人と協働していくために欠かせないスキルであるため、ビジネスにおける必要性も高まっています。共感力を高めるには、トレーニングを積み重ねることが大切です。本記事で紹介した方法を、今日から実践してみてはいかがでしょうか。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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