エンゲージメントサーベイとは?サービスの比較ポイントや活用事例を紹介

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従業員のエンゲージメントを向上させるために、「エンゲージメントサーベイ」を実施する企業が増えています。

本記事では、エンゲージメントサーベイとはどんなものなのか、従業員満足度調査との違いや、活用すべき理由、実施する方法と目的、サービスの比較ポイントを解説します。また、エンゲージメントサーベイが実際にどのように活用されているのか、企業の事例も紹介します

 

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エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメントとは、従業員が企業に対して貢献意欲を持っている状態を指します。日本語で表すなら「愛着」や「忠誠心」に近い概念です。サーベイ(survey)は、「調査する」「測量する」などの意味を持つ英単語です。エンゲージメントサーベイとは、従業員のエンゲージメントを数値化・定量化するため実施する調査のこと、またはそのためのツールのことを指します

エンゲージメントが高まると、従業員がモチベーションを維持しやすくなり、生産性や業務効率が向上し、人材の定着率が高まるなど、さまざまなメリットが期待できます。そのため、従業員のエンゲージメントの向上に取り組む企業が増えています。

「従業員のエンゲージメントを向上させたい」と思っていても、まずは現状を客観的に把握しなければ、効果的な施策を打ち出すことはできません。エンゲージメントサーベイを活用することで、目には見えない従業員のエンゲージメントを可視化できます。得られた結果をもとに施策を検討し、実行することで、エンゲージメントの向上につなげることができるでしょう。

エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い

従業員満足度調査とは、従業員が企業から与えられるものに対して満足しているかどうかを測るものです。具体的には、給与や福利厚生、職場環境、勤務時間や業務の量などに対する満足度です。従業員満足度調査は、主に不満要因の解消や社内秩序の維持のために行われます。

対してエンゲージメントサーベイは、従業員と企業の「つながり」を測定するものともいえるでしょう。具体的には、貢献意欲はあるか、上司や同僚と信頼関係を構築できているか、成長を実感できているかなどを測ります。エンゲージメントサーベイは、主に離職防止や生産性向上のために行われます。

従業員満足度は、企業から与えられるものが変われば変化する可能性があります。一方エンゲージメントは、企業と従業員の間に信頼関係が築かれていれば変わりにくいため、近年はエンゲージメントがより重要視されるようになってきています。

エンゲージメントサーベイを活用すべき理由

日本の企業がエンゲージメントサーベイを活用すべき理由は、大きく2つあります。

1つは、現在多くの企業が従業員のやる気を引き出せていない状況にあるためです。アメリカのギャラップ社が2021年に行った調査では、日本企業における「熱意のある従業員」の割合はわずか5%という結果が出ています。最も従業員エンゲージメントが高かった地域はアメリカとカナダで34%、中国や韓国が含まれる東アジアは14%、世界平均は20%でした。このデータから、日本は世界的に見ても従業員のエンゲージメントが低い国であるということがわかります。

参考:Gallup:State of the Global Workplace 2021 Report

もう1つは、従業員のエンゲージメントは、企業の競争力にも直結する重要なテーマだからです。経済産業省の資料「経済産業省主催 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会「平成30年度産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)」(PDF)」によると、エンゲージメントスコアが高い企業は、利益率や売上といった業績指標が高いだけでなく、離職率や品質上の欠陥も低い傾向があるというデータが示されています。

エンゲージメントスコアについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

エンゲージメントスコアとは?注目されている理由、高める方法やメリットを紹介

しかし、エンゲージメントサーベイをただ実施するだけでは、従業員のエンゲージメントを向上させることはできません従業員のやる気を引き出し、企業の競争力を強化するためには、エンゲージメントサーベイで得られた結果を分析し、エンゲージメント向上のための効果的な施策を継続的に実施していくことが大切です。

エンゲージメント経営については、以下の記事で詳しく紹介しています。

エンゲージメント経営とは?メリットや進め方、企業事例を紹介

エンゲージメントサーベイの目的

ここからは、エンゲージメントサーベイを実施する主な目的を紹介します。

企業課題の可視化

エンゲージメントサーベイは、企業の課題を発見するのに役立ちます。エンゲージメントサーベイを実施することで、エンゲージメントという目には見えないものが数値化できるため、企業が今解決すべき課題や、その優先度が見えやすくなるのです

また、定期的な実施により、従業員のモチベーションや企業への印象の推移を把握し、見えない課題や予兆が見つかることもあります。

離職防止

せっかく新たな従業員を採用しても、すぐに離職してしまうケースがあります。理由はさまざまですが、入社前と入社後の「ギャップ」により離職を決める人も少なくありません。たとえば、「思っていた仕事内容と違う」「この企業ではキャリアプランの実現は難しそう」などです。

エンゲージメントサーベイを実施することで、企業と従業員の間にこのようなギャップがないかを把握し、より効果的なリテンション施策を実行することができます

「従業員満足度調査でも良いのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、従業員満足度調査は従業員から企業への一方向の満足度を測るものです。対してエンゲージメントサーベイは、企業と従業員の双方向のつながりを測ります。エンゲージメントサーベイを実施することで相互理解がより深まり、リテンション施策を検討しやすくなるでしょう。

人事施策への活用

エンゲージメントサーベイで得られた結果を分析することで、従業員の個性や考え方がより深く理解できるようになり、一人ひとりに合わせた人事施策を検討しやすくなります

たとえば、従業員が「自分の意見が仕事に反映されていない」と感じているようであれば、面談やコミュニケーションの機会を増やすといった対策がとれます。一人ひとりに合わせた人事施策を実施することで、従業員もモチベーションが高い状態を維持しやすくなり、その結果生産性や業務効率の向上も期待できるでしょう。

また、リファラル採用の導入を検討しているなら、他社推奨度(自分が勤める企業をほかの人にも就職先として勧めたいという気持ち)が高い従業員にリクルーターをお願いすることで、成功率も上がります

このように、エンゲージメントサーベイで得られた結果は、さまざまな人事施策に役立てることができます。

業績の向上

ここまでエンゲージメントサーベイを実施する3つの目的を挙げてきましたが、エンゲージメントサーベイの最終的なゴールは、業績アップにつなげることですエンゲージメントサーベイで得られた結果を分析して、従業員一人ひとりが十分に能力を発揮できるような環境を整えていくことで、エンゲージメントが向上します。その状態を維持できれば、生産性や業務効率が改善され、利益率や売上アップにつなげることができるでしょう。

エンゲージメントサーベイを実施する方法

エンゲージメートサーベイを実施する方法は、2つあります。

  1. 自社で質問票を作成し調査・分析する
  2. 外部サービスを利用する

1.自社で質問表を作成し調査・分析する

自社で質問票を作成すれば、実施コストを抑えられます。また、企業の風土や社風に合わせて質問をカスタマイズできるのもメリットです。

しかし、設問の設定から結果の分析まですべて自社で行うため、工数が多くなるというデメリットがあります。また、エンゲージメントスコア(エンゲージメントを数値化したもの)を算出するには専門知識と分析力が必要ですので、ソリューションベンダーや人事コンサルティング会社などに相談しながら実施することをおすすめします

質問項目の例

質問項目の例として、アメリカのギャラップ社の従業員エンゲージメントを測定する方法「Q12(キュートゥエルブ)」の質問項目を紹介します。

  1. 自分が仕事で何を期待されているか分かっている
  2. 自分の仕事をきちんとこなすために必要な設備や材料を持っている
  3. 職場で毎日自分の能力を発揮できる機会がある。
  4. この一週間のうちに、仕事で褒められたり、認められたりした
  5. 上司または職場の誰かが、自分を人として気にかけてくれている
  6. 職場に自分の成長を応援してくれる人がいる
  7. 職場で自分の意見が尊重されていると感じる
  8. 企業の使命や目的は、自分の仕事が重要であると感じさせてくれるものである
  9. 同僚は、質の高い仕事をしようと努めている
  10. 職場に親友と呼べる人がいる
  11. この半年のうちに、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
  12. この一年のうちに、仕事で学び、成長する機会があった

出典:Gallup’s Q12 Employee Engagement Survey

2.外部サービスを利用する

外部のサービスを利用すれば、時間や人員を割くことなく、スピーディーに調査・分析をすることができます。

ただ調査をするだけでなく、AIで自動的にスコア判定を行ってくれるもの、コンサルティングまで行ってくれるものなど、サービスの内容もさまざまです。また、料金体系もサービスによって異なりますので、予算や担当者のスキル、工数を考慮して自社に最適なものを選びましょう。

エンゲージメントサーベイを実施する際の注意点

エンゲージメントサーベイは、ただ実施するだけでは高い効果は得られません。ここからは、エンゲージメントサーベイを実施する際に抑えておきたい3つのポイントを紹介します。

1.目的を明確にする

エンゲージメートサーベイを実施する最終的な目的は、従業員のエンゲージメントを向上させて業績アップにつなげることです。エンゲージメントサーベイを実施する際は、エンゲージメントサーベイをどのように活用して業績アップにつなげるのかという点を明確にしておきましょう。たとえば、以下の例が挙げられます。

  • 現状解決するべき課題を見つける
  • 離職率を下げる
  • 採用力を強化する
  • 業務効率を改善し生産性を上げる

これを明確にしておくことで、エンゲージメントサーベイを実施したあと施策を検討しやすくなります。

2.従業員の理解と協力を得る

せっかくエンゲージメントサーベイを実施しても、従業員が「ただなんとなく」回答しただけでは、十分なデータは得られません。従業員に「真剣に」「正直に」エンゲージメントサーベイに取り組んでもらえるように、実施する目的やメリット、結果をどのように活用するのかなどを説明しましょう「人事評価には影響があるのでは」と不安に感じる人もいますので、そのようなことはないという点もしっかり伝え、理解を得ることが大切です。

また、エンゲージメントサーベイは業務時間内に行いますので、繁忙期を避けて実施する、頻度は半年~2年にごとにする、質問項目は増やしすぎないなど、なるべく従業員の負担にならないように工夫しましょう。

3.継続する

エンゲージメントサーベイは単発で終わらせるのではなく、PDCAサイクル(計画 → 実行 → 評価 → 改善)を回して、課題解決につなげていきましょう。実施頻度に決まりはありませんが、半年から2年に1回のペースで実施している企業が多いようです。

1つの課題が解決できても、環境や人員配置などが変われば新たな課題も出てきます。推移をチェックし、課題や予兆を早期に発見することが大切です。

エンゲージメントサーベイサービスのポイント

外部サービスを利用してエンゲージメントサーベイを実施する場合、以下のようなポイントを比較すると良いでしょう。

  • 知りたいことをどれくらい的確に測れるか
  • 質問の数と回答時間の目安
  • レポートの形式と内容
  • これまでの実績や、課題の改善事例
  • 実施後のサポートやコンサルティングの有無
  • 結果を他社と比較することは可能か
  • コストは予算内におさまっているか

できればレポートは、事前にひな型を見せてもらうことをおすすめします。結果をしっかりと施策に反映させるために、自社で分析しやすいレポートを出してくれるサービスを選びましょう。

エンゲージメントサーベイの活用事例

実際に、エンゲージメントサーベイはどのように活用されているのでしょうか。最後に、オムロン株式会社と株式会社リクルートの、エンゲージメントサーベイの活用事例を紹介します。

オムロン株式会社

制御機器、社会システム、ヘルスケアなど幅広い事業を展開しているオムロン株式会社では、2016年度より、従業員エンゲージメントサーベイ「VOICE」を実施し、働く場としての魅力度の測定と、経営課題の把握・特定を行っています。このサーベイでは、従業員の「生の声」を聴くため、スコア形式だけでなくフリーコメントで回答する質問も設けています。

2021年度は21,287名の従業員を対象に「VOICE」実施し、回答率は90%でした。そして、このサーベイで明らかになった業務効率性、パフォーマンスマネジメントの課題を解決するために、ITインフラやルール・プロセスの整備、マネジメント力強化などを実施しました。

参考:従業員との対話 | ステークホルダー エンゲージメント | サステナビリティ | オムロン

株式会社リクルート

株式会社リクルートは、就職・採用・労務支援、HRエージェント、住まい、学習など、幅広い情報・サービスを提供している企業です。

株式会社リクルートでは、職場の状態を可視化するために、半年ごとに全職場でエンゲージメントサーベイを実施し、従業員一人ひとりが「自立」「チーム」「進化」が体現できているかをモニタリングしています。また、部署単位やグループ単位でサーベイを起点とした対話を実施し、従業員がお互いに本音で話し合えるような職場環境づくりに取り組んでいる職場もあります。

公式ホームページによると、2022年3月現在のエンゲージメントサーベイ回答率は94%、職場フィードバックミーティング実施率は47%となっています。

参考:エンゲージメント – リクルートの人材マネジメントの仕組み|株式会社リクルート

エンゲージメントを高めるための施策

従業員のエンゲージメントを高めるため重要なのが、エンゲージメントの土台となるモチベーションとチームビルディングです。チームビルディングとは、チームのメンバー一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮し、目標を達成できる強い組織をつくっていくことをいいます。

モチベーションとチームビルディング、この2つに欠かせないのが、「コミュニケーション」です。社内のコミュニケーション促進のために、研修に「あそび」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

「あそび」とは、ただ「楽しい」というだけではありません。

  1. 年齢や性別、国籍を問わずだれでも参加・活躍できる
  2. テクニックがなくても楽しめる
  3. 勝敗よりもプロセスを重視する
  4. ルールをカスタマイズできる
  5. 全員が同時に参加できる

この5つの要素が含まれていることが大切です。時には仕事から離れてコミュニケーションを取ることで、従業員同士の相互理解が深まるだけでなく、心身のリフレッシュにもなります。

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研修の特徴

  • チームビルディング効果が高いアクティビティを通して受講者のエンゲージメントを向上させられる
  • 誰もが没入できる「あそび」を取り入れた体験型アクティビティで受講者の主体性を引き出す
  • 複数回のフィードバックによって学びを定着させる

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まとめ

エンゲージメントサーベイを実施することで、エンゲージメントという目には見えないものを可視化できるため、課題解決に向けたより良い施策を検討しやすくなります。

エンゲージメントサーベイの最終的なゴールは、企業の業績を向上させることですが、そのためにエンゲージメントサーベイを活用して何を得たいのかを明確にすること、従業員の理解と協力を得て実施すること、単発で終わらせずに継続することが重要です。外部サービスもさまざまなものがありますので、しっかり比較・検討し、自社に合ったものを選びましょう。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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