エンゲージメントスコアとは?注目されている理由、高める方法やメリットを紹介
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エンゲージメントスコアとは、従業員のエンゲージメントを数値化したもののことです。従業員のエンゲージメントを向上させることで、従業員がモチベーションを維持しやすくなる、業務の質・効率が改善される、人材が定着しやすくなるなどの効果が期待できることから、近年従業員のエンゲージメント向上に取り組む企業が増えています。
本記事では、エンゲージメントスコアとは何か、注目されている理由や、エンゲージメントを数値化するメリット、エンゲージメントスコアを高める方法と、事例としてエンゲージメントスコアが高い企業が実践している施策を紹介します。
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エンゲージメントスコアとは
エンゲージメントとは、従業員の企業に対する貢献意欲のことをいいます。「愛着」や「忠誠心」に近い概念で、「愛社精神」ともいわれています。
エンゲージメントスコアとは、この目には見えない従業員のエンゲージメントを数値化したもののことです。従業員を対象にエンゲージメントサーベイやパルスサーベイという調査を実施し、その結果から算出します。
エンゲージメントスコアと混同しがちな言葉に、従業員満足度があります。従業員満足度は、企業から与えられるもの(給与、福利厚生、職場環境など)にどれくらい満足しているかの度合いであり、「従業員 → 企業」の一方向の指標です。対してエンゲージメントスコアは、企業と従業員の「双方向」のつながりの強さを表すものといえます。
エンゲージメントスコアが注目されている理由
なぜ、近年エンゲージメントスコアが注目されているのでしょうか。その背景には、大きく3つの理由があります。
1.人材を確保するため
少子高齢化が進む日本では、1995年をピークに生産年齢人口(15~64歳)が減少しており、人材の採用に苦戦する企業が多くなっています。
また、かつての日本は終身雇用が一般的でしたが、時代とともにライフスタイルや働き方も多様化し、自身のキャリアのために前向きな転職をする人も増えています。このようななかで優秀な人材を確保していくためには、採用活動だけでなく、リテンション施策にも力を入れていく必要があります。
従業員のエンゲージメントを向上させることで、従業員がいきいきと働けるようになり、離職率の改善が期待できます。また、従業員のエンゲージメント向上に取り組む企業は、「働きやすさ」や「良好な人間関係」を求める求職者に魅力的に映り、採用力の強化にもつながるでしょう。
従業員のエンゲージメントを向上させるためには、まずは現状を把握しなければ効果的な施策を打ち出すことはできません。そのため、目には見えないエンゲージメントを可視化できるエンゲージメントスコアが注目されているのです。
2.企業の課題を明らかにするため
新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、日本でもテレワークやフレックスタイム制といった新しい働き方が急速に普及しました。これにより、従業員のワークライフバランスは実現しやすくなりましたが、社内コミュニケーションが減少し、企業と従業員との関係性が見えづらくなってきています。
エンゲージメントスコアを測定することで、企業の課題やその優先順位が見えやすくなります。また、定期的にエンゲージメントスコアを測定すれば、従業員のモチベーションの変化や企業への印象の推移を把握できるため、新たな課題や予兆が見つかることもあるかもしれません。企業の隠れた課題を明らかにするため手段の1つとして、エンゲージメントスコアが注目されています。
3.企業の競争力を強化するため
エンゲージメントスコアの高い企業は、売上や利益率、生産性、顧客評価といった業績指標が高い傾向があります。従業員のエンゲージメントは、企業の競争力に直結する重要なテーマであるとして注目されるようになってきています。
参考:経済産業省主催 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会「平成30年度産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)」(PDF)
エンゲージメントスコアを高めると、従業員は自ら課題を見つけ、積極的に業務に取り組むようになります。また、テレワークやフレックスタイム制など多様な働き方導入している企業の場合は、上司が常に部下を監視・指導できません。エンゲージメントスコアを高めることで、従業員の自律性や主体性が向上します。このような従業員が増えれば、生産性や業務効率の向上が期待できるでしょう。
エンゲージメント経営については、以下の記事で詳しく紹介しています。
エンゲージメント経営とは?メリットや進め方、企業事例を紹介
エンゲージメントを数値化するメリット
エンゲージメントを数値化することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。1つずつ見てみましょう。
課題が明確になる
目には見えないエンゲージメントを数値化して可視化することで、企業のどこにどんな課題があるのかを明確にできます。エンゲージメントスコアが低い部分には、何らかの課題が存在している可能性があります。
課題が明確になったら、それを解決するための施策を考え、実行します。実行した後は、しばらく期間をおいて再度エンゲージメントスコアを測定しましょう。施策の実行前後でエンゲージメントスコアが変わらない場合は、効果的な施策ではなかったということですので、改善が必要です。
また、定期的にエンゲージメントスコアを測定することで、企業の現状だけでなく推移を把握できます。小さな変化にも迅速に対応できるようになるという点も、エンゲージメントを数値化するメリットです。
自社の強み・弱みを把握できる
エンゲージメントを数値化することで、自社の強みと弱みを整理できます。たとえば、職場の人間関係に関する項目のスコアが高ければ、「社内コミュニケーションが活発」「働きやすい職場環境」という自社の強みが見えてきます。採用活動の際に自社の魅力として求職者にアピールすれば、応募を集めやすくなるでしょう。
逆に、スコアが低い項目があれば、それは自社の弱み(課題)ということになりますので、改善するための施策を考える必要があります。
また、エンゲージメントを数値化することで、自社と他社の魅力を客観的な視点で比較できるようになります。エンゲージメントスコアを活用することで、より効果的な採用戦略が打ち出しやすくなるでしょう。
エンゲージメントスコアを測定する方法
エンゲージメントスコアを測定する方法にはさまざまなものがありますが、エンゲージメントサーベイ、もしくはパルスサーベイが用いられることが多いです。どちらも従業員のエンゲージメントを測るための調査ですが、それぞれメリット・デメリットがありますので、自社にあったものを選びましょう。
それぞれの特徴をまとめると、このようになります。
エンゲージメントサーベイ | パルスサーベイ | |
実施頻度 | 半年~2年に1回程度が一般的 | 毎日 / 週1回 / 月1回 など、高頻度で実施 |
質問数 | 50~100問程度 | 1~10問程度 |
回答時間の目安 | 20~40分 | 2~3分 |
質問の例 |
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メリット |
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デメリット |
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エンゲージメントサーベイについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
エンゲージメントサーベイとは?サービスの比較ポイントや活用事例を紹介
エンゲージメントスコアを高める方法
ここからは、エンゲージメントスコアを高める方法を紹介します。どれか1つではなく、すべてをバランスよく実践することが大切です。
エンゲージメントスコアの要素を理解する
エンゲージメントスコアを高めるには、エンゲージメントスコアの要素ごとに対策を検討していくことが大切です。まずは、利用するサービスのエンゲージメントスコアがどのような要素で構成されているのかを、しっかり理解することから始めましょう。
エンゲージメントスコアの測定方法や評価項目はサービスによってさまざまですが、たとえば以下のような項目があります。
- 仕事内容(やりがい、裁量)
- 自己成長(成長機会、達成感)
- 健康(仕事量、ストレス)
- 人間関係(上司との関係、同僚との関係)
- 理念戦略(経営陣に対する信頼、ビジョンへの共感)
- 環境(ワークライフバランス、職場環境)
管理職のマネジメント力を高める
エンゲージメントスコアを高めるには、現場で働く従業員と経営陣をつなぐ役割を持つ管理職の協力が欠かせません。管理職のマネジメント力を高めて、管理職がエンゲージメントスコアを意識したマネジメントを実践することで、従業員のエンゲージメントを高めることができるでしょう。
エンゲージメントスコアを意識したマネジメントとは、具体的には、定期的にミーティングの機会を設ける、積極的にコミュニケーションを取る、一人ひとりの目標をきちんと管理するなどといった取り組みが挙げられます。
エンゲージメントスコアは定期的に測定する
エンゲージメントスコアの測定は、単発で終わらせるのではなく、PDCAサイクル(計画 → 実行 → 評価 →改善)を回して課題解決につなげていきましょう。定期的にエンゲージメントスコアを測定することで、推移から新たな課題や予兆が見つかることもあります。企業を成長させていくためには、小さな変化を見逃さず、迅速にフォローしていくことが大切です。
また、エンゲージメントスコアの測定には従業員の理解と協力が欠かせません。従業員が「何のためにやっているのか」という不安を抱かないよう、得られたデータをどのように活用しているのかを発信することも忘れないようにしましょう。
インナーコミュニケーションを活性化させる
インナーコミュニケーションとは、企業と従業員が同じ目標やビジョンを共有できるよう、社内に向けてメッセージを発信したり、従業員同士でコミュニケーションを取ったりすることをいいます。
企業規模が大きくなるほど、部署間のコミュニケーションや、経営・管理層と現場とのコミュニケーションは取りづらくなるものです。しかし、だからといって何もしなければ、どんどん志がバラバラになってしまう恐れがあります。そうならないように、経営・管理層から一方的に情報を発信するだけでなく、現場で働く従業員側の意見を受け取れるような仕組みがあるとよいでしょう。
また、従業員同士のコミュニケーションを活性化させるために、研修に「あそび」の要素を入れるのも効果的です。ときには仕事から離れてコミュニケーションを取ることで、従業員同士の相互理解が深まります。その結果、エンゲージメントの土台であるモチベーションアップや、チームビルディングにつながるのです。
エンゲージメントスコアが高い企業の施策事例
コンサル・クラウドサービス、モチベーションマネジメント事業などを展開する株式会社リンクアンドモチベーションは、同社のエンゲージメント調査を実施した企業のなかからエンゲージメントスコアの高い企業を表彰する「ベストモチベーションカンパニーアワード」を、毎年実施しています。
株式会社リンクアンドモチベーションのエンゲージメントスコアは、「組織への期待」「組織への満足」「その一致度合」といった項目から総合的に算出され、AAA~DDの11段階で評価されます。
最後に、過去に同アワードを受賞している企業の従業員エンゲージメントに関する取り組みを紹介します。
参考:Best Motivation Company Award 2023 | Link and Motivation Inc. 株式会社リンクアンドモチベーション
SBCメディカルグループ
SBCメディカルグループホールディングスは、病院経営、専門医療、商品開発、マーケティングなど、医療サービスに関するさまざまな事業を展開している企業です。「ベストモチベーションカンパニーアワード2023」で、大手企業部門を受賞しました。エンゲージメントスコアは67.2。評価は11段階中最高のAAAランクを獲得しています。
SBCメディカルグループでは、以下のような福利厚生を導入し、従業員のエンゲージメント向上を図っています。
- 飲みニケーション
2ヵ月に1回、意見交換やコミュニケーション促進を目的とした食事会を開催しています。食事代は会社が負担しています。 - My Star表彰
職場で最も輝いていた人を、スタッフの投票により決定するという制度です。 - SBC AWARD
年に1回開催されるグループ全体の表彰式です。「永続勤続表彰」「年間優秀スタッフ表彰」などさまざまな部門を用意し、従業員の日頃の努力を評価しています。
参考:福利厚生 | ビューティーオペレーター採用 | SBC(湘南美容クリニック)採用情報
佐竹食品グループ
佐竹食品グループは、地域密着型の総合食料品スーパーマーケットを展開する企業です。「ベストモチベーションカンパニーアワード」では、2018年から2022年までランクインし続けています。
佐竹食品グループでは、以下のような制度・取り組みを実施しています。
- AllA Award
年2回行われる社内の表彰式です。売上やモチベーションの高さが優れた部門・店舗を、独自に定めた基準で表彰しています。 - 年3回の評価制度と賞与
佐竹食品グループでは、4ヵ月ごとに従業員を評価しており、その都度上司からフィードバックも行っています。また、賞与も夏・冬・3月の3回あります。 - レジチェッカーコンクール
レジの正確性とスピード、接客対応を発表する社内コンテストです。3位までに入れば、有名テーマパークや一流ホテルディナーなどでの研修旅行に行くことができます。
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研修の特徴
- チームビルディング効果が高いアクティビティを通して受講者のエンゲージメントを向上させられる
- 誰もが没入できる「あそび」を取り入れた体験型アクティビティで受講者の主体性を引き出す
- 複数回のフィードバックによって学びを定着させる
まとめ
目には見えない従業員のエンゲージメントを数値化することで、企業の課題や、小さな変化・予兆が見つけやすくなります。また、自社の強み・弱みを整理して客観的な視点で他社と比較できるようになるため、より効果的な採用活動が行えるようにもなるでしょう。
エンゲージメントスコアを測定する方法はさまざまありますが、エンゲージメントサーベイもしくはパルスサーベイが用いられることが多いです。それぞれにメリット・デメリットがあり、内容や料金もサービスによって異なりますので、十分比較して自社に合ったものを選びましょう。
「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。