STPDサイクルとは?特徴・活用するときのポイントを解説

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    • PDCA

マネジメントサイクルにはさまざまな種類がありますが、そのなかでも近年注目を集めているのが、「STPDサイクル」です。

本記事では、STPDサイクルとはどのようなフレームワークなのか、PDCAサイクルとOODAループそれぞれとの違い、STPDサイクルのメリット・デメリット、STPDサイクルが向いている場面、企業の活用事例を紹介します

 

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STPDサイクルとは

STPDサイクルとは、マネジメントサイクルの一つで、1980年頃に、当時ソニーの厚木工場長を務めていた小林茂氏により提唱されたものだといわれています

まずは、マネジメントサイクルとは何かを確認しておきましょう。マネジメントサイクルとは、管理者が効果的に担当業務を遂行・管理するための枠組みのことをいいます。広く知られているものとしては、PDCAサイクルやPDSサイクルなどがあります。計画を立ててそれを実行した後で、評価、改善をして再度実行するという、一連の流れを繰り返していく仕組みともいえるでしょう。経営管理や生産管理に用いられているほか、ISO(※)の仕組みにも応用されています。

参考:『「経営学の基本」がすべてわかる本』(著者:土方千代子、椎野裕美子 / 出版社:秀和システム)

ISOとは……国際標準化機構「International Organization for Standardization」の略称です。世界共通の規格(ISO規格)を制定することを主な活動としています。

そして、そのマネジメントサイクルの一つであるSTPDサイクルは、「See(現状を見る)」「Think(どうするべきかを考える)」「Plan(計画する)」「Do(実行する)」の4つのステップを繰り返していくというものです。

では、各ステップを詳しく見ていきましょう。

1.See(現状を見る)

STPDサイクルは、まずは現状をよく見て把握するところから始めます。そのために、実際に現場に足を運んだり、ヒアリングやアンケートを実施したりして、情報を集めます。

このとき、主観が入ったり、先入観にとらわれたりしてしまうと、情報に偏りが出てしまったり、必要な情報が抜けてしまったりする可能性があります。事実のみに目を向けて、客観的に情報を集めることがポイントです。また、この段階では、現状を正しく把握するために、情報の取捨選択はせずに、必要と思われる情報はすべて集めておきましょう。そうすることで、自然と今解決するべき課題が見えてくるはずです。

2.Think(どうするべきかを考える)

次に、「See」で集めた情報から課題を分析し、解決するには何を変える必要があるのかを考えます。具体的には、「現在どのような状態なのか」「そこに至るまでの経緯」「現在の課題と、その原因は何なのか」といった点を、客観的に分析します。

情報をうまく分析できない場合は、そもそも情報が足りていない可能性が考えられます。再度「See」に戻り、改めて情報を集めてみましょう。

3.Plan(計画する)

Think」で現在の課題と、それを解決するために何を変えればよいのかがわかったはずなので、次は、課題解決に向けた具体的な計画を立てていきます

計画を立てる際は、「5W1H」を意識してみてください。そうすることで、具体的で効果的な計画を立てることができるでしょう。

5W1H

  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:誰が
  • What:何を
  • Why:なぜ
  • How:どのように

あわせて、具体的な数値目標も設定するのがおすすめです。数値目標を設定しておくことで、進捗管理や目標の達成度合いの確認も容易に行えるようになります。

4.Do(実行する)

計画や目標を設定できたら、いよいよ実行です。立てた計画に沿って、取り組みを実行していきましょう。進めていくなかで、本来の方向性からズレてくることもありますので、定期的に進捗状況を確認するようにしてください。

そして、ステップとして設けられてはいませんが、計画を実行した後は取り組みの効果を検証しましょう。得られた結果を次につなげて、サイクルを回し続けていくことが大切です。

 

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STPDサイクルとPDCAサイクル

マネジメントサイクルには非常に多くの種類がありますが、日本において最も有名なのは、やはりPDCAサイクルではないでしょうか。PDCAサイクルとはどのようなフレームワークなのか、STPDサイクルとの違いを確認していきましょう。

PDCAサイクルとは

PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4つのステップを回し続けていくというマネジメントサイクルです。管理者だけでなく、個人で業務改善や目標達成に活用することもできます。基本的なビジネススキルの一つとして、新入社員研修にPDCAサイクルのプログラムを組み込んでいる企業も多いのではないでしょうか。

この4つのステップを徐々にレベルアップさせながら、螺旋を描くように回し続けていくと、大きな成果につながりやすくなります。では、各ステップを簡単に紹介していきましょう。

なお、PDCAサイクルについては以下の記事で詳しく紹介しています。

PDCAサイクルとは?具体例や各ステップのポイントをわかりやすく解説

1.Plan(計画)

PDCAサイクルでは、まずは明確な目標を設定します。目標には、定量目標と定性目標があります。定量目標とは数字で示した目標のこと(例:売上を10%向上させる)、定性目標とは状態を言語化した目標のことです(例:マネジメント力を向上させる)。内容によっては、数値で表すのが難しいものもありますが、後で取り組みの評価を行うので、できるだけ定量目標を設定するようにしましょう。

目標が決まったら、それを達成するための具体的な計画を立てます。計画は、取り組みの期間やスケジュールまできちんと設定しておきましょう。

2.Do(実行)

次に、立てた計画に沿って取り組みを実行していきます。このステップでは、できるだけ活動の記録を残しておくことがポイントです。計画通りにできなかったこと、進めるなかで発生した課題やトラブルなどがあれば、それらも記録しておきましょう。

3.Check(評価)

次は、実行したことを評価するステップです。このステップでは、「目標を達成できたか」「成果が得られたか」といった結果ももちろん確認する必要がありますが、それよりも「なぜこの結果になったのか」をという部分を正しく分析することが重要です。

4.Action(改善)

最後に、「Check」の評価に基づいて、どこをどのように改善すべきかを検討します。もし、改善すべき点が多くある場合、次のサイクルですべて改善しようとすると、従業員に負担がかかりすぎてしまうこともあります。優先度の高いものや効果が高いものに絞り、現実的な改善案としましょう。

STPDサイクルとPDCAサイクルの違い

STPDサイクルとPDCAサイクルは、最初のステップが違います

PDCAサイクルは、まずは「Plan(計画)」から始まります。明確な目標を設定して、それをどうすれば達成できるか、時間をかけて計画を立てていきます。そして、実行後は取り組みを評価しますが、計画を実行してから効果が表れるまでに一定の期間を要するケースもあります。そして、評価もじっくり時間をかけて行うので、1サイクル回すのに時間がかかるのです。そのためPDCAサイクルは、どちらかというと中長期的な目標達成に向いているマネジメントサイクルといえるでしょう。

これに対して、STPDサイクルは、「See(現状を見る)」から始まります。現状に対して何が必要かを考え、計画、実行していくため、PDCAサイクルよりもスピーディーに回せるといわれています。

また、PDCAサイクルはトップダウンになりやすいといえますが、STPDサイクルはまず現状把握から始めるため、現場の意見を反映しやすいという特徴もあります。そのため、特に現場の改善に向いています。

STPDサイクルとOODAループ

最近は、OODA(ウーダ)ループという意思決定のフレームワークが注目を集めており、ビジネスシーンでも活用されるようになっています。OODAループとはどのようなフレームワークなのか、STPDサイクルとの違いを確認していきましょう。

OODAループとは

OODAループは、アメリカ空軍のジョン・ボイド氏により提唱された、意思決定のフレームワークです。「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」という4つのステップがあります。

現代は、VUCA時代と呼ばれるほど変化の激しい時代になっています。変化に対応していくためには、管理職やリーダーの素早い判断・決断が必要です。そのため、迅速な意思決定を可能にするOODAループが注目されるようになっています。では、各ステップを簡単に紹介していきます。

なお、OODAループについては以下の記事で詳しく紹介しています。

PDCAサイクルとOODAループとは?2つの違い、メリット・デメリットを解説

Observe(観察)

周りの状況をよく観察して、生データを集めます。生データとは、業務内容によっても異なりますが、たとえば客層、顧客行動、業界のトレンド、新技術・新商品の情報などです。

Orient(状況判断)

集めた生データから、現在どのような状況なのかを判断します。このステップは、「仮説構築」とも呼ばれています。生データから仮説を立て、それをもとに判断を下します。この仮説により、何をするか(行動)が変わってくるため、OODAループでは「Orient」が最も重要なステップとされています。

Decide(意思決定)

Orient」での判断に基づいて、具体的に何をするのかを決めます。計画もこのステップで策定しますが、OODAループは迅速な判断と行動を重視するフレームワークなので、あまり時間をかけすぎないようにしましょう。OODAループを活用する際は、できるだけスピーディーに回すことを意識してみてください。

Act(行動)

何をするのかが決まったら、計画に沿って実行していきます。実行した後は、その結果をまた観察し、次のループにつなげていきましょう。

STPDサイクルとOODAループの違い

STPDサイクルは、「Think」で情報が足りないようであれば再度「See」に戻ることもありますが、基本的にはアルファベット順に進めていきますこれに対してOODAループは、それぞれのステップを同時に進めたり、戻ったりしながらマネジメントしていくものとされています

また、OODAループは定性的なミッションを達成することが目的であり、より迅速に判断・行動することを重要視しているため、じっくり計画を練るというステップがありません。これに対してSTPDサイクルは、集めたデータから課題や問題を洗い出し、それを解決または改善することを目指すものです。計画も、一つのステップとして設けられています。回転速度はPDCAサイクルよりは早いですが、OODAループほどのスピードで回すのは難しいのではないでしょうか。

参考:PDCAサイクルに代わる戦略的手順に関する考察 – 国立研究開発法人 科学技術振興機構(PDF)

STPDサイクルのメリット・デメリット

STPDサイクルと、ビジネスのさまざまなシーンで活用されているPDCAサイクル、OODAループとの違いを確認できたところで、STPDサイクルのメリット・デメリットを整理してみましょう。

メリット

ビジネスにおける定番のフレームワークといえばPDCAサイクルですが、STPDサイクルは、そのPDCAサイクルよりも素早く回せるという点が、一つのメリットといえるでしょう。ビジネス環境は目まぐるしく変化し続けており、顧客のニーズや価値観も多様化しています。ビジネスにスピードが求められる時代となっているため、STPDサイクルはPDCAサイクルに代わるフレームワークとしても注目されています。

マネジメントサイクルは、回転速度を上げるほど効果が発揮されるともいわれています。もちろん、PDCAサイクルが適しているケースもありますが、「PDCAサイクルを回しているけれど、なかなか改善されない」という課題があるなら、STPDサイクルに変えてみてもよいかもしれません。

また、STPDサイクルは現状把握から始めるので、リスク回避がしやすい、変化に対応しやすい、現場の意見を計画に取り入れやすいなどの特徴があります。これらも、STPDサイクルのメリットといえるでしょう。

デメリット

STPDサイクルには、PDCAサイクルの「Check(評価)」のように、実行したことを評価するステップがありません。しかし、より良い取り組みを実行するためには、きちんと効果を検証し、何が良かったのか・良くなかったのかを把握する必要があります。評価のステップがないため、これを忘れてしまいやすいという点は、STPDサイクルのデメリットといえます。STPDサイクルを活用する際は、振り返りの時間を意識的に設けるようにしましょう。

ただ、効果検証に時間をかけすぎると、STPDサイクルの「素早く回せる」というメリットがなくなってしまいます。そのため、「Do(実行する)」と次サイクルの「See(現状を見る)」は、同時に行うことを意識してみてください

また、STPDサイクルに限ったことではありませんが、フレームワークを用いると、それを回すこと自体が目的になってしまいやすいといえます。どのようなフレームワークを用いる場合でも、そのプロセスに縛られすぎないということも大切です。状況に応じて、柔軟に対応することを心がけましょう。

STPDサイクルが向いている場面

ここまでに見てきた特徴から、STPDサイクルは、特に現場の改善に効果的なマネジメントサイクルであるといえます。そのほかにも、何か新しいことを始めるときや、プロジェクトの初期段階にも向いています

新しいこと・初めてのことに取り組む際は、情報が不足していることも多いでしょう。課題やリスクを十分に把握できていない状態で計画を立てても、精度の高い計画は策定できません。STPDサイクルを活用し、まず客観的な情報を集めるところから始めることで、現実的で効果的な計画を立てることができるでしょう。

STPDサイクルの事例

最後に、STPDサイクルの活用事例を紹介します。

写真フイルムで培った技術を生かしたさまざまな事業を行っている富士フイルムグループには、「FF-メソッド」という、共通の仕事の基盤があります。これに、STPDサイクルが用いられています。

本記事で紹介した一般的なSTPDサイクルとは少し違い、「FF-メソッド」は、富士フイルムグループ独自のマネジメントサイクルとなっています。アルファベットはSTPD4つで、それぞれが意味するものも「See」「Think」「Plan」「Do」ですが、目的と目標の設定や達成シナリオの策定、反省・総括などが加わり、全部で7つのステップがあります。

現場マネージャーへのヒアリングや、経営トップの考え方をもとに、この「FF-メソッド」はまとめられました。富士フイルムグループでは、「FF-メソッド」をすべての仕事において重要な考え方としており、従業員にはこれを身につけてもらうための教育を行って、浸透させているそうです。

参考:富士フイルムの 人材育成・研修体系 – 厚生労働省(PDF)

思考のフレームワークを身につける研修

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

マネジメントサイクルの一つ、STPDサイクルを紹介しました。STPDサイクルは、まず現状を把握するところから始まるのが大きな特徴です。PDCAサイクルよりもコンパクトに、素早く回していくことができるため、中長期的な目標達成よりも、現場の改善や新しいことを始めるとき、プロジェクトの初期段階などに向いています。また、現状把握から始まるため、現場の声を取り入れやすいこともメリットです。

STPDサイクルには効果検証のステップがありませんが、効果を確かめないと意味のない取り組みを繰り返すだけになってしまうかもしれません。意識的に振り返りの時間を設け、改善しながら回し続けていくことが大切です。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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