PDCAサイクルとOODAループとは?2つの違い、メリット・デメリットを解説
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近年、OODAループという考え方が注目を集めています。PDCAサイクルに代わる新たなフレームワークとして紹介されることが多いOODAループですが、PDCAサイクルをOODAループに「置き換える」のではなく、2つの特徴を理解して「使い分ける」ことで、大きな成果が生まれやすくなります。
本記事では、PDCAサイクルとOODAループとはどんなフレームワークなのか、2つの特徴の違いと、メリット・デメリット、使い分け方、さらに近年注目されているその他のフレームワークについても紹介します。
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PDCAサイクルとは
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)という一連の流れを繰り返し、業務の改善や効率化を図る考え方です。この4つのステップをただ繰り返すのではなく、改善を重ねて徐々にレベルアップしていくことで、大きな成果を上げることができます。「円」ではなく「螺旋」のイメージで回していくことがポイントです。
PDCAサイクルを回し続けることで、改善のノウハウも社内に蓄積できます。PDCAサイクルを回すなかでうまくいったことを標準化すれば、企業をさらに成長させることができるでしょう。
PDCAサイクルは、いつ誰が提唱したものかは分かっていません。しかし、アメリカの統計学者のW・エドワーズ・デミング氏が提唱した「デミング・サイクル」という品質管理の考え方がもとになっているといわれています。これが日本独自に発展し、今ではPDCAサイクルは、品質管理だけでなく生産管理、経営管理などさまざまな場面で用いられるようになっています。
参考:音楽教育における PDCAサイクル活用の視点と可能性(1/2) – 名古屋芸術大学(PDF)
PDCAの概要については、以下の記事で網羅的に紹介しています。
PDCAサイクルとは?具体例や各ステップのポイントをわかりやすく解説
PDCAサイクル実践のポイント
PDCAの各ステップでは、具体的にどんなことを行うのでしょうか。ポイントとともに詳しく見てみましょう。
Plan(計画)
Plan(計画)では、明確な目標を設定して、その目標を達成するための計画を立てます。
目標には、定量目標と定性目標があります。定量目標とは「売り上げ10%向上」のように数値で表した目標のことを、定性目標とは「社内コミュニケーションを活性化させる」のように状態を言葉で表した目標のことをいいます。定性目標だけでは、Check(評価)の段階で評価を行うのが難しくなるので、できるだけ定量目標を設定するのがポイントです。
【目標の例】
- (営業)前期よりも売り上げを10%アップさせる。
- (事務)先月よりも事務コストを15%削減する。
- (マーケティング)半年以内にSNSのフォロワーを1000人増やす。
計画段階のポイントは、取り組み期間とスケジュールを明確にすることです。計画を立てる基本的な手順は、以下のとおりです。
- やるべきことを洗い出す
- どのような順序で実施するのが最適かを考える
- 各項目にどれくらい時間がかかるかを見積もる
Plan(計画)のステップは、「何のために取り組んでいるのか」をしっかりと認識しながら進めていきましょう。
Do(実行)
Do(実行)では、Plan(計画)で立てた計画に沿って取り組み内容を実施していきます。
このステップでのポイントは、できるだけ活動記録を残しておくことです。活動記録があると、次のCheck(評価)が進めやすくなります。計画どおりにいかなかったことや、計画を実施するなかで見つかった新たな課題、うまくいったこと、良かったことなども記録しておきましょう。
Check(評価)
Check(評価)では、実施した取り組みの結果を評価します。Plan(計画)で設定した目標が達成できたかどうかよりも、「どうしてその結果になったのか」を正しく分析することがポイントです。
具体的には、以下のような点をしっかり分析します。
- 目標はどれくらい達成できたか、どのような成果があったのか
→それは計画を実施したことによる結果なのか - 計画どおりに取り組み内容を実施できたか
→できなかったのであれば、それはなぜか(目標は妥当だったか、テーマは適切だったか、実施項目に不足はなかったかなど) - 計画に無理はなかったか
→無理があった場合、どこにどんな無理がかかっていたか
Action(改善)
Action(改善)では、評価に基づいて改善案を検討します。
達成できなかったことやうまくいかなかったことを、すべて次のサイクルで一気に実施しようとすると、社員の負担になってしまいます。改善案が複数ある場合は優先順位をつけ、優先度の高いもの、または効果の高いものから実施していくのがポイントです。また、追加で「何かをする」のではなく、「何かをやめる」「何かを変える」という発想で改善案を考えてみるのもよいでしょう。
目標を達成できた、うまくいったという場合は、「さらに良くするためにはどうすればよいか」を考え、PDCAサイクルを回し続けます。今回うまくいったことを次のサイクルで全社に広げて標準化を目指せば、さらに大きな成果が期待できるでしょう。
参考:「ざっくりPDCA」(著者:株式会社HRインスティテュート / 出版社:秀和システム)
OODAループとは
OODA(ウーダ)ループとは、アメリカ空軍のジョン・ボイド氏により提唱された意思決定の考え方で、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字を取ったものです。
- Observe(観察)……状況をよく観察して生データを集める
- Orient(状況判断)……生データからどういう状況なのかを判断する
- Decide(意思決定)……状況判断に基づいてやるべきことを決める
- Act(行動)……決めたことを実施する
この4つのステップを、O→O→D→Aの順番に取り組んでいくのではなく、各ステップを同時並行的に、ときには戻りながら進めていくのがOODAループです。また、OODAループには、目標や計画を立てる段階がありません。PDCAサイクルよりも高速で回せるため、変化の速い環境にも適応しやすいというのも特徴です。
OODAループ実践のポイント
OODAループを実践する際のポイントは、以下の3つです。
- 状況をよく観察する
- これまでを振り返る
- ループを高速で回す
1つずつ詳しく見てみましょう。
状況をよく観察する
Observe(観察)のステップでは、生のデータを集めて状況をよく観察をしましょう。生データとは、たとえば客層や顧客の行動の変化、業界のトレンド、新技術や新商品の情報などです。生データを集め、状況を正しく把握しなければ、行き当たりばったりの施策になってしまいます。
これまでを振り返る
Orient(状況判断)は、「仮説構築」ともいわれる段階です。Orient(状況判断)のステップでは、集めた生データから「なぜこのような状況になっているのか」を考え、仮説を立てます。
そして、これまでに実施してきた取り組みや判断を振り返り、間違った点がなかったかを考えてみましょう。しっかり振り返りを行うことで、現状を打破する糸口が見つかるはずです。
どのような仮説を立ててどのような判断を下すかによって、最終的な行動も変わってきます。そのためOrient(状況判断)は、OODAループのなかで最も重要なステップだといわれています。
ループを高速で回す
市場の状況やトレンドなどは速いスピードで変化しています。環境の変化に対応していくために、OODAループはできるだけ高速で回しましょう。特に、計画に時間をかけすぎないようにすることがポイントです。
OODAループは、実施した結果を観察し、修正して、どんどん改善していくものです。短い周期で回していくことで、成果を生み出しやすくなります。
OODAループの取り組みイメージ
ここまでOODAループとは何か、実践のポイントを紹介してきましたが、具体的にどのようにビジネスに活用するのか、化粧品メーカーの例を見てみましょう。
Observe(観察) | 商品アンケートやインターネットの口コミ、SNSなどを見ると、10代・20代の女性向けに開発した化粧品が、思いのほか30代・40代の女性にヒットしているようだ。 |
Orient(状況判断) | 10代・20代の女性にヒットしている他社の類似品と比較すると、自社の商品は価格がやや割高であった。「10代・20代の女性にとっては手が出にくい価格になっているのではないか」という仮説を立てる。 |
Decide(意思決定) | 品質に自信のある商品なので、価格は下げたくない。ターゲットを30代・40代の女性に変更することを決める。 (実施すること)
|
Act(行動) | 前のステップで決めたことを実行する。 |
PDCAサイクルとOODAループの違い
似ているように見えるPDCAサイクルとOODAループですが、全く異なる特徴を持っています。
まずは、目的とスピードの違いです。PDCAサイクルの目的は、Plan(計画)のステップで設定した定量的な目標を達成すること。そのためにじっくり時間をかけて計画してから実行に移し、その後に評価と改善を行います。一方OODAループは、定性的なミッションを達成することを目的としています。そのためにループを高速で回し、改善を繰り返していくのです。
次に、サイクルとループの違いです。英単語のサイクル(cycle)には「循環させる」という意味が、ループ(loop)には「輪状にする」という意味があります。PDCAサイクルは、P→D→C→Aの順で一方向に回していくものですが、OODAループは、複数のステップを同時に進めたり、前の段階に戻ったりしながら改善を図ります。
また、PDCAサイクルは組織全体の改革や大規模なプロジェクトにも適していますが、OODAループはどちらかというと、スモールビジネスやスタートアップ企業など小規模な組織を対象にしているといえるでしょう。
参考:PDCAサイクルに代わる戦略的手順に関する考察 – 国立研究開発法人 科学技術振興機構(PDF)
メリット・デメリットを比較
前項でお伝えしたように、PDCAサイクルとOODAループには異なる特徴があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。活用しやすい点、注意する点を理解し、組織やプロジェクトの規模、業務内容などに応じて上手に使い分けましょう。メリット・デメリットを比較すると、このようになります。
メリット | デメリット | |
PDCAサイクル |
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OODAループ |
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PCDAサイクルとOODAループの使い分け
PDCAサイクルとOODAループは、目的や状況に応じて使い分けることで、大きな成果が生まれやすくなります。ここからは、PDCAサイクルとOODAループそれぞれが適している場面を紹介します。
PCDAサイクルが適している場面
PDCAサイクルが適しているのは、達成すべきことが明確で、それが中長期的なものであるときです。特に、外部環境に左右されない安定した状況であるときに高い効果を発揮します。
たとえば、業務効率化、品質向上、採用力強化、社内制度の改革、顧客満足度の向上などです。
OODAループが適している場面
OODAループが適しているのは、新たなアイデアやイノベーションを求めているときや、早急に解決したい課題があるとき、プロジェクトや組織の規模が小さいときなどです。特に、外部環境に左右されやすい状況にあるときは、PDCAサイクルよりもOODAループのほうが変化に対応しやすいといえます。
組織全体はPDCAサイクルに基づくマネジメントを行っている場合であっても、製品開発のプロセスにOODAループを取り入れることで、現場の知恵や工夫を素早く製品に反映できるようになるでしょう。
その他の業務改善フレームワーク
PDCAサイクルやOODAループ以外にも、近年注目を集めているフレームワークがあります。最後に、「STPDサイクル」と「PDRサイクル」というフレームワークを紹介します。
STPDサイクル
STPDサイクルとは、以下の4つのステップを繰り返して業務の改善や効率化を図るフレームワークです。
- See (現状を見る)
現場調査やアンケート調査などを実施して情報を集め、現状を正しく把握する - Think (考える)
集めた情報を分析し、現在どのような状況なのか、なぜそうなったのか、課題と原因は何なのかを考える - Plan (計画する)
課題を解決するための目標と計画を立てる - Do (実行する)
計画に沿って取り組み内容を実行する
英単語は違いますが、STPDサイクルもOODAループと同じく「データを集めて状況を観察する」ことから始まります。そのため、計画から始まるPDCAサイクルよりも高速で回せるというのが特徴です。
OODAループと違うところは、計画をしっかり立ててから実行に移すという点です。STPDサイクルは、現状と目標のギャップをしっかり把握してから計画を立てるため、より管理職向けのフレームワークであるともいわれています。
PDRサイクル
PDRサイクルとは、以下の3つのステップを繰り返して業務の改善や効率化を図るフレームワークです。ハーバードビジネススクールのリンダ・ヒル教授により提唱されました。
- Prep(準備)
これから何をするのか、その理由や目的を考える - Do(実行)
実際に行動に移す - Review(評価)
実施した結果を振り返る
PDCAサイクルでは「P」はPlan(計画)であり、具体的な目標と計画を立てるステップでした。これに対してPDRサイクルの「P」はPrep(準備)。いきなり実行に向けた準備から始まります。ステップの数も1つ少ないので、PDCAサイクルよりも高速で回せるというのが特徴です。
また、PDCAサイクルにもPDRサイクルにも「評価」のステップがありますが、PDCAサイクルではCheck、PDRサイクルではReviewとなっています。PDCAサイクルのCheckは、取り組みを実施した人たちで結果を振り返り、どんな成果があったか、目標や計画は妥当だったかなどを評価します。一方PDRサイクルのReviewは、取り組みを実施した人以外にも結果を見てもらい、客観的に評価してもらうことを意味しています。
企業のPDCAサイクル導入事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。
企業のPDCAサイクル導入事例8選!業績アップや効率化につなげよう
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まとめ
PDCAサイクルとOODAループは、似ているように見えますが全く異なるフレームワークです。OODAループやSTPDサイクル、PDRサイクルは、PDCAサイクルに代わる新たなフレームワークとして紹介されることが多いですが、「置き換える」のではなく、それぞれの特徴を知り目的や状況に応じて「使い分ける」ことで、成果が生まれやすくなります。
また、どのフレームワークも一度きりで終わらせてしまわずに、徐々にレベルを上げながら回し続けることが大切です。目標や計画を達成できた、うまくいったという場合も、より良くするためにはどうすればよいかを考え、改善を続けていきましょう。そうすることで、社内に改善のノウハウも蓄積できます。
それぞれのフレームワークの特徴、メリット・デメリットを理解して、上手に業務のなかに取り入れてみてください。
参考:PDCAサイクルとOODAループ – 厚生労働省(PDF)
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この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。