研修の目標を設定する方法・ポイントを解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

ビジネスにおいては、目標を設定することが非常に重要です。明確な目標を設定することで、やるべきことを理解しやすくなり、モチベーションも向上します。その結果、成果も生まれやすくなるでしょう。これは、研修においても同様です。効果的な研修を実施するために、研修担当者は、まず明確な目標を設定する必要があります。

本記事では、研修における「目標」とはどのようなものか、目標設定が重要な理由、目標設定の方法とポイントについて解説します

 

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研修における「目標」とは?

研修を実施するためには、明確な目標を設定することが大切です。また、目標を設定するためには、研修の目的を決めることも欠かせません。これらが曖昧なまま研修を実施しても、高い効果は期待できず、かけたコストが無駄になってしまう可能性があります。まずは、研修において重要な「目標」と「目的」の違いを確認しておきましょう。

「目標」と「目的」の違い

まず、研修の「目的」とは、何のために研修を実施するのかを示したものです。研修を実施することでどのような成果を得たいのか、どのような課題を解決したいのかというような、研修を実施する理由が目的になります。

そして、研修の「目標」とは、その目的を実現するために、研修後受講者にどのような変化を求めるのかを示したものです。研修は行動変容につながるものであることが重要ですので、目標は具体的な行動を設定するのが望ましいでしょう。

たとえば、新入社員研修であれば、「社会人としての基本的なスキルやビジネスマナーを身につける」ことを目的に行われることが多いです。これらを身につけた人はどのような行動をとるだろうかと考えると、「漏れ・遅延なく報告・連絡・相談ができる」「ビジネスマナーに沿ってメールを書き、送信できる」などを、目標として設定することができます。

 

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研修において目標設定が重要な理由

では、なぜ効果的な研修を実施するためには目標設定が欠かせないのでしょうか。ここからは、その理由を詳しく解説していきます。

適切なカリキュラムを作ることができる

まず研修の目標を設定しなければ、カリキュラムを組み立てることができませんカリキュラムとは、どのような内容を教えるのか、何回に分けて研修を実施するのかなどをまとめた、研修の全体計画のことをいいます。そして、それをどのように実施していくのかをカリキュラムを基に詳細に示したものがプログラムです。つまり、まず目標を立てないと、カリキュラムもプログラムも決められないのです。

目標が曖昧なままカリキュラムを作り始めてしまうと、研修全体としてまとまりがなくなってしまう可能性が高いでしょう。そうなると、高い効果は期待できず、かけたコストも無駄になってしまいます。初めに明確な目標を設定することで、無理・無駄のないカリキュラムを作ることができます。

受講者のモチベーション向上につながる

研修の目標は、研修の目的を具体化したものともいえます。これを研修前に受講者に共有しておくことで、受講者が研修の目的や、自分が参加する意味を理解しやすくなり、研修に対して意欲的になってくれることが期待できます

逆に、研修の目的や目標を明確に示さなければ、「やらされ感」が出てしまう可能性が高くなります。研修の内容にどれだけこだわったとしても、受講者のモチベーションが低くては、得られるはずの成果も得られません。研修の目的と目標を設定したら、あらかじめ受講者に共有してモチベーションアップを図ることも、研修の効果を高めるための重要なポイントです。

行動変容を促すことができる

先ほどもお伝えしたとおり、研修は行動変容につながるものであることが重要です行動変容とは、研修を実施した後に行動が変わって、それを習慣的にできるようになることを意味します。

研修の目的だけを示されても、受講者は、目的達成のために具体的に何をすればよいのかがわかりません。研修後に行動を変えてもらうために、目標は具体的な行動で設定し、受講者に示す必要があるのです。そうすることで、受講者は目的達成のために自分がやるべきこと・求められていることを理解できるようになり、研修後スムーズに行動に移せるようになります。

また、研修では受講者自身にも目標を設定してもらいますが、研修自体の目的・目標を示さないと、受講者は何を自分の目標にすればよいのか迷ってしまいますので、まずはこれらをきちんと示すことが大切です。

研修の目標を設定する方法

では、研修の目標はどのように決めればよいのでしょうか。研修の目標を設定する方法は、大きく分けて、トップダウン型のアプローチと、ボトムアップ型のアプローチの2つがあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

トップダウン型のアプローチで考える

トップダウン型のアプローチは、企業の経営目標から考える方法です経営目標を達成するために立てられた経営戦略や人材育成計画などに基づいて、経営層が決定した方針に沿って、具体的な研修を計画していきます

たとえば、企業として「DX(※)を推進していく」方針なら、「デジタル人材の育成」に取り組む必要があります。これを研修の目的として、現状とのギャップを埋めるためにはどのような知識・スキルを習得してもらう必要があるのかを考えていくのが、トップダウン型のアプローチです。そして、その研修後に受講者に求める変化や行動を、目標に設定することができます。

DXとは……デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、データやデジタル技術を活用して、企業の競争力を高めていくことです。ただデータ化・デジタル化により業務を効率化するだけでなく、新たな価値を生み出すことを目指す取り組みを指します。

参考:DXに関する 経済産業省の施策紹介|経済産業省(PDF)

カークパトリックモデルとは

目標を設定する際は、カークパトリックモデルも活用してみましょう。カークパトリックモデルとは、1959年に、アメリカの経営学者であるドナルド・カークパトリック氏により提唱された、教育の効果測定の枠組みです。カークパトリックモデルでは、以下の4段階に分けて教育の効果を測定していきます。

レベル1:反応(Reaction

研修終了直後に、受講者の研修そのものに対する満足度を測定する。

(測定方法:受講者に対するアンケート、ヒアリング など)

レベル2:学習(Learning

研修終了当日から数日後に、受講者の研修内容に対する理解度を測定する。

(測定方法:研修内容に関するテスト、レポート、ロールプレイング など)

レベル3:行動(Behavior

研修を実施した後一定期間が過ぎたタイミングで、受講者の行動変容を測定する。

(測定方法:受講者本人または上司へのインタビュー、アンケート など)

レベル4:結果(Results

研修を実施した後一定期間が過ぎたタイミングで、研修が組織にもたらした成果を測定する。

(測定方法:研修目標にかかわる指標やROI指標の変化を見る)

このように、受講者の満足度や理解度、行動変容だけでなく、費用対効果を含む組織への影響の測定まで行うというのが、カークパトリックモデルです。日本においても、コストを抑えながら効果的な研修を実施するためのツールとして、活用されるようになってきています。

カークパトリックモデルは効果測定のためのツールですが、目標設定にも役立ちます。簡単にいうと、レベル1は「当事者意識を持って研修に取り組めたか」、レベル2は「研修内容を理解できたか」、レベル3は「業務に活かせるようになったか」、レベル4は「研修により何か成果が得られたか」ということを表しています。そのため、成果から逆算していくと、目標や必要な知識・スキルも定義しやすくなるのです。

まずは「どのような成果(レベル4)を望むか?」を定義し、「成果(レベル4)を得るためにはどのような行動(レベル3)が必要か?」と考えると、目標が見えてくるでしょう。そして次は、「その行動(レベル3)ができるようになるには、どのような知識・スキル(レベル2)が必要か?」と考え、それを習得してもらうための研修を設計していきます。

なお、カークパトリックモデルについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:カークパトリックモデルとは?効果の測定方法やポイントをわかりやすく解説

ボトムアップ型のアプローチで考える

ボトムアップ型のアプローチは、現場の課題から考える方法です売上実績などのデータや、社員や顧客、取引先へのヒアリング、アンケートの結果などから必要な研修を考え、経営層に提案します

たとえば、現場から「自社は外国人採用を積極的に行っているが、既存社員とうまくコミュニケーションがとれていないようだ」という声が上がったとします。多くの場合、外国人社員を受け入れる際に、外国人社員と既存社員それぞれに研修を実施しているはずです。それでもコミュニケーションがうまくいっていないのなら、過去に実施した研修の内容を見直し、改めて実施するべきかもしれません。もちろん、研修がベストな方法とは限らないので、課題をしっかり分析して、さまざまな方法を検討しましょう。

現代は、VUCA時代と呼ばれるほど先が読めない時代となっており、現場でもさまざま変化が起きています。ボトムアップで現場の意見を取り入れ、現場のニーズに沿った研修を実施していくことは、変化の激しい時代に対応するためにも重要といえるでしょう。

研修の目標を設定するときのポイント

最後に、研修の目標を設定するときのポイントを紹介します。

目標は明確に設定する

冒頭でもお伝えしたとおり、目標は明確に設定することが大切です。曖昧だと、せっかく研修を実施しても高い効果は期待できないでしょう。では、明確な目標とはどのような目標を指すのでしょうか。

明確な目標に必要な3つの要素

e-ラーニングが普及し始めた2000年頃から、日本においても「インストラクショナルデザイン」という考え方が注目されるようになってきました。インストラクショナルデザインとは、教育活動の効果・効率・魅力を高める手法を体系的にまとめたモデルや理論のことです。

このインストラクショナルデザインでは、学習目標を明確にするには、目標行動・評価条件・合格基準の3つの要素が必要とされてきました。研修の目標を設定する際は、これらの要素を満たすことを意識してみましょう。

目標行動

目標は、「受講者に求める行動」を設定します。「〇〇を理解する」のような目標では、どのように評価すればよいのかわからないためです。行動を示すことで、受講者も「自分が何をすべきか」を理解しやすくなります。

評価条件

目標行動を評価する際の条件や制限を示します。たとえば、「チームで協力して」「フレームワークを用いて」「会議の際は」などです。

合格基準

どの程度目標に近づけたら合格なのかという基準を示します。たとえば、「〇割正解で」「〇分以内に」「誤差〇%以内で」などです。

参考:解説論文_インストラクショナルデザインー学びの「効果・効率・魅力」の向上を目指した技法ー(鈴木克明)- J-Stage(PDF)

なお、インストラクショナルデザインとは何か、代表的なモデルや理論は、以下の記事でも解説しています。

関連記事:インストラクショナルデザインとは?代表的なモデルや理論を解説

SMARTの法則も活用してみる

研修の目標を設定するときは、目標設定のフレームワーク、「SMARTの法則」も活用してみましょう。SMARTの各アルファベットの表現・意味は資料によってさまざまですが、現在は、以下の5つで紹介されることが多いです。

Specific(具体的である)

目標の内容が具体的で、どのような状態になれば「達成」なのかがわかる。

Measurable(測定できる)

目標の達成度合いを定量的に評価できる。

Achievable(達成できる)

現実的に達成することが可能な目標である。

Relevant(関連性のある)

設定した目標と、自社の事業や課題、または個人の目標との間に関連性がある。

Time-bound(期限がある)

目標に明確な達成期限が設定されている。

SMART 5つの要素をすべて満たさなければならないわけではありませんが、これを意識することで、明確で効果的な目標を設定できるでしょう。

なお、「SMARTの法則」については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:SMARTの法則とは?目標設定の方法や活用例・ポイントを解説

定量・定性の両面から考える

目標には、定量目標と定性目標の2種類があります。定量目標とは、「新規契約を10件獲得する」のように、数値で示した目標のことです。そして、定性目標とは、「チームワークを強化する」のように、目指す状態を言葉で表した目標のことをいいます。

研修を実施した後は、目標の達成度合いを確かめるために、効果を測定する必要があります。効果を測定することを考えると、研修の目標は、できるだけ定量目標とするのが望ましいです。しかし、定量目標にこだわりすぎると、数値化するのが難しいものを見落としてしまったり、受講者が「目標の数値さえ達成できればよい」という意識を持ってしまったりする可能性もあります。効果的な研修を実施するために、目標は定量・定性の両面から考えるようにしましょう。

過去に実施した研修の成果も参考にする

過去に同様の研修を実施しているのであれば、その研修後に得られた成果も参考にしてみましょう。研修によっては意図していなかった成果が生まれることもありますので、過去にその研修を受けた社員にヒアリングをしてみるのもおすすめです。ボトムアップで現場の意見や状況を把握し、それらを研修の目標や内容に反映させることで、より現場のニーズに沿った研修が実施できるようになるでしょう。

目標は数を絞る

先ほど紹介した「SMARTの法則」の要素の1つに、「Achievable(達成できる)」があります。この要素を満たすためには、受講者の能力に対して高すぎない目標にするということはもちろん、目標の数を絞ることも重要です。目標が多すぎると、それだけ内容も詰め込まなくてはいけなくなります。すると、受講者のモチベーションや、研修の質も下がってしまうかもしれません。

研修の目標を設定する際は、まずは目標の候補をすべて書き出し、優先順位をつけて、現実的な数に絞り込んでいきましょう。優先順位は、研修の対象者によって変わってきますので、対象者を意識することも忘れないようにしてください。たとえば新入社員研修を実施する場合、対象が新卒採用で入社した社員なら、基本的なマナーやマインドセットを優先すべきですが、中途採用で入社した社員なら、そういった要素はすでに身についているはずですので、即戦力となるための目標のほうが優先度は高くなります。

まとめ

研修の目標とは、研修後受講者に望む変化を示したものです。明確な目標を設定することで、適切なカリキュラムが組めるようになり、受講者のモチベーションも高められるでしょう。研修後に求める行動を具体的に示すことで、行動変容も実現しやすくなります。

目標設定の際は、本記事で紹介した、インストラクショナルデザインにおける目標を明確にするための3つの要素や、「SMRATの法則」も活用してみてください。

 

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研修のノウハウに関しては、以下の記事にまとめて記載しています。

関連記事:研修とは?目的・目標設定・フロー・実践方法・ポイントを解説

この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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