企業のPDCAサイクル導入事例8選!業績アップや効率化につなげよう

2023.09.29
  • フレームワーク
    • PDCA

PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4ステップを繰り返し実施して、業務の改善や効率化を図るフレームワークです。

本記事では、まずPDCAサイクルの基本的な流れを説明し、実際にPDCAサイクルを導入している企業の事例と、厚生労働省によるモデル事業の取り組み事例を紹介します

 

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PDCAサイクルとは

PDCAサイクルとは、業務改善や効率化のためのフレームワークです。以下の4つのステップを回し続けて成果につなげていきます。

  1. Plan(計画)……目標を設定し計画を立てる
  2. Do(実行)……計画通りに実行する
  3. Check(評価)……実施した取り組みの結果を評価する
  4. Action(改善)……改善案を検討して次の計画につなげる

この4つのステップを、ただ繰り返すのではなく、螺旋状に徐々にレベルアップさせながら回すことで、大きな成果が生まれやすくなります。PDCAサイクルを回し続けることで、改善のノウハウの蓄積も期待できるでしょう。

PDCAサイクルの企業事例6選

ここからは、実際にPDCAサイクルを導入している企業の事例を紹介します。

1.コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、清涼飲料水とアルコール飲料の製造・加工および販売事業を行っています。

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、次世代リーダーを育成するための企業内大学「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン」を2020年7月に設立しました。コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社が求めるリーダーとは、“変革を強力に推進するリーダー”です。「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン」では、変革リーダーに必要とされる5つのリーダーシップケイパビリティーズ(能力)を設定し、これを受講者に習得してもらうために、PDCAサイクルを回しています。

【リーダーシップケイパビリティーズ】

  1. イノベーション
  2. 戦略的思考
  3. ピープルマネジメント
  4. エフェクティブコミュニケーション
  5. クローズマインドセット

受講者には、まずはこの5つのリーダーシップケイパビリティーズを事前に評価したうえでプログラムを受講してもらいます。そして受講後に再度評価をして、受講前後の評価を比較してPDCAサイクルを回すことで、知見とマインドセット、経験を得てもらうという仕組みになっています。

プログラムは、階層ごとに3つに分かれています。研修期間は部門長クラスで4ヵ月、所属長(課長など)で12ヵ月、一般職で11ヵ月です。

「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン」では、年間100名以上の次世代リーダーを輩出しています。

参考:キャリア開発・研修|キャリア採用サイト|コカ・コーラ ボトラーズジャパン

2任天堂株式会社

任天堂株式会社は、ゲーム機器の製造・販売事業を行っている企業です。

任天堂株式会社(日本)では、オフィスにおける省エネルギー活動や資源の有効活動、製品ライフサイクル全体のCO2排出量削減、省資源化など、さまざまな側面から環境負荷低減に取り組んでいます。この環境活動を組織が一体となって推進していくために、2011年9月に環境委員会を設置しました。そして、ISO14001(※)規格に基づく仕組みを導入し、環境方針と環境目標を設定して、PDCAサイクルを回して継続的な改善に取り組んでいます。

  1. Plan……環境目標の設定
  2. Do……環境課題の改善活動、節電、製品に関する環境配慮
  3. Check……外部監査、遵守評価、内部環境監査、進捗確認
  4. Action……経営者によるマネジメントレビュー、次年度の計画の策定

参考:環境:さまざまな側面で環境負荷低減に取り組みます。|CSR情報|任天堂

※ISO14001とは……スイスに本部を置く国際標準化機構(International Organization for Standardization)が制定した環境マネジメントの国際規格です。事業活動による環境負荷を抑えていくための枠組みが示されています。

参考:概要 | ISO 14001(環境) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)

3.株式会社ワークマン

株式会社ワークマンは、作業服および作業関連用品を取り扱う専門店をチェーン展開している企業です。2022年7月時点の国内店舗数は956店。このうち95%以上は加盟店(フランチャイズ)が占めており、加盟店のオーナーが本部から買い取って仕入れた商品を販売するというスタイルで運営しています。

加盟店の店長に品揃えや陳列などについて提案・アドバイスをするのは、本部のSV(スーパーバイザー)の仕事です。売れ行きが鈍い商品があれば仮説を立て、加盟店に改善案を提案し、効果を検証します。しかし、在庫リスクを負っているのは加盟店なので、加盟店は仕入れや売り方についてはとてもシビアに判断します。

そこでSVは、エクセルのデータ分析を活用しています。エクセルを使って分析したデータを根拠として示すことで、提案内容に説得力が増します。これにより、「データ分析→仮説を立てる→効果検証」というPDCAサイクルを、SVと加盟店の二人三脚で回せているというのが、株式会社ワークマンの強みです。

なぜエクセルなのか?

株式会社ワークマンは、10年ほど前から経営にエクセルを取り入れています。「エクセルなんてどこの会社も使っているだろう」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、株式会社ワークマンは、エクセルを分析ツールとして活用し始めたのです。

理由は、エクセルは社員全員が使えるからです。関数やマクロを使いこなせるようになれば、特別なソフトを使わなくてもかなり高度な分析ができるようになります。

詳しくは、株式会社ワークマンで専務取締役を務める土屋哲雄さんの著書『売上2.6倍で業績過去最高!ワークマン式エクセル』で紹介されていますが、株式会社ワークマンでは、20代・30代のSVたちが自主的にエクセルで分析ツールを作り、業務に活用しているそうです。

参考:はじめに:『売り上げ2.6倍で業績過去最高! ワークマン式エクセル』 | 日経BOOKプラス

4.アース製薬株式会社

アース製薬株式会社は、医薬品や医薬部外品、医療器具、日用品などの製造・販売事業などを行っている企業です。

以前はアース製薬株式会社にはマーケティング部門がありませんでした。そのため、営業企画部門と研究開発部門がマーケティングの役割を担当し、多くの意思決定は社長が行っていました。現社長の川端克宜さんは、前の社長はセンスを持っていたため、このような体制でもうまくいっていたのだと話しています。

しかし、トップのセンスに左右されない商品開発体制を構築するために、2015年にマーケティングの専門部署を設立しました。現在は、以下のようなPDCAサイクルを回しながら、マーケティングを行っています。

  1. 商品を開発したらマーケティングを実施する。
  2. 仮説を立てる。
  3. 商品を販売する。
  4. 狙い通りに売れたのかを検証

マーケティングの強化により、商品の訴求により注力するようになりました。既存商品のパッケージを変えただけで売上が伸びた例もあります。たとえば、くん煙殺虫剤「アースレッド」は、ゴキブリ用、ダニ用といった害虫別に分けるだけではなく、台所用、リビング用というように使うシーン別に訴求することで売上が増加しました。

参考:アース製薬社長が語る、「ごきぶりホイホイ」生んだ組織を180度変革した理由 | トップマネジメントへの道~ネクストリーダーの心得 | ダイヤモンド・オンライン

5.AGC株式会社

AGC株式会社はガラスや電子、化学品、セラミックスなど、幅広い素材とソリューションを提供している企業です。AGCグループは30以上の国と地域で事業展開しており、グローバルな規模で活動しています。

AGCグループでは、社員全員が持てる力を最大限に発揮し続けられるよう、健康経営を推進しています。健康経営とは、社員の健康管理を経営的な視点で考えて、戦略的に取り組むことです。この取り組みにより、社員個人の活力や生産性の向上だけでなく、企業全体の活性化、業績向上といったメリットも期待できます。

AGCグループでは、「健康経営戦略マップ」を作成し、KPIを設定して、PDCAを回しながら健康保持・増進活動の充実を図っています。これにより、これまでに以下のような成果が得られています。

  • 健康診断の二次検診受診率が向上(2020年:92%→2021年:99%)※費用は全額会社負担としている。
  • 喫煙率の低下(2020年:25.7%→2021年:24.1%)
  • 企業が開催したウォーキングには延べ3,400人が参加(2021年)

経済産業省と日本健康会議が毎年発表している「健康経営優良法人~ホワイト500~」にも認定されるなど、AGCグループの健康経営の取り組みは、外部からも高く評価されています。

参考:AGC Sustainability Data Book – AGC (PDF)

6.株式会社ニトリホールディングス

株式会社ニトリホールディングは、家具、インテリア用品の企画・販売事業などを行っている企業です。

株式会社ニトリホールディングスでは、社内で週次・月次でPDCAサイクルを回しながら日々業務に取り組んでいますが、正確にはPDCAサイクルではなく、独自のフレームワークである「観分判(かんぶんはん)」を用いています。

「観分判」とは?

「観分判」とは、「観察」「分析」「判断」という3つのステップで現状を整理して、問題や課題を解決するというものです。どちらかというとOODAループ(※)に近いかもしれません。

たとえば、ニトリの店舗には入荷処理作業(入荷した商品を売り場に陳列する作業)の進捗管理・マネジメントを行う「入荷リーダー」という役割があります。入荷リーダーは、入荷処理効率(一人のスタッフがどのくらいの商品を売り場に陳列できるかを示すもの)を改善するときにも、この「観分判」を使います。

まずは、スタッフが商品を陳列する工程をよく「観察」し、次にその工程をさらに「分析」(細分化)します。これまではバックヤードで商品を仕分けてから売り場に陳列していましたが、「商品を売り場で仕分けることにする」という「判断」を下します。これにより、売り場とバックヤードを往復する動線をなくすことができ、入荷処理効率を改善することができました。

このような「観分判」を、株式会社ニトリホールディングスではすべての社員が業務に活用しています。

参考:入社3年目社員が「観・分・判」を通じて感じた、数字を変える面白さ | ニトリン

※OODAループとは……意思決定のためのフレームワークで、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の4つの頭文字を取ったものです。PDCAサイクルよりも高速で回せるというメリットがあり、近年注目を集めています。

PDCAサイクルのモデル事業の事例2選

次に、厚生労働省の資料「令和2年度 生活衛生関係営業 営業者取組事例集」から、2020年度のモデル事業における取り組みを紹介します。

モデル事業とは、生活衛生関係営業者(生衛業)が生産性向上に向けて確実に取り組んでいけるように、厚生労働省が民間コンサル等と連携して、生衛業の協力を得ながら実証検証を行ったものです。

1.有限会社山住商店

有限会社山住商店は、山梨県甲府市にある馬肉専門店です。馬刺しやもつ煮、ソーセージなど、国産肉を使用したさまざまな商品を販売しています。

Plan

山梨県には馬肉を食する文化があり、馬肉の生産量も多いエリアです。しかし、核家族化や個食化により消費量は減少傾向にあります。

このようななかで、ヘルシーかつ高タンパクな馬肉を、フィットネスや身体を鍛えている人をターゲットに売り出せないかという提案を受けたことがありました。有限会社山住商店は、これまでそういった層を考慮していませんでしたが、フィットネスを行う若者や女性へ訴求していくことにしました。

【具体的な計画】

  • 馬肉の食文化や食べ方を記載したPRチラシを作成・配布して来客数増加を目指す。
  • インターネット上の情報とも連動させたPRツールを構築する。

Do

計画通り、馬肉の魅力を伝えるためのチラシを作成しました。チラシには、インターネット上のSNSなどの情報にアクセスできる二次元コードを追加し、さらにポイントカードの機能も組み込みました。

インターネット上では、フェイスブックとインスタグラムのSNSとの連携、グーグルマップへの情報の登録を行いました。

Check

チラシやSNSで、馬肉をヘルシーで高タンパクな食材として訴求した結果、筋力アップを目指す顧客が頻繁に多量の馬肉を購入してくれるようになりました。モデル事業を実施したのはコロナ禍でしたが、一定の売上があり、馬肉は安定したニーズがあるということもわかりました。

その一方で、馬肉専門店としての訴求力・認知度が低いという課題も明らかになりました。

Action

有限会社山住商店は、評価を踏まえて以下のような改善案を挙げています。

  • チラシにどのくらいの効果があったのかを検証する。
  • チラシを手に取ってもらうだけでなく、その後来店してもらう、または二次元コードからSNSに登録してもらうための工夫を検討する。
  • 閑散期にオンラインクーポンを導入して売上増加を図りたい。

2.有限会社やぶ本店

有限会社やぶ本店は、「そば処やぶ」として1879年に善光寺のお膝元で創業したそば屋です。現在は、長野市内に2店舗、軽井沢に1店舗有しており、卸売りやネット通販を含む産直販売も行っています。

Plan

有限会社やぶ本店では、10年ほど前からネット販売に力を入れてきました。コロナ禍で店舗売上の回復が見込めない状況であったため、ネット販売を含む外販売上を強化させることにしました。そのために、情報受発信環境を充実させる必要があると考え、以下のような取り組みを実施することにしました。

【具体的な計画】

  • ホームページをリニューアルする。
  • SNSとホームページを連動させる。
  • ネット販売を充実させる。

Do

計画通り、情報受発信環境の充実に取り組みました。ホームページは2020年8月にリニューアル作業を開始し、10月に完了しました。また、スマートフォンにも対応させました。

顧客との関係性を強化するために、SNS(フェイスブック、インスタグラム)も構築しました。

Check

ホームページを全面リニューアルし、スマートフォンにも対応させたことで、2020年11月のネット販売実績は昨年比の1.5倍となりました。この結果、新型コロナウイルス感染症の影響で店舗売上は大幅に減少しましたが、ネット販売の売上がカバーしてくれたため、ほぼ前年並みの実績を出すことができました。

Action

SNSとホームページの連動は、計画していた期間内には実施できませんでした。しかし、これを連動させれば、さらなる売上向上が期待できます。今後はSNSとホームページの連動を進め、これまで以上に顧客に注目してもらえるよう、そして高評価が得られるような工夫を検討していくとしています。

参考:PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう – 厚生労働省(PDF) 

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まとめ

PDCAサイクルの導入事例を紹介しました。PDCAサイクルは、商品・サービスの品質向上や、人材育成、健康経営など幅広く活用されています。

PDCAサイクルで大きな成果を生み出すためには、Check(評価)の段階で、目標を達成できた・できなかっただけでなく、その結果に至ったプロセスをしっかり分析し、次のサイクルにつなげていくことが大切です。「円」ではなく「螺旋」のイメージで、サイクルを回し続けていきましょう。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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