従業員の離職防止に取り組む必要性と施策の具体例を紹介

  • 組織・人材開発

働き方や価値観が多様化したことで、以前よりも従業員に離職されるリスクは高まっているといえます。企業が成長していくためには、「人」が不可欠です。優秀な人材を流出させないために、離職防止に取り組んでいきましょう。

本記事では、離職防止策が必要な理由や、取り組まないことによるリスク、従業員が離職してしまう主な原因と、離職する従業員にみられる兆候、離職防止の具体的な施策例を紹介します

 

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離職防止策とは

離職防止策とは、その名のとおり従業員の離職を防ぐための施策のことです「リテンション」や「リテンションマネジメント」などと呼ばれることもあります。施策の具体例は記事の後半で紹介していますが、ワークライフバランス実現のために働き方や労働時間を見直す、社内コミュニケーションを活性化させる、従業員のキャリアアップを支援するなどが挙げられます。

退職を決める理由は人それぞれですが、複数の原因が重なって、結果として離職に至るというケースが多いです。そのため、離職防止もさまざまな側面から取り組む必要があります。

離職防止策が必要な理由

離職防止策の重要性が高まっているのは、人材の確保が難しくなってきているためです

日本は長い間売り手市場が続いており、採用活動に苦戦する企業が増えています。さらに、仕事に対する価値観が多様化し、「転職」が前向きなものに捉えられるようになってきました。これに伴って人材の流動性も高まっており、企業としては従業員に離職されるリスクが高まっているのです。人手不足となれば、今の生産力を維持できなくなるかもしれません。

また、厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況」を見ると、令和23月に大学を卒業した新規就職者の就職後3年以内の離職率は、32.3%となっています。厚生労働省は、毎年新規就職者の就職後3年以内の離職率を公表していますが、ここ10年ほどは30%台前半で推移しています。

参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

新卒採用は、中途採用よりもコストも時間もかけて行うことが多いです。また、入社後は育成にもコストがかかります。せっかく採用しても、早期に離職されてしまうと、採用・育成のコストも無駄になってします。

こういった事態にならないように、離職防止に取り組む必要があるのです。

 

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離職防止策を講じないことによるリスク

次に、従業員の離職防止に取り組まないと、どのようなリスクがあるのかを解説していきます。

コスト損失が発生する

従業員に離職されると、コスト損失が発生する可能性があります。まずは、先ほどもお伝えしましたが、その従業員の採用と育成にかけたコストです。これに加えて、これまでに支払った給与、社会保険料なども、損失となる可能性があります。

長年活躍してくれた従業員であれば、企業がかけたコストよりも、もたらしてくれた利益のほうが大きいかもしれません。しかし、早期に離職(就職後3年以内)された場合は、コストを回収するのは難しいでしょう。公益財団法人東京しごと財団の「早期離職防止ガイドブック」では、早期離職による企業の損失額は、一人あたり約800万円というデータも紹介されています。

参考:若手社員が辞めない会社づくり – 早期離職防止 ガイドブック|東京仕事センターヤングコーナースペシャルサイト(PDF)

従業員の負担が増える

従業員に離職されてしまうと、その人が担当していた仕事は、ほかの従業員が引き継ぐことになります。そのため、業務を引き継いだ従業員の業務量が多くなり、負担が増えるというリスクがあります。忙しさから、1つひとつの仕事の質も低下してしまうかもしれません。

また、負担が増えても報酬は変わらないことが多いので、不満やストレスがたまり、仕事に対するモチベーションが低下したり、体調不良を引き起こしたりする恐れもあります、これらが原因で、さらなる離職者が出る可能性もあるでしょう。このような悪循環を生み出さないためにも、離職防止に取り組む必要があります。

企業イメージが低下する

最近は、企業の「働く場所」としての評判も、インターネットで簡単に知ることができるようになりました。就職・転職先を選ぶ際に、SNSや口コミサイトなどで企業の情報を集めてから応募を決める人も多いようです。離職の原因が企業にある場合、離職後にインターネット上にネガティブな投稿をされてしまう可能性もあるでしょう。そうなれば、企業のイメージが悪化します

また、多くの求職者は、企業の離職率や定着率といったデータもチェックしています。せっかく求人情報に魅力を感じてくれても、このような情報を見て「よく人が入れ替わる企業だ」という印象を持たれてしまえば、応募するのを止めてしまうかもしれません。

離職防止策を講じないと、企業の「働く場所」としてのイメージが低下し、人材の採用がより難しくなる恐れがあります。

従業員が離職してしまう主な原因

先ほどお伝えしたように、退職を決断する理由は人それぞれで、1つだけではなく複数の原因が重なっていることが多いですが、離職の主な原因としては、以下の4つが挙げられるでしょう。

1.労働条件に対する不満

労働条件に不満があると、「条件が良いところへ転職したい」と考えてしまいやすくなります。たとえば、以下のようなケースに当てはまるなら、不満を抱いている従業員がいるかもしれません。

  • 給与やボーナスが少ない、または上がらない。
  • 長時間労働がある。
  • サービス残業が慢性化している。
  • 産前産後休業や育児休業、有給休暇などを利用しにくい雰囲気がある。
  • テレワークができない。

給与やボーナスが少ないと、従業員は生活を安定させることができません。また、ワークライフバランスがとれないと、心と身体を十分休めることもできないでしょう。仕事と育児や介護との両立が難しく、退職を決断する人も少なくありません。

2.人間関係のストレス

上司や同僚、後輩といった社内の人間だけでなく、取引先や顧客との人間関係にストレスを感じ、退職を決めるケースもあります。従業員にいつもと違う様子がみられたら、早めに配置転換や業務変更も検討してみましょう。これにより、離職を回避できることもあります。

また、ハラスメントが離職の原因になるケースも少なくないようです。職場におけるハラスメントにはさまざまな種類がありますが、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの3つについては、防止措置を講ずることが事業主の義務となっています。ハラスメントが発生すれば、離職者が出る可能性があるだけでなく、企業イメージが低下したり、場合によっては法的責任が問われたりする恐れもあります。まだ何も防止策を講じていないという企業は、早急に対応しましょう。

なお、職場におけるハラスメントの種類や、防止策の具体例は、以下の記事で詳しく解説しています。

ハラスメントとは?防止措置が必要な理由・施策例を紹介

3.将来に対する不安

企業の将来に対して不安を感じると、転職を考えてしまいやすくなります。たとえば、業績が不安定である、離職者が多い、組織の体制が古い、AIに代替される可能性がある仕事などの場合、従業員は不安を感じやすくなるでしょう。

また、企業の将来ではなく、自分の将来(キャリア)に不安を感じて、転職を考え始める人もいます。たとえば、キャリアパスが見えない、社内にキャリアアップに関する制度がないなどの場合、「もっとキャリアアップできる企業に転職したい」と考えてしまいやすくなるでしょう。

さらに、新たに人材を採用したものの、フォロー体制が整っていなかったために従業員が不安を覚え、早期離職につながるケースもあります。たとえば、引き継ぎが不十分、育成担当がついてくれないといったケースです。

4.入社前後のギャップ

早期離職の理由として特に多いのが、入社前後でギャップを感じるケースです。たとえば、「労働条件や仕事内容が聞いていた話と違う」「職場の雰囲気やカルチャー面で自分に合わなかった」などが挙げられます。

採用した人に早期に離職されてしまうと、コスト損失も大きくなります。これを防ぐためには、採用ミスマッチの防止策を講ずることも大切です。

離職を防ぐには「兆候」を見逃さないことが大切

昨日までいきいきと働いていた従業員が、突然退職届を提出してくることもないとはいえませんが、退職を考え始めると、行動や態度に変化があらわれることもあります。以下のような兆候がみられたら、なるべく早く対応しましょう。

モチベーションが低くなる

以前に比べて仕事に対するモチベーションが低くなっているようなら、退職を考えている可能性があります。悩みや迷いを抱えながら仕事に取り組んでいるので、効率が悪くなったり、小さなミスが増えたりすることもあるでしょう。

このような状態を放置すれば、仕事の質も下がってしまいます。早めに上司から声をかけ、話を聞いてみましょう。このときは、「何か悩みごとがあるのですか?」と優しく声をかけ、従業員の気持ちに寄り沿った対応をすることがポイントです。早急に対応することで、原因によっては離職を回避できることもあるでしょう。

周りに対する態度が変わる

退職を考え始めると、職場に対する関心が薄れて、周りへの態度が変化することがあります。たとえば、以下のような変化がみられたら要注意です。

  • 自分から挨拶をしなくなる。
  • 笑顔が少なくなる
  • 会議での発言が減る。
  • 雑談をしなくなる。

ただ、心や身体の不調から態度が変化してしまうケースもありますので、従業員にこのような変化がみられたら、慎重に対応するようにしてください。

最低限の仕事しかこなさなくなる

退職を決めた人は、これ以上仕事を増やさないように、最低限の仕事しかこなさなくなる傾向があります。仕事が増えてしまうと、それだけ引き継ぎにも手間がかかるようになるためです。

具体的には、仕事を早く終わらせて帰ろうとする、新しい仕事を避けるようになるといった変化がみられるようになります。このような場合、すでに退職の意思を固めており、転職活動を始めている可能性もあります。自身のキャリアのための転職の場合は、引き留めることは難しいかもしれませんが、一度しっかり話をする機会を設けてみましょう。

離職防止策の具体例

では、従業員の離職を防ぐためには、具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。最後に、離職防止の5つの施策例を紹介します。

1.ワークライフバランスを実現しやすくする

十分な休息が取れなかったり、プライベートの時間を確保できなかったりすると、不満やストレスがたまりやすくなります。これらが離職の原因となることもありますので、従業員がワークライフバランスを実現できるよう、労働時間や働き方を見直してみましょう

まず取り組みたいのが、残業の削減です。時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間と定められています。勤怠管理システムを導入するなどして適切に労働時間を管理し、なるべく残業が少なくなるよう努めましょう。

そして、仕事内容によっては難しいかもしれませんが、テレワークやフレックスタイム制など、多様な働き方を導入することも検討してみてください。

また、産前産後休業や育児休業、有給休暇といった休暇制度を利用しにくいと感じている人は少なくありません。従業員に利用を促したり、管理職や上司が積極的に利用したりして、休暇制度を利用しやすい雰囲気をつくることも大切です。

2.社内コミュニケーションを活性化させる

社内コミュニケーションを活性化させることで、従業員同士が良好な関係を築きやすくなり、人間関係によるストレスを減らすことができるでしょう。具体的な取り組みとしては、部署をまたいだ交流会を開催する、社内SNSやコミュニケーションツールを導入する、定期的に1on1を実施するなどが考えられます。

1on1とは、上司と部下が11で行う、部下の成長を促すことを目的とした面談のことです。これを実施することで、部下が不満に思っていることや、キャリアに関する悩みなどを把握しやすくなります。

ただ、直属の上司には話しにくいこともあるかもしれませんので、メンター制度を導入するのもおすすめです。メンター制度とは、年齢が近い先輩社員が若手社員を支援する制度のことです。メンター制度では、基本的に部署が異なる先輩社員が支援者となり、キャリアや人間関係に関する悩みなど幅広くサポートしてくれるため、いろいろなことを相談しやすいというメリットがあります。

3.人事評価制度を見直す

従業員の離職を防ぐためには、従業員のモチベーションだけでなく、エンゲージメントを高めることが大切ですエンゲージメントとは、従業員が企業に対して「貢献したい」という意欲を持っている状態のことをいいます。企業と従業員のつながりの強さを表すものともいえます。

自分の頑張りや成果が正しく評価されると、モチベーションもエンゲージメントも向上します。逆に、「正しく評価してもらえない」と感じると、不満が生まれ、離職につながってしまうこともあります。評価基準が不明確ではないか、評価が報酬や昇進に正しく反映されているか、現在の人事評価制度も一度見直してみてください。

4.従業員のキャリア形成を支援する

目まぐるしく変化し続ける時代の中を生き抜いていくために、主体的にキャリア形成に取り組む必要性が高まっています。従業員の将来への不安を取り除くためにも、企業としてキャリア支援を行いましょう

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • キャリアに関する相談窓口を設ける。
  • 研修を充実させる。
  • キャリアアップにつながる新たな人事制度を設ける(例:社内FA制度、社内公募制度 など)。

このような支援と合わせて、きちんと自社のキャリアパスを提示することで、従業員は自社で活躍する将来の自分をイメージしやすくなります。

キャリア支援とは?重要性や企業の取り組み事例を紹介

5.採用のミスマッチ防止策を講ずる

入社後に仕事内容や風土、カルチャーなどにギャップを感じて退職を決める人も少なくありません。このような採用ミスマッチを防ぐためには、まずは採用活動において、求職者に「正しい情報を伝える」ことが何より大切です。企業の強みや魅力といった良いところばかりでなく、現在直面している課題なども隠さず伝えるようにしましょう。また、人材を見極める際は、スキルや条件面だけでなく、企業理念や自社のカルチャーとマッチするかも重視します。

そして、入社後のフォロー体制が整っていないと、新入社員は自分の役割や仕事の意味を理解することができません。また、最初は周りとの関係構築もサポートが必要です。現在のフォロー体制も、一度見直してみてください。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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まとめ

従業員に離職されてしまうと、ほかの従業員の負担が増え、不満やストレスがたまり、さらに離職者が出るという悪循環に陥りかねません。また、離職者が出ることで、コスト損失が発生する、企業イメージが低下するといったリスクもあります。

ここ最近の日本は売り手市場が続いており、ただでさえ人材の採用が難しくなってきています。それに加え、人材の流動性も高まっています。優秀な人材を確保するために、離職防止に取り組んでいきましょう。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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