巻き込み力とは?鍛え方や必要なスキルを解説

  • ビジネススキル

近年重要視されるようになっているスキルに、「巻き込み力」があります。すべてのビジネスパーソンに必要な基本的なスキルですが、特にメンバーを率いていく立場にあるリーダーに、強く求められるようになってきています。

本記事では、巻き込み力とは何か、高めるメリットや、巻き込み力を高めるために磨いておくべきスキル、巻き込み力の鍛え方を、詳しく紹介していきます

 

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巻き込み力とは

巻き込み力とは、「周りの人を巻き込むこと」に関するスキルの総称です。具体的には、目標やビジョンを設定するリーダーシップ、他人に働きかけて主体的に行動する状態をつくるコミュニケーションスキル、話し合いをまとめるためのファシリテーションスキルや交渉力、利害が一致しない相手を理解し調整する力などが挙げられます。

「巻き込む」とは、簡単にいうと「協力を得る」ということです。企業のなかでは、どのような仕事であっても、一人で完結できるものはほとんどありません。巻き込み力を高め、上司や同僚、部下、社外の関係者も巻き込んで、協力し合いながら目標に向かっていけるようになれば、仕事が成果につながりやすくなるでしょう

社会人基礎力としての巻き込み力

社会人基礎力とは、2006年に経済産業省により提唱された「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のことです。そして2017年度には、人生100年時代を見据えて、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」としています。

この社会人基礎力は、「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」という3つの能力(12の能力要素)から構成されています。このなかの「前に踏み出す力(アクション)」の能力要素の1つに「働きかけ力」があり、「他人に働きかけ巻き込む力」と定義されています。巻き込み力は、経済産業省が提唱する社会人基礎力の一部でもあるのです。

そして経済産業省は、社会人基礎力を社会人の「OS」と位置づけています。業界や業種にかかわらず、初期の段階で身につけておくべきスキルであるということです。

参考:社会人基礎力(METI/経済産業省)

なお、社会人基礎力については、以下でも詳しく解説しています。

社会基礎力とは?構成要素や必要性、高めるために必要なこと

ビジネスにおける巻き込み力の重要性

1つの仕事には、社内外のさまざまな人がかかわっています。目標を達成し、成果を上げるためには、上司、同僚、部下、他部署の人、社外の関係者など、その仕事にかかわるすべての人の協力が必要です。そのため、巻き込み力は、特にチームのメンバーや関係者をまとめる立場にあるリーダーにとって、非常に重要なスキルといえます。巻き込み力の高いリーダーがいれば、全員で同じ目標に向かっていくことができるでしょう。

また、現代はVUCA時代と呼ばれるほど、将来を予測するのが困難な時代となっています。目まぐるしく変化する環境に対応していくためには、さまざまな知識や考えを持った人たちと力を合わせて、イノベーションを生み出していく必要があります。そのため、近年特に巻き込み力が重要視されるようになってきているのではないでしょうか。

これは間違い!迷惑な巻き込み力とは

巻き込み力とは、周りの人を自分の思い通りに動かす力ではありません。たとえば、

  • 指示や命令を出すだけ
  • 仕事をメンバーに割り当てるだけ
  • 自分の考えを押し付けて相手を丸め込む
  • 立場や権力だけで人を動かそうとする

このようなやり方では、相手の協力を得るのは難しいでしょう。または、協力してくれたとしても、相手は「仕方なく」「やらされている」だけかもしれません。さらに、周りの人との人間関係に悪い影響が出る恐れもありますので、注意しましょう。

相手を巻き込むときは、あくまでも、相手が納得したうえで主体的に行動してくれる状態をつくることが大切です

 

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巻き込み力を高めるメリット

誰にでも、得意・不得意があります。周りの人を巻き込みながら仕事を進められるようになると、シナジー効果により、それぞれが個人で活動するときよりも大きな成果を上げられるようになるでしょう。

具体的には、周りの人の力を借りることで業務が効率化する、複数の人と意見交換をすることでアイデアが生まれやすくなる、さまざまな人と良好な関係を築けるようになるためビジネスチャンスが広がるといったメリットが期待できます。また、複数人で協力して仕事を進めていくことで、抜け漏れや誤り、矛盾なども見つけやすくなるため、ミスも起きにくくなるでしょう。結果、仕事がよりスムーズに進むようになり、成果が生まれやすくなります。

さらに、周りに協力してくれる人がいると、精神的にも安定します。達成感を共有できる仲間がいることで、「やりがい」を感じながら働けるようになるといったメリットもあります。

巻き込み力向上のために磨いておくべきスキル

冒頭でお伝えしたように、巻き込み力とは「周りの人を巻き込むこと」に関するスキルの総称です。ここからは、巻き込み力に含まれる具体的なスキルを紹介していきます。

1.リーダーシップ

リーダーシップとは、チームのメンバーをまとめて目標達成まで導いていくスキルのことです。リーダーシップという名前ではありますが、リーダーの役割に就いている人だけに求められるものではありません。最近は、リーダーシップはすべてのビジネスパーソンに求められるスキルであり、それぞれの立場において発揮するものと考えられるようになってきています。

リーダーシップのなかにもさまざまな能力やスキルが含まれますが、まず身につけたいのが、セルフリーダーシップです。セルフリーダーシップとは、自分の感情やモチベーションを上手くコントロールして、自分自身をより良い方向へ導いていく能力のことをいいます。周りの人を巻き込むためには、まずは自分自身をリードできるようになる必要があります。そのうえで、目標設定能力や、実行力、決める力、寛容力などを磨いていきましょう。

なお、リーダーシップ力については、以下の記事でも詳しく解説しています。

リーダーシップ力とは?9つの能力・スキルの高め方を紹介

2.コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルとは、他人と情報共有や意思疎通をスムーズに行うスキルのことです

巻き込み力を高めるためにまず磨きたいのが、「伝える力」です。伝えたいことを正確に言語化する力に加えて、言葉選びや言い回し、間の取り方、緩急のつけ方などを学ぶと、こちらの思いや考えが。相手よりに伝わりやすくなるでしょう。

また、コミュニケーションは相手がいてこそ成り立つものです。自分から一方的に伝えるばかりでなく、相手の話をしっかりと「聴く力」も必要になります。心理カウンセリングなどでは、相手の話に積極的に耳を傾けて、深く理解しようとすることを「傾聴」といいます。相手を「従わせる」のではなく「巻き込む」には、信頼関係が欠かせません。傾聴力を高めることで、相手と信頼関係を築きやすくなるでしょう。

さらに、ビジネスシーンでは文書でやり取りすることも多いので、文章力や読解力も磨いておきたいところです。

3.ファシリテーションスキル

ファシリテーションとは、複数人での話し合いをスムーズに進める技法のことをいいます。ファシリテーションスキルは、これを行うために必要なスキルです。具体的には、司会・進行だけでなく、意見を出しやすい雰囲気をつくる、メンバーに質問を投げかけて本音を引き出す、多様な意見を瞬時にまとめて合意を形成するといったスキルが求められます。会議やミーティングなどで、このファシリテーションを行う人のことを、ファシリテーターといいます。

ファシリテーションは、ただ話し合いをスムーズに進めて時間内に結論を出すというだけでなく、全員が納得できる結論を出すことを目的としています。納得感を生み出すことができれば、話し合いに参加したメンバーは、決定したことに主体的に取り組んでくれるようになるでしょう。

4.交渉力

交渉力とは、意見や利害が一致しない相手と、話し合いによりお互いが納得できる結論を出す能力のことです

たとえば、1つのプロジェクトを進めるには、同じプロジェクトチームのメンバーだけでなく、他部署の人や、社外の関係者の協力も必要になります。役割や立場が違えば、「何を重視するか」が異なることがありますが、相手の利益を考えず、自分の意見を押し通そうとすると、そのときは協力を得られたとしても、相手との関係が悪化してしまう可能性があります。

ビジネスの場における交渉は、双方にとってメリットがあるWin-Winの結果を目指すことが大切です。そうすることで、相手との関係も強化されます。交渉力を磨くことで、周りの人の協力を得やすくなるだけでなく、さまざまな立場の人と良好な関係が築けるようになるので、そこからビジネスチャンスが広がることもあるかもしれません。

なお、交渉力については、以下の記事でも詳しく解説しています。

交渉力とは?折衝力との違いや高める方法を解説

5.調整力

調整力とは、意見が対立する人同士、立場の異なる人同士の間に入り、同じ目的に向かって協力できる体制をつくる能力のことです

前項でもお伝えしたように、1つのプロジェクトを進めるには、他部署の人や社外の関係者なども巻き込んでいく必要があります。調整力は、プロジェクトにかかわる人たちをまとめ、同じ方向に向かわせる能力ともいえるでしょう。調整が必要になるのは、会議やミーティング、交渉といった話し合いの場に限りません。状況を仕切って全員が協力できる体制を整えるというイメージですので、リーダーシップやマネジメント能力に近いかもしれません。

大きなプロジェクトほど、かかわる人の数も多くなり、協力体制をつくるのも難しくなります。より多くの人を巻き込めるよう、調整力も磨いていきましょう。

巻き込み力の鍛え方

では、巻き込み力を発揮できるようになるにはどうすればいいのでしょうか。巻き込み力は、急に高められるものではありませんが、誰でも鍛えることが可能です。最後に、その方法を紹介します。

巻き込みたい相手を理解する

先ほどお伝えしたように、人を巻き込むとは、人を自分の思い通りに動かすということではありません。あくまでも相手が納得したうえで、主体的に協力してくれるようになることが大切です

そのために、まずは巻き込みたい相手を理解することから始めましょう。相手が持っているスキルや経験、関心事、課題、現在抱えている仕事の量、仕事の進め方、やる気の源など、相手のことを深く知るほど、相手に納得感を与える伝え方ができるようになります。

普段から、巻き込みたい相手をよく観察したり、自分から積極的にコミュニケーションをとったりすることを心がけてみてください。

信頼される人になる

巻き込み力が高い人は、周りからの信頼度が高いという特徴があります。信頼できない人に対しては、なかなか「協力したい」という気持ちは湧いてこないでしょう。協力を得るためには、まずは巻き込みたい相手から信頼してもらうことが大切です

しかし、信頼というのは急に得られるものではありません。日々の積み重ねにより形成されていくものです。「言っていることとやっていることが違う」「相手を否定してばかり」というような態度では、なかなか信頼を得ることはできません。普段から自分の発言や行動に責任を持つ、自分と異なる意見や価値観も受け入れるといったことを意識してみましょう。

また、ビジネスにおいては豊富な知識・スキルを持っていることや、しっかり実績を上げているといったポイントも信頼につながります。自己研鑽に努める、仕事に熱心に取り組むといった姿勢も重要です。

誰よりも一生懸命になる

先ほど、巻き込み力向上のために磨いておくべきスキルの1つとして、リーダーシップを挙げました。リーダーシップは、「周りにポジティブな影響を与える能力」とも言い換えられます。メンバーを指導したり、統率したりするだけでなく、誰よりも一生懸命に仕事に取り組んでいる姿を見せる(見本になる)ことも、リーダーシップです

相手の熱意を感じて、「気がついたら自然に巻き込まれていた」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。相手を巻き込むためには、こちらの熱意を態度で示すことも大切なのです。

これはリーダーだけでなく、若手社員の場合も同じです。仕事に一生懸命な姿勢を見せたほうが、周りも「応援したい」「力になってあげたい」という気持ちになりやすいといえます。

「根回し」をできるようになる

「根回し」と聞くと、コソコソと口裏を合わせるようなネガティブな印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、根回しとは、「物事をスムーズに進めるために、あらかじめ関係者の了承を得ておくこと」です。ビジネスにおいては、これが必要になる場面が多々あります。

たとえば、巻き込みたい相手が他部署の人である場合は、本人が納得してくれても、上司の了承がなければ判断・行動できないこともあるでしょう。この場合は、上司と事前に話をしておくと、スムーズに相手の協力を得ることができます

「巻き込まれ力」を高める

「巻き込まれ力」とは、巻き込み力の逆のスキルです。ほかの誰かがチャレンジしようとしていること、取り組んでいることなどに、自ら協力しようとかかわっていく力のことをいいます

自分が協力してほしいときに力を貸してくれなかった人に対しては、積極的に「協力したい」という気持ちになれない人が多いでしょう。自分から積極的に他人に巻き込まれていくことで、結果的に巻き込み力の向上につながるのです。また、いろいろな人の挑戦や取り組みにかかわることで、自分の視野も広がります

日本マイクロソフト株式会社では、社員が巻き込み力を発揮しやすい風土感をつくるために、「巻き込み力」と「巻き込まれ力」も人事評価の対象にしているそうです。

参考:「巻き込まれ力」も人事評価対象 日本マイクロソフト – 日本経済新聞

研修を受ける

研修会社が実施する研修を受講するのも、巻き込み力を高める1つの方法です。研修の内容は、先ほど紹介したリーダーシップや調整力、交渉力といったスキルに関する講義・ワークや、巻き込み方をケーススタディで学ぶようなものが多いです。研修会社や対象とする階層によっても異なりますので、今の自分の課題を明確にして、それを解決できるような研修を選びましょう。「巻き込み力研修」という名前の研修だけでなく、磨きたいスキルに特化した研修を受けるのもおすすめです。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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まとめ

企業のなかでは、一人で進められる・完結できる仕事というのはほとんどありません。巻き込み力は、社会人の基礎的なスキルです。業界や業種にかかわらず、早い段階で身につけておきましょう。

また、リーダーになるとより高い巻き込み力が求められるようになります。巻き込み力を急に高めるのは難しいですが、コミュニケーションのとり方や仕事の取り組み方を少し変えて、それを積み重ねていくことで、誰でも鍛えることができます。本記事で紹介した方法も、実践してみてください。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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