メンタルタフネスとは?強い人の特徴・鍛え方を紹介
- ビジネススキル
従業員のパフォーマンスや組織全体の生産性向上のために、従業員のメンタル強化に取り組む企業が増えています。
本記事では、まず近年注目されている「メンタルタフネス」という概念を紹介し、ビジネスパーソンに「メンタルの強さ」が求められる理由、メンタルが強い人の特徴、自分のメンタルを鍛える方法と、企業が従業員のメンタル強化をサポートするメリットを解説していきます。
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メンタルタフネスとは
近年注目されているメンタルタフネスとは、スポーツ心理学者のジム・レーヤー氏が提唱する考え方のことです。
英単語の「メンタル(mental)」には、「心の」「精神的な」などの意味が、そして「タフネス(toughness)」には、「靭性」「耐性」などの意味があります。そのため、「メンタルタフネス=ストレス耐性」と紹介されることもあります。これも間違いとはいえませんが、ジム・レーヤー氏が考えるメンタルタフネスは、スポーツ選手のように、自分のメンタルをコントロールして、必要な場面で能力を最大限発揮できるようになること、といえます。
そして、ジム・レーヤー氏は、最高のパフォーマンスを発揮できるときの心の状態を「理想的な心理状態(IPS)」と呼んでおり、「精神的に落ち着いている」「肉体的にリラックスしている」「自分に自信を持っている」「楽しんでいる」など、複数の共通点があると述べています。
強いストレスを受け続けると、イライラや不安を感じやすくなる、食欲が低下する、よく眠れなくなる、ミスをしやすくなるなど、さまざまなストレス反応があらわれるようになります。そのため、ストレスは「悪いもの」「できるだけ避けるべきもの」のように扱われることも多いですが、適度なストレスは、成長のために欠かせません。メンタルタフネスは、ストレスは「ためになるもの」であり、ストレスをなくそうとするのではなく、どのように反応していくかが重要であるという考え方を前提としています。
ジム・レーヤー氏の紹介
ジム・レーヤー氏は、スポーツ心理学者であり、文筆家としても活躍している人物です。これまでに多くのトップアスリート達のメンタル・トレーニングを行ってきた経験を持っています。1980年頃からは、その経験をビジネスの分野にも応用し、数多くの有力企業の指導も行っています。
ジム・レーヤー氏のメンタルタフネスの考え方や、「理想的な心理状態(IPS)」を作るためのトレーニング法(タフネス・トレーニング)については、ジム・レーヤー氏の著書を参考にしてみてください。たとえば、以下のような著書があります。
- メンタル・タフネス ストレスで強くなる(2017年発売)
- メンタル・タフネス 成功と幸せのための4つのエネルギー管理術(2004年発売)※トニー・シュワルツ氏との共著
- メンタル・タフネス ストレスで強くなる(1998年発売)
ビジネスパーソンに「メンタルの強さ」が求められる理由
ここからは、ジム・レーヤー氏が提唱するメンタルタフネスではなく、一般的な「メンタルの強さ」について解説していきます。まずは、ビジネスパーソンになぜ「メンタルの強さ」が必要なのか、その理由を見ていきましょう。
厚生労働省の「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関する強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.2%と、非常に高い数値となっています。その内容を見ると、最も多いのが「仕事の量」(36.3%)、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」(35.9%)、「仕事の質」(27.1%)となっています。多くの人が、働きながら強いストレスにさらされていることがわかります。
参考:個人調査(令和4年 労働安全衛生調査(実態調査))- 厚生労働省(PDF)
強いストレスがかかると、心理面・身体面・行動面にさまざまな変化があらわれるようになります。その結果、パフォーマンスの低下、ミスやヒヤリハットの増加、メンタルヘルス不調による休職・退職など、企業にも良くない影響が出る可能性があります。そのため、ビジネスパーソンには、自分のストレスとうまく付き合っていけるような強いメンタルが求められるようになっているのです。
また、グローバル化やダイバーシティの推進により、今後は多様な人と働く機会がどんどん増えていくことが予想されます。年齢や性別、国籍などが違えば、価値観や考え方も異なります。ともに仕事をするなかで、意見がぶつかることも多くなるかもしれません。そのような状況になっても、強いメンタルを持っていれば、悩みすぎず、いろいろな人達と良好な関係を築いていけるでしょう。そのため、メンタルを強化することの重要性が高まっているのではないでしょうか。
メンタルが強い人の特徴
次に、多くのメンタルが強い人に共通して見られる特徴を紹介します。
物事をポジティブに考えられる
メンタルが強い人は、基本的にポジティブで、何事も前向きにとらえられる人が多いです。
たとえば、何か困難な仕事を任されたときでも、メンタルが強い人は、「難しそうだけど、きっと自分ならできる」「これを乗り越えたらもっと成長できるはずだ」と、ポジティブに考えられるので、積極的に行動できます。メンタルが強い人は、ポジティブに考えられるからこそ、精神的に余裕がある人が多いともいえるでしょう。
逆に、メンタルが弱い人は、「自分の実力では無理だ」「失敗したらどうなるのだろう」と、ネガティブに考えてしまうため、なかなか行動を起こすことができません。不安やプレッシャーに押しつぶされて、メンタルヘルス不調につながることもあります。
気持ちの切り替えがうまい
メンタルが強い人は、何か失敗してしまったとしても、すぐに自分の気持ちを切り替えることができます。逆に、メンタルが弱い人は、失敗を必要以上に重くとらえてしまいがちです。そのため、1つの失敗をいつまでも引きずってしまうという特徴があります。
この違いは、「事実と感情を分けて考えられるか」にあります。メンタルが強い人は、事実と感情を分けて考えることができるため、失敗をしてもネガティブな感情を切り離し、「失敗した」という事実だけに目を向けることができます。対してメンタルが弱い人は、ネガティブな感情を切り離すことができず、それに支配されやすいため、自分をどんどん追い込んでしまうのです。
参考:職場にいる「メンタルが強い人」が持っているシンプルだけど心が整う考え方とは | 1秒で答えをつくる力 | ダイヤモンド・オンライン
自分のことを深く理解している
メンタルが強い人は、自分自身のことをよく理解できているという特徴もあります。たとえば、自分は何に、どんなときにストレスを感じるのか、ストレスを感じるとどのような反応が出るのか、ストレスを解消する方法、モチベーションの上げ方などです。そのため、ストレスにさらされても、自分の心をうまくコントロールして、ベストな状態を保つことができます。
逆に、メンタルが弱い人は、自分自身の弱い部分としっかり向き合えていない人が多いといえます。
自分と他人を比較しない
メンタルが強い人は、自分の「軸」をしっかり持っており、自分と他人を比べることをしません。
活躍している同僚や、自分を追い抜きそうな勢いで成長している後輩などと自分を比べると、自信を失くしてしまったり、劣等感を持ってしまったりすることがあります。特にメンタルが弱い人は、「自分には才能がない」「どうぜ自分はこの程度だ」などと、必要以上に自分の価値を下げてしまいがちです。
メンタルが強い人は、「他人は他人」「自分は自分」と割り切っています。全員に評価してもらおう、好かれようとしません。そのため、メンタルが安定しているのです。
メンタルを鍛える方法
メンタルの強さは、生まれ持った性格による部分もありますが、誰でも、何歳からでも鍛えることができます。ここからは、その具体的な方法を紹介していきます。
ポジティブな表現を使う
ポジティブ思考を身につけるために、普段からポジティブな表現を使うことを心がけましょう。たとえば、ネガティブな考えが浮かんできたら、以下のように言い換えてみるという方法があります。
- 「目標のうち〇〇しか達成できなかった。」→「〇〇は達成できた。次はもっとできるはずだ。」
- 「自分は決断力がない。」→「自分は物事を慎重に判断したいタイプなのだ。」
しかし、初めのうちはポジティブに言い換えるのはなかなか難しいかもしれません。その場合は、「でも」「だって」「どうせ」などのネガティブなワードを、できるだけいわないようにすることから始めてみましょう。
「言霊」という言葉があるように、口から出た言葉には大きな力が宿っているといわれています。普段からポジティブな表現を使うことで、自然と心も明るくなり、自分を肯定できるようになっていくでしょう。
目標を持つ
メンタルが弱い人は、自分に自信がない人が多いです。自分に自信をつけるために、小さなことでも構わないので、何か目標を持つ癖をつけましょう。
目標を達成するためには、どのような課題をクリアしなくてはいけないのかを考えて、具体的なアクションを起こさなければなりません。1つの課題をクリアすれば、それが自分のなかで小さな成功体験になります。小さな成功体験を積み重ねていくことで、次第に自分に自信が持てるようになっていくでしょう。
ただ、今の自分にとって高すぎる目標を立てると、途中でモチベーションが下がったり、つまずいて逆に自信を失ってしまったりすることもあります。目標は、少しがんばれば達成できるレベルにするのがポイントです。
自分のストレスと解消法を知る
メンタルを強くするためには、まずは自分の心を知ることが大切です。自分自身と向き合い、自分が何に、どんなときにストレスを感じるのか、そのときにどのような反応が出るのかを分析してみましょう。そして、どうすればストレスにうまく対処できるのかも考えてみます。
自分のストレス要因やストレス反応を把握するには、「セルフモニタリング」という方法がおすすめです。自分が現在置かれている状況や、ストレス要因と考えられるもの、ストレスにさらされたときの自分の感情や反応などを、紙に書いて整理するというものです。
そして、ストレス要因やストレス反応を把握できたら、次は対処法を考えてみましょう。ストレスにうまく対処する方法は、「ストレスコーピング」といい、ストレス要因そのものをどうにかしようとする「問題焦点型」や、自分の好きなことをしてリフレッシュを図る「気晴らし型」など、いろいろなアプローチ法があります。
セルフモニタリングと、ストレスコーピングについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
ストレスマネジメントとは?メリット・実践方法を紹介
他人ではなく「過去の自分」と比較する
先ほど、メンタルが強い人の特徴として、「自分と他人を比較しない」ことを挙げました。メンタルが強い人は、これをしない代わりに、「現在の自分と過去の自分」を比較しています。常に自分に意識を向けているため、自分の強みをどんどん伸ばすことができるのです。
他人ではなく、過去の自分と比較することで、ネガティブな感情に振り回されることなく、目の前の「今やるべきこと」に集中できるようになるでしょう。
参考:職場にいる「メンタルが強い人」が守っている心が整う1つのルールとは | 1秒で答えをつくる力 | ダイヤモンド・オンライン
アンガーマネジメントを身につける
アンガーマネジメントとは、自分の「怒り」や「劣等感」といった、ネガティブな感情をコントロールするスキルのことをいいます。
アンガーマネジメントを身につけることで、ネガティブな感情に伴うストレスを減らすことができます。また、自分のネガティブな感情をコントロールできないと、自分だけでなく周りにストレスを与えてしまうこともあります。たとえば、イライラして感情的な発言をしてしまう、きつい態度をとってしまうなどです。アンガーマネジメントは、職場の人間関係を良好に保つためにも、ビジネスパーソンとして身につけておきたいスキルといえます。
アンガーマネジメントを学ぶ具体的な方法としては、書籍を読む、研修を受けるなどがあります。
マインドフルネスを行う
マインドフルネスとは、「今この瞬間」に心を向けた状態ことをいいます。メンタルが弱い人は、失敗をいつまでも引きずっていたり、まだ起きていないことを想像して不安になったりしがちです。過去や未来について考えるのではなく、「今この瞬間」に心を向けることで、ネガティブな感情に支配された状態から抜け出すことができるでしょう。
マインドフルネスの状態には、「めい想」などを行うことで到達できるとされています。マインドフルネスを行うことで、ストレスがたまりにくくなる、パフォーマンスが向上するといった効果が期待できるため、社員研修に取り入れる企業も増えているようです。
マインドフルネスに関する書籍や講座、セミナーなども多数あるので、気になる人は探してみてはいかがでしょうか。
従業員のメンタル強化をサポートしよう
先ほど厚生労働省の調査結果を紹介させていただいたとおり、働く人の多くが、仕事や職業生活から強い不安や悩み、ストレスを感じています。企業として何も対策をしないままでいると、従業員がストレスにより体調を崩したり、メンタルヘルス不調につながったりすることもあるかもしれません。従業員の健康のためにも、企業として、従業員のメンタル強化をサポートする必要があります。
また、メンタルが鍛えられると、従業員は自分のストレスとうまく付き合えるようになるので、ストレスにさらされても、安定してパフォーマンスを発揮できるようになります。その結果として、生産性向上、売上や利益の上昇も期待できるでしょう。
さらに、メンタルを鍛えて自分に自信が持てるようになると、自分の意見をはっきり主張できるようになります。従業員一人ひとりのメンタル強化をサポートすることで、社内コミュニケーションが活性化し、人間関係に関するストレスの軽減、エンゲージメント向上といった効果も期待できます。
このようなメリットがあるので、研修などを実施して、従業員のメンタル強化をサポートしていきましょう。
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まとめ
働く人は、常に多くのストレスにさらされています。ストレスは、個人にも企業にもさまざまな悪影響をもたらす可能性があるものですが、成長にも欠かせないものです。現代社会を生き抜いていくためには、メンタルを強くして、ストレスとうまく付き合っていけるようになる必要があります。
メンタルは、いきなり強くすることは難しいですが、普段の心がけや行動を少し変えるだけで、誰でも、何歳からでも鍛えることができます。本記事で紹介した方法を、ぜひ今日から実践してみてください。
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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。