ストレスマネジメントとは?メリット・実践方法を紹介
- ビジネススキル
私たち現代人は、毎日さまざまなストレスにさらされながら生活をしています。ストレスの原因になるものをすべて排除できればよいですが、それは現実的に難しいでしょう。現代社会を生き抜いていくためには、ストレスをマネジメント(管理)できるようにならなければなりません。
本記事では、ストレスマネジメントとは何か、そもそもストレスとはどのように生じるのか、ストレスマネジメントのメリットや実践方法、企業ができるメンタルヘルス対策を紹介いたします。
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ストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、自分のストレスとうまく付き合っていく方法を考えて、適切に対処していくことをいいます。
人は、強いストレスがかかると、心身にさまざまな症状があらわれ、行動にも変化が見られるようになります。その結果、仕事や日常生活にも影響が出ることがあります。しかし、現代社会を生きる私たちにとって、ストレスは避けられないものです。ストレスマネジメントができるようになると、ストレスを受けても、心と身体の健康を保てるようになり、いつでも安定して自分の能力を発揮できるようになるでしょう。
厚生労働省が公表している「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を見ると、現在の仕事や職業生活に関して、強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.2%となっています。
参考:個人調査(令和4年 労働安全衛生調査(実態調査))- 厚生労働省(PDF)
このデータから、働く人の多くが職場で強いストレスに触れているということがわかります。そのため、ストレスケアを従業員個人に任せるのではなく、企業としてもサポートする必要があります。記事の後半では、従業員にストレスマネジメントを身につけてもらうために企業ができることも紹介していますので、参考にしてみてください。
そもそもストレスとは
ストレスマネジメントについて詳しく説明する前に、そもそもストレスとはどのようなものか、確認しておきましょう。
ストレスは、もともとは物理学の分野で用いられていた言葉です。物体が外側から圧力をかけられたことで歪んでしまった状態を指します。このときの外側からかかる圧力を、ストレッサーといいます。
医学や心理学の分野では、ストレスの原因となる出来事や外部からの刺激を、ストレッサーといいます。そして、これに適応するために、心や身体に生じるさまざまな反応を、ストレス反応といいます。このストレッサーとストレス反応について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ストレッサーの種類
ストレッサーにはさまざまな種類があり、次のように分類されることがあります。
- 物理的ストレッサー……温度(暑さ、寒さ)、騒音、混雑など
- 化学的ストレッサー……公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など
- 心理・社会的ストレッサー……人間関係、仕事の量や質、家庭の問題など
参考:1 ストレスとは:ストレス軽減ノウハウ|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
また、文部科学省のホームページでは、次のような分類も紹介されています。
- 生活環境ストレッサー……生活環境から受ける刺激、出来事のほとんど(例:人間関係、環境の変化など)。
- 外傷性ストレッサー……生命や存在に影響を及ぼすような強い衝撃をもたらす出来事(例:自然災害、戦争やテロ、犯罪、大切な人の死など)
- 心理的ストレッサー……現実に遭遇していない出来事を考えること(例:「地震が起きたらどうしよう」「失敗するかもしれない」など)
ストレス反応は、これらの異なる種類のストレッサーが複合的に作用して引き起こされます。
ストレス反応の例
人は、長時間ストレスを受け続けたり、強いストレスを受けたりすると、心理面、行動面、身体面にさまざまなストレス反応があらわれます。
- 心理面……ネガティブな感情があらわれる(イライラ、不安、怒り、孤独感、無気力など)、思考力や判断・決断力の低下など。
- 行動面……攻撃的になる、泣く、拒食・過食、ミスやヒヤリハットの増加など。
- 身体面……動悸、頭痛、胃痛、疲労感、食欲低下、便秘や下痢、嘔吐、不眠など。
ストレス耐性(ストレスに対する抵抗力・適応力)は人によって違うため、ストレス反応としてあらわれる症状にも個人差があります。
ストレスマネジメントのメリット
次に、従業員のストレスマネジメントをサポートすることで、企業はどのようなメリットを得られるのか、詳しく見ていきましょう。
ストレスによる休職や離職の予防につながる
厚生労働省が公表している「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を見ると、過去1年間(令和3年11月1日~令和4年10月31日まで)に、メンタルヘルス不調により1カ月以上休業した、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%となっています。前年度(10.1%)より、増加しています。
参考:事業所調査(令和4年 労働安全衛生調査(実態調査))- 厚生労働省(PDF)
従業員がメンタルヘルス不調により休職または退職となれば、人手不足で仕事が回らなくなったり、人員を補充するために採用コストがかかったりなど、企業にもさまざまな影響が出る可能性があります。
従業員が自分のストレスをマネジメントできるようになれば、心の健康状態が崩れにくくなります。企業が従業員のストレスマネジメントをサポートすることは、休職や離職の予防にもつながるのです。
職場環境が改善される
ストレスマネジメントができないと、イライラした感情を抑えられず不機嫌な態度をとってしまったり、他人にきつくあたってしまったりすることもあるかもしれません。このような従業員がいると、職場全体の雰囲気も重くなってしまいます。
従業員一人ひとりが自分のストレスとうまく付き合えるようになれば、誰かのストレスに周りの従業員が振り回されることがなくなり、職場の雰囲気も明るくなるでしょう。
ミスやトラブルが起きにくくなる
先ほどお伝えしたように、ストレスを受けると心と身体、行動にさまざまな変化があらわれます。職場においては、集中力や思考力が低下して効率が悪くなる、小さな作業ミスや、ヒヤリハットが増えるといった影響が考えられるでしょう。また、ミスコミュニケーションも起きやすくなります。ミスコミュニケーションとは、話をする側とそれを受け取る側との間で、認識のズレが生じている状態です。これらのミス一つひとつは小さなものでも、そこからより大きなトラブルに発展してしまうこともあるかもしれません。
ストレスマネジメントができるようになれば、ストレスを受けても、心身の安定した状態を保てるようになります。パフォーマンスにもストレスの影響が出にくくなるので、ミスやトラブルも起きにくくなるでしょう。
ストレスマネジメントの実践方法
では、どのようにすれば自分のストレスとうまく付き合えるようになるのでしょうか。ストレスマネジメントにはさまざまなやり方がありますが、ここでは「セルフモニタリング」と「ストレスコーピング」について解説します。
セルフモニタリング
セルフモニタリングとは、自分自身の状態を客観的に観察することで、ストレッサーやストレス反応を明確にしていくという方法です。自分が現在置かれている状況や、ストレッサーだと考えられるもの、ストレスを受けたときの気持ち、どのようなストレス反応があらわれているかを整理し、紙に書き出してみます。
【具体例】
現在置かれている状況 | 新しいプロジェクトのリーダーを任されることになった。プロジェクトリーダーになるのは今回が初めて。慣れない業務が多く、スケジュールも余裕があるとはいえない。 |
ストレッサーだと考えられるもの | 仕事の内容、環境の変化、プレッシャー |
ストレスを受けたときの気持ち | 初めてのこと、慣れないことに対して不安な気持ちになっている。スケジュールどおりに進められるか、焦りも感じている。 |
ストレス反応 |
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ストレスとうまく付き合えるようになるためには、まずは自分を知ることが大切です。このようなセルフモニタリングを継続的に行うことで、自分はどのようなときに、何にストレスを感じやすいのか、そしてそのときにどのような反応があらわれるかがわかってくるでしょう。
ストレスコーピング
ストレッサーやストレス反応を把握できたら、次はストレスにどのように対処していくかを考えます。
ストレスコーピングとは、ストレスに対処する方法のことをいいます。ストレスコーピングにはいくつか種類があり、厚生労働省の資料「セルフメンタルヘルス」では、以下の6種類に分類されています。
問題焦点型コーピング | ストレッサーそのものを解決しようとする(ストレッサーを避ける行動も含む)。 |
社会的支援探索型コーピング | ストレッサーに直面したときに、ほかの人に相談したり、話を聞いてもらったりすることで、心を安定させる。 |
情動焦点型コーピング | 解決する方法がない場合に、ネガティブな感情を誰かに話すことで発散する。または、誰にも話さずに自分のなかに押さえつける。 |
認知的再評価型コーピング | ストレッサーの見方やとらえ方を変える、距離を置くなど、認知の仕方を変える。 |
気晴らし型コーピング | 自分の好きなことをして、心をリフレッシュさせる。 |
リラクセーション型コーピング | 呼吸法やアロマ、自律訓練法などで、心と身体をリラックスさせる。 |
企業ができるメンタルヘルス対策
では、従業員に自分のストレスをマネジメントできるようになってもらうために、企業はどのようなサポートができるのでしょうか。ここからは、取り組みの具体例を紹介していきます。
研修を実施する
ストレスマネジメントができるようになるためには、まずは従業員に、ストレスやメンタルヘルスに関する正しい知識を身につけてもらう必要があります。これらについて学べる研修を実施し、理解を深めてもらいましょう。
ストレスマネジメントやメンタルヘルスに関する研修には、「セルフケア研修」と「ラインケア研修」の2種類があります。
セルフケア研修
セルフケア研修は、自分自身のストレスとの付き合い方や対処法を学ぶための研修です。
研修の内容は、対象とする階層や研修会社によっても異なりますが、メンタルヘルスの現状や、ストレスのメカニズム、ストレスコーピング、思考の切り替え方、ストレスをためない人間関係構築のポイントなどを、講義とワークで学ぶようなものが多いです。
ラインケア研修
ラインケア研修は、管理職やリーダーが、部下のためのメンタルヘルス対策を学ぶ研修です。
内容としては、ストレスやメンタルヘルスに関する基礎知識や、ラインケアとは何か、部下がメンタルヘルス不調により休業となった場合の対応、職場づくりのポイントなどを、講義とワークで学ぶようなものが多いです。
ストレスチェックやサーベイを実施する
ストレスとうまく付き合っていくためには、まず「何に、どのくらいのストレスを感じているのか」を、自分自身で把握する必要があります。従業員に自分の状態を知ってもらうために、ストレスチェックやサーベイを実施するのもおすすめです。これらを定期的に行うことで、企業としても従業員の変化に気づきやすくなります。
ストレスチェックとは、ストレスに関するいくつかの質問に答えることで、自分のストレスの状態を把握できるという簡単な検査のことです。2015年12月より、労働者が50人以上いる事業所では、毎年1回これをすべての労働者に対して実施することが義務となっています。
参考:ストレスチェック制度 導入マニュアル – 厚生労働省(PDF)
サーベイとは、物事の全体像や現状を把握するために行う調査のことです。従業員満足度を知るための「従業員サーベイ」や「パルスサーベイ」、エンゲージメントを測る「エンゲージメントサーベイ」などがあります。これらはストレスそのものを調査するものではありませんが、定期的に実施することで、現在の問題や課題を把握しやすくなります。職場環境の改善にも役立てることができるでしょう。
相談窓口を設置する
従業員が一人で悩みやストレスを抱え込んでしまわないように、社内に気軽に相談できる窓口を設置しましょう。相談窓口を設置するときにポイントとなるのが、「誰が相談対応を行うか」という点です。厚生労働省の指針では、相談対応は事業場内産業保健スタッフ等(衛生管理者、産業医、保健師、心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフなど)が行うこととされています。
また、相談対応を行うには、専門知識や傾聴スキルが欠かせません。必要に応じて研修を実施するなどして、相談対応者には必要な知識・スキルを身につけてもらいましょう。
さらに、相談内容によっては、社外の専門家(都道府県産業保健推進センター、専門医など)との連携が必要になるケースもあるかもしれません。社外専門家との連携体制を整えておくことも大切です。
参考:社内相談窓口設置までの流れとポイント|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
1on1を導入する
1on1とは、上司と部下が1対1で行うミーティングのことです。部下の成長を促したり、相互理解を深めたりすることを主な目的として行われます。
ラインケアでは、管理職やリーダーが、部下の心身の不調にいち早く気づくことが重要です。そのためには、日頃から部下と積極的にコミュニケーションをとる必要があります。しかし、働き方の多様化、プレイングマネジャーの増加などにより、それが難しいケースも少なくありません。定期的に1on1を実施して、部下と向き合う時間をつくってみましょう。
1on1の実施頻度に決まりはありませんが、月1回や週1回など、評価面談よりも高い頻度で行われることが多いようです。1on1を実施する際は、部下を評価したり、指導したりするのではなく、部下の話を聞き、対話するためのミーティングであることを忘れないようにしましょう。
メンター制度を導入する
メンター制度とは、先輩が後輩の成長や職場の悩み、問題の解決などをサポートする活動のことです。サポートする人をメンター、サポートされる人をメンティーと呼びます。メンター制度では、通常の業務ではかかわりのない従業員がメンターとなることが一般的です。そのため従業員は、直属の上司などには言いにくいような悩みも打ち明けやすいというメリットがあります。
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まとめ
多くの人が、職場でさまざまなストレスにさらされながら働いています。しかし、職場から従業員のストレッサーになり得るものをすべて失くすことは不可能です。そのため、従業員一人ひとりに、自分のストレスをマネジメントできるようになってもらう必要があります。そして企業には、それをサポートすることが求められています。メンタルヘルス対策の一環として、従業員のストレスマネジメントもサポートしていきましょう。
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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。