人材育成とは?階層別のポイント、課題と解決策をわかりやすく解説

  • 組織・人材開発

変化の激しい時代のなか、企業を成長させていくために欠かせないのが、社員(人)です。採用に力を入れることももちろん大切ですが、人材の獲得競争はどんどん激しくなっていくことが予想されますので、人材育成に取り組み、既存社員を成長させていくことが重要です。

今回は、そもそも人材育成とは何か、なぜ重要なのかをまず解説し、人材育成の手法や、階層別のポイント、多くの企業が抱えている人材育成の課題とその解決策を紹介します

 

受講者が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で実践できる知識・スキルを習得
⇒受講者のスキルアップとチームビルディングをはかる「あそぶ社員研修 総合資料」を無料で受け取る

人材育成とは

人材育成とは、企業の目標やビジョンの達成に貢献できるような社員を育てる取り組みのことです。人材育成は、企業が成長するために欠かせません。社員一人ひとりが最大のパフォーマンスを発揮できるようになると、生産性が向上し、業績アップも期待できます。また、人材育成に取り組むことで、育成対象の社員だけでなく、指導する側も成長できます。さらに、人材育成は全社で取り組むものなので、協力し合う組織風土も醸成されやすくなるでしょう。

人材育成と聞くと、新入社員を育てるというイメージを持たれるかもしれませんが、人材育成は、さまざまな階層を対象に行われます。一般的に、次のような目標のために行われることが多いです。

対象

目標

新入社員

社会人として必要な知識やスキルの習得

中堅社員・管理職

専門的な知識やスキルの習得、リーダーシップやマネジメント能力の向上など

人材育成の手法についてはのちほど詳しく紹介していますが、基本となる「OJT」「Off-JT」「自己啓発」の3つは、「人材育成の3本柱」といわれています。

人材教育や人材開発との違い

人材育成と意味が似ている言葉に、人材教育と人材開発があります。それぞれの意味を確認していきましょう。

まず、人材教育とは、社員に知識やスキルを教えることをいいます。「人材教育は人材育成の手段の1つ」と整理されることが多いです。

そして、人材開発とは、社員個人の能力を開発することをいいます。人材育成も人材開発も、どちらも社員を成長させるための取り組みですが、人材育成は対象の社員全員を一定のレベルまで引き上げるもの、人材開発は個人の能力を最大化させるもの、というイメージです。人材育成は、対象の社員全員を同じゴールに向けて育成しますが、人材開発は、個々の社員がそれぞれゴールを設定してスキルや能力の向上を目指します。

 

退屈になりがちな研修、あそびで楽しくしませんか?
⇒「あそぶ社員研修」の資料を見てみたい

なぜ人材育成が重要なのか

少子高齢化の影響で、多くの業界で人手不足が深刻化しており、今後はより一層、人材の獲得競争が激化することが予想されます。そのようななかでも企業を成長させていくためには、社員一人ひとりの能力を高め、生産性を向上させていかなければなりません

また、バブル世代が定年を迎えるとともに、経営幹部の世代交代が加速することが予想されます。そのため、次世代のリーダー(経営幹部)の育成も、多くの企業で課題となっているようです。加えて、現代はテクノロジーの進展により、VUCA時代(※)と呼ばれるほど変化の激しい時代となっています。このようななかで競争を勝ち抜いていくためには、変化にも迅速かつ適切に対応できる次世代リーダーの育成が急務といえます。

これら理由から、人材育成の重要性は年々高まっています。企業が今後も成長し続けていけるよう、人材育成に力を入れていきましょう。

VUCA時代……「VUCA」は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったものです。変化が激しく、将来を予測することが難しい状況であることを表しています。

人材育成の手法

ここからは、人材育成の具体的な手法を紹介していきます。

OJT

OJTとは、「On-The-Job Training」の略称で、職場で実務を通して行われる教育や訓練のことです日本語では「職場内訓練」と呼ばれることもあります

OJTは、基本的にはマンツーマンで行われ、指導者を「トレーナー」、育成の対象者を「トレーニー」といいます。実践的なスキルが身につく、トレーニーの踏力や理解度に合わせた指導ができる、指導するなかでトレーナーも成長できるなどのメリットがあります。

実務を通して教えるといっても、トレーニーにいきなり業務をやらせる、仕事を見て覚えさせるなどというものではありません。OJTは、基本的にShow(やってみせる)→Tell(説明する)→Do(やらせてみる)→Check(評価・追加指導)の4ステップで進めていきます。

なお、OJTについては、以下の記事で詳しく解説しています。

OJTとは?Off-JTとの違いやメリット・デメリット、効果を高めるポイントを紹介

Off-JT

Off-JTとは、「Off-The-Job Training」の略称で、職場から離れて行われる教育全般を指します日本語では「職場外研修」と呼ばれることもあります

Off-JTの具体例

Off-JTは、「集合型研修」と「eラーニング」の2種類に分けることができます。

集合型研修

複数人の対象者を1つの会場に集めて行う研修のことです。階層別に行われるものだけでなく、営業研修やエンジニア研修のような業務・職種別の研修や、コミュニケーション研修、リーダーシップ研修のようなスキル別の研修もあります。

eラーニング

インターネットを利用した学習のことです。受講者は、時間と場所を選ばずに学習できます。テキストや動画だけでなく、アニメーションやCGVRなどを使って教材を作成するケースもあります。

 Off-JTは、複数人を一斉に教育できる、指導にバラツキが出にくい、受講者同士のコミュニケーション活性化につながるなどのメリットがあります。

Off-JTを実施する目的は企業によってさまざまですが、業務に必要な知識やスキルをインプットしてもらうために行われることが多いです。Off-JTでインプットし、OJTで実践(アウトプット)というような流れがつくれると、効率よく知識やスキルを身につけてもらうことができるでしょう。

なお、Off-JTについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

Off-JTとは?OJTとの違い、実施するメリットや効果を高めるポイントを解説

自己啓発

自己啓発とは、社員が自分の意思で学び、成長を目指すことです。社員の自主的な学びを支援するさまざまな制度を、「自己啓発援助制度」といいます。「Self Development System」を略して、「SD」や「SDS」と呼ばれることもあります

自己啓発援助制度の具体例

具体的には、以下のような制度や仕組みが自己開発援助制度に該当します。

  • 資格を取得するための受験料、テキスト代などを負担する。
  • 勉強会やセミナーへの参加費を負担する。
  • 資格や技能に対して手当を支給する。
  • 図書購入費用を負担する。

自己啓発援助制度を充実させることで、社員の学びに対するモチベーションを引き出すことができるでしょう。

その他の手法

ここまで、「人材育成の3本柱」と呼ばれる基本的な手法である「OJT」「Off-JT」「自己啓発」の3つを紹介してきましたが、その他にも、以下のような手法があります。

メンター制度

新入社員や若手社員(メンティ)を、知識や経験が豊富な先輩社員(メンター)が支援する制度です。基本的にはマンツーマンで支援が行われ、キャリアに関することや職場内での悩みなど、さまざまな問題解決をサポートします。

MBO(目標管理制度)

「マネジメントの父」とも呼ばれるピーター F. ドラッカーにより提唱されたマネジメント手法です。社員自身に目標を設定してもらい、進捗や達成度合いに応じて評価を決めます。MBOは、「Management by Objectives」の略称です。

ジョブローテーション

社員の成長を促すために行う、戦略的な部署異動のことです。社員に企業全体を把握してもらう、自分の適性を見つけてもらう、マネジメントスキルを身につけてもらうなど、さまざまな目的で行われることがあります。

1on1ミーティング

社員の成長を促すための11の面談のことです。一般的な面談のように、上司から指導やアドバイスをするのではなく、社員の話を聞くことに重きを置き、双方向のコミュニケーションで成長をサポートします。

コーチング

社員が自ら目標を達成できるようにサポートするコミュニケーションの取り方のことです。具体的な指示を与えるのではなく、質問を投げかけたり、気づきを与えたりすることで、社員のなかから答えを引き出します。

ストレッチアサインメント

その社員にとって難易度の高い業務を、あえて割り当てることです。成功すれば、本人は大きな自信を得ることができ、モチベーションアップにもつながるでしょう。

階層別の人材育成のポイント

次に、人材育成のポイントを階層別に紹介します。

新入社員~若手社員

新入社員または若手社員を対象とした人材育成は、実施するタイミングによって、以下の点を重視しましょう

新入社員には、自分の仕事の意味をしっかり理解してもらうことも大切です。「この仕事が何のためになるのだろう」「自分には合っていないのかもしれない」と感じると、モチベーションも下がってしまいます。この仕事が誰の役に立つのか、取り組むことでどのようなスキルが身につくのかなどを、わかりやすく伝えましょう

そして、学んだことをしっかりと自分のものにしてもらうために、積極的に実践の機会を与えるのもポイントです。

中堅社員

中堅社員には、他の社員をディレクションできるようにリーダーシップスキルを身につけてもらうことが重要ですリーダーのポジションを任せたり、OJTのトレーナーになってもらったりして、他者をリードする機会を与えることで、自身のリーダーシップを発揮できるようにサポートしましょう。

また、中堅社員はこなさなければならない業務が多く、忙しさからモチベーションも下がりやすいといえます。成果だけでなく努力もしっかり評価したり、今後のキャリアについて考える機会を与えたりして、モチベーションを引き出すことも大切です。

管理職

管理職には、マネジメントやコーチングなど、専門性の高いスキルが求められます。これらを習得・向上させるために、Off-JTが行われることが多いですが、知識や経験が少ない講師では、高い学習効果は得られません。管理職の人材育成は、一から十まで社内で実施しようとせず、外部の専門家の手を借りるのがおすすめです。

人材育成の課題と解決策

最後に、多くの企業が抱えている人材育成の課題と、その解決方法を紹介します。

1.指導する人材と時間が不足している

厚生労働省の『令和4年度「能力開発基本調査」』によると、約8割の事業所が、能力開発や人材育成に何らかの問題があると回答しています。具体的な問題点としては、「指導する人材が不足している」が58.5%と、最も多くなっています。また、45.3%が「人材育成を行う時間がない」と回答しています。この調査結果から、多くの企業で、人材育成を行うための人材と時間の確保が大きな課題となっていることがわかります。

出典:令和4年度能力開発基本調査|調査結果の概要1企業調査 50.3(PDF)|厚生労働省

解決策

このような課題を抱えているなら、複数の異なる手法を組み合わせて育成プログラムを設計することで、解決につながるかもしれません。先ほど紹介したように、人材育成にはさまざまな手法がありますが、特に指導者と時間の確保が難しいのが、OJTです。OJTは、基本的にマンツーマンで行われるため、育成対象の社員一人につき一人のトレーナーを確保しなければなりません。また、トレーナーは自身の業務と並行してOJTを行わなくてはならないため、その分時間も取られます。

OJTに入る前に、基本的な知識やスキルなどを、あらかじめ集合型研修やeラーニングで身につけてもらっておけば、トレーナーの負担を減らすことができます。指導する人材や時間が不足していると感じているなら、他の手法を組み合わせられないか、一度検討してみてはいかがでしょうか。

また、OJTは、ある程度仕組みを整えることも大切です。教える内容や評価基準を決めておくと、指導をスムーズに進められるようになるので、トレーナーは時間を管理しやすくなります。

2.指導する側の育成スキルが不足している

こちらも、OJTのよくある課題(デメリット)の1つです。株式会社日本能率協会マネジメントセンターが2022年に実施した「新人・若手社員のOJTに関するアンケート」では、63.6%が「指導にバラツキがある」、42.0%が「指導側の意識や能力が不足している」ことを、課題として挙げています

ちなみにこの調査でも、OJTの課題として最も多かったのは、「指導者に余裕(時間)がない」(64.7%)でした。

参考:新人・若手社員の「OJT」に関する調査結果|JMAM(ジェイマム)のプレスリリース

解決策

この課題を解決するために重要なのが、前項でも紹介しましたが、OJTの仕組みを整えるということです。教える内容や評価基準を決めておくことで、指導のバラツキを軽減できます。OJTに入る前にトレーナーを対象とした研修を実施すれば、人材育成に対する考え方や教え方を統一したり、不足しているスキルを身につけてもらったりもできるでしょうOJTは、現場に丸投げしないということが大切です。

3.予算をかけられない

先ほど紹介した厚生労働省の『令和4年度「能力開発基本調査」』では、能力開発や人材育成の問題として、12.7%の事業所が「育成を行うための金銭的余裕がない」と回答しています

人材育成にはさまざまな手法がありますが、特にコストがかかるのがOff-JTです。集合型研修を行うなら、会場費や受講者の交通費、宿泊費などが必要になりますし、eラーニングなら、教材作成費用やLMS運営費用などがかかります。また、準備をするのに多くの時間と労力も必要になります。

人材育成は企業の成長のために不可欠ですが、コストや時間がかかる一方で、業績や生産性にどのように影響を与えたかという効果が見えにくいため、人材育成よりも即戦力の採用に注力する企業も多いのです。

解決策

このような課題を抱えている場合も、複数の手法を組み合わせることで、解決につながる場合があります。たとえばOJTは、普段の業務のなかで行われるため、Off-JTよりもコストがかからないことが多いです。もし、現在実践的な内容までOff-JTで教えているという場合は、その部分をOJTにできないか検討してみてはいかがでしょうか

また、Off-JTは論理的・体系的な知識の習得に、OJTは実践的なスキルやノウハウを学ぶのに向いています。このように、それぞれの手法に特徴がありますので、コストや時間、担当者の負担といった部分だけでなく、「どのように組み合わせれば効果的か」という点も考慮しながら、育成プログラムを見直してみてください

「あそぶ社員研修」で受講者が楽しめる人材育成を

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです

あそぶ社員研修の資料を無料で受け取る

 

以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

クリティカルシンキング研修の資料を無料で受け取る

2.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

ロジカルシンキング研修の資料を無料で受け取る

3.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

⇒リーダーシップ研修の資料を無料で受け取る

4.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

交渉術・ネゴシエーション研修の資料を無料で受け取る

 

変化の激しい時代の中を勝ち抜いていくために、リーダーシップを発揮できる人材が求められるようになってきています。リーダーシップにはさまざまな理論や種類がありますが、ビジネスパーソンがまず身につけたいリーダーシップの一つが、「セルフリーダーシップ」です。

本記事では、セルフリーダーシップとは何か、セルフマネジメントとの違いや、求められている理由、身につけるメリット、高める方法を、わかりやすく解説します。さらに、組織のリーダーシップ開発に課題を感じている経営陣やマネジメント職、人事担当者に向けて、従業員のセルフリーダーシップを高めるために会社ができることを紹介します

 

受講者が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で実践できる知識・スキルを習得

⇒受講者のスキルアップとチームビルディングをはかる「あそぶ社員研修 総合資料」を無料で受け取る

 

セルフリーダーシップとは

リーダーシップ(leadership)は、統率力や指導力などの意味を持つ英単語です。リーダーシップにはさまざまな理論や定義がありますが、わかりやすく表すと「組織やチームをまとめ、目標達成に向けて導いていく力」であるといえるでしょう。

そして、セルフリーダーシップとは、英単語のセルフ(self:自分、自己)が意味するように、組織やチームではなく、自分自身を目標達成に導いていく力のことをいいます

セルフリーダーシップは、1980年代にチャールズ・マンツ氏によって提唱されたものだといわれています。チャールズ・マンツ氏が考えるセルフリーダーシップとは、業績を達成できるように、自分自身に影響を与えたり、方向づけたりする一連のプロセスのことです。セルフリーダーシップ論は、のちほど紹介するセルフマネジメント論の拡大理論として提唱されました。

セルフリーダーシップの具体例

では、セルフリーダーシップが高い人とは、どのような人なのでしょうか。以下は、セルフリーダーシップが高い人が実践している行動の一例です。

  • 自分の仕事や人生の目標を持っており、それを見直す習慣がある。
  • 自分の行動や発言に責任を持っている。
  • 自分の成長のために、批判的な意見もしっかり受け止める。
  • 新しいこと(経験、アイデア、機会など)に対して積極的である。
  • 周りの人や環境の良い部分を見つけようとする。
  • 悲観的にならない。

セルフマネジメントとの違い

マネジメント(management)は、管理という意味を持つ英単語です。セルフリーダーシップとセルフマネジメントは、どちらも自分自身に影響を与えるプロセスに注目したものですが、セルフリーダーシップは、「目標達成に向けて自分自身を導く力」、セルフマネジメントは「目標を達成するために自分自身を管理する力」であると言い換えることができます

セルフリーダーシップを提唱したチャールズ・マンツ氏は、 “目標によって喚起された「達成すべき」基準との不一致を低減するというプロセス”がセルフマネジメントであると述べています。

参考:階層型組織におけるリーダーシップ開発に対するセルフリーダーシップ論の貢献(森永雄太) – 立教大学学術リポジトリ

セルフリーダーシップ、セルフマネジメントとも、さまざまな理論や定義がありますが、セルフリーダーシップは「主体的に判断・行動する力」セルフマネジメントは「自身の心身の状態やモチベーションを管理する力」であり、セルフマネジメントはセルフリーダーシップの一部であると整理されることが多いとされています。

 

退屈になりがちな研修、あそびで楽しくしませんか?
⇒「あそぶ社員研修」の資料を見てみたい

 

セルフリーダーシップが求められている理由

近年、セルフリーダーシップが注目されるようになっているのは、セルフリーダーシップが、現代のリーダーやマネージャーに欠かせない能力の一つであるためです

現代社会は「VUCA時代」と呼ばれるほど変化が激しい時代となっており、これまでの経験やノウハウが通用しないケースも増えています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったもので、環境の変化が激しく、将来を予測することが難しい状況であることを意味しています。IT化やグローバル化などにより目まぐるしく変化し続けるビジネス環境に対応していくために、上に判断を求めるのではなく、自ら考え行動できる力のあるリーダーやマネージャーが求められるようになっているのです。

また、リーダーシップは「一部のカリスマ的な人物に備わった能力」だと考えられていた時代もありましたが、近年は「誰もが身につけられる能力」「リーダーだけでなくすべてのビジネスパーソンに求められるもの」と考えられるようになってきています。まずは自分自身をコントロールし、リードできるようにならなければ、他者に影響を与える存在になることは難しいでしょう。そのため、リーダーシップを向上させる一つの要素としても注目されているのではないでしょうか。

セルフリーダーシップを身につけるメリット

セルフリーダーシップを身につけることで、次のような効果が期待できます。

1.自分に自信が持てるようになる

セルフリーダーシップは、まず理想の自分と現状とのギャップを分析して、そのギャップを埋めていくことで高めていくことができます。「ギャップを埋めるにはどう行動すれば良いか」を考える習慣がつくと、ものごとを論理的に考えられるようになり、自信をもって自分の意見を伝えられるようになるでしょう

自分の意見に自信が持てるようになると、行動にもブレがなくなります。時間やタスクを管理するスキルも向上し、仕事をスムーズに進められるようになるでしょう。

2.仕事に対するモチベーションが高まる

セルフリーダーシップを身につけると、業務上の課題を「自分ごと」として捉えられるようになり、自分の発言や行動に対して責任感が芽生えます。すると、おのずと「うまく解決したい」「できるだけ結果を出したい」というような向上心が生まれ、仕事に対するモチベーションも高まります

さらに、業務上の課題を「自分ごと」として捉えられるようになると、自然と改善案や新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。

3.リーダーシップの向上につながる

厚生労働省は、資料「リーダーシップを発揮しよう」の中で、リーダーシップを「目標達成しようとするグループで、リーダーが目標達成に役立つ影響を与えること」と説明しています。

わかりやすく表すと、リーダーシップとは「他者に良い影響を与える力」と言い換えることができるでしょう。セルフリーダーシップを身につけ、自分自身をコントロールできるようになると、発言や行動が変わり、周りへの影響力も高まります。つまり、セルフリーダーシップを身につけることは、他者をリードするために必要なリーダーシップを鍛えることにもつながるのです

参考:01_リーダーシップを発揮しよう テキスト – 厚生労働省(PDF)

セルフリーダーシップを高める方法

次に、セルフリーダーシップを高める方法を紹介します。セルフリーダーシップは、以下の4ステップを繰り返し実践してくことで高めることができます。

  1. 理想の自分をイメージする
    「どうありたいのか」を自分自身に問いかけ、何を目指すのか、何を実現したいのか、明確な目標を設定します。
  2. 理想像と現状のギャップを分析する
    どうすれば目標を達成できるのか、今の自分には何が足りないのかなどを紙に書き出して整理し、理想の自分と現状のギャップを分析します。
  3. 改善策を考え、行動に移す
    前のステップで分析した結果をもとに、ギャップを埋めるためには何をすれば良いかを考え、実際に行動に移します。
  4. 成果を振り返る
    行動を起こしたら、成果を振り返ります。どのくらい目標に近づけたか、何が足りなかったかなどを客観的に評価して、次につなげていきましょう。

従業員のセルフリーダーシップを高めるために会社ができること

では、従業員のセルフリーダーシップを高めるために、会社がサポートできることはあるのでしょうか。最後に、具体的な5つのアクションを紹介します。

1.セルフリーダーシップの必要性を伝える

まずは、会社として「従業員のセルフリーダーシップ向上に取り組んでいく」ことを従業員に宣言しましょう。従業員にセルフリーダーシップを身につけてもらいたくても、従業員がそもそも「セルフリーダーシップ」という言葉を聞いたことがない可能性もあります。また、知っていたとしても、先ほどお伝えしたように、セルフリーダーシップにはさまざまな理論や定義があります。そのため、まずは「会社が考えるセルフリーダーシップとは何か」「なぜ必要なのか」を、従業員に明確に伝えるところから始めましょう。

2.「気づき」を与える

先ほど「セルフリーダーシップを高める方法」で紹介したとおり、セルフリーダーシップを高めるためには、まずは理想の自分をイメージし、明確な目標を設定することが大切です。しかし、誰もが目指すものや実現したいことを持っているとは限りません。従業員の内側にある「理想の自分」を引き出すために、リーダーやマネージャーから「気づき」を与えてみましょう。たとえば、次のような問いかけをしてみるのも一つの方法です。

【問いかけの例】

  • この会社でやりたいこと、嫌なことは何か。
  • なぜこの会社の、今の仕事を選んだのか。なぜ続けているのか。
  • 今の仕事をしていることで、ためになっていることはあるか。
  • これまでに経験したことで、仕事に役立っていることはあるか。
  • 自分が職場にどんな影響を与えていると感じるか。

または、面談や1on1ミーティングなどで、これまでの経験やスキルなどについての話を聞きながら、従業員の考えを以下の4つに整理しながら、キャリアビジョンを明確にしていくという方法もあります。

  1. やりたい+できる
  2. やりたい+できない(できるようになりたい)
  3. やりたくない+できる
  4. やりたくない+できない(できるようになりたいとも思わない)

なぜそう思うのか、将来どんな自分になりたいのかなども問いかけながら、従業員のキャリビジョンを具体化していきましょう。

3.個人に対する「会社からの期待」伝える

リーダーやマネージャーから、その従業員に会社が期待していることを伝えることも、セルフリーダーシップを高めるためには重要です。たとえば、以下が挙げられます。

  • これまで仕事をする中で素晴らしかったことや、もっと伸ばしてほしいスキル
  • これからどんな仕事でどんな経験を積み、どう成長してほしいと考えているか
  • その従業員が職場に与えている良い影響
  • 期待している成果

これらを伝えることで、従業員は自分がやりたいことと、会社から期待されていることが交差するポイントを探すようになります。

4.コミュニケーションを活性化させる

従業員が本音で話せるような環境がなければ、いくらリーダーやマネージャーが「気づき」を与えたり、期待を伝えたりしても、従業員の考えや思いを聞き出すことは難しいでしょう。

定期的に面談や1on1ミーティングの機会を設けるのももちろん良いですが、一番大切なのは、従業員同士が日頃から本音で話し合えるような職場環境をつくること。そのためには、信頼関係の構築が欠かせません。人事担当者は、現在自社には社内コミュニケーションにどんな課題があり、解決するにはどうすれば良いのかを考えてみてください。

5.セルフリーダーシップ研修を受講してもらう

最近は、セルフリーダーシップを学べる研修を実施している研修会社もあります。内容は研修会社によってさまざまですが、セルフリーダーシップとは何か、発揮するためのポイントなどについての講義だけでなく、具体的にとるべき行動について学べるワークショップや実習を行う研修などもあります。

繰り返しになりますが、セルフリーダーシップにはさまざまな理論や定義があります。セルフリーダーシップの考え方は研修会社によっても異なりますので、まずは経営陣や人事担当者で自社にとってのセルフリーダーシップを定義し、その定義に合った研修を選びましょう

【人材育成に最適な体験型研修】あそぶ社員研修

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです

 

あそぶ社員研修の資料を無料で受け取る

以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

クリティカルシンキング研修の資料を無料で受け取る

2.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

ロジカルシンキング研修の資料を無料で受け取る

3.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

⇒リーダーシップ研修の資料を無料で受け取る

4.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

交渉術・ネゴシエーション研修の資料を無料で受け取る

 

まとめ

本記事でも紹介したとおり、人材育成には、基本的な手法である「OJT」「Off-JT」「自己啓発」をはじめ、さまざまな手法があります。どの手法にもそれぞれ特徴がありますので、企業の状況や育成対象に合った手法を選びましょう。また、複数の手法を組み合わせることで、コストを削減できたり、現場社員の負担軽減につながったりすることもあります。現在採用している手法が適切か、一度見直してみてはいかがでしょうか。

少子高齢化やテクノロジーの進展により、人材育成の重要性が高まっています。今後も企業が成長し続けられるよう、優秀な人材を確保(採用)することだけでなく、既存社員を育てることにも注力していきましょう。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
⇒あそぶ社員研修 総合資料を受け取る

この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

よく読まれている記事