OJTとは?Off-JTとの違いやメリット・デメリット、効果を高めるポイントを紹介

  • 研修ノウハウ

社員を教育する方法の1つに、OJTがあります。職場のなかで、実際の業務を通して必要な知識やスキル、ノウハウを教えるというもので、「職場内訓練」とも呼ばれます。

本記事では、OJTとは具体的にどのようなものなのか、Off-JTとの違い、OJTのメリット・デメリットと、OJTの現状、効果を高めるポイントについて、わかりやすく解説します

 

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OJTとは

OJTとは、「On-The-Job Training」の頭文字をとったものです。先輩社員や上司が、後輩社員や部下に対して、実際の業務を通して必要な知識や技術などを指導するという、教育・訓練方法の1つです。「実際の業務を通して」とはいっても、後輩社員や部下にいきなり業務を行わせたり、背中を見て学ばせたりといったものではありません。OJTとは、職場で意図的・計画的・継続的に教育することいいます

OJTでは、指導する人を「トレーナー」、指導を受ける人を「トレーニー」と呼びます。OJTは、トレーナーとトレーニーの11で行われることが多いため、一人ひとりの能力や成長速度に合わせて教育ができるというメリットがあります。

OJTは、アメリカで生まれた教育・訓練方法です。第一次世界大戦が勃発し、造船所で多くの作業員を確保しなければならなくなった際に、チャールズ・R・アレンという人物が新人教育のために開発した、「4段階職業指導法」が基になっているといわれています。

OJT4ステップ

4段階職業指導法は、Show(やってみせる)→Tell(説明する)→Do(やらせてみる)→Check(評価・追加指導)という4ステップで進めていきます。これをOJTに当てはめると、以下のような流れになります。

Show(やってみせる)

まずは、トレーナーが見本として業務をやって見せます。

Tell(説明する)

トレーナーがトレーニーに業務の内容を説明します。一度にすべて教えるのではなく、一点ずつしっかり教えることが大切です。

Do(やらせてみる)

トレーニーに業務をやらせてみます。ポイントを説明させたり、質問をしたりしながら、トレーニーが完全に理解できるまで続けます。

Check(評価・追加指導)

Doを評価し、必要であれば追加指導を行います。

指導はこの4ステップで進めていきますが、第1ステップの「Show」に入る前に、トレーナーはトレーニーの知識やスキルのレベルを把握しておきましょう。加えて、事前にトレーニーの学習意欲を引き出しておくこと、適切な持ち場を与えることも重要です。

参考:「製造現場の事故を防ぐ安全工学の考え方と実践」(著者:中村昌允 / 出版社:オーム社 / 発売:2013年)

OJTOff-JTの違い

Off-JTとは、「Off-The-Job Training」の略称で、日本語では「職場外研修」とも呼ばれます集合型研修やeラーニングなど、職場外で行われる研修や教育を指します。Off-JTは、複数人を一斉に教育できるため、教育の質にばらつきが出にくいことや、研修担当者の負担が少ないこと、さらにOff-JTを通して受講者同士のコミュニケーションが活発になるというメリットがあります。

OJTOff-JTとも、実施する目的は企業によって異なりますが、OJTは実際の業務の進め方やノウハウを身につけてもらうため、Off-JTは業務に必要な基礎的な知識・スキルを学んでもらうために行われる場合が多いようです。まずOff-JTで新しい知識をインプットしてもらい、その後OJTでアウトプットするというように、2つを組み合わせて育成プログラムを設計するケースも見られます。

また、OJTは職場で継続的に行うものですが、Off-JTは短期(数時間~数日)で行うものです。

2つの違いを、表にまとめてみましょう。

 

OJT

Off-JT

実施場所

職場外

職場内

教育対象

基本的には一人

複数人

目的

業務の進め方、ノウハウを身につける

業務に必要な基本的な知識・スキルを学ぶ

期間

継続的に行う

数時間~数日(研修による)

 

Off‐JTについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

Off-JTとは?OJTとの違い、実施するメリットや効果を高めるポイントを解説

OJTのメリット・デメリット

ここからは、OJTのメリット・デメリットについて詳しく見ていきます。

メリット

まずは、OJTのメリットです。

1.即戦力が育つ

OJTは、職場で実際の業務を通して行われるため、即戦力の育成に向いているといえます。トレーニーは、実際に業務をどう進めるのか、どうすればうまくいくのかといったことを、目で見て確かめることができ、教えてもらったこともすぐに実践に移すことができます。そのため、OJTは知識やスキルが身につきやすいというメリットがあります

またOJTは、基本的にはトレーナーとトレーニーの11で行われます。個人の能力や成長速度に合わせた指導を行えるため、トレーニーを着実に育成できるというのも、OJTの特徴です。さらに、実際の業務のなかではマニュアル通りにいかないことも発生しますので、対応力の向上も期待できるでしょう。

2.社内コミュニケーションが活性化する

OJTは、基本的には11で行われるため、一人の講師が複数人を教育するOff-JTとは違い、双方向のコミュニケーションが生まれるというメリットがあります。トレーニーは、指導のなかでわからないことがあれば、その場でトレーナーに質問をすることができます。フィードバックもその場で受けられるため、「正しく理解できているのだろうか」「この進め方で合っているのだろうか」というような不安を感じることも少なくなるでしょう。

さらに、このようなコミュニケーションとるなかで、信頼関係も生まれます。トレーナーとトレーニーは、この先も一緒に仕事をしてく仲間です。OJTを通して良好な関係を築くことができれば、その後もスムーズに業務を進めていけるようになるでしょう。

また、実際の業務を進めるなかでは、部署内のほかの社員や、他部署の社員とも接する機会もあるでしょう。OJTを通じてさまざまな人たちとの交流が生まれ、トレーニーは「仕事は一人では成り立たない」ということも学ぶことができます。その結果として、トレーニーの仕事に対するモチベーションの向上も期待できるでしょう。

3.トレーナーも成長できる

トレーニーに業務を教えるためには、まずトレーナー自身が業務のことを深く理解できていなければなりません。普段何気なくこなしている業務に改めて向き合うことで、トレーナーは業務の内容や重要性、魅力などを再認識することができるでしょう。

また、仕事ができる人が優秀なトレーナーになれるというわけではありません。トレーナーには、仕事をこなすスキルだけでなく、コミュニケーションスキルやフィードバックスキルなど、指導に必要なスキルも求められます。効果的なOJTを行うためには、トレーナーにこれらのスキルを身につけてもらわなければなりません。

このように、トレーニーだけでなく、トレーナーの指導力の向上にもつながるという点も、OJTのメリットの1つです

4.人材育成のコストを抑えられる

Off-JTは、講師と受講者が1つの会場に集まって行われる「集合型研修」と、インターネットを利用した学習「eラーニング」の2種類に分けられますが、いずれも実施するにはコストがかかります。たとえば集合型研修なら、研修会場の利用料や、受講者の交通費、宿泊費などです。eラーニングなら、LMSの運営や教材の作成にかかる費用などが挙げられます。

それに対してOJTは、職場で実際の業務を通して行われるため、Off-JTに比べてコストがかからない場合が多いです。人材育成にかかるコストを抑えやすいため、継続して取り組みやすいというメリットもあります

デメリット

次に、OJT3つの課題(デメリット)です。

1.トレーナーの負担が増える

トレーナーは、通常の業務をこなしながらトレーニーを指導・教育しなくてはなりません。そのため、トレーナーとなる社員にかかる負担が大きくなるというのが、OJTのデメリットの1つです。精神的な負担も増えますが、多くの人が課題に感じているのが時間配分です。時間的な余裕がないと、「指導に時間がかかってしまい、こなすべき業務が予定通りに終わらなかった」、または、「業務に追われてトレーナーの仕事を放置してしまった」といったことになりかねません。企業としては、せっかくのOJTが「形だけ」の状態になってしまわないように、トレーナーがOJTに集中できる環境をつくってあげることが大切です。

また、OJTに入る前にOff-JTで土台を固めておくのも、トレーナーの負担を減らすための1つの方法です。あらかじめOff-JTで基礎を学んでもらっておくことで、OJTではより実践的な教育が行えるようになります。

2.トレーナーによって教育の質にばらつきが出る

OJTは基本的に11で行われるため、教育の質がトレーナーの教え方や育成スキルに左右されやすいというデメリットがあります

この課題をクリアするために、OJTを実施する前に、トレーナーに人材育成の方針や目標を伝え、共通認識を持たせておきましょう。また、あらかじめトレーナーに対して研修を実施し、教える内容、教え方などを統一させておくことも大切です。そして、先ほどもお伝えしたように、トレーナーにはコミュニケーションスキルやフィードバックスキルなども求められます。トレーナー向けの研修を実施している研修会社もありますので、こうした研修を受講させるなどして、必要なスキルも身につけてもらっておきましょう。

3.論理的・体系的な知識の習得には不向き

OJTは、実践的なスキルを身につけるのには適していますが、理論や概念、フレームワークなどの習得には向いていません。この場合は、Off-JTのほうが向いているでしょう。

しかし、Off-JTだけでは、学んだことが「実際にどう役に立つのか」を掴めないこともあります。OJT Off-JT には、それぞれメリット・デメリットがありますので、どちらかだけでなく、2つを組み合わせて育成プログラムを設計することが重要です。さらに、SDSも組み合わせることで、より効果的に人材を育成することができるでしょう。SDSについては、記事の後半で詳しく解説しています。

OJTの現状

実際に、現在どのくらいの企業でOJTが行われているのでしょうか。また、OJTを実施している企業では、どのようなことに課題を感じているのでしょうか。ここからは、OJTの現状をデータとともに紹介します。

6割の企業がOJTを実施している

厚生労働省が公表している『令和3年度「能力開発基本調査」』によると、令和3年度にOJTを実施した事業所は61.8%となっています。このうち、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は59.1%でした。下図のとおり、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所の割合は、上下しながらも6割前後で推移しています。

出典:調査結果の概要 1 企業調査 – 厚生労働省(PDF)

また、OJTの対象を階層別に見ると、新入社員が51.5%、中堅社員が36.4%、管理職層が22.3%となっており、新入社員に対してのOJTが最も多くなっています。

さらに、企業規模が大きいほどOJTの実施率が高い傾向も見られます。正社員に対して計画的なOJTを実施した割合は、企業規模が3049人で36.9%5099人で52.8%100299人で57.9%300999人で69.6%1,000人以上では82.4%となっています。

9割の企業がOJTに課題を感じている

株式会社日本能率協会マネジメントセンターが2022年に実施した「新人・若手社員のOJTに関するアンケート」の結果を見ると、新人・若手社員のOJTに「課題がある」と回答した企業の割合は約9割となっています。

具体的な課題としては、トレーナーに時間的な余裕がないことや、指導にばらつきがあること、トレーナーの意識や能力が不足していることなど、トレーナーに関する課題が多く挙げられています。先ほど紹介したOJTのデメリットのうち、「トレーナーの負担が増える」と「トレーナーによって教育の質にばらつきが出る」の2つを、実際に課題と感じている企業が多いことがわかります。

参考:新人・若手社員の「OJT」に関する調査結果|JMAM(ジェイマム)のプレスリリース

OJTの効果を高めるポイント

最後に、OJTの課題をクリアし、より効果的な指導・教育を行うためのポイントを紹介します。

Off-JTSDSと組み合わせる

先ほどもお伝えしたように、Off-JTは業務に就く前に基礎的な知識・スキルを学んでもらうため、OJTは実際の業務の進め方やノウハウを身につけてもらうために行われる場合が多いです。Off-JTはインプットを、OJTはアウトプットを重視するという特徴があるため、2つを組み合わせて「インプット→アウトプット」の流れをつくると、学びが定着しやすくなるでしょう。また、トレーニーにあらかじめOff-JTで基礎を身につけてもらっておけば、トレーナーの負担も減り、OJTではより実践的な指導に時間を割けるようになります。

OJTOff-JTだけでなく、SDSも忘れてはいけません。SDSとは、「Self Development System」の略称で、日本語では「自己啓発援助制度」ともいわれます社員の自主的な学びを支援するためのさまざまな制度のことです。たとえば、資格を取得するための費用(受験料、テキスト代など)を負担する制度や、資格手当や技能手当などが挙げられます。OJTOff-JTは、どうしても社員は「受け身」になりがちといえます。能力開発においては、SDSを充実させて社員の「学びたい」「成長したい」という意欲を引き出し、自主的な学習を促すことも重要なのです。

OJTOff-JTSDSは、人材育成に欠かせない「3つの柱」といわれることもあります。3つをバランス良く組み合わせることで、より効果的に人材を育成できるでしょう。

OJTを「仕組み化」する

先ほど紹介しました株式会社日本能率協会マネジメントセンターの「新人・若手社員のOJTに関するアンケート」では、約9割の企業がOJTの「見直しを検討している」と回答しています。具体的な改善策としては、「現場に任せていたOJTを仕組み化する」(40.2%)という回答が最も多くなっています。

参考:新人・若手社員の「OJT」に関する調査結果|JMAM(ジェイマム)のプレスリリース

仕組み化とは、OJTを実施するための環境や制度を整えるということです。たとえば、教育の質のばらつきを減らすためにあらかじめ教える内容や評価基準を決めておく、トレーナーを対象とした研修を実施して教え方や育成スキルを身につけてもらう、といった取り組みが考えられます。また、トレーナーのモチベーションを維持するためには、OJTの成果を人事評価に反映させる、トレーニーを指導するうえでの悩みを相談できる機会を設けるなど、トレーナーを支援する仕組みもあると良いでしょう。

OJTは、基本的にはトレーナーとトレーニーの11で行われるものですが、職場全体で取り組むものです。OJTを仕組み化することで、教育の質に差が出にくくなる、トレーナーの負担を減らせるというだけでなく、「OJTは職場全体で取り組むもの」という意識を醸成することもできるでしょう。

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まとめ

OJTは実際の業務を通して行われるため、知識やスキルが定着しやすく、さらに社内コミュニケーション活性化や、人材育成コストの削減にもつながるため、多くの企業で実施されています。また、トレーニーだけでなく、トレーナーも一緒に成長できるという点も、OJTの大きなメリットです。

ただ、実際にOJTを実施している企業の多くが、トレーナーに大きな負担がかかることや、教育の質にばらつきが出ることに課題を感じています。これらの課題をクリアし、教育の効果を高めるためには、OJTを仕組み化し、Off-JTSDSも組み合わせて育成計画を立てることが重要です。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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