研修転移とは?研修を成果につなげるポイントを解説

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この記事の監修者
株式会社motch me 取締役
石野 太一
同志社大学在学中に大学生向けクリエイティブスクールの立ち上げに携わる。25歳の時に「地頭を鍛える」をコンセプトに、謎解きやパズルを用いた学習塾「たいち数楽教室」を開塾し、延べ300名以上を指導。その後ベンチャー企業の一号社員として研修事業の責任者を務め、営業・コンテンツ開発から講師登壇までを担い、年間88回登壇した実績を持つ。「講師は現場を離れて講師だけをやっていてはいけない」をモットーに、現在はイベント制作会社の取締役として経営企画・人事に携わりながら、講師活動を続けている。

多くの工数と費用をかけて研修を実施しても、「効果が得られているのかわからない」「受講者の行動にあまり変化が見られない」などという課題を抱えている企業は少なくありません。

本記事では、研修を成果につなげるために重要な「研修転移」という概念について解説します。研修転移とは何か、研修転移が失敗する原因、成功させるためのポイントを、詳しく見ていきましょう。

 

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研修転移とは

研修転移とは、研修で学んだ知識やスキルなどが実際に現場で活用され、成果につながることを意味します。この言葉は、2018年に『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(著者:中原 淳、島村 公俊、鈴木 英智佳、関根 雅泰 / 出版社:ダイヤモンド社)という書籍が発売され、注目されるようになりました。

研修転移をこれまでに用いられてきた言葉で表すなら、「行動変容が実現した状態」と言い換えることができます。人材育成における行動変容とは、研修や教育を受けたことで意識や考え方が変化し、行動がよい方向に変わって、習慣的にできるようになることを指します。行動変容については以下でも詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。

研修で行動変容を促すアプローチ方法とは?バイアスやステージモデル、計測方法も解説 – あそぶ社員研修

研修を実施しても、社員が学んだことを実際に活用できるようにならなければ、「効果があった」とは言えません。かけたコストも無駄になってしまいます。研修は、研修転移を意識して設計・実行することが大切です。

研修転移と学習転移の違い

研修転移と似ている言葉に、学習転移があります。学習転移とは、学んだ知識やスキルが新たな学習や別の状況に応用されることを意味する言葉です。たとえば、パソコン教室でエクセルの使い方や活用法を学んだ人が、機能や操作方法が似ているスプレッドシートをすぐに使えるようになることなどが挙げられます。

一方の研修転移は、先ほどお伝えしたように、研修後に学んだことを現場で実践できるようになり、成果が生み出されることを指します。「研修から現場へ」移ることに限定されているのが特徴です。

学習転移は、心理学や教育学の分野で用いられてきた言葉で、研修転移よりも広い概念といえます。

 

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研修転移が失敗する原因

研修を実施しても、「実践につながらない」「研修の直後は行動が変わるが、しばらくするともとに戻ってしまう」などは、多くの企業が抱えている課題です。なぜ、研修転移はうまくいかないのでしょうか。ここでは、考えられる主な原因を解説します。

学習内容を忘れてしまう

人の脳は、知識や情報などを頭に入れても、1日後にはその74%を忘れてしまい、さらに1週間後には77%、1ヶ月後には79%もの記憶が失われるといわれています。これは、ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱した「エビングハウスの忘却曲線」が示す数値です。

学んだことを記憶として定着させるために重要なのが、振り返りや復習です。しかし、仕事が忙しくなかなか研修の振り返りや復習ができない場合もあるでしょう。そのため、受講者の自主性に任せるのではなく、企業のほうから振り返りや復習の機会を提供することが大切なのです。

また、研修が座学中心だと、そもそも学習内容が定着しづらいという側面もあります。以下は、学習方法別の学習定着率を示した「ラーニングピラミッド」と呼ばれるものです。学習内容が定着しやすく(忘れにくく)なるよう、受講者が能動的に学べるような学習方法を取り入れるなどして、研修そのものも工夫する必要があります。

出典:あそぶ社員研修

受講者のモチベーションが低い

受講者のモチベーションが低いと、研修を工夫しても内容が身につきにくくなります。これでは、当然実践にもつながっていきません。モチベーションが上がらない原因としては、「研修の目的や目標を理解できていない」「会社や上司に言われて仕方なく受講している」「座っている時間が長くて退屈・きつい」などが考えられます。

モチベーション高く研修に取り組んでもらうためには、受講者に「何のために研修を受けるのか」をしっかりと理解してもらう必要があります。また、座っている時間が長いと身体的にも精神的にも負担が大きくなります。研修のテーマにもよりますが、受講者が「聞くだけ・見るだけ」の研修にならないよう、内容も工夫できるとよいでしょう。

研修と現場がつながっていない

研修が実践につながらない場合、受講者が研修と現場をつなげることができていない可能性が考えられます。言い換えると、「研修で学んだことが、現場でどのように活かせるのかをイメージできていない」状態です。

または、イメージはできているものの、現場と連携できていないために実践できない場合もあるでしょう。たとえば、「実践する環境が整っていない」「一緒に働くメンバー(上司や同僚など)が研修内容や必要性を理解できておらず、実践するための十分なサポートを受けられない」といったケースが考えられます。

研修後の目標や行動を評価する仕組みがない

研修後の明確な目標を用意することも大切です。これがないと、受講者は何のために、何をどうすればよいのか迷ってしまうでしょう。また、目標があれば「達成するためにがんばろう」という気持ちも生まれますが、目標がないとどこを目指せばよいのかわからず、モチベーションも下がってしまいます。研修直後は行動が変わったとしても、しばらくするともとに戻ってしまう可能性があるでしょう。

そして目標だけでなく、あわせてその行動を評価する仕組みを用意しておくことも重要です。せっかく研修で学んだことを現場で実践したにもかかわらず、誰もそれを見てくれない、関心を持ってくれない、フィードバックをしてくれないといった状態では、新たな行動や習慣が持続しにくくなります。また、研修は研修転移が実現してこそ「効果があった」といえます。行動を評価する仕組みがないと、研修の効果の測定も難しくなりますので、用意しておくことをおすすめします。

研修が「イベント」になっている

研修が単発のイベントのようなものになってしまっているケースもあります。これも、実践につながらない研修によくあるパターンです。

近年は受講者が能動的・主体的に参加して学ぶ「アクティ・ブラーニング」が重視されていることもあり、研修にもビジネスゲームやアクティビティなどを取り入れる企業が増えています。このような研修は適切に設計すれば学習の効果を高めることが可能ですが、ただ「楽しかった」「刺激になった」だけで終わってしまうケースも少なくないのです。

この他、組織の目標やビジョンと研修が紐づいていない場合も、イベントのようになってしまうケースが多くみられます。

研修転移を成功させるためのポイント

では、研修転移を成功させるためにはどうすればよいのでしょうか。最後に、5つのポイントを紹介します。

研修前後の働きかけを見直す

ウエストミシガン大学のロバート・ブリンカーホフ教授は2007年に、研修が失敗する原因は「4割が研修前、2割が研修中、4割が研修後」にあると発表しています。これは、「4:2:4の法則」や「40:20:40モデル」と呼ばれる理論です。

研修が行動や成果につながらないと、どうしても「研修中」のステップをより良くしようと考えてしまいがちです。もちろん、研修そのものを工夫することも大切ですが、研修前後の働きかけも、研修の効果に大きな影響を与えます。

では、具体的にどのような働きかけが必要なのか、詳しく見ていきましょう。

研修前

研修前の段階では、「何のために受ける必要があるのだろう」「研修のせいで1日潰れてしまう」などと、研修に対してネガティブな感情を抱いている人も少なくないでしょう。または、上司や同僚から「この忙しい時期に研修に行くのですか?」などと言われるケースもあります。このような状態で研修を受けても知識やスキルは身につかず、研修転移もできません。

研修を成果につなげるためには、一緒に働くメンバー、特に上司の協力が欠かせません。まずは上司に研修の目的や必要性を理解してもらうことが大切です。上司から研修で学んできてほしいことや、研修後に期待することを伝えることで、受講者は研修を「自分ごと」に感じられ、前向きな気持ちで参加できるようになるでしょう。

また、本当に現場のためになる研修を実施するためには、講師に現場を把握してもらっておくことも大切です。講師が直接現場を見に行くことが難しい場合は、研修担当者が現場で働く社員にヒアリングなどを行い、その内容を講師に共有しておきましょう。

研修後

新しく覚えたことも、時間が経てば忘れてしまうものです。研修後は振り返りや復習の機会を提供することで、学習内容が長期記憶として定着し、行動にもつながりやすくなります。

先ほどお伝えしたとおり、人の脳は、新しく学んだことの約7割を1日後には忘れてしまうといわれているので、研修が終わったその日、または翌日にこの機会を設けることが重要です。具体的には、研修で学んだことや今後の目標などを上司に報告してもらう、レポートにまとめて提出してもらうなどの方法が考えられます。

そして、適切なタイミングでフォローアップ研修も実施しましょう。どのような研修であっても、少なくとも一回はフォローアップ研修を行うことが望ましいです。オンライン形式で実施すれば、研修担当者の負担も抑えられます。

その他、定期的にフォローアップ面談を実施する、受講者同士で集まって研修後の行動や改善点を話し合う機会を設けるなどの取り組みも有効です。

研修の目的と目標を伝える

研修は、目的と目標を明確にしておくことが重要です。そして、それを受講者にも伝え、理解した状態で研修に臨んでもらいましょう。

研修における目的とは、「なぜその研修を実施するのか」という理由です。研修転移を実現させ、「どのような成果を得たいのか」または「どのような課題を解決・改善したいのか」と考えるとよいでしょう。

そして研修における目標とは、目的を達成するための指標のことです。「受講者に求める変化」や「身に着けてほしいスキル」などから考え、具体的に、かつ客観的な評価ができるように設定します。

目的と目標が明確に示されていると、受講者は「自分は何を期待されているのか」を意識しながら研修を受けることができ、研修後の実践につながりやすくなります。目的と目標はあらかじめ受講者に共有しておき、研修の冒頭でも改めて伝えるとよいでしょう。

研修の内容を見直す

新型コロナウイルスが流行して以降、研修にもオンラインを活用することが一般的となり、研修の数も増加している傾向がみられます。しかし、研修の数が増えるとそれだけ研修転移は難しくなります。研修の種類を増やすよりも、ある程度数を絞って、その研修のフォローアップ研修を増やすほうが効果的な場合もあります。自社で実施している(または実施する予定の)研修が本当に必要なものなのかどうか、一度見直してみることをおすすめします。

そして、先ほど「ラーニングピラミッド」を紹介しましたが、座学だけの研修よりも、何か「体験」があったほうが、学習内容が定着しやすくなります。テーマにもよりますが、受講者が前のめりになれるようなプログラムにできないか、一つひとつの研修の内容も見直してみてください。

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「あそぶ社員研修」は、株式会社IKUSAが提供する研修サービスです。テーマによっては、講義・ワークにプラスして関連するアクティビティが取り入れられているプログラムもあります。いずれも少人数のグループに分かれて、楽しく取り組めるアクティビティとなっており、チームビルディングにつながるよう設計されているのが特徴です。

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現場で実践する機会を作る

研修後は、学んだことを現場で実践する機会をできるだけ多く提供しましょう。具体的には、学んだ知識・スキルを活かせる業務を任せる、プロジェクトに参加させるなどの方法が考えられます。そして、受講者の行動に対してしっかりフィードバックを与えることも重要です。定期的に1on1を実施し、良かったところは褒め、改善すべき点は一緒に考えるなどして、コミュニケーションをとりながら成長をサポートすることが重要です。

これを行うためには、上司をはじめ現場の協力が欠かせません。研修が終わった後も、現場を巻き込んで研修転移を促していきましょう。研修担当者としては、「現場のことは現場で」と丸投げしてしまわないように注意してください。進捗状況を確認したり、頻繁に情報共有を行ったりして、コミュニケーションをとりながら進めていきましょう。

効果を測定・把握する

研修を実施したら、効果を測定することも重要です。これを行わないと、ここまでに紹介した取り組みを実施しても、研修転移につながっているのかどうかを把握することができません。

具体的な方法としては、

  • 受講者本人や上司に対してヒアリングやアンケートを実施する
  • 行動チェックリストを作って、受講者本人と上司にそれぞれ評価をしてもらう

などが考えられます。

アンケートを実施すると、もしかしたら「意味のない研修だった」「学びがなかった」など、研修担当者としてはつらい意見が返ってくることもあるかもしれません。ですが、「研修のおかげで〇〇ができるようになった」「このような成果を上げることができた」など、ポジティブな意見が返ってくることもあります。これらの意見は、研修担当者のモチベーションにもなるはずです。作成や集計に手間はかかりますが、アンケートは実施することをおすすめします。

カークパトリックモデル

研修の効果をできるだけ正確に把握するために、カークパトリックモデルも活用してみましょう。カークパトリックモデルとは、1959年にアメリカの経営学者、ドナルド・カークパトリックが提唱した、教育の効果を測定・評価するためのモデルのことです。以下の4段階に分けて測定するため、「4段階評価モデル」とも呼ばれることがあります。

  • 反応(Reaction)……研修そのものに対する反応(満足度)を測定する
  • 学習(Learning)……研修によりどのくらいの知識・スキルを習得できたかを測定する
  • 行動(Behavior)……研修で得た学びを業務に活用できているかを測定する
  • 結果(Results)……研修を実施したことにより企業や組織にもたらされた成果を測定する

カークパトリックモデルについては、以下の記事で詳しく解説しています。

カークパトリックモデルとは?効果の測定方法やポイントをわかりやすく解説 – あそぶ社員研修

まとめ

研修を実施しても、学んだことが現場で活かされなければ、成果にはつながりません。研修転移を実現するためには、研修そのものを工夫するだけでなく、前後の働きかけが重要です。本記事で紹介した内容も参考にしていただきながら、自社の研修を見直してみてはいかがでしょうか。

参考:研修で学んだことをどうすれば仕事に活かせるか――“研修転移”の実践方法 | HRオンライン | ダイヤモンド・オンライン

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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