ロジカルシンキングとは?定義・必要性・基本的な手法「MECE(ミーシー)」について解説
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ビジネスシーンにおいて、論理的に物事を考える「ロジカルシンキング」は、とても重要なスキルです。現代社会では、データを活用する機会が増えたことで、経営戦略やマーケティング戦略を立てるための分析・解析といった全体を把握して予測する思考能力が求められます。
また、近年、企業のビジネスは非常に複雑化しており、さまざまな要因を正しく認識し、その内容を整理、目標への道筋を立てなければなりません。そのため、ビジネスパーソンにとって、ロジカルシンキングは、不可欠なスキルといえるでしょう。
本記事では、「ロジカルシンキング」の概要やその必要性、論理的思考を活用するための手法である「MECE」について、わかりやすく解説します。
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ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングとは、「論理的な」といった意味を持つロジカル(Logical)と、「思考」を意味するシンキング(Thinking)を掛け合わせた言葉です。ロジカルシンキングを日本語に訳すと、「論理的思考」や「論理的な考え方」と表すことができます。ロジカルシンキングは、「客観的な根拠を基に、論理的な結論を導き出す思考プロセス」といった定義がされており、「物事を感覚的に捉えるのではなく、矛盾や破綻が起こらないような道筋を立て、結論を導く思考方法」です。
また、ビジネスシーンで使用されているロジカルシンキングには、「論理的に矛盾や破綻のない考え方」というだけでなく、「現実に即している主張や提案」といった意味が含まれています。使用シーンによって意味合いが異なる点は注意が必要です。
参考:ロジカルシンキングの授業実践― 児童・生徒用批判的思考-学習態度尺度を用いて(PDF)
なぜロジカルシンキングが必要なのか
国際化や事業内容の複雑化など、社会の変化が急速に進むなかで、ビジネスパーソンには、「問題解決型の思考能力」や「説得性のあるコミュニケーション能力」が求められています。ロジカルシンキングを活用することで、主観的な視点に捉われることなく、広い視野で物事を客観的に分析できるため、問題に対してより正確な回答を導き出すことができるでしょう。
また、ロジカルシンキングは、物事を体系的に捉え、道筋を立てて考える思考方法のため、異なる立場や専門外の相手であっても相手の意見を論理的に判断できます。現代社会で働くビジネスパーソンにとって「考える力」とも呼べるロジカルシンキングは、非常に重要な能力であるといえるでしょう。
ロジカルシンキングの代表的なフレームワーク
物事を論理的に考えるためには、考え方の枠組みや骨組みなど基礎部分を理解しておくことが必要です。考え方の基礎を知ることで、より優れたロジカルシンキングを習得し、活用することができるでしょう。ここでは、ロジカルシンキングに基づく代表的な3つのフレームワークを紹介します。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、問題や課題を構成する要素を見つけ出し、ツリー型に細かく分解していくことで解決策を導き出す手法です。ロジックツリーでは、以下の3つの手順を踏むことで、抜けや漏れとなる要因を洗い出し、的確な解決策を挙げることができます。
- 要素分解ツリー:段階的に要素を分解することで、問題を可視化し全体像を掴む
- 原因究明ツリー:問題が発生する原因を書き出し、整理する
- 問題解決ツリー:問題に対するあらゆる解決策を模索する
ロジックツリーは、物事を体系的に捉え整理する際に有用なフレームワークです。全体像がわかりにくい複雑な課題や問題に対しては、ロジックツリーを活用したロジカルシンキングを行うことで、解決のきっかけが掴めるでしょう。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッド構造を用いて、伝えたい主張や根拠を整理するためのフレームワークが「ピラミッドストラクチャー」です。ピラミッドストラクチャーでは、最も重要な結論や主張をピラミッドの頂点に置き、その根拠を下に配置していくことで、結論の正しさを証明します。ロジカルシンキングを用いて、自身の主張や意見を論理的に説明したい場合には、根拠を明確に示すフレームワークである「ピラミッドストラクチャー」が活用できます。
グルーピング
グルーピングとは、複数の意見や課題をまとめ、グループ化する際に用いられるフレームワークです。グループ化を行うことで、漏れや重複を防ぎ、優先順位を明確にすることができます。また、グルーピングは、整理を行うためのフレームワークであるため、グルーピングを行った後に、「ロジックツリー」や「ピラミッドストラクチャー」に当てはめていくことで、意見や課題をより深堀できるでしょう。
ロジカルシンキングの基本的な手法「MECE(ミーシー)」
前述したように、ロジカルシンキングを習得し、活用するためには、理解しておかなければならないいくつかのフレームワークが存在します。そのなかでも、ロジカルシンキングの基本となるフレームワークが「MECE(ミーシー)」です。ここでは、論理的思考に不可欠な「MECE」の考え方について、詳しく解説します。
「MECE」とは
「MECE」とは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った言葉で、各単語には以下のような意味があります。
- Mutually:互いに
- Exclusive:重複せず
- Collectively:全体的に
- Exhaustive:漏れがない
つまり「MECE」とは、「互いに重複せず、全体として漏れがない」といった意味を持つ言葉です。
「MECE」が必要とされる理由
ロジカルシンキングを活用し、矛盾のない結論を導くためには、要素の漏れや重複をチェックしておく必要があります。要素に漏れがある状態で出た結論は、正しい内容ではないため、ロジカルシンキングに基づく結論ではないといえるでしょう。また、重複した要素があるケースでは、同じ要件を何度も検討する必要があり、結論を導くために、多くの時間がかかるといった問題が発生します。必要な要素や意見を「漏れなくダブりなく」考える「MECE」を活用することで、物事の正確な本質を捉え、問題点を整理できるようになるでしょう。
また、この「漏れなくダブりなく」といった「MECE」考え方は、マーケティングや経営戦略・課題解決・人材育成などの、あらゆるビジネスシーンで活用できる思考です。そのため、現代社会で働くビジネスパーソンには、「MECE」に基づいたロジカルシンキングの習得が求められています。
「MECE」の具体的な例
「MECE」に基づいた論理的な思考を理解するためには、その具体例について知っておく必要があります。ここでは、マーケティングに基づいた、「MECE」になっている例と「MECE」になっていない(漏れや重複がある)例を見ていきましょう。
「MECE」になっているケース
ここでは、ターゲット層を性別年齢別に検討するケースについて考えてみましょう。販売ターゲットを検討する際に、以下のような設定になっている場合は、漏れなくダブりのない「MECE」の状態であるといえます。
- 18未満の女性
- 18歳以上の女性
- 18歳未満の男性
- 18歳以上の男性
このケースでは、ターゲット対象にすべての年齢と性別が含まれており、対象に重複している点もありません。正しいマーケティングを行うためには、ターゲットを設定する際に、このような「MECE」の状態にしておくことが大切です。
「MECE」になっていないケース
「MECE」になっていないパターンは、以下の3つの分類することができます。ここでは、各パターンの具体例について、見ていきましょう。
重複はないが漏れがある
商品のターゲット層を年代別に検討する際に、以下のように分類した場合は、「重複はないが漏れがある」状態になります。
- 10代・20代・30代
このようなケースでは、年代に重複はありませんが、10代未満や40代以降の層が含まれていないため、漏れがある状態といえるでしょう。
漏れはないが重複がある
ターゲットを年代と性別で分類した場合、以下のようなパターンでは、「漏れはないが、重複している」状態になります。
- 未成年
- 成人
- 男性
- 女性
このような分類では、漏れることなくすべての対象がターゲットに含まれていますが、「未成年」と「成人」には、男性と女性がいるため、重複している部分が発生しています。
重複と漏れがある
ターゲット層をより明確に絞り込むようなケースでは、重複と漏れの両方が発生しやすくなります。学生をターゲット層に定め、以下のように分類した場合は、「重複と漏れ」がある状態になってしまいます。
- 小学生
- 中学生
- 高校生
- 受験生
このケースでは、「大学生」という分類が漏れているうえに、受験生は「小学生」「中学生」「高校生」のすべてに当てはまる可能性があるため、重複している部分が発生しています。
「MECE」に基づく考え方
論理的思考を用いて、物事を「MECE」に考える際には、2つのアプローチ方法が存在しています。それぞれのアプローチ方法を理解し、足りていない部分を補完しながら活用することで、状況に合った結論を導き出すことができるでしょう。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチでは、最初に物事の全体像を捉え、全体を構成する要素を把握したうえで、課題に沿った要素分類を行います。上から見下ろす形でアプローチしていく手法のため、全体像がはっきりしているケースや分類方法が明確な場合に有効的な手段です。また、物事を俯瞰的に捉えることができるトップダウンアプローチには、正しい結論をイメージしやすいといったメリットも存在します。一方で、全体像が曖昧なケースでは、漏れや重複が発生する可能性があるため、トップダウンアプローチは不向きであるといえるでしょう。
ボトムアップアプローチ
下から上に進みながら、物事の全体像を掴む手法が「ボトムアップアプローチ」です。ボトムアップアプローチでは、思い浮かぶ要素を洗い出し、グループ化していくことで、全体像を明らかにします。そのため、全体像が曖昧なケースや要素分類に見当がつかない場合に活用できる手法です。未知の領域であっても、思考しやすいといった点が「ボトムアップアプローチ」の持つ大きなメリットであるといえるでしょう。しかし、未知の領域では、漏れや重複が発生しやすいため、注意深く使う必要があります。
「MECE」を活用するためのフレームワーク
物事を「MECE」に考えるためには、「要素分解」や「時系列・ステップ分け」などの明確な切り口を設定することが大切です。しかし、切り口の設定が難しく、「MECE」の活用にハードルの高さを感じる方も少なくありません。そのようなケースでは、それぞれの切り口に基づく、既存のフレームワークを活用することがおすすめです。ここでは、「MECE」を活用するための4つのフレームワークを紹介します。
「要素分解」に基づくフレームワーク
要素分解とは、全体像を把握し、それらを構成する要素を部分的にピックアップする方法です。ピックアップした要素を細かく分析・考察することで、部分ごとの解決策や改善策を導き出すことができます。全体を構成する要素を足したり、積み上げたりする手法のため、「足し算型」「積み上げ型」と呼ばれることもあります。「4P分析」や「3C分析」は、「要素分解」の思考に基づいたフレームワークであるため、これらのフレームワークを活用することで、物事を「MECE」に考えることができます。
4P分析
「4P分析」とは、製品やサービスを下記の4つの要素に分類することで、強みやアピールポイントを把握し、マーケティングの戦略や価格設定に活用するフレームワークです。
- Product(製品):市場価値
- Price(価格):販売金額
- Place(流通):販売場所や販売方法
- Promotion(プロモーション):販促活動
漏れや重複のないように製品やサービスを分類し、細かな分析を行うことで、課題や問題点を正確に把握できるため、より明確な戦略や改善策を立案できます。
3C分析
下記の3つの要素を分析・検討することで、他者との差別化ポイントを把握し、成功要因(KSF=Key Success Factor)を見つけ出すフレームワークが「3C分析」です。
- Customer:市場・顧客環境
- Competitor:競合環境
- Company:自社環境
自社からの視点だけでなく、市場や競合といった客観的な視点から分析を行うことで、自社の強みや弱みを正しく理解し、「漏れや重複のない」精度の高い分析を行うことができます。
「時系列・ステップ分け」に基づくフレームワーク
物事を、時系列または段階で分解していく方法が「時系列・ステップ分け」です。フローや物事を進めるステップに着目し、各過程で重複がないように整理していきます。商品の販売であれば、「仕入れ→加工・製造→出荷→販売」のように要素を分解し、各過程の分析や改善を行います。「時系列・ステップ分け」に基づくフレームワークとして代表的なものは、「AIDMA(アイドマ)」や「バリューチェーン」が挙げられます。
AIDMA(アイドマ)
「AIDMA(アイドマ)」とは、「Attention・Interest・Desire・Memory・Action」の頭文字を取った言葉で、消費者の購買プロセスを5つに分解し、過程ごとに分析・戦略の立案を行うフレームワークです。
- Attention(注意・認知):商品やサービスを知る
- Interest(関心):商品やサービスに関心を持つ
- Desire(欲求):購買意欲を持つ
- Memory(記憶):頭に入れておく
- Action(行動):実際に購入する
顧客の購買プロセスを「漏れや重複なく」把握しておくことで、各プロセスで的確なアクションを起こすことができます。また、販売に繋がらないといった課題に対して、顧客が離れているポイントを見つけ出せるため、正確な対策や施策を打てるといったメリットも存在します。
バリューチェーン(価値連鎖)
「バリューチェーン」とは、企業活動の「どの部分」が「どのような価値」を生み出しているのかを分析するためのフレームワークです。自社のビジネスサイクルを、「漏れや重複なく」客観的に分析することで、「コストの削減」や「付加価値の向上」「強みの発見」などのメリットを生み出します。
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- 誰もが没入できる「あそび」を取り入れた体験型アクティビティで受講者の主体性を引き出す
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まとめ
論理的に物事を考える思考法であるロジカルシンキングは、課題などへの正しいアプローチを行うために必要なスキルです。また、ロジカルシンキングの基本的な思考である「MECE」は、経営やマーケティングなどさまざまなビジネス分野で活用することができます。そのため、ロジカルシンキングの習得は、ビジネスパーソンにとって不可欠であるといえるでしょう。
ロジカルシンキングを習得するには多くの時間が必要であるため、普段の業務中から、物事を論理的に考える癖をつけておくことが大切です。物事を論理的に考える力は、あらゆるシーンで活かせるため、自身の成長にとっても、大きな効果をもたらすでしょう。
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この記事の著者
あそぶ社員研修は、企業の研修担当者向けのお役立ち情報を発信するメディアです。研修に関するノウハウ、組織・人材開発の手法、ビジネススキルなどをわかりやすく紹介します。