従業員幸福度(EH)とは?従業員満足度との違い・高める方法20選

  • 組織・人材開発

従業員幸福度(EHEmployee Happiness)とは、従業員の“働きがい”を表す指標の1つです。幸福度が高い=仕事に“やりがい”を感じながら取り組めている状態を表しており、従業員の幸福度が高いことで生産性の向上、チームの士気向上、離職防止などに効果が期待できます。

本記事では、従業員幸福度とは何かをお伝えし、従業員幸福度を高める方法を紹介します

 

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従業員幸福度(EH)とは

従業員幸福度(EH:Employee Happiness)とは、いわゆる“働きがい”を主観的な指標で表す言葉です

「従業員が仕事にやりがいを持てているのか」「不満を感じているのか」といった、従業員の幸福度を企業が知ることは、職場環境の改善や生産性の向上などに繋げられることからも、経営における1つの判断材料として注目されています

従業員満足度(ES)との違い

従業員幸福度と近しい言葉に、従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)があります。こちらは、労働環境に対して“従業員がどの程度の働きやすさを感じているか”を表す指標です。従業員幸福度との大きな違いとしては、従業員満足度は企業側がコントロールできるという点があげられます。

例えば従業員満足度を高めたい場合、下記のような取り組みがあります。

  • 給与の増額
  • 評価制度の見直し
  • オフィスの環境の整備
  • 福利厚生の充実

しかし、従業員満足度の改善だけに取り組んでも、それが従業員幸福度の改善にまでは直結しないケースもあります。従業員幸福度を高めるには、労働環境の整備はもちろんのこと、従業員が不自由を感じている部分の改善にまで取り組むことが求められます。

海外の企業ではCHOChief Happiness Officer)と呼ばれる、従業員の幸福度を管理する役職を設けていることもあり、従業員幸福度は企業経営における重要な項目として捉えられています。

従業員幸福度に関するトレンド

厚生労働省では、昨今における雇用情勢や働き方などに関する現状分析から、今後の具体的な政策を検討するための雇用政策研究会を定期的に開催しています。

20248月に発表された厚生労働省「雇用政策研究会報告書」には、「従業員幸福度」という言葉そのものの記載はありません。しかし、「働きがいなどの非金銭的な価値の実現」「賃金や労働条件の改善にとどまらず、多様な人材が自身の希望に合わせて働ける職場環境を整備」とあるように、従業員幸福度に紐付けられる項目が雇用政策として重要視されています。

参考:厚生労働省│雇用政策研究会報告書

また、内閣府は、国民の生活状況の把握と政策運営を目的として、国民の生活における満足度を表す指標「ウィル・ビーイング(“良い状態”を表す造語)」に関する調査を2019年から年に一度実施しています。

同調査の「満足度・生活の質に関する調査報告書2024」における「働き方(転職・企業)と満足度」の項目においては、下記のような結果がわかりました。

  • 転職意向のない人の満足度が最も高い
  • 男性に限っては、無業者よりも就業者の生活満足度が顕著に高い

このように、従業員が満足して働ける職場環境を企業が整備することは、結果として、従業員の生活満足度の向上、生産性の向上にも効果が期待できるといえます。

参考:内閣府│満足度・生活の質に関する調査報告書2024〜我が国のWell-beingの動向〜(概要)

従業員幸福度を高める方法20

ここからは、従業員幸福度を高める方法を紹介します。

1.積極的なコミュニケーションを促進させる

コミュニケーションを通じて相互理解の促進、業務上の相談やトラブル防止などに繋がります。従業員同士が気軽にコミュニケーションを図れる空間を作ることで、従業員が安心して仕事に取り組めるため、幸福度の向上に効果が期待できます。

コミュニケーションの促進には、以下の取り組みがおすすめです。

  • 社内SNSの活用:メールや電話とは異なり、気軽に相談や会話できるのが特徴的です。上司や部下、同僚とのライトなコミュニケーションが期待できます。
  • 社内イベントの実施:チームビルディング研修、交流イベントなどの実施が、積極的なコミュニケーションの促進に繋がります。イベントを通して、チームワークや結束力が高まることで、従業員の心理的安全性の向上にも効果が期待できます。

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2.感謝を伝え合う取り組みを導入する

感謝を伝え合う取り組みや企業文化があると、従業員の心理的安全性向上に効果が期待できます。役職者から従業員へ感謝を伝える、あるいは従業員同士で感謝を伝え合う取り組みを導入すると、会話のきっかけやコミュニケーションの促進にも繋がります。

感謝を伝え合う取り組みとしては、従業員の日頃の言動に対して感謝のメッセージを送り合う「サンクスカード」がおすすめです。感謝の気持ちを可視化して相手に伝えることで、従業員同士の信頼関係の構築や職場環境の改善に効果的です。

3.業務負担の偏りを軽減する

1人ひとりの業務負担をチーム内で定期的に見直し、適切に調整します。従業員1人あたりの業務負担を軽減することで、ワークライフ・バランスの改善や業務効率化に繋がり、働きやすい職場環境の整備が実現できます。業務負担の偏りを見直すには、以下の方法があります。

  • 業務プロセスの課題の分析・改善
  • 新たな人材の補填
  • 既存の従業員のスキルアップ

4.シンプルな目標設定の実施

個人やチームに対して、シンプルで具体的な短期的目標を設定してもらい、達成の手応えを感じられるようにします。短期的に成功体験を重ねていくことで、従業員のモチベーション維持や自己効力感の向上が期待でき、働きがいを感じてもらえる可能性が高まります

5.職場環境の整備

従業員が働きやすい職場環境を整備し、ストレスフリーで働いてもらうことで、幸福度の向上に繋がります。職場環境の整備としては、以下のような取り組みがあげられます。

  • フリーアドレス:従業員のデスクの定位置を決めずに、その日の状況次第でデスクを選べる。業務に集中したいとき、チームメンバーと近くでコミュニケーションがとりたいときなど、状況に応じて作業場所を選べることで、生産性の向上や働きやすさの改善に繋がる。
  • ドリンク・お菓子の提供:コーヒーメーカーや無料の自動販売機、お菓子などを提供する。業務の小休憩やリラックスできる環境整備として効果的である。

6.オフィスのバリアフリー化

病気や障がいの有無に関係なく、従業員の誰もが使いやすいオフィスを作ることで、働きやすさの改善や幸福度の向上に繋がります。具体的には下記のような取り組みがあげられます。

  • オフィスの物理的な整備(エレベーター/スロープの設置など)
  • 視覚・聴覚障がいのサポート(点字/筆談ツールの用意など)
  • 採用・昇進における機会均等

7.多様な働き方制度の導入

昨今では、定時出勤以外の多様な働き方制度がさまざまな企業で導入されています。働き方の選択肢があると、従業員も自身のライフスタイルや家庭の事情に合わせて選択できるようになります。従業員が理想とするワークライフ・バランスの実現が可能となれば、幸福度の向上にも効果が期待できるでしょう。また、多様な働き方が可能となると、人材の流出防止にも繋がります

多様な働き方の具体例としては、以下のものがあげられます。

  • リモートワーク:自宅にいながら勤務ができる。
  • フレックス出勤:1日の労働時間は変えずに、出勤時間と退勤時間を範囲内で設定できる。
  • 副業・兼業:業務委託・フリーランスといった働き方が可能になる。
  • 短時間勤務:育児や介護など、家庭の事情に合わせて働ける。
  • ジョブ型雇用:従業員の専門性に合わせた業務内容・報酬に合意のもとで働ける。

8.福利厚生を充実させる

働き方や業務内容以外にも、福利厚生を充実させることは、従業員幸福度の向上に繋がります。従業員が不自由なく働ける環境を整備し、心身の休息や余暇を楽しめるような福利厚生を用意することで、生産性の向上や人材の定着率向上に効果が期待できます

  • 定期的な健康診断の実施
  • ジム・フィットネスの利用
  • 社員食堂の設置・食事代の一部負担
  • 特別な休暇制度の設置(リフレッシュ休暇・誕生日休暇・ボランティア休暇など)

9.従業員の行動や実績を正当に評価する

従業員の成果や実績、模範となる良い行動に対して正当に評価することは、従業員のモチベーションの維持や向上に繋がります。高いモチベーションを維持してもらうことで、生産性も高まり、幸福度の高い状態で業務に取り組んでもらえるようになります

10.社内表彰制度の導入

自社オリジナルの表彰制度を導入すれば、所属や業種に関係なく、多くの従業員にスポットをあてることができます。例えば、数字では見えにくいような部分の貢献、業務に取り組む姿勢などを社内表彰制度の評価項目として取り入れれば、努力した従業員を正当に評価できるようになり、幸福度の向上にも効果が期待できます

11.キャリアパスを提示する

従業員1人ひとりのキャリアパスを提示することで、従業員の未来を見据えた行動変容が期待できます。従業員の求めるキャリアパスに沿って成長できる機会を設けることで、従業員自身が理想とするキャリアに近づき、幸福度の高い状態で働いてもらうことができます

12.研修・学習制度の整備

キャリアパスの提示や支援と合わせて、業務に関連する知識や技術の習得、あるいは関連資格の取得支援といった取り組みも、幸福度の向上に効果的です。従業員が実現したいキャリアに繋がる支援をすることで、幸福度を高めると同時に、社内人材の育成にも繋がります

13.専門家を招いたセミナーの開催

各分野における専門家を招いたセミナーを開催することで、従業員のキャリアやスキル、あるいは健康意識の向上に繋がります。従業員が日々前向きな意識を持ちながら働いてもらえることは、仕事のやりがいやモチベーションの向上に効果的です

セミナーの具体例としては、以下のものがあげられます。

  • キャリアセミナー:従業員自身のキャリアやスキルについて考えるセミナー。これまでのキャリアを振り返り、中長期的な視点を持って今後のキャリア形成を描くことで、従業員の主体的な行動を促すことに繋がります。

14.健康づくりに繋がる取り組みの導入

従業員に、心身ともに健康的な状態を維持してもらうことが、幸福度を高めることに繋がります。健康づくりに繋がる取り組みとしては、以下のものがあげられます。

  • 定期的な健康診断
  • 健康アプリの導入
  • 栄養バランスの取れた社員食堂
  • 健康に関する研修・イベントの実施(スポーツ大会・ウォーキングイベントなど)
  • 持病の通院休暇

定期的な健康診断や健康アプリの導入により、従業員の健康維持・改善が期待できます。他にも、従業員の健康状態によって取得可能な病気休暇(シックリーブ)を制度として設けることで、従業員も持病の通院や急な体調不良などで休暇を取得しやすくなり、健康課題に対応できます。

15.メンタルヘルスケアの取り組みの導入

メンタルヘルスケアの取り組みも、従業員の健康維持・改善には欠かせません。企業が従業員のメンタルヘルスケアに取り組むことで、現状の困りごとや悩みを把握し、職場環境の改善に繋げられます。従業員になるべくストレスを感じずに働いてもらえることが、従業員幸福度の向上にも効果が期待できます

メンタルヘルスケアの取り組みとしては、以下のものがあげられます。

  • 職場の上長・管理職との定期的な面談
  • ストレスチェックの実施
  • 相談窓口の設置
  • 内部職員(産業医・産業保健スタッフなど)によるケア
  • 外部機関によるケア(産業保健スタッフによる面談、メンタルヘルス研修など)

16.定期的なサーベイの実施

従業員の働き方に対する考えや思いなどを知るには、定期的にサーベイ(物事の全体像を把握するための調査)を実施するのがおすすめです。実際に現場で働く従業員がどのようなことを考えているのかを企業が知ることで、サーベイの結果をもとに、従業員幸福度の維持・向上に必要な取り組みを検討できるようになります

サーベイで質問する内容の例としては、以下のとおりです。

  • 従業員の幸福度・メンタルヘルスに関する質問:「働くことにやりがいを感じているか?」「仕事とプライベートのバランスを取れているか?」など
  • 経営理念・ビジョンの浸透に関する質問:「自社のビジョンについて理解しているか?」「ビジョンが実際の業務や職場に浸透していると感じるか?」など
  • 業務に関する質問:「自身の業務量や業務内容についてどのように感じているか?」「業務を遂行するにあたり、適切なリソースや環境などが提供されているか?」など

17.組織のミッション・ビジョン・バリューを共有する

自社の目指す未来が不明瞭だと、従業員も不安を感じてしまい、モチベーションの低下や離職に繋がる恐れがあります。組織のミッション・ビジョン・バリューを従業員にしっかりと共有することで、企業と従業員が同じ方向に向かって進めます。方向性を共有できれば、社内での一体感が生まれてチームワークや心理的安全性も向上し、幸福度が高い状態で働いてもらうことができるでしょう

組織のミッション・ビジョン・バリューを共有するには、以下の方法があります。

  • 企業トップからのメッセージ
  • 社内報・社内SNSの活用
  • クレドカード(企業理念が書かれたカード)の活用
  • 社内表彰制度の評価項目に組み込む

18.透明性の高い情報共有を行う

事業の現状や今後の自社の方向性などを従業員へ共有する際には、透明性の高い情報共有が求められます。後から、嘘や誇張した情報であったことを知らされると、従業員も企業に対して不信感を覚えてしまいます。企業から告知する情報は嘘偽りなく従業員へ共有することが、双方の信頼関係の構築には欠かせません

19.キャリアチェンジ(社内公募)制度の導入

キャリアチェンジ(社内公募)制度とは、従業員が、社内の部署や新規プロジェクトに自由に応募できる制度のことです。従業員のスキルアップやキャリアパスの多様化を支援する目的として活用できるほか、新たな人材を採用するためのコスト削減にも効果が期待できます

20.ボトムアップ制度の導入

ボトムアップ制度とは、現場の従業員から業務改善や新規事業の提案を募集し、実行可能なものを正式に採用する制度のことです。従業員の意見を上層部が聞き入れることは、従業員の意欲向上に繋がるほか、企業に対する信頼度を高めることにも効果が期待できます

また、現場から上層部へ意見や提案をするには、「現場でどのような課題があるのか」を、従業員自身がしっかりと見極めなければなりません。そのため、従業員1人ひとりにおける、問題意識を持った“主体的な行動変容”にも繋がります。

まとめ

“従業員幸福度が高い=働きがいを感じている状態”を表しており、幸福度の高さが生産性の向上や離職の防止などに繋がることからも、従業員幸福度の向上は企業が取り組むべき経営課題の1つといえます。

従業員幸福度を高める取り組みとして、今回紹介したような短期的、中・長期的な方法があります。従業員に聞き取りや調査などを行い、現状における働き方の課題や職場の問題などを棚卸ししたうえで、幸福度の向上に最適な取り組みを実践しましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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