タウンホールミーティングとは?期待できる効果・企業事例を紹介

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近年、日本においても大企業を中心に「タウンホールミーティング」を実施する企業が増えています。エンゲージメント向上にも有効だといわれていますが、一体どのような取り組みなのでしょうか。

本記事では、タウンホールミーティングとは何か、期待できる効果と、実施する際のポイント、タウンホールミーティングを実施している企業の事例を紹介します

 

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タウンホールミーティングとは

タウンホールミーティングとは、企業の経営陣と従業員が、さまざまなテーマについて対話をする集会のことをいいます。日本語では、「対話集会」とも呼ばれています。

タウンホール(town hall)とは、市や町の公会堂を指す英単語です。そのような場所に地域住民や政治家などが集まり、オープンな対話や議論をすることは、「タウンミーティング」とも呼ばれます。たとえば、ゴミ出しのルールや、公共施設・設備の運営についてなど、生活にかかわることをテーマとし、直接意見を交わします。これが進化して、政治的な集会に限らず、タウンミーティングのようにオープン場で対話をする集会を指す言葉として、「タウンホールミーティング」が用いられるようになりました。

タウンホールミーティングが注目されている理由

タウンホールミーティングは、経営陣と従業員の間にある距離を埋める方法として、日本でも注目度が高まっています。企業の規模が大きくなるほど、経営陣と従業員が直接コミュニケーションをとる機会が少なく、距離も遠くなる傾向があります。この距離を埋めないと、企業の方針や戦略、経営陣の想いや考えなどが、現場の従業員まで伝わらない可能性があります。そのような状態では、全員で同じ目標に向かっていくことができません。

企業の方針や戦略、経営陣の想いなどを伝える方法として「社内報」がありますが、「いくら情報を発信しても、閲覧率がなかなか上がらない」という悩みを抱える企業も多いようです。また、文字で届けるのと、タウンホールミーティングで経営陣が口頭で伝えるのとでは、伝わり方も違うでしょう。さらに、従業員の声を聞かないと、現場の問題や課題を見落としてしまう可能性もありますが、タウンホールミーティングという対話の場を設けることで、従業員の声もダイレクトに聞くことができます。

組織を強くしていくためには、経営陣と従業員が相互理解を深め、関係を強化することが重要です。その方法として、タウンホールミーティングが注目されるようになっています。

実施形式・タイミングは企業によってさまざま

タウンホールミーティングをどのような形で実施するかは、企業によって違います。参加者を1つの会場に集める方法以外にも、経営陣が拠点を訪問したり、オンラインやハイブリッド形式で実施したりする企業も多く見られます。また、全社員を対象とすることもあれば、部署や属性限定で実施することもあります。

1回、四半期に1回など頻度を決めて実施している企業もありますが、何か大きな変化があったタイミングで実施する企業も多いようです。たとえば、「パーパスや経営計画を新しくしたとき」「経営陣を刷新したとき」「MAを実施したとき」などが挙げられます。

参考:ANAは年2000回超、大企業が「社内集会」に熱心な理由。日立、第一生命ら続々 | Business Insider Japan

タウンホールミーティングの効果

次に、タウンホールミーティングを実施することで、どのような効果が期待できるのかについて、詳しく見ていきます。

社内コミュニケーションが活性化する

タウンホールミーティングという対話の場を設けることで、経営陣と従業員のコミュニケーションが活性化することが期待できます。

タウンホールミーティングでは、経営陣の想いや考えを直接従業員に伝えることができます。従業員にとっても、普段なかなか伝えられないこと(例:「こんなことに困っている」「こんな不満がある」など)を伝えられる貴重な機会になります。また、企業の規模が大きくなると、社内で認識や理解のズレも生まれやすくなりますが、タウンホールミーティングは、この改善にも有効です。

現場の声を経営に活かせるようになる

タウンホールミーティングでは、経営陣は普段なかなか聞くことができない従業員の本音を、従業員の上司などを介さずに直接聞くことができます。従業員から直接本音を聞くことで、現場の声を素早く経営に反映させることも可能になるでしょう。

ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ元会長により開発された組織風土改善メソッド「ワークアウト」においても、タウンホールミーティングは必要なステップの1つとされています。従業員が経営陣に変革案をプレゼンテーションし、経営陣が採用・却下を決定するというものです。

自社への理解を深めてもらえる

タウンホールミーティングは、MVVの浸透や、従業員に企業に対する理解を深めてもらうためにも有効です。

MVVとは、ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)の頭文字をとったものです。企業が果たすべき使命や、ありたい姿、大切にしている価値観などを示した指針を意味します。MVVが社内に浸透すると、組織としての一体感が高まり、全員で目標に向かっていけるようになります。

MVVを浸透させる方法はさまざまありますが、経営陣と従業員が直接顔を合わせて、経営陣の口からメッセージを発信することで、MVVの背景にある想いも伝わりやすくなるでしょう。企業の方針や戦略、その他の重要決定事項なども同様です。

なお、MVVを浸透させる方法は、以下の記事でも解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。

MVVとは?社内に浸透させる方法を紹介

従業員のエンゲージメントが向上する

エンゲージメントとは、従業員の企業に対する「貢献意欲」を指す言葉です。タウンホールミーティングを実施することで、組織の情報の透明性が高まり、従業員の経営陣やリーダー層に対する信頼が増すことが期待されます。また、先ほどお伝えしたように、MVVをはじめ企業に対する理解が深まれば、従業員は自分の役割や仕事の意味を見出しやすくなるでしょう。さらに、タウンホールミーティングを通じて「自分が評価されている」ことを感じられれば、帰属意識や貢献意欲の向上にもつながります。

これらの結果、エンゲージメントが向上し、生産性向上や離職率低下といった効果も期待できるでしょう。

タウンホールミーティングを実施する際のポイント

次に、効果的なタウンホールミーティングを実施するためのポイントを紹介します。

目的を明確にする

先ほどお伝えしたように、近年は日本においてもタウンホールミーティングの注目度が高まっています。しかし、注目されているからといって、目的が曖昧なまま「とりあえず、うちでもやってみよう」という考えで実施するのはおすすめしません。無駄なコストが発生するだけですし、目的が曖昧なままスタートさせると、タウンホールミーティングを実施すること自体が目的になってしまいやすいといえます。

まずは、現在社内にある問題・課題や、経営陣と従業員のコミュニケーションの状況、従業員のニーズなどを把握し、何のためにタウンホールミーティングを実施するのかを明確にしましょう。たとえば、「情報の透明性の向上」「MVVの浸透」「エンゲージメントの向上」などが、目標の一例です。

従業員のスケジュールを考慮する

タウンホールミーティングのよくある課題の1つに、「日程の調整が難しい」ということが挙げられます。

出勤日や勤務時間が統一されている企業であれば、比較的日程調整もスムーズに行えるかもしれませんが、シフト制の企業や、テレワークやフレックスタイム制といった多様な働き方を導入している企業もあるでしょう。タウンホールミーティングは、対象の従業員にできるだけ多く参加してもらうことが重要です。実施することが決まったら、従業員のスケジュールを考慮しつつ、早めに日程調整に取り掛かりましょう。従業員にアンケートをとって、参加しやすい曜日や時間帯を聞いてみるのもおすすめです。

また、遠方の従業員が移動の時間や手間をかけずに参加できるように、オンラインを組み合わせて実施できないかも検討してみるとよいでしょう。

従業員に参加を呼びかける

従業員のスケジュールを考慮して日程を組み、実施形式も工夫したとしても、参加者が集まるとは限りません。できるだけ多くの従業員にタウンホールミーティングに参加してもらえるように、社内で広報活動を行うことも重要なポイントです。具体的には、社内メールや社内SNSでタウンホールミーティングに関する情報を発信する、社内にポスターを掲示するなどの方法が考えられます。さまざまな方法で、従業員に参加を呼びかけましょう。

タウンホールミーティングの開催日時、参加方法、当日取り上げるテーマなどだけでなく、開催する意義や目的もあわせて伝えると、従業員から「参加してみよう」という想いを引き出せることが期待できます。

ファシリテーターを設置する

会議やミーティングなどで、話し合いを円滑に進める役割を担う人を、ファシリテーターといいます。具体的には、司会・進行に加えて、参加者が発言しやすい雰囲気を作る、質問を投げかけて参加者から意見を引き出す、集まった意見をまとめて合意形成をサポートするといったことを行います。

タウンホールミーティングでは、経営陣側がファシリテーターを兼ねるケースも見られますが、限られた時間を有効に使うためにも、ファシリテーターを置くことをおすすめします。また、タウンホールミーティングが定着するまでは、質問を求めてもなかなか出ないこともあります。そんなときでもファシリテーターがいれば、質問しやすい雰囲気を作ってくれるので、活発な意見交換が行えることが期待されます。

ファシリテーターには、高いコミュニケーションスキルと、常に中立的な立場でいること、目的やアジェンダを理解できていることなどが求められます。ファシリテーターの力量によりタウンホールミーティングの質が左右されるといっても過言ではありませんので、人選は慎重に行うようにしましょう。

発言しやすい雰囲気を作る

効果的なタウンホールミーティングとするために、参加者が発言しやすい雰囲気を作ることも意識しましょう。対面式で行う場合は、レイアウトも工夫してみてください。席の配置は、円形やU字型がおすすめです。参加者同士の視線が合いやすくなるので、コミュニケーションが活発になり、自由な意見が出やすくなります。

また、タウンホールミーティングが始まり、従業員が質問や意見を出してくれたら、経営陣はしっかりと耳を傾けて聞くことはもちろん、それに対して感謝の言葉を述べることも大切です。そうすることで、より発言しやすい空気が生まれます。さらに、その質問や意見を真摯に受け止め、きちんとした答えを返すことで、信頼関係も深まることが期待されます。

質疑応答の時間を多めに確保する

タウンホールミーティングは、かしこまった会議ではなく、カジュアルな雰囲気の中で行われるものです。また、経営陣から情報を伝えるだけでなく、さまざまなテーマについて対話をする場ですので、コミュニケーションが一方通行にならないように、従業員に質問してもらう時間を多めにとるようにしましょう。この時間が短いと、せっかくタウンホールミーティングを実施しても、「自分たちの意見は聞いてもらえなかった」と、従業員の満足度が下がってしまう恐れがあります

しかし、タウンホールミーティングに慣れるまでは、その場で「質問はありますか?」と聞いても、なかなか質問が出ない可能性もあります。そのようなケースも想定して、事前に質問を募集しておくのもおすすめです。

議事録を作成して共有する

タウンホールミーティング実施後は、議事録を作成して、できるだけ早く共有することも大切です。従業員のスケジュールを考慮して日程を組み、広報活動も十分行ったとしても、対象者が全員参加できるとは限りません。当日に急な予定が入ってしまい、参加できなくなるというケースもあるでしょう。議事録を作成・共有することで、タウンホールミーティングに参加できなかった従業員にも、話し合った内容を知ってもらうことができます。

タウンホールミーティングを実施している企業の事例

最後に、タウンホールミーティングを実施している企業の事例を2つ紹介します。

NEC(日本電気株式会社)

NEC(日本電気株式会社)は、ITサービス事業や社会インフラ事業などを行っている企業です。

20214月、NECは「CEO Town Hall Meeting」をスタートさせました。NECは、「2025中期経営計画」の中で、エンゲージメントスコア50%(2025年度)という目標を掲げています。「CEO Town Hall Meeting」は、エンゲージメントの向上を目的の1つとするものです。

参考:2025中期経営計画 – NEC(PDF)

CEO Town Hall Meeting」は、社長兼CEOの森田隆之氏と従業員が、オープンな場で対話をするという企画です。スタート以降、毎月欠かすことなく開催しています。「2025中期経営計画」で掲げている「成長事業」や「新規事業」、「働き方」、「イノベーション」など、毎回さまざまなテーマで対話をしています。

この企画がスタートした当初はコロナ禍だったため、はじめはオンラインで開催していましたが、最近はオンラインとオフラインのハイブリッドで開催しており、毎回多くの参加者が集まるそうです。

参考:徹底的に「対話」する。NEC社長森田が社員との対話にこだわるわけ: NEC Stories | NEC

富士通株式会社

富士通株式会社は、サービスソリューション、ハードウェアソリューションなどの事業を行っている企業です。

富士通株式会社では、社内コミュニケーションを強化することを目的に、タウンホールミーティングを実施しています。代表取締役社長に時田隆仁氏が就任した20196月以降、80回以上のタウンホールミーティングを開催し、延べ63,000人以上の従業員が参加してきたそうです(20246月発信の記事参照)。主にオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催しています。

タウンホールミーティングの対象は、国内の従業員だけではありません。時田氏が海外拠点に訪問する際は、現地の従業員とも対話の機会を設けているそうです。また、日本開催のタウンホールミーティングに海外拠点の従業員が参加する際は、同時通訳や自社開発のコミュニケーションツールを活用して、同じ情報をリアルタイムで共有できるようにしています。

参考:「タウンホールミーティングは私にとって学びの場」社長の本音が社員を動かす – フジトラニュース : 富士通

まとめ

企業の規模が大きくなるほど、経営陣と従業員が直接コミュニケーションをとる機会は少なくなる傾向があります。組織の一体感を醸成し、全員で目標に向かっていくためには、コミュニケーションが欠かせません。コミュニケーション不足による課題を感じているなら、タウンホールミーティングの実施を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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