俯瞰力とは?高めるメリットと方法を紹介

  • ビジネススキル

俯瞰力とは、簡単にいうと「高い視座で物事の全体像を捉える力」のことです。管理職やリーダーに求められるスキルだと思われるかもしれませんが、すべてのビジネスパーソンに求められるスキルです。あらゆるシーンで役立つため、最近では子どもの頃から鍛えるべき能力だともいわれています。

本記事では、まず俯瞰力とはどういったスキルなのか、「俯瞰」という言葉の意味や使い方にも触れながら、わかりやすく解説します。そして、俯瞰力を高めるメリットと、具体的なトレーニング方法も紹介していきます。

 

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俯瞰力とは

俯瞰力とは、文字通り俯瞰する力のことをいいます。俯瞰(読み方:ふかん)は、本来は「高いところから見下ろして眺める」ことを意味する言葉です。さらに、「物事を広い視野で捉える」という比喩的な意味もあります。ビジネスシーンで用いられる俯瞰力とは、自分が任された仕事や、目の前にある問題だけを見るのではなく、広い視野で物事を見て、全体の構造や流れを捉える力を指します

また、俯瞰力は、「メタ認知」と呼ばれることもあります。メタ認知とは、簡単にいうと「今よりも1つ上の視点から、もう一人の自分を客観的に捉える」というようなイメージです。すると、見える範囲が広がり、物事の本質が見えてくるようになります。また、目の前の事象と他の事象との関連性・つながり、互いの影響などが見え、全体のつながりがわかります。

俯瞰力は、プロジェクトの円滑な進行や、問題の根本的解決を図るために重要な能力です。

「俯瞰」の使い方と例文

漢字の「俯」と「瞰」には、それぞれ以下のような意味があります。

  • 俯……ふせる、うつむく
  • 瞰……みる、みおろす

よく、「俯瞰して見る」「俯瞰で見る」という表現を見かけますが、上記の通り「みる」という意味は漢字に含まれています。そのため、これらは二重表現になるので、実は使い方としては間違っています。

正しくは、「俯瞰する」「俯瞰的に捉える」などと表現します。また、上から斜めに見下ろしたときのようなイメージを描いた「俯瞰図」(または「鳥瞰図」)、そのような角度で撮影する「俯瞰撮影」という言葉もあります。ここで、「俯瞰」という言葉を使った例文をいくつか紹介します。

【例文】

  • 高層ビルの屋上から街を俯瞰する。
  • オフィスフロアの俯瞰図の作成を依頼した。
  • ドローンの俯瞰撮影はコツが要る。
  • リーダーにはプロジェクトを俯瞰的に捉える力が欠かせない。
  • 市場全体を俯瞰することで、顧客のニーズやトレンドが見えてくるはずだ。
  • 俯瞰して考えないと、この問題を根本的に解決することはできない。
  • 自分自身を俯瞰するのは、結構難しいことだ。

「俯瞰」と意味が似ている言葉

「俯瞰」と混同しやすい言葉に、「鳥瞰」と「客観」があります。これらとの意味の違いを整理しておきましょう。

「俯瞰」と「鳥瞰」

鳥瞰(読み方:ちょうかん)とは、「空を飛ぶ鳥のように高いところから広範囲を見渡すこと」を意味する言葉です。また、「全体を大きく見渡す」という意味で用いられることもあります。

鳥瞰は、俯瞰とほとんど同じ意味の言葉として使用して問題ありません。ただ、ビジネスシーンでは、鳥瞰よりも俯瞰が使われることのほうが多いでしょう。

鳥瞰と俯瞰の違いをあえて挙げるなら、「視点の高さ」ではないでしょうか。鳥瞰は、お伝えしたように「空を飛ぶ鳥のような高い視点」から見下ろすことを意味します。これに対して俯瞰は、高さの定義は特にありません。また、冒頭で俯瞰力はメタ認知と呼ばれることもあるとお伝えしました。メタ認知は、「1つ上の視点から」自分自身を客観視するようなイメージなので、この2つを使い分けるなら、俯瞰のほうがやや低い位置を指すと考えることができるでしょう。

「俯瞰」と「客観」

客観(読み方:きゃっかん)とは、第三者の立場になって観察したり、考えたりすることを意味する言葉です。これに対して俯瞰は、誰の立場にもならずに、高いところからフラットに全体を見ることを意味します。

ただ、俯瞰力はメタ認知とイコールとされることもあります。メタ認知とは、先ほどお伝えしたように、1つ上の視点から自分自身を「客観的に」捉えることを意味します。

いずれにしても、俯瞰力を高めたいなら「高いことろから」見ることを意識することが重要です。

ビジネスにおいて俯瞰力が重要な理由

仕事をしていると、さまざまな問題にぶつかることがあります。ビジネスで発生する問題は、複数の要因が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。表面化している部分だけを見ていても、その問題を根本的に解決することはできません。そのときは解決したように見えても、別の部分によくない影響が現れたり、時間が経ってからまた同じ問題が発生したりすることがあります。広い視点で物事を見て、全体像を捉えられるようになると、他事象との関連や他のプロジェクトとの関係性などが見えるため、問題の本質を理解したうえで、解決策を考えられるようになります。俯瞰力を高めることは、問題解決力向上にもつながるでしょう。

また、ビジネスでは、年齢や性別、立場などが異なるさまざまな人とかかわる必要がありますが、俯瞰できないと、視野が狭く、自分本位になりやすくなります。1つ上の視点から自分を客観的に見ることができるようになれば、自分の行動を分析したり、相手の感情を想像したりすることができるようになります。自分の言動をコントロールして、周りの人とより良い人間関係が築けるようになるでしょう。

俯瞰力を高めるメリット

俯瞰力は、誰でもトレーニングにより高めることができます。その具体的な方法はのちほど紹介しますが、まずは俯瞰力を高めると、どのようなメリットが得られるのかを見ていきましょう。

新たな「気づき」が得られる

俯瞰できる人とできない人とでは、見える範囲が違います。高い視点から物事を見ることで、視野が広がり、新たな「気づき」が得られることがあります。すると、問題の根本的な原因が見つかったり、これまでにない発想で新しいアイデアが浮かんだりすることもあるでしょう。

そして、自分自身の知的な成長のためにも、「気づき」は欠かせません。「何がわからないのかがわからない」という状態のままでは、いつまでも成長できないからです。俯瞰力が足りないと、自分がそのような状態にあることにすら気づけていない可能性もあります。ビジネスパーソンとして成長していくために、俯瞰力を高めていきましょう。

思い込みや思考の癖から抜け出せる

「思い込み」とは、自分の考えていることが正しい・当たり前だと思っており、微塵も疑っていない状態のことです。そして、「思考の癖」とは、無意識に視野が狭くなっていたり、偏った考え方をしてしまったりすることをいいます。

これらは、誰のなかにもあるものですが、なかなか自分で気づくのは難しいものです。また、「自分のこと」となると、誰でも少なからず自己中心的な考えになってしまう傾向があります。自分自身を、少し離れた高い場所から客観視できるようになると、思い込みや思考の癖に気づき、抜け出すことが可能になるでしょう。

柔軟な考え方、冷静な判断ができるようになるためにも、視野を広げて、まずは自分の思い込みや思考の癖に気づくことが大切です。

物事の本質を見極められるようになる

先ほどお伝えしたように、ビジネスで発生する問題は、複数の要因が絡み合っている場合が多く、それらのほんの一部しか表面化していないというケースも少なくありません。俯瞰力を高めると、問題の一部だけでなく全体が見えるようになります。具体的には、その問題にはどのような要素が絡んでいるのか、それらの要素がどのような関係性で結びついているのかなどです。俯瞰力を高めることで、物事の本質を見極められるようになり、問題解決の精度とスピードも向上するでしょう。

従業員一人ひとりの俯瞰力が高まれば、企業としての対応力の向上にもつながるため、企業としては顧客からの信頼性や評価の向上も期待できます。

俯瞰力を高める方法

では最後に、個人が俯瞰力を高めるために普段からできることを紹介していきます。

自分のことを客観視してみる

俯瞰力を高めるために、まずは自分のことを客観的に捉える練習をしてみましょう。その具体的な方法として、セルフモニタリングがあります。セルフモニタリングとは、その名の通り、自分自身を観察することです。具体的には、自分の行動や感情、考え、身体の状態などを観察します。

人の感情というのは、何か出来事があったときに、その出来事を自分なりに捉えたり、考えたりすることにより生まれるといわれています。出来事と感情の間にある「捉え方」や「考え」を、繰り返し観察していくと、次第に自分の癖が見えてくるでしょう。もし、その癖が悪影響を与えているような場合は、修正することも検討します。

または、クリティカルシンキングを活用するのも、自分自身を客観視するための1つの方法です。クリティカルシンキングとは、物事を批判的に捉えることで、その本質を見極める思考法で、日本語では「批判的思考」と呼ばれています。「批判的に捉える」というと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単にいうと、あらゆることを「疑ってみる」思考法です。自分が当たり前だと思っているあらゆることを、「本当にそうなのだろうか?」と疑うことも、自分自身を客観視するトレーニングになります。

クリティカルシンキングは、近年注目度が高まっているビジネススキルの1つです。実践するメリットや鍛え方は以下の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。

クリティカルシンキングとは?ロジカルシンキングとの関係や実践方法を紹介

振り返りの習慣をつける

俯瞰力を高めるためには、振り返りを行うことも大切です。一日の終わりに、その日あった出来事や、自分の言動、上手くいったこと、逆に改善すべきことなどを、振り返る習慣をつけてみましょう。最初は短い時間で構いませんので、続けていくことが重要です。そうすることで、自己理解も深められるでしょう。

何か出来事に直面したその瞬間は、強い感情が湧いてきて、視野が狭くなってしまうこともあります。少し時間を置いて、改めてその出来事を振り返ってみることで、落ち着いて、より広い視野で物事を捉えられるようになるでしょう。

第三者からフィードバックをもらう

どれだけ自分を客観的に観察してみたり、毎日振り返りを行ったりしたとしても、自分一人では気づけないこともあります。また、「自分が思う自分」と「他人から見た自分」というのは、意外と違っているものです。第三者からフィードバックを受けることで、客観的に見た自分をより深く知ることができるでしょう。

前項で紹介した振り返りも、上司のサポートがあるとより高い効果が期待できます。企業としては、振り返りのサポートと、上司からフィードバックを与える機会として、定期的に1on1を実施するのもおすすめです。

ディベートをする

ディベートとは、あるテーマについて、賛成・反対など異なる立場に分かれて議論することをいいます。それぞれが意見を主張し合い、最後はどちらの意見に説得力があったかを、第三者が判定します。

ディベートをすることで、客観的で多角的な視点や、物事の本質を見極める力が鍛えられます。また、筋道を立てて自分の意見を伝える力や、情報を収集・整理・処理する能力も向上するでしょう。

目標を設定し、達成に向けた計画を立てる

何でもいいので目標を設定し、その達成に向けた計画を立ててみましょう。現状を把握したうえで、達成に向けた計画を練ることが、全体像を捉えるトレーニングになります。

いきなり長期的な目標・計画を立てるのが難しいと感じる場合は、はじめは短期的な目標・計画でも構いません。今日一日の目標と、どのように過ごすかといったスケジュールでもよいでしょう。慣れてきたら、徐々に期間を延ばして、中長期的な目標・計画にも挑戦してみてください。

ただ、目標と計画を立てて、その達成に向けて取り組むなかで、状況が変わってくることもあります。計画は立てて終わりではなく、定期的に振り返りをして、必要に応じて軌道修正を加えていくことも重要です。

結果をしっかり分析する

目標を立て、その達成に向けた計画を実行し終えたら、その結果をしっかり分析しましょう。「目標を達成できた・できなかった」という点だけでなく、「なぜこの結果になったのか」というプロセス部分も含めて、全体を分析することが重要です。具体的には、計画通り実行できたか、目標や計画は妥当だったか、どのような成果があったか、成果が得られなかった場合何が原因と考えられるか、などです。

自分で立てた目標に対しての結果だけでなく、仕事で何か結果が得られた場合も、同様に全体をしっかり分析してみてください。そして、それらをもとに改善案を考え、次につなげていきましょう。

「なぜ?」を問いかけてみる

先ほど、あらゆることを「本当にそうなのだろうか?」と疑ってみるクリティカルシンキングを紹介しました。これと少し似ていますが、目の前の問題・課題や、他人の行動に対して「なぜ?」を問いかける癖をつけるというのも、俯瞰力を高める1つの方法です。

たとえば、ある問題が発生した場合、まず「なぜこのような問題が起きたのだろう?」という原因を問いかけてみます。そして原因が判明したら、「なぜそのようなことになっていたのだろう?」と、その原因をさらに深掘りする問いを投げかけます。このように「なぜ?」を問い続けることで、表面化している部分だけでなく、根本的な原因を探っていく方法は、「なぜなぜ分析」と呼ばれています。トヨタ自動車が発案したものといわれているこの方法は、問題解決の際に広く活用されています。一般的には、「なぜ?」の問いかけを5回繰り返すと、根本的な原因にたどり着けるといわれています。

俯瞰力を高めるには、目の前で起きていることを正しく理解するだけでなく、その裏に隠れている見えない部分まで把握しようと考えてみることが大切です。

まとめ

ビジネスにおける俯瞰力とは、「高い視座で物事の全体像を捉える力」のことです。目の前で起きていることや、表面化している問題だけでなく、構造や流れなども含めて全体を捉えられるようになると、問題解決力が向上します。また、自分を客観視して、自分自身を上手くコントロールできるようになれば、周りの人と良好な人間関係を築きやすくなるでしょう。

思考の癖や偏り、思い込みから抜け出し、1つ上のレベルから物事を見るというのは、簡単にできることではありません。しかし、俯瞰力はトレーニングで高めていくことができます。本記事で紹介した方法を、今日から意識して取り入れてみてください。

また、従業員の俯瞰力を高めることは、企業としての問題解決力や対応力を高めることにもつながります。研修を実施するなどして、従業員の俯瞰力の向上をサポートしていきましょう。

参考:『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』(著者:細谷功 / 出版社:株式会社PHP研究所 / 発売:2016年)

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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