パルスサーベイとは?メリット・デメリットや質問例を紹介

  • 組織・人材開発
    • エンゲージメント

従業員のモチベーションやストレス、健康状態などは、さまざまな要因によって日々変動しています。これらをより正確に把握するための方法として、「パルスサーベイ」という調査があります。

本記事では、パルスサーベイとはどのようなものなのか、メリット・デメリット(課題)、パルスサーベイを実施する流れについて解説します

 

受講者が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で実践できる知識・スキルを習得
⇒受講者のスキルアップとチームビルディングをはかる「あそぶ社員研修 総合資料」を無料で受け取る

 

パルスサーベイとは

パルスサーベイは、組織が従業員に対して行う組織サーベイの一種です。サーベイ(survey)は、「調査」を意味する英単語で、一般的には物事の全体像を把握するために行われる調査を指します。そしてパルス(pulse)は、「脈拍」を意味する英単語です。パルスサーベイとは、脈拍のような短いスパンで簡易的な調査を繰り返し実施することをいいます。もしくは、脈拍を確認するように、組織と従業員個人の関係性が健全であるかどうかを調査するという意味があるともいわれます。

実施頻度や質問の数は企業によって異なりますが、週1回~月1回といった頻度で、5問~15問程度のアンケートを実施するケースが多いようです。短いスパンで繰り返し実施することで、従業員の心理状態の変化や、現場で発生している問題などに素早く気づき、対処できます。

サーベイを導入すると、担当者は調査票を作成したり、実施するたびに結果を集計・分析したりしなければなりません。そのため、以前は短いスパンでサーベイを実施するのはリソース的に難しい部分がありました。しかし、テクノロジーが発達したことで、最近は便利なツールが次々と登場しています。これらを活用して、担当者の負担を抑えながらパルスサーベイを実施できるようになってきたため、注目度が高まっているようです。

パルスサーベイとセンサスの違い

センサスとは、年に12回といった長めのスパンで実施する大規模な調査のことです。質問は、数十問~100問を超えるケースもあります。

センサスは、パルスサーベイよりも質問数が多いため、その分多くのことを細かく分析できるというメリットがあります。ただ、結果の分析に時間がかかるため担当者の負担が大きくなることや、一度の調査で多くの課題が見つかりすぎて、対処しきれなくなってしまうこともあるようです。また、実施頻度は低いですが、質問数が多いため、回答する従業員にとっては、1回の負担は大きくなります。そのため、センサスは回答率が低くなりやすいという特徴もあります。

従業員の心理状態や現場の変化を素早く把握したい、大きな問題になる前に対処したいという場合は、パルスサーベイが向いているでしょう。パルスサーベイにもセンサスにも、それぞれメリット・デメリットがありますので、調査を実施する目的に合わせて、適切な方法を選ぶことが大切です。

パルスサーベイを実施する目的

パルスサーベイを実施する目的は企業によってさまざまですが、最近は従業員のエンゲージメントを把握するために実施されることが多くなっているようです。エンゲージメントとは、従業員が企業に対して自発的に貢献意欲を持てている状態を指す言葉です。エンゲージメントが高まると、生産性の向上や離職率の低下、組織の活性化などにもつながるといわれています。そのため、エンゲージメントの向上に取り組む企業が増えているのです。パルスサーベイは、現状のエンゲージメントを把握したり、向上のための取り組みを実施した後にその効果を検証したりする際に役立ちます。

エンゲージメントの把握以外にも、

  • 従業員のストレスや幸福度をチェックするため
  • 新規人材へのオンボーディングとして
  • 人事施策の効果を検証するため
  • 新しく導入した制度に対する意見を集めるため

などのために、パルスサーベイが活用されることもあります。

パルスサーベイのメリット

次に、パルスサーベイのメリットを詳しく紹介していきます。

直近の状態を把握できる

パルスサーベイは、週1~月1回といった短いスパンで調査を繰り返していきます。そのため、職場環境や従業員の状態などを、その都度知ることができます。また、質問数が少ないので、調査の実施から結果の集計・分析までもセンサスほど時間がかかりません。このように、すぐに直近の状態を把握できるというのが、パルスサーベイのメリットの1つです。

変化は、必ず表に出るとは限りません。いつもと変わらず仕事をこなしているように見えても、実はストレスを感じていたり、悩みを抱えていたりすることもあります。パルスサーベイを実施することで、こうした小さな変化にもすぐに気づき、大きな問題になる前に対処することも可能になるでしょう。

エンゲージメントの向上につながる

先ほどお伝えした通り、最近は従業員のエンゲージメントを把握する目的でパルスサーベイを導入するケースが増えています。ただ、パルスサーベイを実施するだけでエンゲージメントが向上するわけではありません。「パルスサーベイを実施して現状を把握する→結果を分析する→課題解決に向けたアクションを起こす→パルスサーベイを実施して効果を検証する」というサイクルを繰り返していくことが大切です。

企業がこのような「よりよい組織を作ろうとしている」という姿勢を見せることで、従業員は「自分たちの声が企業に届いている」と感じてくれるようになるでしょう。企業への信頼が深まり、エンゲージメント向上につながることが期待できます。

従業員に内省を促すことができる

成長のためには、「内省」が重要だといわれています。内省とは、自分の思考や行動などを客観的に深く省みることで、「リフレクション」とも呼ばれています。

サーベイに回答をするときや、その結果を上司からフィードバックされるときというのは、内省をする機会にもなります。パルスサーベイは短いスパンで繰り返し実施するので、それだけ内省の機会も多く設けることができるでしょう。パルスサーベイをうまく運用し、従業員が習慣的に内省を行えるようになれば、成長のスピードも速められるかもしれません。

施策の効果検証に役立つ

たとえば、何か新しい制度を導入するときや、組織を改編するときのように、大きな変化を起こす際は、その前後でパルスサーベイを実施するのがおすすめです。何かしらの施策を実行した前後でパルスサーベイを実施すれば、結果をもとにその施策の効果を検証できます。また、施策を実行している途中でも短いスパンでパルスサーベイを実施すれば、思わしくない変化が見られたときに速やかに軌道修正をすることも可能になります。

施策の効果検証は、定点観測が基本です。パルスサーベイのツールのなかには、質問項目がランダムで選ばれるように設定できるものもありますが、施策の効果検証に活用する場合は、質問を固定して実施するようにしましょう。

このように、パルスサーベイは施策の効果検証にも役立つものですが、施策によっては、効果が出るまでにある程度時間がかかるものもあるでしょう。パルスサーベイは短いスパンで繰り返し実施するため、毎回大きな変化があるとは限らず、効果が見えづらいと感じることもあるようです。施策によっては、センサスを活用したほうがよいかもしれません。

センサスよりも実施しやすい

パルスサーベイは簡易的な調査なので、センサスより気軽に行えるというのもメリットの1つといえます。パルスサーベイはセンサスよりも質問数が少ないので、回答にそれほど時間もかかりません。従業員にかかる負担も、センサスよりは少ないでしょう。また、センサスは自社で設計するのは専門的な知識がなければ難しいですが、パルスサーベイは自社で質問を作ることも可能です。便利なツールを活用すれば分析も容易に行えるようになるので、担当者の負担も軽減できるでしょう。

しかし、いくら簡易的で負担が少ない調査といっても、週1~月1回といったペースで頻繁に実施するため、従業員に「サーベイばかりで疲れる」と感じられてしまう恐れもあります。そうならないように、従業員にはあらかじめサーベイを実施する目的をきちんと共有しておきましょう。また、高頻度で実施するほどよいというものでもありませんので、従業員の負担を考慮しつつ、実施頻度や実施時期についても十分に検討することが大切です。

パルスサーベイのデメリット(注意点)

次に、パルスサーベイのデメリットを紹介します。導入を検討されているなら、以下の点に注意してください。

細かいところまで把握するのは難しい

パルスサーベイは質問数が少ないので、センサスほど細かい部分まで把握するのは難しいでしょう。「それなら質問の数を増やせばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、質問が多くなると、その分従業員にとっては回答する負担が大きくなります。集中してきちんと回答してもらえなくなる可能性も高くなりますので、パルスサーベイの場合、質問数は多くても15問までにおさめることをおすすめします。

パルスサーベイだけでは把握しきれないこともありますので、センサスと使い分けている企業もあるようです。目的に合わせて、適切な方法を選択しましょう。

担当者の負担が大きくなる

パルスサーベイは簡易的な調査なので、質問項目の設計や、1回の結果の集計・分析は、センサスに比べて工数はかかりません。しかし、実施頻度が高いため、担当者に大きな負担がかかってしまうこともあります。

サーベイは一度実施して終わりではなく、その結果を分析して対策を検討し、それを実施した後、再度サーベイを実施して現状を把握するというサイクルを回し続けていくことが大切です。しかし、パルスサーベイは実施スパンが短いので、調査を実施するごとに結果に大きな変化が表れるわけでもありません。担当者としては、「負担だけがかかっている」と感じてしまう可能性もあるでしょう。

先ほどもお伝えしたように、パルスサーベイは高頻度で実施するほどよいというものではありませんので、担当者に負担がかかりすぎないように実施頻度を検討しましょう。

マンネリ化しやすい

パルスサーベイを導入すると、従業員としては、毎週もしくは毎月、同じような質問に答えなくてはいけないことになります。回数を重ねるごとにマンネリ化してしまい、真剣に回答してくれなくなる可能性があります。

サーベイは、「なんとなく」で答えてもらってもあまり意味がありません。従業員に毎回きちんと回答してもらえるように、従業員の負担も考慮して質問数や実施頻度、実施時期を決めるようにしましょう。これに加えて、あらかじめサーベイを実施する目的やメリットを伝えておくこと、実施後は結果をフィードバックすることも重要です。

また、実施する企業側としても、マンネリ化してくると、パルスサーベイを実施すること自体が目的になってしまうことがあります。そうなると、結果を有効に活用することもできず、かけたコストや労力も無駄になってしまいます。パルスサーベイは、あくまでも組織をよりよくするための手段の1つです。パルスサーベイを導入する目的、組織が目指す姿(ゴール)を明確にしたうえで導入し、それらを見失わないように注意しましょう。

パルスサーベイの実施方法

最後に、パルスサーベイを実施する流れを紹介します。

1.調査票を作成する

まずは、パルスサーベイを実施する目的に合わせて、調査票を作成していきます。

先ほどお伝えした通り、質問数は多くても15問程度にとどめるようにしましょう。これよりも多くなると、従業員が回答する負担も、担当者が結果を集計・分析する負担も大きくなり、効果的に運用できなくなる可能性が高いです。

そして、質問の内容だけでなく、従業員にどのように回答してもらうのかも重要なポイントです。従業員と担当者双方の負担を減らすために、「Yes / No」の選択式にしたり、010で点数をつけてもらったりする形がおすすめです。

また、目的や内容にもよりますが、本音で回答してもらうために、匿名式にするのもよいでしょう。

質問例

質問は、パルスサーベイを実施する目的に合わせて設定しましょう。

エンゲージメントを把握する目的でパルスサーベイを導入するなら、アメリカの調査会社であるギャラップ社の「Q12®」を参考にしてみてはいかがでしょうか。「Q12®」とは、ギャラップ社が世界中のビジネスパーソン1,300万人を調査して導き出された12の質問のことです。質問の内容は、ギャラップ社の公式サイトをご覧ください。

公式サイト:【ギャラップ公式】たった12問であなたの職場の従業員エンゲージメント状態が分かる(Q12) (gallup.com)

2.パルスサーベイを実施する

調査票ができたらパルスサーベイを実施しますが、従業員には事前にパルスサーベイを実施することを告知しておきましょう。仕事が忙しいなかでもきちんと回答してもらえるように、実施する目的、回答方法、期限、所要時間の目安なども伝えておくようにしてください。

調査票は紙で配布するのではなく、メールやチャットツールなどで一斉に配信する形が主流になっています。回答率を上げるために、メールをチェックしてもらいやすい時間帯(業務開始時、昼休みの時間など)にリマインドメールを送る、会議のなかでパルスサーベイに回答する時間を設けるなど、工夫してみましょう。

3.調査結果を集計・分析する

回答が集まったら、すぐに集計・分析して結果をまとめ、従業員にフィードバックしましょう。回答からフィードバックまでスピーディーに行うことで、従業員に「この企業は自分たちとしっかり向き合ってくれている」という印象を与えることができます。企業に対する信頼が高まり、エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

4.改善策を検討し、実行する

最後は、パルスサーベイの分析結果をもとに改善策を立案し、実行するステップです。

過去に実施したサーベイから大きく回答内容が変わっている従業員がいれば、何らかの変化があったと考えられます。そのような従業員が数名いるなら、マネジメントに問題があるのかもしれません。パルスサーベイだけでは細かいところまでは把握できないので、個別面談などのフォローを行うことも検討しましょう。

過去に実施したサーベイから特に変化がない、もしくはよくなっているというような場合は、よりよくするにはどうすればいいかを考え、実行に移していきましょう。

ここまでが、パルスサーベイの1サイクルです。これを一度実施しただけで終わりにするのではなく、回し続けていくことが大切です。

まとめ

短いスパンで簡易的な調査を繰り返し実施するパルスサーベイについて解説しました。最近は、エンゲージメントの重要性が認識されるようになってきており、エンゲージメントを把握し、向上させる目的でパルスサーベイを導入するケースが増えています。気軽に実施できる、直近の状態を把握できるなどのメリットはありますが、目的によってはセンサスのほうが適している場合もあります。また、マンネリ化しやすいなどのデメリットもあるので、目的を明確にしたうえで導入し、従業員や担当者の負担も考慮しながら運用していきましょう。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
⇒あそぶ社員研修 総合資料を受け取る

この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

よく読まれている記事