自己理解とは?言葉の意味と重要性・深め方を紹介

  • 組織・人材開発

自己理解とは、文字通り自分のことを理解することをいいます。自分のことを深く理解できている人ほど、自分の強みや「自分らしさ」を発揮することができるため、ビジネスの現場においても自己理解を深めることが求められています。

本記事では、まず自己理解とは何か、似ている「自己〇〇」にも触れながら、言葉の意味を解説します。そして、自己理解を深めるメリット、自己理解を深める方法を紹介してきます

 

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自己理解とは

自己理解とは、自分自身のことについて深く理解することを意味します

若者の自立支援に対応する専門的な相談員(ユースアドバイザー)を養成するために内閣府が作成した、『ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)』では、「いくつかの手段により自分の気質、性格、ある種のタイプ、価値観、考え方、態度・行動などを深く知り、それを自分自身が納得して受け止めている状態のこと」が、自己理解であると定義されています。そして、以下の3つの方向から考察すると、自己理解がより深く確実になると説明されています。

  • 自己分析……自分が思う自分
  • 他人からのフィードバック……他人から見た自分
  • データの活用……検査や診断などの結果が示す自分

参考:「ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)」第5章 第1節 相談における基本的態度と心得等 – 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業

自己理解を深めることで、自分はどのような特性があるのか、どのような価値観や考えを持っていて、どこに向かいたいのかといったことを認識できるようになります。人生においては選択をしなければならない場面が多々ありますが、自己理解を深めることで最適な選択ができるようになるでしょう。また、自己理解を深めることで、コミュニケーションの質が向上し、周りの人ともより良い関係を築けるようになります。

従業員には、ビジネスパーソンとしてステップアップしてもらうためにも、自己理解を深めてもらいましょう。

自己理解と意味が似ている「自己〇〇」

自己理解と意味が似ている言葉として、「自己評価」「自己肯定」「自己覚知」の3つの意味を確認しておきましょう。いずれもさまざまな定義がある言葉ですが、一般的に次のような意味を持つ言葉として用いられることが多いです。

自己評価

自己評価とは、文字通り自分で自分を評価することをいいます。ただし、主観的にではなく客観的に評価することが重要です

人事評価の1つとして、自己評価を取り入れている企業もあります。評価する側・される側の双方が納得できる評価を完成させること、内省により従業員の成長を促すことが主な目的です。自分のことを正しく理解できていないと、過大評価・過小評価になってしまうこともあるでしょう。周りからの評価と自分の評価に乖離(かいり)がないかを確認できることも、自己評価のメリットです。

自己肯定

自己肯定は、「自己肯定感」という言葉で使われることがほとんどです。近年、特に耳にすることが多くなってきた言葉の1つではないでしょうか。自己肯定感とは、簡単にいうと「ありのままの自分を受け入れ、肯定できている感覚」を意味します

自己肯定感を高めることで、自分に自信が持てます。その結果として、何事にも前向きに取り組めるようになり、新しいことにも積極的にチャレンジできるようになるといわれています。

自己肯定感を高めるには、まずはありのままの自分を知ること、つまり自己理解を深めることが重要です。自己理解の作業に取り組み、これまで気づけていなかった自分の強みを認識できれば、自分に自信が持てるようになってくるでしょう。

 

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自己理解を深めるメリット

自分に合った就職先を見つけるために、学生時代に自己理解のための作業に取り組んだという人は多いでしょう。なぜ、社会人になって改めて自己理解を深める必要があるのでしょうか。ここからは、自己理解を深めるメリットを紹介していきます。

自分自身をコントロールできるようになる

自己理解を深めるためには、自分のことを客観的に観察してみる必要があります自分のことを客観視すると、自分がどのようなときに感情が変化しやすいのかがわかるようになり、自分自身をうまくコントロールできるようになるでしょう

たとえば、ミーティングのなかでメンバーと意見が対立したとします。このとき、「反対の意見をいわれると、つい感情的になってしまう」という自分の傾向を把握できていれば、いったん休憩を挟んで物理的に相手と距離を置いたり、深呼吸をしてリラックスしたりなど、何かしら対策がとれます。

逆に、この傾向を把握できていないと、ただ感情をぶつけ合うだけになってしまい、有意義な話し合いにはならないでしょう。強い感情をぶつけることで、人間関係がこじれてしまうこともあるかもしれません。

このように、自分を客観視して理解を深めることにより、自分自身を変えるためのきっかけが得られ、徐々に自分自身を上手にコントロールできるようになることが期待できます。

自分を成長させることができる

「自分が思う自分」と「他人から見た自分」が完全に同じという人は、恐らくほとんどいないでしょう。「他人から見た自分」を把握できていない、または「自分が思う自分」ばかりを信じている人は、周りの人からのアドバイスやフィードバックを素直に受け取れず、成長の機会を逃してしまうこともあるかもしれません。「自分が思う自分」と「他人から見た自分」の両方を正しく把握できている人は、アドバイスやフィードバックを素直に受け取り、自分の成長につなげていくことができるでしょう

そのため、自己理解ができている人とできていない人では、成長のスピードも変わってくるのではないでしょうか。

自分らしい生き方ができるようになる

かつての日本は終身雇用・年功序列が一般的で、同じ企業に勤め続けてさえいれば、自動的に給与や役職も上がっていきました。しかし、これらはもはや時代遅れといわれるようになり、一人ひとりが自分のキャリアは自分でデザインし、形成していくことが求められる時代となっています。

自分のキャリアをデザインするためには、まずは自分のことを正しく、深く理解する必要があります。具体的には、自分は何ができるのか、何を大切にしており、何がしたいのかなどです。まずはこれらを把握しないと、将来ありたい姿を描いたり、理想と現実のギャップを分析したりするのは難しいでしょう。自己分析は、キャリア形成のために重要なステップなのです。

また、キャリア以外でも、現代社会は選択肢が多く、生活をするなかで意思決定をしなければならない場面が多々あります。自分のことを深く理解できていれば、スムーズに最適な選択ができるようになるでしょう

自己理解を深めるほど、自分らしく生きていけるようになるのです

周りにも意識を向けられるようになる

お伝えしたように、自己理解を深めるためには自己分析を行うだけでなく、「他人から見た自分」を知ることも重要です。自己理解を深めると、他人の視点を意識できるようになり、「自分は周りからどのように見られているか」を考えられます。その結果として、普段仕事をするなかでも、常に周りにも意識が向くようになることが期待できます。さらに、共感力やヒアリング力が向上し、相手のことを理解する力が高まるともいわれています

なお、共感力については、以下の記事で詳しく紹介しています。

共感力とは?ビジネスで求められる理由や高め方を解説

より良い人間関係を構築できるようになる

自分の気持ちや考えを自分で正しく理解できていなければ、それを相手に伝えることはできません。自己理解を深めることで、自分の気持ちや考えをわかりやすく相手に伝えられるようになるため、相手から理解してもらいやすくなります

また、自己理解が深まると、自分自身を肯定的に捉えられます。このような人は、相手のことも尊重しながらコミュニケーションをとれる傾向があり、安心感や信頼感が生まれやすいといえます。自己理解を深めることで、より良い人間関係を築けるようになるでしょう。

逆に、自分のことをあまり理解できていない人は、相手と話していても自分の感情を優先してしまうことがあります。その結果、トラブルに発展してしまったり、相手との間に溝ができてしまったりすることもあるかもしれません。

自己理解を深める方法

ではここからは、自己理解を深める方法を紹介していきます。

1.自己分析を行う

まずは、自分自身を振り返り、自分がどのような人間なのか分析をしてみましょう。ここでは、自己分析の具体的なやり方として、以下の3つの方法を紹介します。

  • WillCanMustで考える
  • 「ジョハリの窓」を活用する
  • ジョブ・カードを作成する

自分のことを深く理解するためには、自分の視点からだけでなく、他人の視点から分析することも重要です。どの方法を用いる場合であっても、自分以外の人からフィードバックをもらいながら行うようにしてください。では、それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

WillCanMustで考える

WillCanMust」は、以下の3つの視点から自分を整理するというフレームワークです。

  • Will……自分は何がやりたいのか(自分の志向、興味・関心があること)
  • Can……自分は何ができるのか(自分の能力、スキル・経験、強み)
  • Must……自分は何をすべきなのか(自分の使命、求められている役割)

この「WillCanMust」は、自分のキャリアを考えるときや、新しいこと(プロジェクトなど)に挑戦する際に自分の役割を確認するときにも役立つフレームワークです。また、就職や転職の面接対策としても活用されています。

上のような図で表したときに、3つの円が交わる中央の部分が最も重要とされています。ここが、「自分らしさ」ともいえる部分です。

「ジョハリの窓」を活用する

「ジョハリの窓」は、「自分が思う自分」と「他人から見た自分」の情報を、以下のように4つに分けて整理するというものです。1955年に、アメリカの心理学者であるジョセフ・ルフト氏とハリ・インガム氏により考案されました。もともとは他人とより良い関係を築く方法を探るためのものですが、自己分析のツールとしても活用されています。

【開放の窓】

自分も、他人も知っている自分

【盲点の窓】

他人は知っているが、自分では気づけていない自分

【秘密の窓】

自分は知っているが、他人には隠している自分

【未知の窓】

自分も、他人も知らない自分

「ジョハリの窓」は、企業の教育や研修にも取り入れられています。研修のなかで実施する場合は、受講者を少人数のグループに分けて、お互いに他己分析を行い、表を完成させてもらうというやり方がおすすめです。初対面の人同士だといきなり相手のことを深く分析するのは難しいので、お互いのことをよく知っている人を集めてグループを組むようにしてください。

ジョブ・カードを作成する

ジョブ・カードとは、厚生労働省により様式が定められている、キャリアデザインや職業能力証明の機能を担うツールのことです。人材育成や人事評価に役立つだけでなく、企業の活性化にもつながるため、導入する企業も増えています。

ジョブ・カードの公式サイトには、ジョブ・カードに記載する内容を考えるための「キャリア・プラン作成補助シート」というものが用意されています。これを活用すれば、これまでの自分を振り返りながら必要項目に記入していくだけで、自己理解を深めることができます。このシートには、「周囲からの期待」を記入する項目があります。一人で作成するのは難しいので、こちらも周りの人からフィードバックをもらう、もしくはキャリアコンサルティングを受けながら作成するのがおすすめです。

公式サイト:キャリア・プラン作成補助シート(在職者用) | マイジョブ・カード

2.診断ツールを使う

冒頭でお伝えしたとおり、内閣府の『ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)』では、「自己分析」と「他人からのフィードバック」に加えて、「データの活用」により自己理解をより深めることができるとされています。ここでのデータとは、さまざまな診断ツール(性格診断、職業適性検査など)の結果のことをいいます。先ほど紹介したジョブ・カードの公式サイトにもさまざまな自己診断がありますので、活用してみてはいかがでしょうか。

公式サイト:自己診断一覧 | マイジョブ・カード

データを活用することで、より客観的に自分を知ることができるでしょう。ただ、データはあくまでも自分を知る「きっかけ」に過ぎません。結果を受けて、「自分はこういう人だ」と、自分のなかで決めつけてしまわないように注意してください。

3.キャリアコンサルティングを受ける

キャリアコンサルティングとは、キャリアに関する相談のことです。事業主は、必要に応じてこの機会を確保すること、そしてキャリアコンサルタントを有効に活用するよう配慮することが、法律にも定められています。

参考:職業能力開発促進法 | e-Gov法令検索

厚生労働省のホームページによると、キャリアコンサルティングは、「自己理解→仕事理解→啓発的経験→意思決定→方策の実行→適応」の6ステップで進められるとされています。

参考:キャリアコンサルティングの流れ – 厚生労働省

このように、自己理解への支援はキャリアコンサルティングのなかに含まれています。キャリアコンサルタントから専門的なアドバイスをもらいながら自己理解を深めてみるのもおすすめです

4.研修を受ける

自律的なキャリア形成が求められる時代となっており、「キャリア研修」や「キャリアデザイン研修」を提供する研修企業も増えています。内容はさまざまですが、自己理解を深めたい場合は、そのようなワークが盛り込まれている研修を受けてみるというのも1つの方法です

先ほど紹介したフレームワークや、ジョブ・カードのキャリア・プラン作成補助シートを活用して、社内で研修を企画・実施もできます。ただ、外部の研修を受けたほうが、専門的なアドバイスを受けることができるでしょう。

株式会社IKUSAでも、キャリアデザイン研修を実施しています。「従業員に自己理解を深めてほしい」「キャリアについて主体的に考え、行動する力を身につけてほしい」などの課題やお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

キャリアデザイン研修

自己理解を深めることにつながる研修5選

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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2.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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3.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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4.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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5.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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まとめ

自己理解を深めると、周囲の人ともより良い関係を築けます。また、自身の成長とキャリア形成のためにも、自己理解は重要です。従業員一人ひとりにVUCA時代を生き抜く力をつけてもらうために、まずは自己理解を深めてもらいましょう。

自己理解を深めるには、自分一人で自己分析するだけでなく、他人からフィードバックをもらう、データを活用することも大切です。研修を企画する際は、さまざまな角度から自分を見つめ、整理できるようなプログラムを考えてみてください。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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