研修の効果測定とは?方法・課題・ポイントを解説

  • 研修ノウハウ

研修をより良いものにしていくためには、実施した研修の効果を測定し、改善点を把握する必要があります。また、研修を実施するにはコストがかかります。効果がある研修だということを証明しないと、研修の予算をカットされたり、打ち切りにされてしまったりする可能性もあるでしょう。そのため研修担当者は、研修実施後にしっかりと効果測定を行う必要があります。

本記事では、研修の効果測定とは何か、研修の効果測定に役立つ「カークパトリックモデル」、研修の効果測定における課題とポイントを解説します

 

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研修の効果測定とは

研修の効果測定とは、文字どおり研修を実施した後にその効果を測定することをいいます。具体的には、受講者の研修に対する満足度や理解度、研修後の受講者の行動の変化、研修を実施したことによる組織への影響、費用対効果などの測定を行います。

研修の効果測定が必要な理由

では、なぜ効果測定が必要なのか、その理由を詳しく見ていきましょう。

研修の目的の達成度合いを測るため

研修を企画する際、まず「なぜこの研修を実施するのか」という目的を設定しているはずです。目的が曖昧なまま企画を進めてしまうと、効果的な研修は実施できませんので、必ず明確な目的を設定するところから始めるようにしましょう。

そして、研修を実施すれば、その目的を必ず達成できるというわけではありません。研修を実施したことで、目的をどの程度達成することができたのかを把握するために、効果測定が必要になります。

たとえば、新入社員研修であれば、「社会人としての基礎的なスキルとビジネスマナーを身につける」ことを目的に実施する場合が多いでしょう。これを達成できたかどうかを知るためには、研修後、受講者が業務のなかで「時間管理ができるようになったか」「滞りなく報告・連絡・相談ができるようになったか」などを検証する必要があります。

より良い研修を実施するため

効果測定を行うことで、研修をより良いものに改善していくことができます。

たとえば、研修後に受講者に対してアンケートを実施することで、研修の進め方や講師の教え方、実施期間・時間、内容などの良かった点・悪かった点を把握することができ、結果を次回の研修に活かすことができます。

さらに、測定の難易度は高いですが、費用対効果の確認まで行うことができれば、かけたコストに見合う成果が得られたかどうかも把握できます。コストを抑えながらより良い研修を実施していくためには、きちんと効果を測定する必要があるのです。

社員の成長のため

研修の効果を測定することで、受講者一人ひとりの課題が明確になるので、個人に合わせたフォローが行えます。たとえば、理解度テストを実施して点数が低い受講者がいれば、補講を実施したり、個別に指導したりといった対応が考えられます。

また、効果測定の結果を受講者本人にフィードバックすれば、受講者は自分が「理解できているのか」「学んだことを活かせているのか」を知ることができます。成長を自覚することができれば、モチベーションも高まり、仕事や次の研修に意欲的になってくれることも期待できます。

 

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研修の効果測定に活用したい「カークパトリックモデル」

研修の効果を測定する際は、カークパトリックモデルを活用してみましょう。カークパトリックモデルとは、教育の効果を測定するための枠組みです1959年に、アメリカの経営学者であるドナルド・カークパトリック氏により提唱されました。以下の4段階に分けて効果測定を行うので、「4段階評価モデル」とも呼ばれています。

  • レベル1:反応(Reaction
  • レベル2:学習(Learning
  • レベル3:行動(Behavior
  • レベル4:結果(Results

この4段階で、研修そのものに対する満足度や受講者の理解度だけでなく、その後の行動変容、組織への影響や費用対効果まで確認するため、コストを抑えながら効果的な研修を実施するためのツールとして、日本でも活用されるようになってきています。では、各レベルで何を、どのように測定するのか、詳しく見ていきましょう。

レベル1:反応(Reaction

レベル1では、受講者が研修にどのような反応を示したかを確認します。つまり、研修そのものに対する満足度を測定するということです。受講者が研修と自分の仕事を関連づけることができたか、「良い研修だった」と感じているかなどを確認します。レベル1の測定は、研修終了直後に、受講者に対してアンケートを実施したり、ヒアリングをしたりする方法があります。

このレベルの測定が必要なのは、満足度は学習の意欲につながるものであるためです。また、この測定で得られた結果を分析して改善を加えれば、次回はより満足度の高い研修を行えるようになるでしょう。あまりにも満足度が低かった場合は、研修そのものを継続するかどうかも、一度検討してもよいかもしれません。

レベル2:学習(Learning

レベル2では、受講者の理解度(研修でどの程度知識・スキルを習得できたか)を測定します。レベル2の測定は、研修終了当日から数日後に、研修テーマに関するテストやレポートを提出してもらったり、ロールプレイングを実施したりする方法があります。

このレベルの測定が必要なのは、レベル1の評価は高かったのに、レベル2の評価が低くなることがあるためです。たとえば、受講者が「内容は理解できなかったけれど、グループワークが楽しかった」と感じているような場合です。満足度が高ければ理解度も高くなるというわけではありません。また、知識やスキルを習得できていないと、次の行動も良い結果は期待できないでしょう。そのため、レベル12はそれぞれ測定する必要があります。

レベル3:行動(Behavior

レベル3では、研修後に受講者の行動が変化しているかどうか、研修で学んだことを日々の業務のなかで活用できているかどうかを測定します。レベル3の測定は、研修後一定期間が過ぎたタイミングで実施します。測定方法としては、受講者本人とその上司に対してインタビューやアンケートを実施する、行動チェックリストで評価してもらうなどがあります。

このレベルの測定で良い結果が得られれば、「効果的な研修だった」と評価できます。「では、レベル12は飛ばしてレベル3だけ測定すればよいのではないか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、レベル12で良い結果が得られれば、必ずレベル3にも変化が見られるというわけではないのです。レベル3で変化が確認できなかった場合、レベル12を測定していないと、研修そのものが悪かったのか、まったく別の原因が影響しているのかを判断できません。そのため、レベル3だけでなく、12の測定も行う必要があるのです。

レベル4:結果(Results

レベル4では、研修を実施したことにより、組織にどのような成果がもたらされたのかを測定します。具体的には、研修目標に関連する指標(売上、顧客満足度など)や、ROI指標(※)の変化を見て、成果が得られたかどうかを確認します。そのため、できれば研修目標は定量的な目標を設定しておくのが望ましいでしょう。

しかし、内容によっては数値で表すのが難しいこともあります。また、レベル4の測定は、研修後一定期間が過ぎたタイミングで実施しますが、成果が表れるまでにかなり時間がかかるものもあるため、測定しないケースも少なくないようです。

カークパトリックモデルは、必ず4段階すべて実施しなければならないというわけではありません。効果測定の目的に合わせて、あらかじめどの段階まで実施するのかを決めておきましょう。

ROI指標とは……「Return on Investment」の略称で、「投資対効果」「投資資本利益率」などと呼ばれます。費用対効果を確認するための指標です。

カークパトリックモデルについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

カークパトリックモデルとは?効果の測定方法やポイントをわかりやすく解説

研修の効果測定における課題

カークパトリックモデルは、高いレベルの測定まで行うほど、研修の効果をより正確に知ることができます。しかし、レベルが上がるほど、測定の難易度も高くなります。そのため、実際はカークパトリックモデルのレベル1・2までしか測定できていないという企業が多いようです。測定が難しいと感じる理由を、いくつか挙げてみましょう。

  • 研修を実施してから成果が出るまでに、どのくらい時間がかかるのかがわからない。いつ測定すべきかがわからない。
  • 研修と成果との明確なつながりが見えない。
  • 研修の効果測定にコストと手間がかかる。
  • 効果測定には職場の協力が必要だが、これを得るのが難しい。
  • 実施している研修は1つではない。また、研修担当者は研修専任スタッフではなく、ほかの業務と兼務しているため、効果測定まで実施する余裕がない。

しかし、研修は行動変容につながるものであることが重要です。先ほどお伝えしたとおり、レベル3の「行動(Behavior)」で良い変化が見られれば、その研修は「効果があった」と評価することができるでしょう。そのため、せめてレベル3の測定までは実施したいところです。

研修の効果を測定するときのポイント

効果測定により有益な結果が得られるように、研修の効果を測定するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。

なぜ効果を測定するのかを明確にする

まずは、「何のために効果測定を行うのか」、つまり効果測定の目的を明確にすることが大切です。効果測定の目的によって、評価すべき項目、集めるべきデータが変わってきます。効果測定にはコストも手間もかかりますので、それらを無駄にしないためにも、しっかり目的を決めておく必要があります。

効果測定の目的の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 研修プログラムを改善するため
  • 今後もこの研修を続けていくか判断するため
  • 効果がある研修であることを経営層に示すため
  • 研修の効果が出やすい社員の特徴を分析するため

目的は1つでなくても構いませんが、多く設定すればするほど、多くのデータを集めなければならなくなり、その分コストも手間もかかるので、その辺りも考慮しましょう。

効果測定そのものが目的にならないように、得られた結果を何に活かすのかを、あらかじめ決めておくことが重要です。

どの段階まで測定するのかを決めておく

先ほどお伝えしたように、カークパトリックモデルはレベル14すべて測定しなければならないわけではありません。研修の目的に合わせて、どの段階まで効果測定をするのかを決めておきましょう

階層別研修や選択型研修などのように、毎年実施しているような研修なら、レベル23まででもよいかもしれません。しかし、不定期に行われる企業の課題解決を目的とした研修は、レベル4の組織への影響や費用対効果まで確認する必要があります。

レベルが上がるほど測定の難易度は上がり、コストも手間も必要になりますので、その点も考慮しながら、慎重に決めていきましょう。どの段階まで実施するかだけでなく、どのタイミングで、誰を対象に、どのような方法で測定するのかも、あらかじめきちんと決めておくことが大切です。

職場の理解と協力を得る

研修は、人事部だけで実施できるものではありません。経営層と職場の理解・協力が必要です。なかでも特に重要なのが、受講者の上司です。上司の協力がないと、カークパトリックモデルのレベル3の測定が難しくなります。それだけでなく、あらかじめ上司を巻き込んでおかないと、研修の効果も下がってしまう可能性があるのです。

たとえば、上司が研修に向かう部下に対し、「今日は研修ですね。いつも仕事を頑張ってくれているので、息抜きのつもりで行ってきてください。」といって送り出したとします。これでは、部下は「研修は仕事に役立つもの」という意識を持てないでしょう。部下の「学ぼう」という意欲も低下してしまうかもしれません。また、研修をこのように捉えている上司では、研修後、効果測定のためにヒアリングを実施しても、有益な情報を得られない可能性が高いでしょう。

では、上司を巻き込むにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは、職場のことを理解したうえで研修の企画を伝えることです。研修は、一般的に業務時間内に行われます。どうしても職場に穴が空くことになりますので、「職場の負担が増える」と感じる人もいるでしょう。職場の状況や心理状態を理解したうえで、「なぜこの時期に研修を実施するのか」「どのように職場の役に立つのか」を丁寧に説明することが重要です。

また、企画段階から職場の声を取り入れるのもおすすめです。職場の声を反映させることで、職場のニーズに沿った研修を実施できるようになります。そうすることで、上司にも「自分たちの課題解決のために必要な研修」という捉え方をしてもらえるようになるでしょう。

PDCAサイクルを回す

効果を測定したら、必ずといっていいほど課題や改善点が見つかるはずです。測定して終わりではなく、得られた結果をしっかりと次につなげていきましょう。たとえば、次のような点を検討します。

  • そもそもこの研修は必要なのだろうか? 目的達成のために、研修よりもっと良い手段があるのではないか?
  • 何を変えれば、より良い研修になるだろうか?(プログラム、講師、実施する期間・時間など)
  • コストを抑えられる部分はないか?(例:外部に委託している部分を社内リソースで実施できないか? など)

研修をより良いものにしていくためには、研修を実施する度に効果測定を行い、改善を繰り返していくこと、つまりPDCAサイクルを回していくことが大切です。

LMSの導入を検討する

LMSとは、「Learning Management System」の略称で、日本語では「学習管理システム」や「eラーニングシステム」などと呼ばれています。eラーニングのベースとなるシステムのことです

LMSはさまざまなベンダーから提供されており、何ができるかはシステムによって異なりますが、多くのLMSには、テストやレポートを出題・回収したり、それらの採点や評価を自動で行ったりする機能が搭載されています。導入することで、レベル2までの測定が簡単に行えるようになるでしょう。

最近は、オフラインの研修までまとめて管理できるシステムもあります。研修の効果測定や管理業務の効率化のために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、LMSについては詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

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あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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まとめ

研修の効果測定は、「カークパトリックモデル」を活用して段階的に行うのがおすすめです。ただ、レベルが上がるほど測定の難易度は上がり、かかるコストや手間も増えるため、効果測定の目的に合わせてどの段階まで測定するかを慎重に検討しましょう。

そして、効果を測定したらそれで終わりではなく、しっかり次につなげていくことが大切です。PDCAサイクルを回し、研修がより良いものになるように改善を続けていきましょう。

参考:研究倫理教育効果の評価手法に関する試行的考察(有澤 和代、神里 彩子)| J-STAGE(PDF)

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。

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研修のノウハウに関しては、以下の記事にまとめて記載しています。

研修とは?目的・目標設定・フロー・実施方法・ポイントを解説

この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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