企業のダイバーシティに関する事例・取り組み20選
- 組織・人材開発
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グローバル化や人材確保の観点から、ダイバーシティに基づく経営が、企業に求められています。ダイバーシティ経営を推進させることで、異なる社会的背景を持つ者同士を尊重し、社員が家庭と仕事を両立させながら働きやすくする土壌づくりができます。
本記事では、企業におけるダイバーシティの取り組みを20選紹介します。
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講義を主体とするダイバーシティ研修・インクルージョン研修については以下のページで紹介しています。
ダイバーシティ研修
インクルージョン研修
ダイバーシティとは
ダイバーシティとは、日本語に直訳すると「多様性」という意味です。人種、性別、宗教、障害などを指す「表層的」なものと、考え方、職歴、性的志向などの「深層的」なものに分かれ、あらゆる属性を認めて共存を目指す概念とされています。
企業におけるダイバーシティ推進の取り組みとしては、一例として以下の内容が考えられます。
- 障害者雇用を推進する
- 女性管理職の比率を増やす
- 管理職向けの育児支援研修の実施
ダイバーシティはさまざまな角度から取り組めるため、企業で実施する場合、どのような切り口から進めていくか検討する必要があります。次章からはテーマや方法別に、実際に取り組まれた事例を紹介します。
制度整備に関するダイバーシティの取り組み事例7選
制度整備を通じたダイバーシティの取り組みを紹介します。
1.同性パートナーに人事制度・福利厚生を拡大
化粧品メーカーの株式会社コーセーは、婚姻に伴う休暇や休業、各種手当などにおいて、2024年度から同性パートナーを有する社員も対象にすることを決めました。制度整備をすることで、個性を尊重し、高めあい、多くの社員が安心して働ける風土づくりを目指しています。
そのほかにも多様性への理解と行動変容の促進を促すパンフレットを制作し社内で展開する活動も行っています。
参考:KOSE|コーセー、人事制度・福利厚生を同性パートナーにも拡大 ~休暇や休業、各種手当を支給対象に~
2.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン宣言の制定
京王電鉄株式会社は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン宣言を制定し、DE&Iを推進しています。「自分らしさを幸せな暮らしの実現へ」をスローガンに掲げ、育児発達相談室や両親学級といったワークライフバランスを充実するための施策を実施するほか、ワーキングマザー向けのキャリア支援として社外女性社員との交流など、機会創出を積極的に行なっています。
参考:京王電鉄株式会社|京王グループ DE&I(ダイバーシティ・エクイティ& インクルージョン)宣言の制定
3.子育て・介護支援に向けて支援制度を充実
ネットワーク環境の構築やソフトウェア設計などを手掛ける扶桑電通株式会社は、全ての社員が仕事と家庭を両立できるよう、育児・介護休業支援制度を新たに導入しました。
育児休業取得者への月額の支援金や、育児休業者がいる課員への一時金支給のほか、介護休業制度においても、短時間勤務者への支援金を増額するといった内容に見直しています。
参考:扶桑電通株式会社|子育て・介護支援に向けて 新たな育児介護休業取得支援制度を導入
4.パラパフォーマーと雇用契約し活動全面支援
サービス・ライフサイクルソリューション事業を展開するポールトゥウィンホールディングス株式会社は、プロのパフォーマンスを提供できるパラパフォーマーと雇用契約を結び、日常的にパフォーマンスできる環境づくりやイベント出演交渉のサポートなどを行なっています。
現在聴覚障害を持つバスケットボーラーと、ダウン症候群のヒューマンビートボクサーが所属しており、今後は増員と文化の定着を目指しています。
参考:PTW|「パラパフォーマー®」と雇用契約し、プロとしてのパフォーマンス活動を全面支援
5.配偶者出産休暇をアルバイト含め全男性社員へ
株式会社ダスキンは、全男性社員の育児休業取得を目指しています。これまで「配偶者出産休暇」の付与は正社員のみでしたが、2024年度よりアルバイト社員まで拡充を決定しました。
仕事と家庭生活の両立を支援し、個々の能力を最大に発揮できる環境をつくることで、変化する事業環境や顧客ニーズに対応できる風土をつくる狙いがあります。
参考:ダスキン|全男性社員の育児休業取得を目指し 「配偶者出産休暇」有給付与をアルバイト含む全男性社員に拡大
6.ライフステージにおける女性の働きやすさ推進
株式会社商船三井では、女性のライフステージに合わせた仕事の両立支援を実施。女性活躍を特に効果的に進める企業に贈られる「なでしこ銘柄」に4年連続選定されました。女性管理者の育成や、女性船員の海上における働きやすさ向上などに力を入れています。海上で勤務する女性社員の負担となっている生理用品を会社から支給するといった、試験的な取り組みも行っているのが特徴です。
参考:商船三井|女性活躍推進に優れた企業として「なでしこ銘柄」に4年連続選定
7.事実婚・同性パートナーやペットのケアも対象にした福利厚生
データとテクノロジーを活用し、PR業務を支援するビルコム株式会社は、事実婚パートナーや同性パートナー、ペットのケアや自身の通院などをカバーできる福利厚生制度の運用を開始しました。
家族やペットの介護において利用可能な在宅勤務・フルフレックス勤務の日数を増やしたほか、家族余命宣告時にも制度を利用でき、柔軟な働き方を推進しています。
参考:BILCOM|事実婚・同性パートナーやペットのケアも適用対象にした 新・福利厚生「ビルケア制度」運用開始 ~家族形態の多様化を踏まえ、従業員のライフイベントサポートを強化~
相互理解に関するダイバーシティの取り組み事例2選
相互理解に繋がるダイバーシティの取り組みを紹介します。
1.ブラインドサッカーを活用した研修の実施
粘着の技術で文具やヘルスケアの商品開発を手掛けるニチバン株式会社は、ダイバーシティ研修としてブラインドサッカーを取り入れました。
NPO法人日本ブラインドサッカー協会の協力のもと、新入社員を対象に研修を実施。視覚が不自由ななかでいかに適切で良好なコミュニケーションがとれるかを体験することで、障害者への理解や気づきを得る機会を設けています。
参考:ニチバン|ダイバーシティ研修~「ブラインドサッカー®」を通じて理解促進 ~
2. LGBTQ当事者の社員の声を公開
総合人材サービスの提供を行うランスタッド株式会社は、企業メディアと公式noteにおいてLGBTQ当事者の社員とDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)担当者の思いを公開しました。
LGBTQ+関連イベント「東京レインボープライド2024」への3年連続の参加を記念しての試みで、「LGBTQ+」という言葉自体がなくなるような社会を願って発信されています。
参考:randstad|「東京レインボープライド 2024」への参加を記念し、LGBTQ当事者である従業員の声などを公開。誰もが自分らしく働ける環境の実現をめざして
多様な価値観に関するダイバーシティの取り組み事例2選
多様な価値観の共生に繋がるダイバーシティの取り組みを紹介します。
1.自分らしさを生かすユニホームにリニューアル
エレベーター、エスカレーターの保守・製造などを手掛けるフジテック株式会社は、安全衛生基準の厳格化や気候変動、従業員の価値観や人材の多様化に対応し、働くモチベーションを高める狙いで、「自分らしさをいかす」をコンセプトにユニホームを一新しました。
職種や性別ごとのデザインからジェンダーフリーのデザインに全職種統一し、アウターや帽子などアイテムの組み合わせにより個性を生かせる工夫がなされています。さらに、安全上必要な場合をのぞいてユニホームの着用を選択制としており、従業員一人ひとりの選択を尊重する取り組みを行っています。
参考:FUJITEC|「人」が主役となるフジテックブランドを体現するユニホームへ
2.ハラル認証を取得しフードダイバーシティを強化
株式会社大戸屋ホールディングスは、インドネシアで展開する「大戸屋ごはん処」全8店舗にて、厳格な審査基準を設けるハラル認定・事業者の承認を取得しました。
ハラルとはイスラム教の教えにおいて「神に許されること」であり、イスラム教徒は食べ物において豚肉やアルコールの摂取は禁止されています。「大戸屋ごはん処」ではそれらの食材を使用しないのはもちろんのこと、イスラム教の教えに則った物流・品質管理を徹底し、審査をクリアしました。
イスラム教徒は世界人口の4分の1と言われており、彼らが利用できるレストランという認証を得たことで、フードダイバーシティの推進に大きく寄与しています。
参考:PRTIMES|「【⼤⼾屋ごはん処】インドネシア全8店舗でハラル認証取得!フードダイバーシティの推進を強化。」
機会創出を通じたダイバーシティの取り組み事例9選
研修や交流、認知のきっかけをつくるダイバーシティの取り組みを紹介します。
1.ダイバーシティ推進のための社内イベントを開催
大日本印刷株式会社は、社員の当事者意識を高めるためのさまざまな社内イベントを開催し、ダイバーシティを推進しています。
リアルとオンラインでの講演会や社内有志による企画などを、一部手話通訳付きで実施。「感謝」をテーマにした行動を宣言するポスター掲示や「カミングアウトについて考える」映画上映会などが行われました。
参考:DNP|社員のD&Iを推進する社内イベント・第4回「ダイバーシティウィーク」を開催
2.性的マイノリティ研修の資料公開
パーソルホールディングス株式会社は、人材派遣や人材紹介、アウトソーシングを手掛ける企業です。2019年度から社員に多様性の理解・受容の精神を培うため、「DEIリテラシー研修」をグループ全社員向けに毎年実施しています。
さらに研修で使用している資料を企業ウェブサイトにて無償で公開。社内に留まらず、広い範囲でのダイバーシティの啓発に寄与し、反響を呼んでいます。
参考:PERSOL|性的マイノリティに関する社内研修資料を無償公開
3.寄付につながる商品販売で理解のきっかけづくり
デンマーク・コペンハーゲン発の雑貨販売を行う「Flying Tiger Copenhagen(フライングタイガーコペンハーゲン)」では、世界各地でLGBTQ+の啓発イベントが開催される「プライド月間(6月)」にかけ、レインボーデザインが特徴の雑貨「プライドシリーズ」を展開します。
対象の商品を購入すると、売上の一部をダイバーシティに取り組む非営利団体へ寄付できます。商品展開や寄付を通じて、性の多様性やLGBTQ+コミュニティへの理解を広げるための取り組みを行っています。
参考:Flying Tiger Copenhagen|プライド特集
4.障害福祉施設での企業研修
非営利型株式会社andna(アンドナ)は、福祉施設にて重度障害のある方と過ごすことで、相互理解を促す研修事業を提供しています。
福祉の現場のリアルな課題を知り、障害の多様性を理解する目的があります。参加者は普段接する機会の少ない障害福祉を知ることで視野が広がり、社会的価値を考えるきっかけをつくり出しています。
参考:andna|障がい福祉の力を使って“人間力”を高めよう!
5.おもちゃのジェンダーバイアスをなくす
乳幼児向けのおもちゃ企画・開発・販売を行うピープル株式会社は、PRTIMES主催の「April Dream」を通じて、おもちゃからジェンダーバイアスをなくし、個性を尊重して好奇心にフタをしない社会づくりを発信しました。
本来ジェンダーとは無関係の子どもの好奇心を、「男の子だから」「女の子だから」というジェンダーバイアスのかかった言葉で潰してしまう状況をなくしたいという思いで取り組んでいます。
ピープル株式会社では、男の子用のデザインが多かったDIYおもちゃ市場に、“かわいい世界観のDIYおもちゃ”を展開させ、おもちゃとジェンダーの問題に向き合い、考えていく取り組みを行っています。
参考:PRTIMES|おもちゃのジェンダーバイアスをぶっ壊す!性差関係なくおもちゃを選んで遊べる「好奇心まるだし」社会を実現します。
6.社員誰でも参加できる障害者コミュニティの開設
大日本印刷株式会社は、社員なら誰でもオンライン上で参加できる障害者コミュニティ「ほっとワーク」を開設しました。
障害のある社員だけでなく、障害のある社員と働く人、障害を持つ家族がいる社員が相互に繋がる場となっていて、障害を持つ人を身近に持つ社員が互いに発信力を高めることで、解決策に辿り着きやすくなる環境を目指しています。
参考:DNP|社員なら誰でも参加できる障がい者コミュニティ「ほっとワーク」を開設
7.LGBTQ接客研修会を会社合同で開催
化粧品メーカーの株式会社ポーラは、株式会社名鉄ホテルホールディングスと合同でLGBTQ 合同接客研修会を開催しました。
多様なバックグラウンドの人と接する機会が多いホテル業界と美容業界が協力することで、より大きな価値を生めるとの狙いから開催。LGBTQ に関する基礎知識や用語の解説、国内外の状況、個人の多様性を尊重する方法などを学びました。
参考:POLAサステナビリティ公式note|名鉄ホテルホールディングス × ポーラLGBTQ 合同接客研修会を開催
8.ダイバーシティに取り組む企業と学生・若者らのオンライン交流会
認定NPO法人ReBitは、ダイバーシティを推進する企業と学生・若者らのオンライン交流会「MEET-UP」を開催しました。
企業の職場づくりに関する講演や担当者との交流、質問会など、21社が出展し、のべ335名の学生が参加。これから社会をつくる若い世代への啓蒙活動に取り組みました。
参考:PRTIMES|【自分らしく働くを応援】ダイバーシティに取り組む企業と学生・若者らのオンライン交流会「MEET-UP」大好評につき、イベント動画を無料公開。
9.体育・スポーツにおけるジェンダーやセクシュアリティの課題を議論
特定非営利活動法人プライドハウス東京の「プライドハウス東京コンソーシアム」は、スポーツ界からインクルーシブ社会の啓発・実現を目指しています。LGBTQ+当事者の学生と体育教員・コーチなどの指導者、アスリートが集まり、直面している課題と今後できる取り組みについて議論・共有しました。
体育やスポーツの現場では、当事者がカミングアウトしづらい環境が根強いことから、課題を言語化、共有することで解決策につなげようという試みです。
まとめ
ダイバーシティとは日本語に直訳すると「多様性」という意味です。労働環境のグローバル化や働き手の確保において、ダイバーシティに基づく経営推進が企業には求められています。
制度整備による推進や相互理解をテーマにした取り組みなど、ダイバーシティ推進の切り口はじつにさまざまです。事例を参考に、自社で取り組めるものから着手してみてはいかがでしょうか。
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講義を主体とするダイバーシティ研修・インクルージョン研修については以下のページで紹介しています。
ダイバーシティ研修
インクルージョン研修