ワークショップとは?研修に取り入れるメリットや実施する際のポイントを紹介

  • 学習法

「研修を実施しているけれど、行動変容につながっていない」「参加者にはもっと学習に対して前のめりになってほしい」、このような課題を感じている場合には、ワークショップを研修に取り入れてはいかがでしょうか。

本記事では、ワークショップとは何か、ワークショップを研修に取り入れるメリット・デメリット、学習の効果を高めるポイントを紹介します

 

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ワークショップとは

ワークショップは、心理療法や演劇、まちづくり、教育など、幅広い分野で用いられており、組織や団体によって定義はさまざまですが、「体験型の学習方法」を指すことが多いです。座って講師の話を聞いて学ぶのではなく、アクティビティと呼ばれる活動を通して、身体を使って学びます

以前は、企業研修といえば講義が一般的でしたが、最近ではワークショップを取り入れた研修も行われるようになっています。講義型の研修は、大勢の参加者に一斉に情報を伝えることができますが、どうしても参加者が受け身になりやすいです。一方、ワークショップ型の研修は、学習のテーマに関することを体験したり、何か作業をしたりすることで、実践的なスキルが身につきやすくなるという特徴があります。そのため最近は、講義とワークショップを組み合わせ、両方のメリットを生かした研修を実施する企業が増えているようです。

 

ファシリテーターとは

ワークショップは、ファシリテーターと呼ばれる人が中心となって進められます

英単語のファシリテート(facilitate)には、「促進する」「円滑に進める」などの意味があります。ファシリテーターとは、話し合いの場において、この役割を担う人のことです。単に司会・進行をするというだけでなく、話しやすい雰囲気をつくって参加者の意見を引き出したり、気づきを促したりして、参加者が学習内容を深く理解できるようサポートします。

ワークショップにおいては、このファシリテーターの存在が非常に重要です。学習の効果を高めるために、ファシリテーターには、参加者と対等な立場でいることが求められます

 

ワークショップを取り入れた研修の基本的な流れ

ワークショップは、基本的には以下の流れで進められます。

1.導入(アイスブレイク)

まずは雑談や自己紹介をしたり、ちょっとしたクイズを出したりして、参加者の緊張をほぐします。

2.アクティビティを実施

研修のテーマに関する学習活動を通して、「体験」することで学んでもらいます。

3.振り返り+まとめ

今回の研修で何を学んだか、何を感じたかを参加者に振り返ってもらいます。まずは個人で振り返り、そのあとグループに分かれて振り返りの結果を共有するのがおすすめです。

※アイスブレイクとは……参加者の緊張をほぐし、コミュニケーションを円滑にする手法のことです。
※アクティビティとは……学習活動の単位を表す言葉です。

アクティビティの例

ここで、いくつかアクティビティの例を紹介します。ワークショップでは、学習の内容やテーマに合わせて、以下のような手法を組み立てて参加者に提供します。

ディベート

あるテーマについて、肯定派と否定派に分かれ、一定のルールに従って議論をするというものです。どちらの意見がより説得力があったか、最後に第三者による判定が行われます。

ロールプレイ

ある場面や状況を想定して、そのなかで役割を演じることで実際の対応や学んだスキルの生かし方を学ぶというものです。

フィールドワーク

研究・調査対象となっている場所を訪れ、直接観察したり、現場でデータを集めたりして学びを深めるというものです。

アサーティブトレーニング

課題解決や意見交換を通して、アサーティブな自己表現(相手の気持ちを尊重しながら、適切な形で自分を表現する)を学ぶというものです。

ブレインストーミング

複数人で自由な発想でアイデアを出し合い、新たな発想や問題の解決方法を生み出そうとするものです。「集団発想法」や、略して「ブレスト」とも呼ばれます。

パネルディスカッション

あるテーマについて、異なる意見を持った複数人のパネルメンバー(そのテーマについて専門知識や代表的意見を持つ人)が討議を行い、その後討議を聞いていた参加者とも意見交換・討議を行うというものです。

ビジネスゲーム

ビジネスに必要な要素やスキルを学べるゲームのことです。アイスブレイクだけでなく、アクティビティとしても活用されています。

参考:学習プログラムと参加型学習 – 広島県(PDF)

 

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ワークショップを研修に取り入れるメリット

ではここからは、研修にワークショップを取り入れることで、具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきます。

 

体験することで学習が定着しやすくなる

学習方法ごとの学習定着率をビラミッド型の図で示した、ラーニングピラミッドという考え方があります。これによると、講義を聞く、本を読む、音声やビデオで学ぶといった座学による学習定着率は520%となっています。そして、デモンストレーション(実験や現場を見ること)で30%、グループ討議を行えば50%、自ら体験することで75%まで高まるとされています。

この数値の根拠の乏しさは指摘されていますが、参加者自身に自主的な活動をしてもらうことで、座学で学んだことがどのような場面で役立つのか、どのように活用するのかといったことをイメージしやすくなります。研修にワークショップを取り入れることで、学んだことを深く理解できるようになり、実践にもつながりやすくなるでしょう

 

参加者が集中力を維持しやすくなる

長時間講義を聞くだけ、またはビデオを見るだけという研修で、眠気に襲われたという経験がある方も多いのではないでしょうか。講義型の研修は、どうしても参加者の集中力が下がりやすく、また、長時間同じ姿勢でいるため、身体も疲れやすいといえます。

この点、ワークショップは、自分で考えたり行動したりしなければならないので、集中力が維持されやすいという特徴があります。参加者の興味を引くアクティビティを用意すれば、学習意欲も高めることができるでしょう。

研修にワークショップを取り入れることで、参加者が学習に対して前のめりになることが期待できます

 

参加者同士で交流が生まれる

先ほど紹介した以外にも、アクティビティにはさまざまな手法がありますが、複数人で取り組むものが多いため、参加者の間に自然とコミュニケーションが生まれるというメリットがあります。

参加者のなかには、「初対面の人とうまく話せない」「自分の意見を主張するのが苦手」という人もいるかもしれませんが、ワークショップでは、ファシリテーターがサポートしてくれます。コミュニケーションが苦手な人にも、自然に交流を促すことができるでしょう。

アクティビティを通して、参加者同士で理解を深め合うことができれば、職場に戻ってからも良い関係を構築・維持できるようになります。その結果として、仕事が円滑に進むようになる、チームワークが向上するなどのメリットが期待できるでしょう。

また、ほかの参加者と交流するなかで多様な価値観に触れることができるため、視野が広がる、発想力が鍛えられるなど、個人の成長につながるというメリットもあります。

 

コミュニケーションスキルやリーダーシップが身につく

前項でお伝えしたように、ワークショップは、アクティビティを通して参加者の間に自然に交流が生まれるので、コミュニケーションスキルが鍛えられるというメリットもあります。企業のなかでは、一人で完結できる仕事はほとんどありません。コミュニケーションスキルは、すべてのビジネスパーソンに必要なスキルです。これを鍛えることで、仕事をよりスムーズに進められるようになるでしょう。

また、グループで取り組むアクティビティの場合、与えられた課題をクリアするためには、メンバー全員で協力して1つの答えを出す必要があります。その過程のなかで、役割分担や多様な意見のまとめ方などを学べるため、ワークショップはリーダーの育成にも効果的です

 

ワークショップを研修に取り入れるデメリット

研修にワークショップを取り入れることで、さまざまなメリットが期待できることがわかりました。しかし、ワークショップを取り入れた研修には、以下のようなデメリットもあります。

 

広い範囲の学習は難しい

ワークショップを取り入れた研修は、「1つのことを体験して学ぶ」ことに多くの時間を使います。そのため、講義型の研修のように、参加者に一度に多くの情報を伝えるのは難しいです。学んでほしいことが多い場合は、講義型のほうが向いているといえます。

参加者に効率よく知識やスキルを習得してもらうために、学習の内容やテーマに合わせて研修スタイルを選びましょう。

 

研修の効果はファシリテーターの力量による

ワークショップは、ファシリテーターが非常に重要な役割を担っています。研修にワークショップを取り入れる場合は、ファシリテーターの力量に学習効果が左右されるといっても過言ではありません。これが、ワークショップを研修に取り入れる1つのデメリットといえます。

ファシリテーターには、全員の話をしっかり聞く、全員が参加しやすい雰囲気をつくる、時間を管理するといった、講師とはまた違った役割や能力が求められます。また、どのくらい自分の意見を主張できるかは人によって違うため、主張が強い人がいればその人を抑え、消極的な人から意見を引き出さなくてはなりません。話し合いが活発なときはあえて放任する、行き詰ったときは話し合いのステップを細かくしたり、課題をかみ砕いて説明したりするといったテクニックも求められます。

せっかくワークショップを研修に取り入れても、ファシリテーターのスキルが低いと、高い効果は期待できないでしょう。もし、社内にファシリテーターを任せられる人材がいない場合は、研修会社から派遣してもらうのも1つの方法です。

 

「楽しかった」だけで満足される可能性がある

研修にワークショップを取り入れる場合、アクティビティの内容によっては、参加者に「楽しかった」だけで満足されてしまう可能性があります。または、「内容は難しくてよくわからなかったけれど、アクティビティを通してチームワークが高まったので良かった」で終わってしまうようなケースです。

確かに、楽しみながら学べることや、チームワーク向上につながることも、ワークショップを研修に取り入れるメリットではありますが、本来の研修の目的・目標が達成できなければ、効果的な研修とはいえません。

このような事態にならないように、ワークショップを研修に取り入れる際は、まず研修の目的・目標を明確にして、それに合ったアクティビティを選択するようにしましょう。そして、研修の目的と業務とのつながりを参加者に理解してもらうこと、研修の最後には必ず振り返りの時間を設けることもポイントです。

 

ワークショップを研修に取り入れる際のポイント

学習の効果を高めるために、ワークショップを研修に取り入れる際は、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

 

1.ファシリテーター役の従業員に研修を受けてもらう

先ほどお伝えしたように、ファシリテーターにはさまざまなスキルが求められます。ワークショップを取り入れた研修を自社だけで企画・実施するなら、ファシリテーターを任せる従業員には、あらかじめファシリテーター研修などを受講してもらい、必要なスキルを身につけてもらっておきましょう

ファシリテーターには、「場のデザインスキル」「対人関係のスキル」「構造化のスキル」「合意形成スキル」という4つの基本スキルが求められます。ファシリテーター研修を実施している研修会社は多数ありますが、この基本スキルを講義とワークで学ぶような研修が多いです。

ファシリテーションスキルを身につけると、研修だけでなく、会議やミーティングもスムーズに進められるようになるでしょう。

 

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修」は、コンセンサスゲームと講義を組み合わせ、お互いを尊重するコミュニケーションスキルや合意形成(グループの意見を一致させる)の方法を学び、翌日から業務で活用できる研修プログラムです

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2.参加者全員が意見できる仕組みをつくる

ワークショップを取り入れた研修を実施する際は、参加者全員が意見できるように、ファシリテーターが適切に介入することに加えて、仕組みやルールをつくっておくことも大切です。具体的には、「一人が話す時間を決めておく」「一人ずつ順番に話し、それを遮らずに聞くことをルールとして設ける」などです

また、グループで取り組むアクティビティの場合は、グループの人数も工夫しましょう。1グループの人数が6人を超えると、話してばかり・聞くばかりの人が生まれやすくなります。アクティビティの内容にもよりますが、1グループは6人以下がおすすめです。全体の参加人数としては、肉声が届く程度の2030人までがよいでしょう。

参考:参加体験型学習(ワークショップ)を進めるために – 大阪府(PDF)

 

3.「結果」より「プロセス」を評価する

ワークショップのアクティビティは、たった1つの「正解」がないものも多いです。研修の最後に、参加者個人やグループに対してフィードバックをする際は、参加者が出した「結果」よりも「プロセス」をきちんと評価してフィードバックすることを意識しましょう

 

4.内容やテーマによっては講義を組み合わせる

ワークショップ型、講義型には、それぞれ次のような特徴があります。

  • ワークショップ型:実践的なスキルが身につく、集中力が維持しやすい、参加者の間にコミュニケーションが生まれる。
  • 講義型:一度に多くのことを伝えられる、基礎的・汎用的な知識やスキルの習得に向いている。

研修の内容やテーマによって、どちらのスタイルが適しているかは変わってきます。また、冒頭でもお伝えしたとおり、最近はこの2つを組み合わせた研修を実施する企業も多いです。たとえば、まず講義で基礎的な知識をインプットしてもらい、そのあとでワークショップを実施し、学んだことをアウトプットするというような形が考えられます。2つのスタイルを組み合わせることで、効率よく効果的な研修を実施できるでしょう

「没入型」ならチームビルディングの効果も

株式会社IKUSAは、体験型アクティビティと講義型の研修を組み合わせた「没入型」という新しいスタイルの研修を実施しています。すべての体験型アクティビティが、チームビルディングにつながるように設計されているのが大きな特徴です。チームのつながりを強化することで、エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。

また、没入型研修では、参加人数に合わせて複数名のファシリテーターがつくため、講義中の質問や、参加者の様子の記録といった細やかなフォローを行うことが可能です。

さまざまな研修プログラムを用意しておりますので、どのような課題でもお気軽にご相談ください。

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あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

ワークショップを取り入れた研修は、体験して身体で学ぶことができるため、実践的なスキルが身につきやすくなります。さらに、参加者の集中力が持続しやすい、参加者同士が交流を深められるというメリットもあります。ただ、一度に多くのことを伝えるのは難しいため、講義と組み合わせて、それぞれのメリットを生かした研修を行うことで、参加者に効率よくスキルを身につけてもらうことができるでしょう。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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